★せっしょん051 春の新入生歓迎合コン

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


★せっしょん051 春の新入生歓迎合コン


Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw


☆session 051 Spring new student welcome joint party




✔ 我らが姫は美しいぞ




 あたしの今日のいでたちは、金ラメストライプ入りまっ白い競泳水着。

 おしりなんかぴちぴちだよ、もう~着るの大変。

 しっぽは白のリボン。

 おなかの脂肪が作ってくれるしわなんか、ぷよぷよぷよ〜ん、て、もう笑って見逃すしかないよね。

 あたしは史学部クイーン。

 笑顔はみんなのためにあるのさ。

 パレオとおしゃれバイザーとミニポーチに思考支援パッドで決めてみる。

 今日もめがねはしてます。

 「きゃー、みりゅちゃん!」

 「はぁい!」

 少し離れたテーブルから声がかかった。

 会場は、もう9割がた入ったかな。

 「その白い水着って、スクール水着?」

 「いやいや競泳水着!」

 「うぁぁ…マニア受け!」

 ちょっとね、この外野の溜め息が快感だったりする。

 ガタイのいいやつ、メタボ系のやつ、しっぽのあるやつ無いやつ、いろいろだ。

 でも素直に盛り上がってる。

 こんな雰囲気、あたしは大好き。

 あたしは、ヘッドセットのインカムのスイッチを入れた。

 この際だ、ノリでパレオはとっちゃお。 

 もう、食い込んじゃってるかもしれないけど、それはそれ!

 今日は“はだか一歩手前のおつきあい”をする日だもんね。


 「は~~い、みなさん、お待たせしましたぁ、これより『春の新入生歓迎合同コンパ』を始めさせていただきまあ~~す。」

 指でサインを送る。

 立ってるあたしの所にスポットライト。

 一瞬まぶしい!

 外野から野郎どもの集団の声があがった。

 「司会進行はあたし、史学部みりゅうす・えれくとら・シーと、応用材質工学部のたつき・ザイトファングスくんが務めさせていただきま~す。」

 たつきはぴっちぴちのボクサーパンツにアロハシャツ。

 あたしの頼りになる彼が、向こう側のテーブルの間の通りから手をあげて挨拶した。

 ま、はだかの付き合いで親交深めようってんだから、男どもも適度に露出度高い格好ではあるわけ。

 でも今日も無精髭だしなぁ…


 「はぁ〜い!」


 あたしは、おしりを突き出して三本しっぽを立てて、ふるふるふるふる…


 「おぉぉぉぉぉぉぉぉ、我らが姫は美しい、美しいぞ!」

 大歓声!

 「おぉぉぉぉぉぉお、“みりゅうすに抜いてもらったたつきクン”だ〜!」


 「料理は、各恒星系出身の方々のお口に合うようにセッティングしてありますが、ご不満な点がありましたら遠慮なく言ってくださいねぇ~」

 さっそく合コンの仔細を確認してみようか。

 指を走らせ以下のタイトルをタッピングする。





✔ レポート『優』だったからいいじゃない





 《新入生の皆様、入学おめでとうございます》

 『春の新入生歓迎合同コンご案内』


 ★場所:天山北路囲炉裏端ガーデンプール

 ★受付随時:収容最大 120 名

 ★硅素系・植物系知的有機体学生の方々へのメニュー完備

 ★出し物:会食歓談をしながら有志による怪談


 怪談お品書き


 『生まれなかった子供のこと』 …語り_なのく

 『二つになった彼女』 ………語り_ライホリオン・ミー

 『塞がれたもの』 …………語り_みりゅうす


 ★女子有志は受け狙いの水着着用推奨。

 美人コンテストではないのでふるってご参加ください。

 ★企画 工芸学部空間環境デザイン学科_さなりぃ

 & 教育学部初等教職課程_なのく 

 ★協賛 学部連合教授会有志、生活協同組合運営委員会



 企画立案の一番最初の言い出しっぺの当のさなりぃ自身が、自分の都合で行けなくなった…という『文句ムービー』が、ぶ~~ぶ~~ぶ~~と、この後1分 25 秒続く。

 自分の都合で行けなくなったくせに『いやだつまんないあたしも出たかったどうしてくれんのよこんちくしょう…』と『学部を横断して何人彼氏がいるか皆目見当がつかない女傑のモニターの中で喚き散らしている罵詈雑言』がおもしろくて、ついつい見いってしまい、ながらスマホで、すでに他人と衝突事故を起こしている連中がかなりの数に上っている。


 会場運営本部テント、現在緯度自転標準時で、夕方 19:00 頃。

 バラ科のうす桃色の花が満開。 

 気温は、水着パーティにはちょっと寒いかな、という程度。

 でもヒーターと暖かいソフトドリンクも準備してあるから問題は無いだろう。

 「さなりぃ女史、やっぱ出られないの?」

 「うん、だめなんだって、」

 あたしが確認した情報を伝えます。

 「なんでも南半球のどっかで面白い染料作ってる工房があるんで取材にいってるんだって。」

 「なにもそんないきなり、」

 「今しかない出物があったんだってさ。」

 「ふ~ん」

 「『恒星間文明史基礎自立演習2』のレポート『優』だったからいいじゃない。」

 「う、うん、そうだね。」





✔ 暗在系探査小委員会





 彼女は、みりゅうす。

 通称みりゅちゃん。

 彼女はどこにでもいそうな、ちょっとぽっちゃり系の明るくかわいい女の子。

 あたしは、りゃすみん・サファイア・Shie(しー)。 

 みりゅうすはあたしの可愛い後輩にして妹みたいなもの。

 あたしは講師だから、教え子、という建前。

 で、今日は春の新入生歓迎合同コンにゲストとしてお呼ばれして、美味しい料理をがっつりいってる。

 「あ、りゃすみん先生、一杯やりますぅ!?」

 「おぉ、今そっちへ行くよ。」

 と口一杯に頬張ったままニコニコして急ぐあたし。


 (本当の所は、あたしは、みりゅうすの隠れたお目付役)


 あたしは有機体先進開発機構に籍をおいて、外宇宙を相棒といっしょに飛び回る惑星監察官だ。

 ここ、有機体先進開発機構文明環境総合大学は(略して単純に総合大学)あたしら外宇宙職業人にとっても自分をリフレッシュする場所でもあり(絶好の息抜きともいう)明日への格好の情報を仕入れるもってこいの場所でもある。

 つい先日、みりゅうすは、いきなり心理カウンセラーに呼ばれて大学のクリニックに入り浸るようになった。

 理由はよくわからない。

 本人曰く、軽い疲労…なんていってた。

 あたしは、即座に見え透いたウソつくんじゃないよ、ってこずいてあげた。


 “ 昔の病気(解離性人格障害) ”がぶり返す…なんて事も考えられたが、それはそれで全くシャレにならない。


 あたしは大学のクリニックの所見を確認してみたが『軽微の精神疲労』としか出ていない。

 運動神経は全く無くても健康だけは取り柄の彼女がねぇ…

 これは小耳に挟んだ話。

 みりゅうすの今回の一件に『暗在系探査小委員会(あんざいけいたんさしょういいんかい)』が関わっていると知った日にゃ、ちょっと波風立ちそうな雰囲気だ。

 あたしら外宇宙をシマとしている一般的な監察官からしても彼らの立場は極秘。

 『暗在系探査小委員会』は監察官評議会本星の深空間探査機構に属しているはず。先進的なテクノロジーを盾に暗躍してる、って噂も聞く。

 身内なのにねぇ…

 あたしも、実際それくらいしか知らない。

 しかし、こんなチャンスはめったにないし!

 何考えてんだ、って?


 …教えてあげない…


 でも彼女の友達は、上を下へと大騒ぎで体調の優れない史学部のクイーンに世話をやきまくっている。

 彼氏のたつきちゃんなんか、小型の航時機を彼女と一緒に見学する約束を、当の愛しい彼女が、すっかりきれいさっぱり忘れてしまっていて、えらく心配してた。

 端で見てて気が気で無いほど憔悴してた彼氏の姿は、ちょっと気の毒だったね。

 イケメンのくせに身だしなみに普段から気を使わない彼が、全然ひげ剃らなくなって、髪の毛ぼ~ぼ~になった日にゃ、最初一瞬大笑いしたが、彼女を思うが故と知った瞬間、あたしはすぐに飲みに誘ったよ。


 いい奴だね、彼は。


 闇ストーカーサイト『今日のみりゅうす』に参加してた、なんて聞いちゃったから、これは彼氏をいじってあげるおもちゃとして今後のお楽しみ。


 『怪談話』をしよう、という事になった理由?

 実はみりゅうすが心理的に参っていたので、急遽好きなネタで盛り上げようと変更した事による。

 地縛霊だの浮遊霊だの、って怪談話は銀河普遍の娯楽だ。

 それを楽しむ権利は彼らにこそある。

 まぁ何にしても、知り合い同士で暖めていた新入生歓迎会を、こんな派手な宴会に出来たんだから、とりあえず良しとしようか。

 結構美味しい料理出すんだって。

 あたしも呼ばれてるし。


 有機体先進開発機構第 2540 部の保護観察レポートは、『要_警戒』のタイトルで送付してはおいた。

 美少女の笑顔で銀河の平和を願う遠大な企みは、新たな試練を迎えたのかもしれない。


 そんなわけで、みりゅうす★せっしょん、今回は…



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