第21話 神の子
「ランディングゾーンを確認。1番機から着陸する」
畑に植えられた野菜は激しい風圧で吹き飛ばされる。そこに巨体がゆっくりと降りて来た。それは海兵隊仕様のオスプレイである。着陸を終えた巨躯の後部ハッチが開き、中から完全武装したフォース・リーコンが降りて来る。
「目標を確保する。良いな。目標の確保が最優先だ。障害は排除しろ」
小隊長がプロペラ音の轟音に負けじと叫ぶ。
フォース・リーコン一個小隊を下ろしたオスプレイは作戦を終えて、彼らが戻って来るまで、ここで待機する事になる。この光景をブラウンは狙撃銃の照準鏡で見ていた。
「ちっ・・・海兵隊の到着か。奴等、本気だな」
ブラウンはすぐに二人に連絡を入れた。
「まずいわね。もう、海兵隊が到着したみた。場所からして、数分でここまで来るわよ」
恵那の表情に焦りが現れる。
「さっきまでの余裕は何処にいったのよ?進むしか無いでしょ?」
陽子は笑いながら言う。だが、それはどことなくぎこちない。
「無理しなくていいのよ。怖いなら怖いって言いなさい」
「あんたこそ」
そう言い合った二人は目を合わせて笑う。
「ここまで来たら、後に引けないしね」
「そういう事」
二人は駆け出した。
研究所内では隔壁が次々と降ろされ、外からの侵入を全て拒むようになっていた。その最も最深部にある研究室では実験が続けられていた。
「ちっ・・・バカが、この大事な時に騒がしい」
芹沢は神経を尖らせていた。彼の前に並ぶディスプレイには様々な数値が表示されている。その変化に彼は彼は細心の注意を払っている。そこに連絡が入る。外部との連絡は実験にあまり関わりのない秘書が行う。彼は真っ青な顔で芹沢に伝える。
「所長、研究所の正面で戦闘が始まったようです。それと、政府からアメリカからの応援が来ていると」
「アメリカの応援?あのバカ総理、アメリカに応援を要請したのか?まずいぞ。アメリカは我等の神を盗むつもりだ。女子高生よりもそいつらの方が危険だ。警備員に伝えろ。女子高生など適当にあしらえ、アメリカの方が敵だ」
「は、はい!」
研究所正面では圧倒的な火力で女子高生二人を制圧せんとする警備員の姿があった。恵那達は激しい弾幕で近付くどころか、茂みに隠れたまま、足元の悪い山肌の移動を余儀なくされていた。
「頭も出せない。奴等、時間稼ぎね」
相手の発砲はデタラメだった。ほとんど当たるとは思えないが、それ故に弾幕は激しく、とても、反撃が出来る雰囲気では無かった。
「恵那、どうする?海兵隊が来るよ」
「来るよって言われても・・・まずいわね」
このままだと挟み撃ちになる。どうにもならない状況だった。その時、爆発音が聞こえる。その後、銃声が一気に増える。幾度かの爆発音の後、銃声などは止んだ。茂みの影から恵那は様子を窺う。
「小隊長!耐爆シャッターです!」
「C4で周囲を吹き飛ばせ!何としてでも突破するんだ!周囲に女子高生が居るかも知れない。警戒を怠るなよ!」
彼らは警備員を皆殺しにして、正面入り口に降ろされた対爆シャッターを破壊しようとしていた。激しい爆発の後、正面入り口が開かれる。
「ここは5人で守れ、残りは一気に研究室を制圧する」
小隊長はその場に5人の兵士を残して、中へと突入した。その様子を見た恵那達は考える。
「奴等、応援に来ると見せかけて、実験を横取りするつもりね」
恵那の言葉に陽子は同意する。
「ブラウンにオスプレイの破壊を命じて、一人でも何とかなるでしょ」
「簡単に言うわね」
陽子が笑う。
「やって貰わないと、困るわ。私達は奴等が獲物を奪った瞬間、横取りするわ」
「なるほど・・・今の私達じゃ、研究室まで到達する事が出来なかったから、丁度イイってわけね」
「その通り」
恵那達は正面入口の5人を始末する算段を立てる。
連絡を受けたブラウンは笑った。オスプレイは二機。いつでも飛び立てるように機長と副機長は乗っている。幸いにして、オスプレイを警備する兵士は居ない。上空にもサポートする機体は見受けられない。オスプレイ自体が非武装だと考えれば、結構、楽な任務だった。
「問題は・・・ライフルと拳銃しかない事だな」
オスプレイの風防は防弾仕様、普通のライフル弾じゃ、貫通する事は難しい。エンジンなども一発、二発程度の弾丸じゃ、機能喪失までいくのは難しい。二機のオスプレイを一人で破壊するのは簡単じゃないというわけだ。
「さぁ、どうやって仕留めてやるかな。まるで白鯨に立ち向かう気持ちだぜ」
ブラウンは静かに茂みの中を移動する。田畑は実りの季節を終え、全てが刈られている。田舎は思ったよりも稲刈りが早い。すなわち、隠れる場所に乏しいとも言える。奴等は操縦席に鎮座しているとは言え、常に周囲に警戒を怠らない。不審な物が近付けば、即座に飛び上がるかも知れない。
「頼むぜ。良い子だから、俺が近くに行くまで待っていてくれよ」
ブラウンは狭い用水路に浸かりながらも身を屈ませて、とにかく近付く。
「相変わらずデケェな」
彼は泥だらけになって、オスプレイに50メートルまで近付いた。アイドリング状態ではあるが、プロペラが風を切る音が聞こえる。
「さて・・・どう、始末するか・・・」
ブラウンはここまで来て、まだ、どうやって破壊するかの考えを纏めていなかった。近付けば何とかなると思ったがさすがにそんなわけにはいかない。
「手榴弾でもあれば、簡単なんだが・・・」
ブラウンが周囲を見渡すと、ワイヤーが転がっている。
「なんで、ワイヤーが?」
ブラウンは不思議そうにワイヤーを手に取る。それは害獣によって、田畑が荒らされないように柵を作るためのワイヤーだった。本来なら、そこに電流が流れているはずだが、オスプレイの風圧で吹き飛ばされ、通電はしていなかった。
「何だか知らないが、支柱もしっかり立っているみたいだし・・・使わせて貰うか」
ブラウンは器用にワイヤーを集めて、余分な支柱を取り除いた。それを持って、彼はオスプレイの後方から近付く。幾ら警戒をしていても、巨躯には死角が生まれる。そこを利用して、彼は機体に近付いた。手にしたワイヤーを車輪の軸に絡める。それはたった一本。それで十分だった。そのまま、もう一機の機体の下へと潜り込み、同じように車輪の軸にワイヤーを絡める。
「バカめ。気付いていないでやんの」
ブラウンは相手が気付かなかった事に気を良くしながら、その場から離れる。そして、再び、50メートル先の用水路に隠れてから、ライフルを構えた。狙いは操縦席。例え50メートルでも、外す可能性はある。ゆっくりと、じっくりと狙う。そして、撃った。弾丸は操縦席の側面に命中。大きなひび割れを作った。幸いにも弾頭が貫通する事は無かったが、突然の銃撃にパイロットたちは慌てた。
「イーグル1、攻撃を受けた!上昇する」
「イーグル2、上昇する」
2機のオスプレイが緊急的に上昇を始める。だが、その足に絡み付いたワイヤーが二機の機体を地面と繋ぎとめようとする。ワイヤーは決して、太くは無い。その気になれば、引き千切る事が出来ただろう。だが、突然、想定外の方向にバランスを崩した機体を立て直すのは難しかった。二機のオスプレイはバランスを崩して、互いに寄っていくようにして空中衝突をした。プロペラで機体が裂かれ、そのまま、地面に落ちる。激しい衝突音が響き渡る。高度こそ無かったので大惨事では無かったが、機体は完全に大破してしまった。ブラウンはほくそ笑みながら、その場から去る。
研究所を襲撃した海兵隊員は降ろされた隔壁を破壊しながら、重要な区画へと迫った。その途中で遭遇する研究所職員は無抵抗であっても、次々と殺した。彼らはとにかく、証拠を隠滅しながら、先へ進む事を厳命されていたからだ。
「撤収間際にこの施設は爆破するから、しっかりと爆薬を設置しておけよ。何一つ、残してはならないからな」
小隊長が叫ぶ。抵抗が無いとは言え、爆薬を仕掛けながらの突入はかなり大変な作業だ。しかも、降ろされた隔壁も爆破して、突破せねばならない。
恵那と陽子は正面入口が見える茂みに潜んでいた。そこからじっくりと海兵隊員の動きを探っている。正面入口に配置された海兵隊員は5人。彼等は精鋭らしく、一か所には固まらない。適度に離れた位置に立ち、常に互いがカバーする形を取っている。
「撃ったら、即座に反撃されるわね」
「そうね。さすが・・・隙が無い」
恵那と陽子はその無駄のない動きに感嘆としつつも、手にした短機関銃の消音器を外す。
「5人・・・。最初に確実に2人は殺す。後は3人・・・やれると思う?」
恵那の問いに陽子はニヤリと笑う。
「さぁ・・・だけど、殺した数じゃ・・・うちらも相手に引けを取らないと思うけど?」
「そうね・・・あんたはどうか知らないけど・・・私はあんなヒヨコには負けないわよ。あんな贅沢な装備で戦争をやっている奴等にこんな原始的な戦いで、負ける気はしないわ」
恵那の目は笑っているようにも怒っているようにも見えた。ただ、陽子はその得体の知れない感じに、少し、怯えた。
「やるわよ」
決めてからの行動の早さは恵那の特徴だ。決して臆さない。チマチマといつまでも考えない。決めたら即行動。それが彼女だ。最初に狙いを定めた兵士に向けて、恵那と陽子が射撃を始める。弾丸は彼等の身体を貫いていく。P90の5.7x28mm弾は拳銃弾のようなサイズではあるが、弾頭はライフル弾の形状であり、極めて初速の速い弾丸だ。この弾丸であれば、ボディアーマーなど防弾性のある装備でも貫通させる事が可能であった。予定通り、一撃で二人が抵抗する事なく、その場に倒れる。他の三人は即座に恵那達に反撃を始める。
彼等の手にしたM4カービン自動小銃が唸る。恵那は動きながら、射撃を続ける。恵那の機敏な動きに3人の動きが追う形になる。そこを陽子が狙い撃った。弾丸が次々と海兵隊員を撃ち抜く。完璧な連携プレーだった。恵那は息を切らせながら倒れた海兵隊員達を見る。
「死ぬかと思った」
恵那は正直な感想を呟く。
「私もだよ」
陽子も息を切らせて言う。そして、互いに顔を合わせて、笑った。
フォース・リーコンは最後の隔壁を破壊した。
「小隊長、手持ちの爆薬はこれで最後です。あとは基地破壊用を回さないと」
部下がそう告げる。だが、小隊長はそれを手で止める。
「問題無い。目的地に到着だ」
彼等が見た先は厳重に遮蔽されている研究棟だった。
「中に目標がある。慎重にイケよ。目標とセリザワは殺すな。他は処分だ」
海兵隊員達が研究棟へと突入した。荒くれ者たちだが、どこに警備兵が潜んでいるか解らないので、慎重に行動をしている。その後を小隊長が進もうとする。
「小隊長、ヘリがやられました。2機ともです」
「なんだと?くそっ、応援を呼べ。地上の奴等に電話で応援を呼ばせれば良い」
「それが、ダン軍曹と連絡がつきません」
「なに?・・・女子高生か?」
「さぁ」
小隊長は怒りに我を忘れそうになる。だが、すぐに冷静になって、答える。
「分かった。まずはこっちを片付ける。帰りにガキを始末して、のんびりと応援を待つとしよう。それだけの事だ」
そして、彼らは研究棟のもっとも中枢部分にある研究室の扉を開いた。そこには数人の研究員と芹沢、そして何かの機械に入っている美緒が居た。研究員達は両手を挙げている。小隊長が左手を振り下ろすと、部下達は一斉に射撃をして、研究員達を皆殺しにした。その光景を見ても、芹沢は眉一つ動かさない。
「ミスターセリザワ、ビビってるのか?安心しろ。あんたは殺さない。その子と一緒に来て貰う」
小隊長は拳銃をホルスターから抜いて、芹沢にそう告げる。
「ははは。一緒に来て貰うだ?お前は何様だ?」
芹沢は突如、大笑いを始めた。まるで狂ったように笑う様は、その場に居る海兵隊員達に妙な恐怖心を与える。
「おい、冗談はやめろ。この状況で気でも狂ったか?大人しく来い。そうすれば、死なずに済む。それなりに好待遇でもてなされるぞ?」
「はっ・・・下衆な者共め。今、ここに神が降りられたのだ。全知全能の神が。その力の前ではお前等など、猿と同じだ。解ったなら去れ、さもなければ、天誅を受けるぞ」
芹沢は高らかにそう告げた。小隊長も含めて、誰もが、完全に気が狂ったと思った。
「鎮静剤を用意しろ。とっとと運び出すぞ」
疲れたように小隊長がそう告げた時、機械の蓋が開いた。中に居た裸の少女はゆっくりと目を覚ます。
「美少女のストリップが見られるとはね。ここまで来たかいがあった」
海兵隊達は緊張の中でもニヤついた。
「私は・・・」
そう呟く少女。
「お前は神だ。脳の全ての機能を解放した全能なる者。さぁ、目の前に立つ、愚かな者達に死を与えよ」
芹沢の言葉に少女は目の前の海兵隊員を見る。
「セリザワ・・・止めさせろ。お前等を殺すわけにはいかない」
小隊長がそう告げながらも拳銃の銃口を芹沢に向ける。その瞬間だった。小隊長の胸に激しい衝撃が走る。彼の身体は一瞬にして吹き飛ぶ。海兵隊員達は目の前で起きている事に対応が出来ない。とても人間とは思えない速度で、少女が走り、次々ととんでも無い力で海兵隊員を倒している。
「ははは。どうだ。今、その子は人間の身体に備わる全てのリミッターを解除している。脳は全ての情報を吸収し、解析、最も効果的で効率的な殺戮方法を選び出し、身体はその筋肉の限りを使い、動いている。この為に若い肉体が必要だったのだよ。完璧だ。私が生み出した神の子だ」
芹沢が笑っている間に美緒は最後の一人の首を手刀で切断した。その真っ白な身体は赤い血で汚れた。
「よし・・・この手のくだらない事にお前の能力を使ったのは不本意だったが、仕方があるまい。本来はその能力を生かして、この世界を統治する事が目的なのだからな。その知能は如何なるスーパーコンピューターよりも遥かに優れ、全世界のネットワークさえ支配が出来る。それこそ、私が描いた神の姿なのだ。さぁ・・・行くぞ。このくだらない世界に終焉を与え、新しい世界を作り出すのだ」
芹沢は美緒を連れて、研究棟を出ようとした時、一発の銃声が鳴り響く。だが、芹沢に向けて放たれた弾丸を美緒が指で摘まんだ。
「まだ、生き残りが居るのか?」
芹沢は怒りに震える。
「マジかよ。弾を指で止めたよ」
陽子が驚いた顔で美緒を見ている。その隣には発砲をした恵那が居る。
「さぁ、これならどう?」
恵那は躊躇なく、芹沢に向けてフルオート射撃をする。空薬莢がバラバラと廊下に落ちて、カランカランと音を立てていく。だが、その激しい銃撃を美緒は澄ました顔で次々と弾を摘まんでは下に落としていく。
「化け物か・・・すげぇな・・・神様って」
陽子は益々驚く。
「ははは。当然だ。神が銃如きに恐れるはずがないだろう。音速で飛来する銃弾と言えども、通常の人間の数千倍の思考で弾道を読み取り、最適の角度で摘まめば、自ずと運動エネルギーを相殺する事が出来る。後はそれを繰り返すだけの事」
芹沢は勝ち誇ったように笑う。
「それ、神って言うより化け物だから・・・」
恵那は呆れたように呟く。
「それで・・・どうするの?ちょっと勝ち目がない気がするけど」
「銃がダメなら・・・これでしょ?」
恵那は銃を捨て、ナイフを抜いた。それは軍用ナイフと違い、ラブレスと呼ばれるメーカーのフィッシングナイフだ。小ぶりな刃だが、それは魚を捌くために鋭利に作られている。
「おいおい、冗談は止せよ。銃がダメならナイフって・・・一瞬でお前の身体に穴が開くぞ?」
芹沢は大笑いをしている。その声が陽子には酷く癇に障るようだ。陽子が芹沢に向けて発砲する。だが、それも全て、美緒が止める。
「無駄だ。無駄。そんな豆鉄砲が効くかよ」
芹沢が余裕ぶっている時に恵那が動く。素早く、滑らかに。美緒は恵那の動きを見て、全てを演算する。どのように攻撃されるかをすでに予測して、それに合わせて反撃をする。確実に一撃で殺せる。そのつもりで繰り出した右手だった。だが、恵那は繰り出すはずのナイフを止めた。美緒のパンチが恵那に伸びる。その腕を掴み、恵那ごと、倒れ込んだ。
「悪いけど、人間、そんな簡単に予測通りに動くわけじゃないのよ」
美緒を抱き絞めるように床に転がる恵那。
「バカが、そのまま、絞め殺っぐああ」
陽子が撃った銃弾が芹沢の顔面を吹き飛ばす。
「バカはおめぇだ。守られていた癖にっ!無防備なんだよ」
陽子は照準を倒れている美緒に向ける。だが、恵那がしっかりと抱き絞めているので上手く狙えない。
「恵那、離れろ。撃てない」
「大丈夫よ。美緒、聞いている?美緒!私よ。恵那よ」
美緒の腕に力が籠められる。尋常じゃない力に体中の骨が軋む気がする恵那だったが、それでも呼び掛けをする。
「美緒!聞いて!あなたを助けに来たの!わけのわかんない実験をされたようだけど、それであんた、本当に神になったつもりなの?どうせ、人工知能だか、何だかで上書きされただけでしょ?良いから、本当のあんたが出てきなさい。私がボディガードしてあげるから、大丈夫だから!」
ギリギリと身体が締め上げられる。恵那は意識が朦朧としそうだった。
「恵那、ヤバいって、撃つよ!撃つよ!」
陽子がかなり動揺している。それぐらいに危険な状態だった。
「ダメ!撃っちゃダメ!この子はまだ、戻って来れるから」
恵那は必死に美緒の身体を抱き絞めた。陽子はもう、本当に引金を引きそうになった時。
「え・・・な・・・」
美緒はそう口にした瞬間、パタリと力を失って恵那に倒れ込んだ。
「し、死んだの?」
陽子はその姿に死を感じた。恵那は慌てて、手首を取る。
「脈、呼吸はあるわ。生きてるわよ。このまま、美緒を連れて出るわ」
「えぇ・・・おや?」
陽子は何かに気付きながら、美緒を背負う恵那をカバーしつつ、研究棟から脱出した。
建物から出ると、そこにはブラウンの姿があった。
「マジで連れて来たのか?凄いな」
彼は笑いながら二人を迎える。
「それより、これからどうするの?」
「まずは車よ。この手の問題はそれなりの解決方法があるわ。そして、その鍵を手に入れたわけだし」
恵那は余裕だった。
「なるほど・・・じゃあ、この方が良いわよね?」
陽子は手にした起爆装置のレバーを回す。研究施設の地下が爆発して、建物が沈み込む。
「おいおい、いきなり爆発されせるなよ。ビビッて腰が抜けたぜ」
あまりの事に尻餅をつくブラウンが言う。それを見た二人は大笑いをした。
意識の戻らない美緒を抱えて、ブラウン達が隠したボロ車に乗り、三人は東京へと戻った。警察無線を傍受するが、三人に対する包囲網などは何処にも無かった。まるで、何事も無かったかのように彼女達の事を警察は無視した。
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