★せっしょん033 絶対にあなたを殺してやる

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


★せっしょん033 絶対にあなたを殺してやる


『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディ 791 故韻文(こいんもん)』

_過去院探査始祖記録量子原本による再構成



Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw


☆session033 I'll definitely kill you


“Ö-que-ja-SVent-to- Ladoiandti791 meter Ancient document”

Reconstruction by quantum original record of the founder of The TEMPLE of PAST exploration




✔ 老人





 ここの連中は、まだ珍しいものに体が動くくらいの感性は、その頭脳の中に残ってはいるのだろう。

 魂の腑抜けであっても…


 彼らは、私達が、生きてゆくために必要な最低限の所得の、何十万倍から何百万倍もの所得を、なんの疑いもなく、そして何の苦労もなく享受できる支配階層だった。

 彼らが居続ける安穏とした彼らのその立ち位置。

 そこから見れば、私達が歯を食いしばって死にものぐるいで生きてゆく姿は、彼らの生腐りな感性に、わずかばかりの愉しみをを与えることができるものだ。

 ここは、対話と理解が意味をもつ世界ではなかった。

 私は降り立った。


 人ごみの中から目の前に押し出されて来た老人がいた。

 学者か教授だろう。

 怖れおののいている。

 私は右手で、その老人の手を軽く摘んでねじりあげた。


 私の手に、それだけの力が残っているわけではない。


 それは、私の生きる力そのものだ。

 肘から先の意識を針金のように硬化させる。


 イメージは形_

 イメージは力_

 イメージは制御_


 私は、形をとる寸前まで圧縮したイメージを、紐の形に具体化させた。

 そして捩り上げた老人の手に巻つけた。

 おそらくは、この学校の教授の一人であろう。


 イメージを引き縛った。「うぐっ」


 黒い斑の浮き出た顔を歪める。

 私の目を見たらどうだ…老人の弛んだ頬の肉が震えている。


 どうだ?…涙をためた子持ちのテロリストは…研究の課題になりはしないか。


 「ごめん、ごめんよね、こいつにもレムちゃんと同じ血が流れてるんだよね、ごめんね、」

 私は泣いた。

 私は愛し子に謝罪した。

 目を伏せようとも思わなかった。

 最愛の子は、きっと私の涙をありのままに受け入れてくれるだろうと思う。

 これが、私が嶺牟倫逢にしてやれるせいいっぱいの教育だ。


 この男…

 私達同胞 600 億の大連邦からの粛正を指示した一人…

 男の腕の腱がどこか切れたのか…

 ずっ、という音で、男はうめくように絶叫する…


 「あ、ひゃあ、うえ、うかあぁあ"あ"…」


 懺悔の涙でも嶺牟倫逢の前で見せてくれるならば…

 もしそうなら、私は許しもしよう。


 生きること。

 その原罪を問う知性。

 それをここに見い出すことはできなかった。


 それ?


 “幸福”というシステムを駆動させるエンジンに相当する。

 それが風化して久しいことはわかっていた。

 その風化の度合い…

 それは、あたかも、朽ち果てた太古の文明史跡を詣でる程度のもの?

 それですら、比較のしようもなく生ぬるいかもしれないが…


 だから、私がいるのだ。


 私は、気を失った老人に軽く一瞥をくれた。

 私は苦痛を与えたことへのささやかな許しを乞う。

 私はとりあえず光のあたる場所へ歩をすすめようと思った。





✔ 犬





 目の前…

 人垣の中央にその男はいた。


 私はあなたに会うために、機体を離れたのだった。

 そのことに気がついた。


 …よかった…

 その男がヨウジーリエレン(游擊獵人Yóujī lièrén)だった。

 大連邦中央の犬だ。


 自治評議会捕察官_あの醜悪なゲモリルオバ広域支援殲滅機の主だ。


 犬、そう。

 飼い主に忠誠を誓い、尾を振り続ける小型の家畜…

 あなたの星にもそのような動物はいるだろう。


 見せしめに同胞を撃ち殺す。

 虐殺し、慰みに収容所へ送る。

 建築物構造材の組成構造から分解してしまう分子変性兵器を街村へ打ち込んでは、その破壊の様を酒の肴にしてきた連中。

 そいつらを常に影で支えてきた存在だった。

 惑星全土を誰も住めない更地にしてしまえば、私達の文化を殺し、言語を殺し、私達の細胞全てを上級支配階層のための生体医療リソースにしてしまう事などかわいいことだった。


 男との距離が縮まった。


 男は、接近戦用の荷電粒子ランチャーを腰だめに構えていた。

 黒い装甲パイロットスーツは、思いのほかだぶだぶだった。

 権力に盲従する犬には相応しい格好だ。



 →→・→→・→→殺してやる!→→・・・→→→



 学生達がどよめいていた。

 面白い見物だろう。

 私は、正義の味方に殺されかかってる反政府ゲリラの女だ。

 笑いたければ笑え…

 思う存分愉しめば…

 惨めな腐りぞこないの生ゴミ…

 私の実存を脅かすものがあるならば、今すぐここへ持ってくるがいい。

 それが可能ならば私はそれまで待とうじゃないか。

 しかし、あなただけは…


 殺してやる…“びくん!”…男の頬が震えたようだ…


 男は、ヘルメットのバイザーを引き上げていた。

 その奥に小さい目が見えた。

 完全な有機体の目だ。

 その光は酷薄そのもの、知性とは縁の無い目つきだった。

 彼の目の光を捉えた…

 この男の知性にどれだけ期待すればいいのか…


 …“びくん!”…


 また男の頬が震えたようだ…どうだ?…コミュニケーションとは素晴らしいものだろう?…


 この男は、何の不安もいだくことなく職務に忠実になれる男だった。

 命令を遣わす者に対して、ひたすら機械的な忠誠を誓える男だった。

 おびえろ、のたうちまわるがいい。


 ふふ…どぅ?


 足が動かないはず…

 かつて一度も愛されたことの無い惨めな男。


 私は、至福を破壊する行為にその人生すべてを加担してきた男の価値観を想ってみた。

 私は、この男の裁きを、大銀河全土をしろしめす全能なる神にゆだねる。

 私は、この男の魂に存在する果てしなき罪深さにいつか救いのみ光が訪れることを重ねて祈った。

 我は、600億の同朋に…

 …なんと申し開きをすればよいのだろうか…

 それが、今、私たちがいるこの時空上では、決してなし得ないことを承知の上で…


 申し訳ないが…

 あなたの死は…

 …私のかけがえの無い友人達への手向けなのだ…


 何か言い残すことは無いか?


 あなたを殺してやる。

 首をしめあげてな。

 そのことは、きっと、嶺牟倫逢の魂を汚すだろう。


 覚悟だ。

 覚悟は、汚れと清浄の地平を分かつ絶対境界線だ。


 それは、何かにすがることなく実現される道筋だ。

 それは、私自身が拠所として行かなければならない力だ。

 

 だから…

 私は、嶺牟倫逢の魂に出会い、彼女と伴に歩むその贖罪の巡礼のために、私は生き続けなければならない。


 →・→→・→→殺してやるよ→・→→・→


 私は右手を掴むようにして、男に向かって差し出した。


 絶対に→→→→→


 →・→→絶対にあなたを殺してやる→・→→





―終―





『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディ 791 故韻文』

“Ö-que-ja-SVent-to- Ladoiandti791 meter Ancient document”


The TEMPLE of PAST

過去院


meter

韻律


游擊獵人Yóujī lièrén

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