飛ばし読みしたい人のための「3」ダイジェスト

 李炎の乱から十年後、大陸歴二六〇年、春――

 帝国の南端の街、湖水でその地の領官・遥玲ようれいに保護されていた縹氷ひょうひ(9)は、遥玲の息子、黒鶯こくおう(9)と護衛の猩葉しょうよう(15)と共に、領官の親書を届けるという名目で北方へ旅立つ。


 同じころ、その北方では、被支配部族の天翔族が西畔に攻め込み、街は籠城戦に入っていた。西畔領官・璋翔しょうしょうの姪で、璋家の嫡子、鳳花ほうか(13)は、天翔族の若き族長・駛昂(24)の元を訪れ、間もなく、帝国最強の男と言われる皇騎兵軍元帥の劉飛(30)が救援に来るから、降伏したほうが良いと告げる。

 紫星王の守護を受けている駛昂は、これを一笑に付すが、実際のところ、橙星王と劉飛のコンビには歯が立たず呆気なく囚われて、璋翔の配下に加わることになる。


 都では、遥玲の配下の八卦師・周藍しゅうらんによって、宰相・崔遥が暗殺された。それを知った黒鶯は、縹氷を連れて劉飛の屋敷を訪れる。縹氷が自分と麗妃の子だと言われた劉飛は、その真偽を見極める為に、縹氷を屋敷に引き取ることにする。


 一方、河南の杜家で育てられている劉飛の実の息子、虎翔こしょう(10)は、自分の存在が周囲となじめないことに苛立ちを募らせ、荒んだ生活を送っていた。そんな虎翔の扱いに困った義父、河南領官・杜狩としゅに頼まれて、周藍は彼の教育係として河南にとどまることになった。


 宮廷では、姫貴妃・春明(24)の父親である姫英に宰相暗殺の容疑がかかり、春明は心を痛めていた。事態を打開するべく、雷将帝は自身が女性であるという秘密を守る為に宮廷から遠ざけていた劉飛に真実を明かし、揺らぎ始めた帝国を守る為に、彼に宰相になってくれるよう頼むのだった。



――大陸歴二六八年。

 劉飛が宰相になって八年。


 ついに、最後にして最凶の星王・赤星王が覚醒を始めた。その状況を把握すべく、皇帝の影武者である天祥(31)は、自らをおとりとして、河南へ行幸を行うことを決める。


 河南では、赤星王の覚醒が迫る中、未だ覚醒しない白虎=杜亮(18)に業を煮やした玄武の化身・黒鶯が、これを力ずくで叩き起こしに来る。覚醒した杜亮は、赤星王を宿す義弟・杜陽(=虎翔)(18)の力の大きさに戦慄する。



 雷将帝の行幸に付き従い、朱雀の化身である璋朱鳳(=鳳花)(21)と、蒼星王を宿す劉朋(=縹氷)(17)、その守者・猩葉しょうよう(23)たちも、河南へやって来た。


 やはりまだ覚醒していない劉朋に、黒鶯は今度は杜陽を焚き付け、赤星王の力によってこれを覚醒しようと企てる。だが、その行為が赤星王の怒りを買い、劉朋の覚醒には成功したものの、黒鶯はその代償として片腕を失ってしまった。



 赤星王の覚醒を確認した燎宛宮は、予言された帝国の滅亡から、皇帝とその家族を救う為に、帝国水軍元帥であり、海州領官を務める・梗之騎こうしきに協力を求める。

 やがて、帝国の南にある湊都で、反乱軍が挙兵した。その首謀者となったのは、暗殺された先の宰相・崔遥の息子、崔涼だった。


 天祥の要請により、梗之騎は水軍を率いて都に進軍し、燎宛宮に攻め入った。その混乱の最中、皇帝一家は手はず通りに都を脱出する。


 燎宛宮に残った劉飛は、皇帝を救う為に自軍の兵を無駄死にさせたけじめを付けるべく、梗之騎と死闘を始める。

 そこへ、周藍の策謀によって、杜陽が送り込まれてくる。二人の武将の闘気に煽られた杜陽は赤星王の力を解放してしまう。制御の利かない強大な力は、都全体をその紅炎によって一瞬にして焼き払った。


 その業火は三日三晩燃え続け、そこにあったものの痕跡をすべて消し去った。これにより、華煌という名の帝国はこの地上から姿を消した。


――大陸歴二百六十八年、初秋の事である。











 

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