第13話 みみじぃ突然衣装もちになる
ばあちゃんの家へは必ずみみじぃも一緒に行っていた。
今ではばあちゃんも楽しみにしている。多分、みみじぃも。
僕そっちのけで話し込んでいる時もある位だから。良かったような、どうなんだろ。
ばあちゃんはみみじぃの為に甚平を沢山作っていた。細かい手作業だろうに、僕が見る限りでは上手に作られていた。緑や黒やグレーや様々な色や柄の甚平が出来上っていた。
「これ、どうかしら。良かったら着てみてね。」
みみじぃは小さく息を飲んだ。「大袈裟な!」と僕は思ったけど、彼は本当に感激している風だった。畳んであるその小さな布たちにそっと触れて、なかなか広げようとしない。
「みみじぃ、着てみたら?」
「えっ?」
「どうぞ、どうぞ。サイズが合ってるかも確かめたいし。」
ばあちゃんに促されて、ようやく一番上にある黒色に所々白い模様が入った粋な柄の甚平を手に取る。
「いやー、もったいないですなぁ、こんなに上等な物をー。」
みみじぃは恐縮している。小さい身体がさらに小さく見えるよ。
「いいから着てみなよ。」
「ふむ」と決心したように今着てるボロボロの甚平を脱いだ。ばあちゃんに背を向けて。(一応恥ずかしいのかな?この間は後ろ向かず脱いでたけど。)
それはピッタリだった。
ばあちゃんも僕も余りのピッタリさに「おおー」と同時に思わず、声を上げてしまった。
「いいよ、みみじぃ。似合う、似合う。」
「あらー良かったわー。サイズもいいと思いますけど、どこか気になる所はあります?」
みみじぃはばあちゃんに言われて、腕をぶんぶん回してみたり屈伸したりしてたけど、どこも支障はないようだった。
「ございません。完璧な着心地でございます。」
と、言って深々と頭を下げた。
僕は思わず噴き出した。
「こういったのも作ってみましたんですけど、お気に召すかしら?」
ぴらん、とばあちゃんが両方の人差し指と親指でつまんで見せてくれた。それは小さなアロハだった。
可愛い・・・。黄色地にハイビスカスやら南国の花があしらわれている。
みみじぃは若干たじろいている。
「こういうの、着た事ある?みみじぃ。」
「いやぁ、初めてじゃ。ハイカラだのう。」
「せっかくだから着てみなよ。」
「ぜひどうぞ。下はこの白い半ズボンで。」
完全に海行くバージョンじゃないかっ。これ着たら・・・。
みみじぃは真新しい甚平を脱ぎアロハと白パンを身に着けた。
「どうじゃろか・・・。」
くるっと僕らに向き直ったその姿は南国のビーチにたまに見かける昔ブイブイいわせてた不良じいさんだった。これで麦わら帽子とサングラスがあれば完璧だね、あとビーサン!
僕は再び噴き出した。
「なんじゃ、似合わんか。やっぱりな。ハイカラなものはわしには無理じゃ。」
「いやいや、似合い過ぎてて、びっくりしただけ。似合ってる。いいよ。コレも。ね、ばあちゃん。」
「よくお似合いですよ。良かったらどうぞ、着てください。」
「いやー、本当になんとお礼を言っていいか。こんな風に作っていただいたのは初めてです。ありがとうございました。」
みみじぃは再び深々とお辞儀をした。
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