★せっしょん055 まさか!《 爆縮状態 》が解ける、って事!?

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


★せっしょん055 まさか!《 爆縮状態 》が解ける、って事!?



Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw


☆session 055 No way! To be released "the implosion state" !?




✔ 緊張するしっぽ



 「どうしたの、みりゅちゃん?」

 「いや、あの」

 目の前、5メートルほどの真正面。

 “あの女性_その人”がいる。

 彼女は微笑んでいた。

 みりゅうすに向かって歩んでくる。


 たつきには間違いなく見えていないようだ!

 “その人”の姿を指差している学友も、いないことはない…

 

 史学部の美少女は、目前の“その人”は現実の切れ目の向こうにいる存在、と確信していた。

 その優しそうな笑顔に感じる懐かしさは、みりゅうすを引き止めずにはいられなかった。


 この宇宙における無限大の回数分だけ途切れる事なく継続している量子時空の演算。

 基底現実界におけるふとした演算の気まぐれ。

 それは無限の彼方の一瞬だ。

 あるいは、手にとる事の出来る永遠?

 そんな事は、太古の昔からあったことだ。

 ただ、感性のすり切れた知的有機体の勝手な都合で記録が残されないようになるだけの話である。


 「ねぇ、だいじょぶ?」

 彼女に声をかける学友。

 「頭が痛い、イヤ、なんか吐きそう…」

 史学部の白い競泳水着の彼女は、こみ上げてくるものを必死に押さえていた。

 目の前、約数メートルに“その人”が接近した。


 「語り」を勝手に中座した少女は、注目すべき標的を観察すべく足早に物陰に移動した。

 白いスーパーハイレグの美少女は、みりゅうすの表情を見ていた。

 彼女のしっぽが緊張してる。


 くだんの白水着のぽっちゃり系美少女の顔は、はっきりと硬直しているのが見てとれた。


 スーパーハイレグの美少女の手には、生体センサーモジュールが握られている。

 それは駆動状態にあった。

 彼女は、上着を羽織るとそそくさと観葉植物の影に走り込み、葉っぱの隠れて水着を脱ぎ始めた。

 そして声を潜めて機械的に呟いた。


 「Topology Conversion 1st Covering on !(とぽろじーこんばーじょんふぁーすとかゔぁりんぐおん:位相転換第一種着装形態)」

 一瞬の発光!

 彼女の細身の裸身は真っ黒い機械的なボディスーツに覆われた。

 そのナノマシンスーツは、超絶的なネットワーク演算能力をもつ兵器。

 着装状態→『兵器としての管制制御能力を起動する』

 その変身の瞬間は誰にも見られてはいない…はず!

 水着を脱いだのは、活性化したナノマシン組織の皮膚結合着装で、水着が破けて台無しになるからである。



✔ 急行



 『やな予感すると思ったら、案の定みりゅうすったら…』


 彼女が操る飛行中のそのバイク。

 大型ツアラー仕様で、水平対向型液体燃料容積比較値で2000cc相当のパワー変換リソースは、2輪型の交通機関では超絶的な推力重量比を維持してるはずだ。

 ライダーが無重力仕様のスーツを着用すれば衛星軌道まで上昇可能。

 そのライダーは?

 なんと素足にライダーブーツ直履き、上半身はヘルメットに黒いワンピースの水着の上に黒いジャケットを羽織ったまま!

 そんな格好で、全速で空中巡航したら、めちゃくちゃ寒いだろーに!

 でも、これから行く場所が水着パーティー、って聞いたからには…


 彼女は、朱・リア・らすみぬしゃいおん。


 みりゅうすの仲良し学友4人組の一人。

 宗教学部の癒し系美人修行僧。

 彼女が、なんでこんな格好でバイクに乗ってるか、などという詮索は後回し。

 “親友がヤバいという直感”に従い急行する真っ最中だった。


 『直接会場へ降りよう、待っててね、みりゅうす!』

 



✔ 手を受け止める




 「ねぇ、みりゅうす、具合悪いみたい」

 プロトアクラ人とロジャオ・エンドラ人の女子学生が、蒼くなってみりゅうすを気遣う。

 史学部の姫は、こみ上げてくるものを押さえきれなかった!


 けぷっ


 「あ、大変!」 

 吐いたものが、白い水着をつたって流れる…

 すぐ脇にいたプロトアクラ人の女子学生が、みりゅうすの異変にめざとく気付いた。

 おかっぱの髪から伸びる長い耳がわなわな震えている。

 白いワンピースにパレオで決めた彼女は史学部のゼミの同級生だった。

 気の置ける仲間を気遣って声をかける。

 「ねぇ!みりゅうす!、しっかりして!」

 史学部の美しい姫は、脂汗をこらえながら口を押さえている。

 プロトアクラ人の女子学生は、みりゅうすしか見えなかった。

 “その人”とみりゅうす、そして多数の学友たち、交錯する視線は奇妙に抑制された緊張感を醸していた。


 “その人”は微笑んでいた。

 その微笑み。

 会いたかった旧知の朋(とも)に会えたような喜び?

 長い耳に、凛々しく線の通った顔立ち。

 胸に抱いた赤ん坊も、みりゅうすの方を見ていた。

 赤ん坊は、薄汚れたジャケットを防寒着のように手縫いで成形したものを着せてある。

 その親子の出で立ちは、不幸の中で切り開いた充足感を表象していた。

 この場にいるイベントで盛り上がる学生の存在とは、信じ難い程の隔絶の彼方にあって尚、真実であり続けたものだ。

 “その人”は右手を差し出してきた。

 みりゅうすも右手を差し出して“その人”の手のひらを受け止めた。

 何かがいきなり頭の中に浮かび上がる…


『『嶺牟倫逢(れむりあ)が文字を読めるようになり、私の思いを語り伝えてくれる事を希望することが、私の至上の喜びだ… 』


 何?…いったいこの言葉は?…


 「ごめん、ごめんね。」

 みりゅうすは、膝まずいてこらえていたが、押さえきれなかった。

 こらえていたものは、お腹から逆流してくるものだけではなかった。

 け、げぷっ、___反射的に吐いたものが、続いて石畳にぶちまけられる。

 彼女は自分のおなかの中から逆流してきた暖かいものが口から溢れ出るのを押さえられなかった。

 そして、パニックになっている自分の身体の片隅で、美しさに気をつける当たり前の女子の身だしなみが残念な状態になるのを心底悔やんでいた…

 “ 今日のために気合いを入れてメークしてきたのが台無しだ… ”

 “その人”は微笑んでいた。

 わずかに申し訳なさそうな感じに“その人”の眉間にしわが寄った、ようだ…

 ほとんどのまわりの観衆は“その人”に気付いていなかった。




✔ まさか!_《 爆縮状態 》が解ける、って事!?




 「深空間探査機構外周警護局 006 課、暗在系探査小委員会嘱託、らいほりおん・シャカスタス=ミーから定時レポート、第 06…」

 彼女の左手首に、小さなレビテーションモニターが展開する。

 センサーモジュールから数本の環境探針ケーブルが自動的に伸びて、情報入力を開始する。

 彼女は口を開いた。


 「《主座標存在》が実体化している!」


 彼女は、観葉植物の枝の影から“親しい友人”を覗いて、モニターに向かって報告を続けた。


 《主座標存在》それは、多次元宇宙構造の超時間軸の果てにあるこの世ならぬもの。


 通常の基底現実空間上の量子連環効果によって発現する物質とは、根本的にその有り様を異にするものだ。 

 それらが無限に関連する通常基底現実空間側への影響を計測し続けて、銀河の秩序の理解と安寧へ尽力するのも惑星監察官評議会の使命だった。

 その瞬間。

 30m くらい先のテーブルの所にいるぽっちゃり系美少女が、たまらず吐いてしまったその時_

 その時、モニターの未知のデータの羅列が、大きな変動を示した。


 一体…何…これは!


 …美少女のゲロで、それも時空歪みの終局的な変動が感知される、ってどういう事 !?


 この数字の変動…そんな半端なもんじゃないわよ!

 いくつかのモニタリングは、局所的には極微重力陥穽(ブラックホール)の生成を許すほどの数値の変化_『針が振り切って警告状態(赤)』になっている状態。

 マイクロメートル単位の重量陥穽でもこの丘陵地帯全てが吹き飛ぶ_いや生成軌道によっては惑星全土に破局的な影響を及ぼす場合もあるかもしれない。




✔ 時空の縁(えにし)が予期し得ない虚無に覆われること




 「憂慮すべき事態を想定して、解析を進行されたし。」


 彼女は伝えるべき言葉を終えた。

 哨戒艦にも伝わっているはずだ。

 脂汗が頬をつたっていた。

 不死の彼女が感じる死の恐怖は普通の有機体とは違う。

 それは、存在する空間そのものが破局を迎えて、その構成量子情報が完璧にリセットされてしまうことだ。

 時空の縁(えにし)が、一寸たりとも予期し得ない虚無に覆われることだ。


 それが、ここにあった。気を失いそうになるほどの恐怖だ_


 身体の中が干からびてしまうかと思える程の恐怖だ。

 タオルで拭えばびっしょりになるほどだ…

 見守るしかない。

 これ以外に出来る事は完全に無い!


 彼女は、真っ黒い機械的なボディスーツの着装を解いた。

 ここに居る連中には、誰にも理解され得ない超重苦しい気分のまま…彼女は一糸まとわぬ状態になる。

 観葉植物の影にあるとはいえ…全く無防備だ。

 すました彼女のしっぽですら、恐怖のあまり硬直状態で、棒のようになっている。

 こんな笑えない緊張状態にある、というのに…またそそくさと水着に足を通す。

 「やだ、人来た、もぉ…」

 カップルだ。

 「あれ、誰?」

 「あ、どぉも。」

 彼女は胸を手で隠したまま、無理して笑顔をふりまいた。

 慌ててて、着れなかったのだ。

 一瞬で身体を覆ったテクノロジーに比較すると、それはまるでまぬけな動きだった。

 「何してるんすか?」

 「ちょっと酔っちゃったの」

 ごまかした。

 しっぽはイライラと横に振れている。

 胸を隠したまま、視線はみりゅうすに固定されたままだ。

 「ふーん、向こうでアイスクリーム配ってますよ」

 「ありがと…」





✔ “その人”は、もうどこにもいなかった…




 「きゃ~~~何あのバイク!」

エアバイクが、パニックになりかけている庭に直接降下してきた。

 ライダーは女性のプロトアクラ人。

 ハンドリングは完璧だ。 

 スキッド展開、停止!

 ホイールが地上走行モードになり、推進機の音が止むより早く、女のライダーはヘルメットを脱ぎ捨てると、みりゅうすの元へ駆け出した。

 走りながら、破邪の印契(いんげい)を切っている。

 その奥義深奥にあるものを引き出す秘匿されるべき秘技は、清らかな力の流れを、彼女の両手に沿って引き出していた。 


 光の粉が手に向かって圧縮!

 目前、時空の歪が破局的レベルで察知される事態。


 怒鳴った!

 「みりゅちゃん!、大丈夫?…」

 「うん」

 「な、何、その人」

 「あ…朱(しゅ)・リアちゃん…わ、わからないわ…」


 プロトアクラ人の美人尼僧は、“その人”の、この世ならざる気配に総毛立っていた。

 大切な友人の状況を高速で理解せんと努めていた。


 癒やし系美人尼僧は、ガクガク震える史学部のクイーンを、吐いたもので汚れるのも気にせずに抱きしめた。

 彼女は、この世の向こうにある者が実体化した筆舌に尽くし難い恐怖に堪えていた。

 彼女の長い耳がぶるぶる震えていた。




✔ 女神の苦悶




 「きゃー、みりゅうすが大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変…」

 「ちょっと、大変だ、寒いんじゃないか!?身体暖めようぜ」

 「ねぇ、タオル!」

 「ちょっと、なんか暖かいスープ、無い!?」


 みりゅうすは、泣いていた。

 へたり込むように座り込んで、目の前を見つめていた。


 「ごめん、ごめんねぇ」

 笑顔が混在した複雑な顔だ。

 童顔の彼女は、まさに苦悶する女神のようだ。

 至高なものをかいま見る表情に辿り着いたまま、彼女の努力は、その表情の維持についやされていた。

 彼女の取り巻きたちの友情溢れる混乱状態。

 彼女の体調が最悪のコンディションにある、という一点のみにおいて、彼女の意志など関係なく、たちまちのうちにヒートアップしていった。

 「ちょっと、来て、来て来て、」

 「誰か、担架ある?」

 「いや、だいじょうぶ…」

 一度は立ち上がったものの、上半身を支えられなくなったのか、片手で突っ張っている。

 「だめ、無理しちゃ…」

 「おーい、身体かせ、みりゅちゃんを抱きあげるぞ。」

 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

 「気にしなくていいんだよ。」

 

 「うん、ありがと、ありがとうね…」


 史学部の美少女の口から出た言葉。

 それは、まわりの彼女を気遣う友人たちに向けられたものではなかったようだ…


 “その人”は、もうどこにもいなかった…



 盗撮小僧のベースキャンプ

 「姫はどうした!」

 「おい、大変だぜ、吐いちゃったよ。」

 「だめだ、あんな感じじゃ、家へ帰るんじゃないか?」

 「うん、サービスドロイドが介抱してる。」

 「あいつ…」

 交換留学生は、彼女を見据えていた。

 彼は手に、単なる盗撮萌えオタクには似つかわしくないデバイスを持っていた。

 それは、何かに反応して起動状態だったようだ…




✔ 間



 「後はうまくやるから休みな、ね、アパート帰る?」

 「うん」

 あたしは、ジャケットをかけてもらう。

 だめだ…おなかに全く力が入らない…

 小姓が、ついー、っとあたし達の所へ来てくれた。

 「姐さん、アルコール入ってる?」

 「ん、うん、あふ…でも、それだけじゃない…あ、ふぅ、眠い…」

 「それだけじゃない?」

 「ううん、よくわかんない、吐いちゃったの、気持ち悪くて…」

 「え~~~~~~~~~~~!」親愛なる機械の相棒の悲鳴が瞬時に続く。

 驚愕と心配と不安が強烈に混ぜ合わさった叫びに相当するマシン語のサインが浮かぶ。

 それは極めて自然な知的有機体のような叫び声だ。

 本人を見ないで叫び声だけ聞かせれば、絶対生身の生き物の声だと思うだろう。

 「顔色、半端なく悪いぞ、」

 たつきくんが再度確認するように呟やく。

 「食べ過ぎ飲み過ぎだと思う…」

 あたしは力なく言い訳した。

 バスタオルで、あたしの脂汗をぬぐってくれる。

 汚れたおなかも拭ってくれる。

 何といったらいいかまるでわからない…

 小姓はちゃんとあたしをささえてくれている。

 あたしは機械の相棒の事を心強く思う。

 「じゃ、自動運転モード行くよ、」

 「うん」

 「シートベルト出すけど、ヘルメット被って、ちゃんと座ってね。」

 「うん」

  あたしは座った。

 ヘルメットを被った。

 ベルト(といっても自在腕の五本目と六本目)が出て、パチンとあたしのお腹の上でロックした。

 りゃすみん先生が、ヘルメットのロックとベルトのロックを確認してくれた。

 「冷えるから、これ巻いてな。」

 あたしは彼氏に、バイクにまたがったままの格好で、バスタオルで“す巻”にされた。

 「今日はゆっくり休め、身体、本調子じゃないんだろ。」

 「そうします。」

 あ、先生…………いつもジョギングコース走る時のまんまの格好なんだ。枕みたいに大きな胸に腹筋割れてて、エロくてかっこいいんだよな~~~…

 「ごめんな、いままで向こうのバイキングテーブルにいてさ。」

 あぁ、いっぱい食べるから、先生…

 「いいんですよ、楽しんでもらえて、怪談の語り、後、お願いしますね。」

 「あぁ、大丈夫だよ。」

 競泳水着の汚れた部分でベルトのバックル擦っちゃうか、ちょっと心配だった。

 「小姓、頼むぜ。」

 「了解なんだな。」

 機械の相棒は、ハンドルを握る気力の無いあたしを乗せたまま、ちょっと間抜けな音をして浮かび上がった。

 あとは一直線にアパート!…




 スーパーハイレグの美少女は、料理の残ったテーブルに戻って、全ての気力を使い果たして突っ伏していた…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る