第11話 初めて人生を考える
ジローさんの店を後にして、僕と南田君は別れた。
「じゃ、また学校で。」
と、南田君はいつもの調子で明るく片手を挙げ、僕もいつものように
「うん。」
と、そっけない感じで。
だけど、南田君と一緒におしゃれなランチを食べたからか彼に対する印象が今までとは少し違う気がした。彼にも彼なりに思うことがあって、少なからず心が揺れているのだろうと思ったし、僕の思っている以上に彼はいろんな事を見て考えている男だと今日知った。
僕はどんな大人になるのだろうか。
どんな仕事を選ぶのだろうか。
一生を掛けて何かやりたいことを見つけられるのだろうか。
自信がない・・・。
敷かれたレールに乗っかる、南田君のように。
それはそれで窮屈だよね、きっと。未来が決まっているなんて。
未来が決まっていない事が可能性だと思えるのは今だけだろうか?
30過ぎても未来が決まっていないとしたら、それはダメなことなんだろうか?
僕にはわからない。
家に帰ると誰もいなかった。あ、みみじぃとチロ以外・・・。
2階に上がるとみみじぃは起きていた。
「あ、ただいま。」
「よう、小僧。今日はどこ行っとった。」
「学校。登校日だったんだ。」
「学校ってのは同じ年の子供達が集う場所だろ。」
「そう。」
「可愛い子はいるのか?」
「ごめん、男子校なの。男ばっかり。」
「小僧、可哀想だな、そりゃ。」
「別になんの支障もないし。」
つまらないやりとりをみみじぃとした。
僕はシャワーを浴びてさっぱりすることにした。
身体がさっぱりして気分が良かった。冷蔵庫からコーラを取り出し、2階へ上がった。
「みみじぃ、お腹すいてない?」
自分だけ美味しいランチを食べてきたことを思い出し少し後ろめたかった。
「すいとる。」
「だよね。ちょっと待っててね。」
僕は再び1階へ戻り、冷蔵庫を漁ってみた。
冷やご飯があったので電子レンジで温めた。あとはみみじぃの好きなシャケフレーク、たくあん、海苔の佃煮と麦茶を持って2階へ戻った。
「どうぞ。」
「お。じゃあ、いただくかな。」
みみじぃがいつものようにムシャムシャと食べだした。いつ見てもワイルドな食べ方だと思う。野生の生き物みたいな食べ方だ。しかも食べるのが早い。
「ふぅー。うまかった。ご馳走さん。」
ペットボトルの蓋のコップで麦茶を飲み満足そうに言った。
「ねぇ、みみじぃ。好きな食べ物って何?」
「え?」
なんとなく冷蔵庫の余り物を食事として出し、それに文句も言わず完食するみみじぃだったので聞いてみた事がなかった。
「いや、何か食べたいものある?」
好物を聞かれて、みみじぃは少し考えていた。ないのか、もしかして・・・。
「うーん、なんだろう。そういえば、むかーし食べたアレはまた食べたいなぁ。」
「なに?」
「なんという食べ物なのかわからん。いつも出されたものをいただくだけじゃからな。」
「どんな食べ物?」
「うーん。白い、いや黄色・・・。うーん甘い感じじゃ。」
なんだそれ。
「ちょっとわかんないけど、思い出したら教えてね。他のものでもいいから。」
「おう。」
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