第2話
僕たちはあまりに突然の事に理解が付いて行かず、ただただ茫然としていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! なんで俺たちなんだ? 俺たちなんかよりももっと国の偉い人間とかの所に行った方が良くないか?」
部長のその言葉を無視するかのようにそいつは質問を投げようとしてくる。
その時、轟音をたて戦闘機が飛んでくる。そして戦闘機は雲の中に消えて行くが、その次の瞬間空から炎の塊になって落ちてくる。
そして、その報復措置としてか、光の矢が一瞬眩しいほどの光を放ち街の方に向かって落ちていく。
数瞬後、何もなかったかのように立っていた三〇階建はあろう高さのビルは、その骨組さえも残さずに跡形もなく消えた。
そしてそれから更に数秒後僕たちの立つ校舎に爆音と衝撃波が襲い掛かる。
「きゃー!!」
「うおー!!」
僕も含め皆一様に衝撃波に驚きと驚愕の声を上げる。
《オ前達ハ我々ノ質問ニ答エナケレバイケナイ。ソウシナケレバ、マタアノ攻撃ヲ行ワナクテハイケナクナル。地球ノ運命ハオ前達ノ答エニカカッテイル》
また宇宙人は僕たちの頭の中に直接話しかけてくる。
そして、一機の戦闘機がやられたが、次々に上がってくる戦闘機は僕たちの街の上を爆音を立てながら旋回している。
最初の一機がやられ、その後の攻撃を見て待機命令がかかったようだ。
《デハ質問ダ……》
僕たちは固唾を飲んでその質問を静かに聞き入った。
《オ前達ハ何ダ?》
僕たちはその質問の意味が解らずに暫く考え込んだ。
そして、徐に部長が宇宙人に話しかける。
「質問って……それだけ?」
宇宙人は黙ったままだ。
「そんなの……」
加納がそう言ってその質問に答えようとするが、みんなでそれを止める。
「お、おい待て加納。お前そんな事簡単に答えるんじゃない!」
「そうだ、その一言で地球の未来が奪われるんだぞ!」
何とか加納を黙らせ、僕たちは考えた。
「な、なあ。いったい質問の意図はなんだと思う?」
部長の言葉に僕たちは考えた。
そして最初に吉村が口を開く。
「もしかして……これって大がかりなドッキリかも知れないぜ?どこかその辺りに……」
途中で部長が吉村の口を塞ぎ言葉を遮る。
「そんなわけあるか! 仮にそうだとして俺たちにそんなドッキリを仕掛けて何の得があるんだ?」
加納のその言葉に僕も同意する。
「そうよ、吉村君。そんな事しても何の意味もないわ」
みんなの非難を受けて吉村は、冗談だよ、冗談。と言って頭をポリポリとかく。
「お前こんな時に……」
まあまあ、僕はそう言って部長をなだめる。
「しかし……あの宇宙人は何で僕たちを選んだんだと思う?」
僕のその言葉にまたみんなが考え込む。
「たまたま……そう、たまたまだったんじゃないの?偶然にも天文台に居て空を見上げていた。それだけじゃないのかしら?」
小夜ちゃんがそうぽつりと答える。
「そうだよな、俺もそう思う。たまたま、俺達五人が屋上で空を見上げていた。それだけじゃないのか?」
部長もそう続け、僕以外のみんながそれに頷く。
しかし、僕にはただそれだけじゃないように思えた。
そう思えない理由は特にこれといってなかったが、なぜか僕は何かに引っ掛かった。
何でだ?普通に考えれば、僕たちみたいなまだ社会の仕組みもまだ理解していないような高校生を選ぶなんて考えれない。
もし僕が宇宙人の立場だとしたら、間違いなくこんな大人でも子供でもないような僕達みたいなのを選ぶだろうか?
いや、やっぱり選ばないだろう。だとしたら……何か意図があるはず。
そこで僕はふと我に返ってみんなの顔を見渡した。
みんな一様に答えを見つけるべく必死に考えている表情だ。
たとえばこれが政府の偉い人達だったらどうだろう?若しくは僕達なんかよりも、もっとしっかりと考えれる大人だったらどうだろう?
それかもっと子供だったら?
そこで僕はふと思いついた。逆に僕達しか見つけられない答えがあるんじゃないだろうか?
たとえばさっきも考えたが、大人でもなく子供でもない。
もしかしたらそこに何かのヒントがあるのかもしれない、だとしてもいったいなんだ?
「なあ、大人に無くて子供にも無い。僕たちくらいの高校生にしかない物って何だと思う?」
「はぁ? 今はそんなクイズやってる時じゃないだろ!」
部長が少し切れたような感じで僕を睨み付けるがそれを気にすることもなく僕は続ける。
「いや、もしかしたらこの質問の意図はそこにヒントがあるんじゃないかなって。なんかそんな気がしてならないんだ」
僕のその言葉にみんなまた考え込む。
そして小夜ちゃんが静かに話し出す。
「ねえ、もしかして・・・・・・もしかしてだけどね」
そこで一旦言葉を区切る小夜ちゃん。
みんなは小夜ちゃんの方を見ている。
「この人達、本当は地球を滅ぼしたく無いんじゃない?」
皆は小夜ちゃんの言葉に驚いた。
「え?だって、ビル一つ壊してるし明らかに攻撃的に思えるよ。なんでそんな風に思うの?」
部長のその言葉でまた小夜ちゃんは話し出す。
「でも、あれは先にこちらが仕掛けた事じゃない。それにもし本気で地球を滅ぼすつもりなら、こんな質問なんてしないでさっきみたいに何の警告も無しにいきなり攻撃を仕掛けた方が一気に終わらせて彼らにも被害が出ないし良いんじゃないかしら?」
確かに小夜ちゃんの言葉には一理ある。
そこで僕達はまたそのことについて考えた。
しかし、そこで宇宙人がまた話しかけてくる。
《オ前達、時間ハモウアマリ無イ。早ク答ヲ》
「も、もう少し待ってくれ。後一〇分、いや五分で良いから」
僕は慌てて宇宙人にそう話す。
宇宙人は黙ったままだ。
「もう時間がない! 早く答えを見つけないと」
僕達は残された時間が無いことに焦った。そして焦れば焦るほど答えは見つけられず混乱していくばかりだった。
「クソ! 考えれば考えるほど答えがわからない! 一体答えは何なんだ?」
僕はどうして良いかが解らなくなった。
しかし、それは僕だけじゃなくほかのみんなもそうだったみたいだ。
皆がいらだち始めたとき、小夜ちゃんがぽつりと呟いた。
「何でこんなことになったんだろね……私星を見てると宇宙と一つになれたような気がして孤独から解放される気がしてたんだよね……でも今は宇宙人に地球の運命を左右されて……」
そこで小夜ちゃんは泣き出してしまう。
皆それを黙って見ているしかできかった。
あの部長でさえも小夜ちゃんを慰める事なんて出来やしなかった。
「小夜ちゃん……もう泣くのはやめなよ。みんな泣きたい気持ちは一緒なんだから……」
何とか加納が小夜ちゃんにそう声を掛けた時、僕はさっきの小夜ちゃんの言葉を口にしふとある事を想いついた。
「宇宙と一つ……そうか……もしかして!」
僕の声に皆の視線が僕に集まる。
「なんだ、佐伯? もしかして答えが解ったのか?」
と、部長の言葉に僕は返事を返す。
「合ってるかどうかは解らない……でも、言ってみる価値はあるかもしれない」
「で、佐伯の答えってなんなんだ?」
部長にそう言われ、僕は皆を集めて静かに話す……
「解った。確かにそれが答えかもしれない」
部長は僕の答えに同意してくれた、そしてみんなも僕に賛成してくれているようだ。
「そうだな~、どうせ俺たちは何も思いつかなかったしな」
吉村はそう言うと、今度は加納が話し出す。
「佐伯の答えに賭けてみるか。小夜ちゃんもこれでいいかい?」
小夜ちゃんは笑顔で僕に話しかける。
「うん、佐伯君の答えで大丈夫だと思う」
皆の意見はまとまった。
僕は宇宙人に向き直り、そして僕は答えを口にする。
「僕たちは……」
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