★せっしょん017 胸が大きいだけじゃボクらの姫の魅力には絶対勝てない

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


★せっしょん017 胸が大きいだけじゃボクらの姫の魅力には絶対勝てない


Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw

☆session017 You can never beat the charm of our princess just by having big breasts




✔ エろく尊く健康的に



 ジョギングを楽しんでいるその女性。

 身長 175cm ほど。

 黒褐色の肌に金色の肉食獣のたてがみのようなショートヘア。

 三角の大きな耳。

 両肩から上腕にかけて、飾り毛が生えているのでミリギューム人だ。

 他の追随を許さない豊満な胸を、タイトに固定するスポーツブラ。

 大胆なジョギングショーツ。

 金色のしっぽをあでやかに飾るレザーバンド。

 フィンガーレスグラブと、携帯アシストツール、それにサングラス。

 ジョギングを楽しむ学生の中に混じって、ひときわ輝いている。

 あんたは絶対スーパーハイレグが似合うだろ、という大多数の第三者の指摘が頷けるほどのプロポーションだ。

 金髪で先端部が内側に跳ねている巨大な猫耳!

 メディアのモデルで誰が似てるんだろ!…というドキドキな視線を余す所無く引きつけている。

 そのオーラのパワーレベルから、もしかして、学生ではないのでは?…

 呼吸は軽やかだ。

 リズミカルに走る事を楽しんでいる。

 彼女の巨大な胸としっぽがリズミカルに揺れている事を、ウキウキしながら楽しんでいる男子学生ランナーが並走している事も、余裕の笑顔で受け流してゆく。




✔ 変態へのいざない



 男が二人、長机に椅子を出して座っていた。

 見た目、かなり間抜けな様子。

 二人とも『当然!』という顔をして平然と落ち着いている。

 二人は、片方が脂ぎってうっとおしいオーラを放つ巨大なデブ。

 どう見ても知り合いとは思えないにも関わらず、もう片方は、


 “こういうデブと並ぶなんてマジですか!?”


 _という嘆息を禁じ得ないほどの目元涼やかなロン毛のイケメン。


 『これは何か、 BL(ボーイズラブ)の最近でたばかりの新しいシチュエーションでしょうか!?…』


 ってな感じの問いを引っさげてインタビューしたら、ちょっとした記事になりそうだ。


 それくらい仲良く(見た目気持ち悪く)座っている。

 机の前に『みりゅうす様江』という張り紙。

 机の上には何かの飲み物らしいピッチャーとコップ。

 どうやら手作りの給水台らしい。

 見るからに怪しい図柄だ。

 このデブとイケメン、何と、ジョギングをしているみりゅうすに、頼まれもしないのに給水をしようとしているのか?

 怪しすぎる…


 黒褐色の肌の彼女は、コースの脇に変なもの:『みりゅうす様江』の張り紙をした台を発見した。

 彼女は立ち止まる。


 「ちょっと、何だこれは?」


 思わず声が大きくなる。

 彼女は『みりゅうす様江』と書かれた意味を理解しているらしい。

 関係者か友人?

 台に椅子を二つ出して座っていた二人のうち、不細工なデブの大男が無愛想に口を開いた。

 「何すか、いったい…」

 「“何すか”じゃないよ、何でみりゅうすくんが、このコースでプライベートでジョギングをしてる事を知ってる!?」


 デブはビビった!


 「いや、だから…」

 彼女は、重要な情報の確証を得るために、右手につけるフィンガーレスグラブ形態の《コントリビューター》に、検索ウインドウを露出させた。


 《コントリビューター》これ、惑星監察官専用の装備。


 検索ウインドウを表示させる前に、軽いストロークで右手をデブの前で振ったのは、デブのスキャンデータを得るためだ。

 内蔵の人工実存が瞬時に解析をして、関連情報を用意する。 

 相手に目立たないように小さく…検索結果が出た!

 間違いない!



 ●氏名:ゲックラス・セイントあっくす

 ●ケントムレイア人

 ●身長 220cm/20 歳/体重 210kg 超

 ●医学部学生所有ゲックラスの携帯電脳にアクセスしているデータ。

 ●みりゅうすに接近禁止命令が出たストーカー案件前科リスト



 このデブ、みりゅうすの追っかけ変態学生だ! 

 このイケメン、有機体なものか!

 《コントリビューター》のスキャンに丸見えだ。

 血液なんか一滴も流れていやしねぇ!




✔ 学生指導



 「きみは、以前もイケメンの介護制御体使って、みりゅうすくんに一服盛ったな。」


 “なんでそんな事をいきなり聞く?”


 という図星に、デブ学生は目一杯うろたえている。

 あたしの手元のモニターには、ミリギューム人仕様の介護制御体を使って、みりゅうすに傷害未遂をやらかした件が、少なくとも3件表示されている。

 睡眠薬らしきものを飲ませたらしい。

 「やだなぁ、誤解ですよぉ、疲れてるから休ませてあげようかと思って。」

 「大きなお世話だ、そういう気を回したいんなら、ちゃんと挨拶して声をかけろ。」


 こいつ、今回も、何か考えてやがる…


 「この機械、作動許可申請出してないだろ、」

 「う"…」

 「有機体相似制御体の作動許可申請の意味知ってるよな。」


 言うまでもない、対人対有機体テロ防止のためだ。


 あたしは、教職員権限で閲覧出来る学生の教科スケジュールと評価レポートを、治安解析スクリプトを走らせて確認していた。

 あたしはイケメンの首に電磁ナイフを突き立てた。

 「緊急停止措置だ。」

 テロ防止のルールはルールだ。

 違反は許されない。

 「あ、う…」

 イケメン、ちょっと怯えた表情をするあたり、あたしのどこかの嗜虐趣味をさそっちゃう所だ。

 手応えあり!

 手首を返して刃先をねじる。

 接近戦での無機制御体機能停止の基本だが…頸椎の制御系は切断できたはず?…


 あれぇ? 

 …首がもげて、コードがむき出し…


 「ああああががががががが gggks っっ s すすふぁふぁふぁ…」


 イケメンは、頸椎コードの切れ損なった束で、その頭を、首からぶら下げたまま、ダンスを踊るように両手を振り回しはじめた。

 首から上がお笑いびっくりショーと化したイケメン。

 みりゅうすが走ってくるコースの方向にかけずりだしていった。後方 100m くらい!?


 異常に早!

 …マジ!

 体幹運動制御が暴走した!?

 …うそっ…

 遠くから女の子の悲鳴が聞こえてきた_「ぎやぁぁぁぁぁぁ~」


 “やっちまった!”「あ、ちゃぁ…」


 「ひどいじゃないかぁ、せっかく今日も頑張っているみりゅうすさんに、ボクの心を伝えようとしたのにぃ」


 「なんだと!」


 「あ~、ひどい、みりゅうすさんに嫉妬してるんでしょ、」

 デブは、鼻から脳天へ抜けるようなキンキン声で見下すように喋った。   あたしより一回りでかいデブ学生は勝ち誇る。

 「胸が大きいだけじゃ、ボクらの姫の魅力には絶対勝てないのにねぇ!」





✔ Topology Conversion ready ?(トポロジーコンバージョン レディ?)




 「今、何て言った!?……………………………………………………」



 「あ、う…」

 「いや、だから、胸がどうしたって?」

 「あ、その、大きいのはいいかな、な~んてね?…~…~…」

 あたしは、片手で、滝のようなうっとおしい脂汗を流しながら薄ら笑いをしているデブ学生の胸元を締め上げた。

 「大きい胸はいいか?」



 _Topology Conversion ready ?_

 スーツの近接警戒モード発音:トポロジーコンバージョンレディ?_訳:位相転換準備?_BGM“キャッチ電子音”設定)


 スーツの近接警戒モードが、あたしのほっぺに出ている密着型インカムでささやく。

 それに応えてあたしが小声でコマンドをくだす!


 「Topology Conversion 1st Covering on !」

 発音:トポロジーコンバージョン ファースト カバリング オン_訳:位相転換第一着装起動! 



 Von…………………………0.3秒ほどの間………………………



 「うん、はい、いい、いいかなぁ、なぁんて…」



 タイトなスポーツブラと大胆なジョギングショーツは、黒いメカニカルなボディスーツの上に重ね着していた?


 いやいやいやいや___


 スポーツブラもジョギングショーツも、黒いボディスーツのあっという間の着装の衝撃波で半分破れかかっているみたいなので、このままこの真っ黒い特殊装備の着装を解除するのはまずいような気もするが、そんな事まで構ってるヒマは無い。

 彼女が特殊装備をもっている軍事関係者であること。

 それを秘密にしないでいい立場にあることは明白だった。

 そして、学生のよき味方である事は間違いないだろう。

 テロ発生疑惑のある学生には身体にいってきかせるのもアリ、というのは銀河の何処へいっても通用する常識だ。


 デブ学生は、怯えていた。

 自分より背の低い、“姫よりも評価の低い見知らぬ女子”を、自分の思いのままに仕切れるとたかをくくった上から目線が木っ端微塵に粉砕されたから。

 それは、強い正義への願いによって、すべての知的有機体の倫理道徳規範の正統なる判断の場に突き出されたおののきそのものだ。


 「あたしの胸は大きいか。」

 「ぇ、〜、ぇぇ、、ぇぇぇぇぇぇ、立派で、〜、ですねぇ、魅力的で、ででです〜よぉ、~」


 「ほぅ、あの機械のイケメンで何するつもりだったんだ、あぁ?」


 デブ学生の口元は恐怖に震えていた。  


 あたしは、片手でゆっくりとデブを持ち上げる。

 「Topology Conversion 1st Covering on 」では、地盤が耐えれば片手で500キロまで持ち上げられる。


 「きみは、」


 「は!?」


 「そのぶったるんだ腹をダイエットしなさい、内臓脂肪多すぎ、血管ボロボロ!」。

 

 軽くめまいがする程度にデブに勁を打ち込み、さっと、手を話す!


 _デブの尻餅!_『みりゅうす様江』の給水台ごとひっくりかえる。


 「これくらいのカロリー燃焼は最低限必要、青年よ、励めよ。」

 あたしは、教育的指導の観点から締めあげておいた。


 あたしには、相棒と仕事をする時に『爆乳エンジェルズ』という発音するのも忌まわしいあだ名がある。

 どうせ呼ばれるのなら『らぶりーえんじぇるず』と呼ばれたい。

 誰に命名されたか、って?

 決まってんじゃん!

 こーゆー不作法をしちゃう大多数の男ども。

 すべての知的有機体男性の『自分の事は棚に上げた性欲満点なブザマな醜態』は、間違いなく銀河の平和と治安を乱すものだとあたしは硬く信じている。





 あたしは、問題学生行動指導、という事で学務課に一報は入れておいた。

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