★せっしょん045 大学戦略執行評議会運営会議付秘密会議
がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん
あたしが見届けた時空連続体のさざなみ
★せっしょん045 大学戦略執行評議会運営会議付秘密会議
Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session
The ripples of the space-time continuum that I saw
☆session 045 Secret meeting with university strategy execution council management meeting
✔ 記録
提出者氏名:みりゅうす・えれくとら・シー
性 別:女性
学部学科:史学部 恒星間文明史学科3節季生
学籍管理コード:ナルフェイタル-4155-ムーオン-β アイ//H034454//GFH-53//:+
上記学籍在籍者が、学科資料室において入手した検索情報は、深空間探査機構(しんくうかんたんさきこう)・過去院(かこいん)および暗在系(あんざいけい)探査小委員会の資料局が管轄する『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディ星域外史に関する資料の一部である。
その内容は当局が提示した守秘要項優先第二項
01:超空間対流系における極小座標制御技術
02:高次特異点制御感応力をもつ有機体の監視計画草案007
に抵触し、公開基準を満たしていない。
公開基準を満たしていないはずの資料が、いかなる経緯で本学資料室の基幹量子記憶巣に入力され、情報廻廊安全守秘規準から取りこぼされて残存するに至ったのかは、深空間探査機構外周警護局、および暗在系探査小委員会による専属の調査委員会設置後に、専従スタッフの手による調査に任されるものとする。
提出者氏名:みりゅうす・えれくとら・シー
性 別:女性
学部学科:史学部 恒星間文明史学科3節季生
学籍管理コード:ナルフェイタル-4155-ムーオン-β アイ//H034454//GFH-53//:+
上記学籍在籍者による課題資料としてアクセス、結果として漏洩状態になった事態に対する対処として、緊急に記憶消去、想起阻害処理が提起されたが、処置は本件に関する対象が、有機体先進開発機構第 2540 部の注目する『 超次元多様体生成特異点 』として認証されているために、その行程は極めて難行した。
不本意ながら作為的行為により体調不良を惹起せしめた上記学籍在籍者に対して、一般的な知的有機体人格構造を前提とした心理療法的アプローチはまったく効果が無く、薬物療法という名目で行われた深層催眠も目立った想起阻害効果は得られず、いくつかの宗教奥義で用いられる超超核深度大海横断催眠のアプローチで、当該項目の想起阻害処理に成功した。
過去院執行部及び暗在系探査小委員会としては、みりゅうす・えれくとら・しーに、かくのごとくの処置を施したのは、極めて不本意なことであるが、潜伏支援スタッフの派遣により、本学生の精神衛生上のケアが行われるのは周知事項として確認されたい。
守秘優先事項の公開にいたるまでの間、本件、01、02 は、銀河の好戦的平和守護者を任じる大国『唯物主義中枢協力者連邦機構』及び『ツォーフォア・レンミングォ行政体統治聖連邦』に対して向けられる戦略大綱第一条に関わるものとして注目を集めており、今後しかるべき時期の到来に応じて、然るべき処置が行われていくことが希求される。
現在みりゅうす・えれくとら・シーは、この処置の副作用と思われる不安定な鬱、心身症状を訴えているが、これらの症状は暫時的に解消されると考えられる。
大学運営委員会がなすべきことは次の点である。
みりゅうす・えれくとら・シーの恒星間文明史基礎自立演習Ⅱ前記の成績評価を『優_発展的で創造的思考が出来ている』とし、『完了事項』として関知させないように自然に誘導する_
『唯物主義中枢協力者機構連邦』
Materialism Center of Collaborators
organization for Commonwealth of Nations
読み_ゆいぶつしゅぎちゅうすうきょうりょくしゃきこうれんぽう
☆民族構成:古人(いにしえのびと)_ ミリギューム人_
行政中心区:ケレステアアスタロシアランド
居住恒星系:5
主惑星系
ナイコンアロカ
シャックジー
ワーコアウ
アーヤンセー
…
連邦帰属州 35
特別州 12
居住惑星規模艦 9
元首:連邦機構執政局大統領
人口:450 億9856 万
政体:連邦共和制
民族紛争:41241 箇所(最新データ)
構成種族数:2540(確認済み最新データ)
『ツォーフォア・レンミングォ行政体統治聖連邦』
TUOWFOR・REMINGuO St GOV-UNION
読み_つーふぉあ・れんみんぐぉぎょうせいたいとうちせいれんぽう
☆民族構成:古ノ人_ ラグミモアロ人_ ベチット人_ ナいぐるう人_ ミリギューム人_
行政中心区:大師威(だいしい)
居住恒星系:5
省:1456
種自治共和国 121
民族自治区 238
保護監察圏 75
特別県 123654
居住惑星規模艦 4
有機知性体至高解放軍
(3 軍制 1,地上展開軍 2,情報制圧軍 3,次元解放軍)
元首:行政体連合会議主席
人口:499 億 9800 万
政体:有機知性体至高民主制
民族紛争:6121 箇所
経済紛争:35
直接軍事衝突:7
構成種族数:875(最新データ)
✔ 学部長室にて
「困りますなぁ、バシオリア閣下。」
「うむ…」
「こんな事は間違っても今回限りにしていただかないと…」
「おっしゃる事、誠に返す言葉もございません。」
「まったくですな。」
「有機体知的尊厳存在絶対基本律に抵触しますから。」
礼服仕様の迷彩コートを羽織った大柄なロジャオ・エンドラ人軍属が重い表情を割った。
大将クラスの武官である。
PROFILE
バシオリア・ガシュトム 36511=フォミラン
ロジャオ・エンドラ人
男性、65 歳、身長 245cm
監察官評議会戦略執行部門首席参謀
積法聖典守護院…ロジャオ・エンドラ生存圏絶対防衛機構情報管制基幹中枢指揮群
『有機体知的尊厳存在絶対基本律』_銀河標準の知的有機体絶対基本的人権に相当する。
「しかし、また何故?…」
テーブルを挟んで史学部長が、両手を顔の前で組む。
この教育者は白髪の大柄な古ノ人(いにしえのびと)である。
ロジャオ・エンドラ人に比べれば小柄だが、知性を穏やかに極める道を歩む者同士の同士的連帯がここにはあった。
皺が深く刻まれた目尻を、なおいっそう険しく寄せた。
迷彩コートの指導的地位にある軍人は、ティーカップを手にとり、湯気のたつ緑色の液体を一口すすった。
「『ヱキ・羅(ら)_791 故韻文(こいんもん)』は、数少ない暗存系情報座標塊として、極めて高いポテンシャルと特異な量子偏差をもっています。」
「特異な量子偏差、ふむ、どういう事です?」
「くだけた言い方をすれば“結界兵器”ということですな。」
「高位聖職者による力場防衛兵器、とでも理解してもよろしいですかな。」
「仰る通り、聖職者視点から言えば“防衛する”ではなく“鎮める”になる訳ですが。」
「まさに、全学部的課題満載ですな。」
「あれ単体では、いくつかの発掘資料と 12 ギラテア(約 150 ペタバイト換算相当)の解析データだけなのですが、大深度レベルでの《量子縮退力場誘導演算意味抽出推論法》をかけたのがまずかった…」
「もしかして、件の女子学生の?」
「そのとおり。」
「あの解析アプリケーションは、博士号保持者が使うものなんですが…」
「女子学生は優秀な方なのでしょ。」
「ふぅ…おそれいれます。」
「故韻文のいくつかは 10 のマイナス18乗以上の圧縮をかけられた戦略的自律型管制スクリプトを内包しています。」
「ほう、」
「それらが無指向性状態で活性化する恐れがあります。現時点でも、徐々に低下してる安定指数から暴走の可能性が払拭出来ません…」
「暴走ですか、」
「実は、いくつかの次元溝探査機を、この『ヱキ・羅(ら) 791 故韻文』を次元アンカーにして“向こう側の特定相対座標系”へ跳ばす事に成功しております。」
「…まさか…」
「そう…」
「時空連続体探査…仮想レベルの技術的推論を出ないものと思ってましたが、」
「現時点で、まだ9割がたはそうですな、秘密戦略でもありますし。」
「ふむ、超空間ゲートですか…」
「『唯物主義中枢協力者機構連邦』と『ツォーフォア・レンミングォ行政体統治聖連邦』の『警戒艦隊』、お聞き及びでしょう?」
「ええ、参謀閣下…、航法支援システムに生きた有機体の脳を量子演算ゲートの誘導素子に使っている、という容認し難い背景をもつ艦隊ですな。」
「ツォーフォア聖連邦は、民族浄化犠牲者の脳を流用してる話です。」
「太古より道を踏み外して人の顔をしている為政者はいるものですな。」
「そのとおり、監察官評議会は、膨大な数配備されている警戒艦隊の稼働軌跡が、相当数の時空破断を引き起こしている、という現状報告もあげておきましょう。」
「深刻な状況ですか…」
「まさに、時空破断に対抗する因果律の修正は急務といわざるをえませんな。」
「もっともです。」
次元溝探査機を打ち上げている惑星監察官評議会本星の思惑。
・時空破断の修復用ペネトレーターを然るべき座標に設置
・超空間連続体位相差開口レーダーのネットワークの構築
「善なる心を時空の真髄に沿って読み解ける人材が、まだまだ足りませんな。」
✔ 『時空破断』
…太古の昔、大量の化石燃料を燃やして交通機関の駆動システムを動かしていた時代。
駆動システムの壊滅的な事故により大量の燃料が自然環境の破壊をもたらしたケースは古文書にも詳しい。
量子電脳が行う距離や時間とエネルギー、そして物質との関連を次元レベルで高速演算する作業は、宇宙を構成する屋台骨を作り出す作業といえるが、これの演算行程が狂うと時空そのものがバランスを失い、暴走したエネルギー塊として拡散する。
ある程度は、自然に回復するが、自然に回復し得ないものもある。
それは危険な重力陥穽(じゅうりょくかんせい)としていくつもマークされているが、現実問題、それは増えてきている。
『唯物主義中枢協力者連邦機構』『ツォーフォア・レンミングォ行政体統治聖連邦』『ドツマ共同自主圏連邦』以上三つは、依然、強固な軍拡を維持しつつ量子電脳の演算臨界安全係数を軽んじる傾向が強く、危険な重力陥穽を形成してしまった事故は、圧倒的にこの三者の空間主権域においてその数が多い。
自然復旧をなし得ない危険な重力陥穽のうちで、最も著名な存在が、
『ガキュ=古呪詛(こじゅそ)37988-091』
と呼ばれる直径 0.2 光日ほどの存在が『ツォーフォア・レンミングォ行政体統治聖連邦』領域圏内に存在する。
これは、未だ未確認だが、20万年以上の昔、かつての『大連邦セイジ・クルイ主義』最大版図期に行われたいくつもの惑星消滅戦略に由来するもの、とする推論は注目に値する。
重力陥穽が『因果の撹乱』と呼ばれる現象を引き起こす事はよく言われており、近世、数多くの研究課題を提供している事はいうまでもない事である。
『警戒艦隊』についての解説はまた別の機会に得る事も出来るだろう。
✔ 予期しない回廊
「次元溝探査機は目立った成果はあげているのですか?」
「えぇ、帰還率78%、データ回収から得られた有効マーカーの投下成功率 47%という所ですか。」
「なるほど。」
バシオリア首席参謀が問う。
「アクセスを許してしまった事による“ 特異点 ”としての残響は?」
首席参謀の懸念を具体化する疑問に史学部長が応える。
「0(ゼロ)とは言い難いですな。」
「やはりそうですか…この“結界兵器”の転用で、戦略航法偵察の次元深度量子遷移座標系に、予期しない回廊が出来ているのです。」
「“予期しない回廊”?」
「起点座標が“ここ”なんですよ。」
閣下は指で床を指し示した。
「え"、それはまた、何とも…まさか、この子の仕業ですか?」
史学部長は頭を抱えた。
「間違い無いでしょうな。御本人は知覚していないのを承知の上で…」
「超空間ゲートのバイパスですな、それも恣意的に干渉可能な…」
「ふぅ…」
「回廊の次元函数座標のアルゴリズムが、ほとんどの項目で知的有機体のそれなのです、関連有機体プロフィールを類推解析出来るのですが、恐ろしくて手がだせませんな…」
「なんともはや…」
「何かがそこを通ってくるかもしれない…」
「いったい何が?」
「…封じねばなりますまい。」
「そのためにも…かさねて、篤きご配慮、いただけるものと信じております。」
「うむ。」
史学部長は、組んだ両手を開いて微笑む。
目尻や口元に刻まれた皺の数が、この星の学府を司る賢老にふさわしく、その様相を穏やかに変えた。
「学究の徒の志ある未来に、私どもは期待しております。」
「あなた方の総意ですな?」
「誠に…超次元多様体生成特異点、そら恐ろしい感じはいたしますが、本人はあどけない女子学生なんですな。」
「そうですよ、プロフィール画像、ご覧になりますか?」
「うむ」
史学部長は、テーブルの上の小さい制御卓にいくつかの数字を入れた。
提出者氏名:みりゅうす・えれくとら・シー
性 別:女性
学部学科 :史学部 恒星間解析文明史学科3節季生
学籍管理コード:ナルフェイタル-4155-ムーオン-β アイ//H034454//GFH-53//:+
本人画像、バストアップ、全身3D、回転
大柄なロジャオ・エンドラ人軍属は、空中に浮いている注目の美少女の瞳を注視した。
「本人は“ 超次元多様体生成特異点 ”、としてのご自分の有り様、気づいているのですかな?」
「さて、全く記憶にはないとの所見もありますが、ブロックをかけられているのか、気づいて気づかないふりをしているのか…」
「ほほぅ、真実は銀河の創造の女神の微笑みの中にある、という訳ですかの。」
史学部長は、お茶を口へ運んだ。
「全くですな。我々のつとめは、勉学を志すものをただ守る事のみ。」
「うむ…」
ロジャオ・エンドラ人軍属は愉快そうに言葉をつないだ。
「創造の女神の笑顔は、銀河の平和に貢献するものでしょうかな。」
「それを確かなものにせねばなりますまい、バシオリア閣下。」
「うむ」
有機体先進開発機構の戦略顧問の肩書きをもつロジャオエンドラ人軍属は、しばし時(とき)を噛み締めて遠い目をした。
史学部長は立ち上がった。
ついで軍人も史学部長の後に続くように腰をあげる。
大きな窓の外は雪気色だ。
会議は終結をみた。
まとめを彩るにはふさわしい気色のようだ。
「彼女の担当のイオ教授には、私からもいっておきましょう。」
「よろしくお願い申し上げます。」
「『暗在系探査小委員会』から一人、彼女の潜伏支援スタッフを差し向けております。」
「承知しておりますよ。逸材という事で。」
「銀河の創造神は多様性を喜ばれるものでしょうよ。」
「我々の使命は、ただそれを謙虚に学ぶ、と、」
「然り」
史学部長は、降り積もる雪で霞みはじめた遠景をみて、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
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