★せっしょん028 資料出力
がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん
あたしが見届けた時空連続体のさざなみ
Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session
The ripples of the space-time continuum that I saw
★せっしょん028 資料出力
☆session028 Document output
✔ 第12接続出力室
あたしは、普通の課題資料調査で利用するとおりに、全く普段どおりの手筈で入室した。
曲線でレイアウトされた室内にメインの作業台、補助の机が2つ。
出力参考資料等のメディアのラック。
本棚、置きっぱなしの雑物のコンテナ。
観葉植物の鉢植え。
そして『整理整頓』と『飲食禁止』の張り紙。
着席し、自分の学籍管理コードを入力する。
作業台上仮想キーボード、軽やかにあたしの指が舞う。
カーソルの輝きが左から右へ移動してゆく。
ソプラノの弦をリズミカルに弾いていくような音とともに、文字が確定してゆく。
速い。
提出者氏名:みりゅうす・えれくとら・シー
性 別:女性
学 部 学 科 :史学部 恒星間文明史学科3節季生
学籍管理コード:ナルフェイタル-4155-ムーオン-β アイ//H034454//GFH-53//:+
『出力作業工程承認』の表示。
続いてメイン入力マトリクスの展開が始まる!
パラメーターや変動域制御範囲の入力ボックスなども、後から後から開いてゆく。
合計で 100 近いウインドウが空中に開く。
全て入力しなければならない訳ではないが、多ければ多いほど検索出力値の精度は変わってくる。
予測される変数は、全て手書きノートに書いて準備済。
手書きじゃないとダメなのよね、変数の傾きの許容範囲があるから。
「さて、いきますわよ!検索コード入力!」
電子認証表示_『データベース検索スクリプト指揮権を解放します、お名前をどうぞ』
「はい、『 みりゅうす・えれくとら・シー、女性 』と。」
弦楽器の和音が響いて『データベース検索スクリプトコンソール』が現れる。
「おほ!、出た出た出た!さぁてと!」
光る仮想キーボードに入力を続ける。
_『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディ故韻文』において『古代文明紛争様態の時系列視点における知的有機体の発展的可能性についての考察』にあたり、推論対象として最適項目を選べ_
「っと、完了!」
候補画像と推挙コピーが出始める。
条件をしぼる。
「お、いい感じかな?」
最適候補:『出典_ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディから第791故韻文』
告知:『“ 連合知性体奥の院 ”第一情報審判局_極秘_情報閉鎖係数 0.0001_』
また出た!
…前回の下調べの時も出たしなぁ?…何これ?
…わかんない、ま、いいや。
あたしは曖昧に受け流した。
続いて画像本体表示を直視する。
『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディ791故韻文』_本体_135 ページにおよぶ紙の文書の極超高解像度画像ファイル形式。
『画像ファイル仕様』
解像度 12 億 3800 万 dpi
基本色チャンネル数 12《C.M.Y.K 他補助基本規定色8》
不過視電磁波チャンネル 35
構成素材物質解析データ 245 ページ添付
『これ』に決定。
画像が印刷出力機から排出される紙焼きのように凄まじい速度で空中に並び始める。
『資料引用』の認証印を入力。
想定される現物は、A4 くらいの大きさの黄ちゃけた紙の束、右綴じの本。135 ページ全てのページが、手元の仮想キーボードのリターンキーでマニュピレーターをリンクさせて3次元座標視点で自在に動かせる。
おそらく『本物の紙の現物』は、存在しないのかもしれない。
縦書きで書き込まれた“ 草書体 ”の文字、当然ながら、なんて書いてあるかはまだわからない。
これから解析スクリプトを走らせる。
作業モニターのアプリケーションドックから、
『《量子縮退力場誘導演算意味抽出推論法》
有機体先進開発機構文明環境総合大学_
史学部アカデミー先進開発局編 ver105.23』
を起動。
『これ』の文面に関連ずけの『リンクワイヤー』を画面の上で指でドラッグしながら引いてゆく。
重要な部分にリンク指令ずけ、完了。
「よし、解析開始!」
リターンキー!
別口の出力ウインドウに、だぁ~と解析文が並び始める。
結構抜け(□で現される)が多い。
あたしは小姓_有能な機械のアシスタントにワークスペース確保して、うちでやるしかないといろいろ考えていたら、また電子認証が出た!
_『非物質化カテゴリーに属する戦略兵器内包_量子相対座標域における複数特異点確認せり_解析行程関係諸機関以外接触絶対禁止_』
…え"~~“ 関係諸機関以外接触絶対禁止 ”~っていったい何これ!
別にファイルにブロック掛かって無いしぃ、
『禁止』の表示があるわりにはさぁ…
なんでこんなに簡単に見れちゃうわけぇ?
…知らないよ、あたしゃ…
✔ すっごく嫌な胸騒ぎがするのは…
今、あたし、りゃすみんは、学務課の事務手続きカウンターで、惑星監察官としての平凡な事務作業を進めている。
今日の出で立ちは珍しくフォーマルだ。
ミリギューミア空間統合軍正式礼第三種礼装。
クリアブルーを基調にした淡い2色迷彩で、サッシュとベレー帽で決めた、なんと3ピース。
管理事務儀礼正装というやつだ。
つまり、今のあたしはスカートをはいてる。
あなたが『しっぽが無い種族の場合』を想定して話すと、ミリギューム人のスカートには『ロメ』というしっぽカバーがついていて、それなりにおしゃれが楽しめる。
いや、しかし、めったにスカートなんかはかないから肩こっちゃうんだけどさ。
あたし、スカートはあんまし好きじゃない…
ちょっと、鼻にかかった軽やかな声がした。
「あ、りゃすみん先生、お久しぶりです!やっと会えたぁ。」
「あらぁ、みりゅちゃん、」
「こちらにはいつ?」
「航法記録のバックアップ、空間天文学部へ届けに来たんだよ。ほら、」
あたしは、手続きを終えて中身をコピーし終えた記憶層を、みりゅうすに見せてあげた。
あたしの仕事は、とにかく外宇宙を頻繁に飛び回る仕事なんで、船の航法システムが記録した天球座標データの蓄積は膨大なものになる。
それは学習教材として転用するとしても、格好なリアルタイムな価値をもつわけ。
それにね、あたしのハンドバッグに入れてある情報ストレージデバイスのソケットに入れてあるやつだし、出そうと思えばいつでも見られる。
それって、超大事な機密なんじゃ?
何いってんのさ。
惑星監察官を友達にもった役得じゃん。
それに、あたし、大学で講師やってるし。
「じゃぁ、2、3日はいます?」
彼女は、あたしに尋ねた。
わくわくがはち切れそうな可愛い笑顔だ。
あたしまで嬉しくなってくる。
「うん、いる!明日泊りにいってもいいかな?」
「やった♡」
史学部の美少女は、嬉しそうに、あたしの願いに応える。
あたしもちょっと嬉しい。
どりりり R ん…彼女の携帯の呼び出しだ。
「先生、ちょっとすいません、あ、もしもし?」
『あ、オレ』
「元気?」
ほう、たつきちゃんか!
…ふむふむ、うまくいってそうで何より。
『うん、元気だよ、ほら、この間のさ “ 小型の航時機作ったやつ ”』
「あぁ、あれ!」
『連絡とれてさ、機体見れるって!』
「きゃ~~、ほんと!?」
『場所と時間、メール送っておくよ。』
「ありがと、___あ、お待たせしました先生!」
「うん」
あたしは、ちょうど気にかかっていた事を、彼女へお返しに尋ねてみた。
「それはそうとさ、恒星間文明史基礎自立演習Ⅱの課題選定、決まりそう?」
「うん、決まった。」
「あら、そう、」
「正式に検索資料収集開始してね、レポートの章決めの草稿、教授に出しましたぁ。」
「そう、よかったね。じゃ、今日はお祝いかな、なんか買ってこうか。」
「わぁ~い!あたし、『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディ 791 故韻文(こいんもん)』に関してやるんですよ。」
「え"…」
それって、確か…
…あたしの深い所_
職業意識に基ずく警報!
しかも結構でかい音で鳴り響いていたりする!
「りゃすみん先生ご存知なんですか、嬉しいな…」
「いや、ご存知、って、ほどでも、って、噛んじまった!
『ヱキ・羅(ら)_スィントゥ・ラドイアンディの第791故韻文(こいんもん)』って、確か『高次特異点制御感応有機体の保護監視計画』っていう機密(守秘義務あり)論文にちらっと出てた、厳重封印文書じゃなかったっけ?
『それ何ですか?』って聞かれたら、
『知りません、忘れてください、言う事を聞かないと…』っていうしかない事情ってやつもあたしにはあるのよ。
→→→あれが、何の問題もなく見れた?→
→なんで?→?
……………え、っと、
『最終兵器美少女事件』だろ…
『コレオカイア・32671-433 事件』だろ…
みりゅうす“歩く天然ぼけ特異点”保護支援ファイルにあったのは、あと、何だったっけ?
ページ開くと頭痛くなる資料の表題の数々だ。
聞きたい?
でも、今はだめ!
これからきっとあたしはやらなきゃならないことが出てきそうだ!…なんだかなぁ、あたしだけ?…天然ぼけ特異点美少女を目の前にしてすっごく嫌な胸騒ぎがするのは…
おしまい、続く…
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