11恋の恐ろしい門

ジリジリジリ…カチッ

「ん〜っ!今日は暖かいな」

目覚まし音と共に、翼斗が目を覚ました。

外は明るく、やっと春がきたかのような

暖かさだった。翼斗はササッと着替えを

済ませ、月星歌を起こしに行った。

コンッコンッ

「月星歌ちゃーんっ朝だよー起きてーっ!」

「………」

返事はなかった。まだ寝ているのかも

しれない。朝は弱いタイプなのだろうか。

翼斗は仕方なく部屋に入った。

「月星歌ちゃん、勝手に入るからね…」

ガチャ

カーテンを閉め忘れたのだろうか。光が

ベットに差し込んでいるのにも関わらず

月星歌は熟睡していた。だが、早く起こさな

ければ、遅刻になりかねない。

「月星歌ちゃん!起きて!遅刻するよ!?」

揺さぶっても起きない。大声で呼んでも

起きなかった。

「ん…はふ…」

「!?///」

月星歌は翼斗の手をギューッと掴んでいた。

それに翼斗は少し顔を赤らめた。

「んん…ふぁ?お、はよう…翼斗ひゃん…」

「い、翼斗って…///て、てか、起きろー!!」

翼斗は月星歌を思いっきり揺さぶり、大声を

だした。さすがにうるさかったのか、

月星歌は薄く目を開けてゆっくりと起きた。

「あ…ご、ごめんなひゃい!!暁くん!!」

「///と、ともかく学校!!」

「か、学校…って、私『女子』ですよ…?」

翼斗の学校は男子校だ。ましてや大学。

まぁまぁ頭のいい大学に、女子。それは

なかなかの問題だった。けれど、それも

すぐ問題が解決するわけで…………


「うん。わかった、いいだろう。」

校長はすぐ許しを得た。

なぜなら月星歌は頭がいい。ダメなのは

少し普通の人より体力がなく、弱い体。

それだけだった。それでも女子なのに…そんな

簡単に許しを得た理由。それは……

「『家庭科が得意』なのはとても

ありがたい!!男子はみんな苦手だからな!

手取り足取り教えてあげてくれないか……?」

「あ、は、はい…」

ガラガラ…ガシャン

2人は顔を見合わせ、絆生、巳紅采と合流

した。そして話をした。

「す、すっげ〜。まさか一発OKとか。」

「まぁこの男子校。大学でも、家庭科は

男子の大半…それ以上の人ができませんから

ねー…」

それでも巳紅采は少し驚きの顔を見せていた。

絆生は月星歌の体を揺さぶりながら

「すっげーな!月星歌!」っと何回も何回も

叫んでいた。それに月星歌は苦笑いを見せて

いた。翼斗もそれを見て苦笑いだ。

「そーいえば何組なんだ?てか、何歳??」

「あ、言っていませんでしたね。私、17歳

です。^^;」

『えええええぇぇぇぇえ!?』

「まぁまぁ…とりあえず、担任のせんせーに

言いましょうか。」

『おーっ!(笑)』

笑いながら、3人は叫んでいた。




「よし。いいだろう。『翔優』君。(かやさ)」

「ありがとうございます。」

もうひとりの転校生が男子校に来た。

美少年の男の子。けれどところなく

かっこいい。

「あの。」

「ん?なんだ?」

「桜色の長い髪をした、背の小さい女の子の

クラスにしてください。」

それは校長先生がとても驚く言葉だった。

「それは……」

ドンッ!!!

とてつもない音が鳴り響いた。

その音は太く、低い、木の机が折れるかの

ような音。そして、翔優という男は、とても

怖い声で校長先生にこう告げた。

「お前の命、なくしてやろーか?ニコッ」

暗い、けれどいい笑顔。怖い時の笑顔だ。

「…わ、わかった……」

渋々受け入れた校長。けれど、それが……


男子校の恋を争う悲劇になることも知らずに。



11恋の恐ろしい門 End

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る