★せっしょん016 奇麗な女になろうね
がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん
あたしが見届けた時空連続体のさざなみ
Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session
The ripples of the space-time continuum that I saw
★せっしょん016 奇麗な女になろうね
☆session016 Let's be a beautiful woman
✔ 放課後のオープンカフェ
彼女の名前_なのく・しむくれりあ・れんだーさいあん。
あたしらがやってるバンド、『ナチュラルサウンド』のロジャオ・エンドラギターの奏者。
卵胎生爬虫類知的有機体のロジャオ・エンドラ人。
通称:なのくちゃん。
在籍は教育学部初等教職課程
見た目一番目立つのが大きなしっぽ。
身長は 210cm。
体格の特徴は、なんといっても大きな長いしっぽ。
後頭部には折りたたみ式の三対の角(つの)が、髪の毛の中から生えている。。
折りたたみ式なのは仰向けに寝た姿勢の時に邪魔にならないように、ま、考えたら当然か。
胸にはちゃんと二つの大きなおっぱい。
腰もくびれてるし、無駄なお肉は無い。断言しちゃう。
あたしがが見上げても遥か上の方に頭がある。
立ち止まる時は、大きなしっぽを片足にからめておく。
さて、彼女は、厳かに一枚の紙を取り出した。
軽く溜め息、ついたかもしれない…
「プリントアウトしといたから、これを冷蔵庫の扉に貼ってね。」
紙にタイプされたメニュー
『高カロリー消費ストレッチを応用したジョギング』…やり方云々
『水泳』…やり方云々
『深呼吸法』…やり方云々
『食事メニュー』…やり方云々
「はぁ」
「今回も!シンプルにまとめてみたわ。」
「うん」
「やること多すぎてめんどくさくなっちゃうのもヤよね?」
あたしの大切な友達は、優しく心配げな笑顔で説明します。
あたしは、半ば、不安と期待の入り交じった溜め息をつきつつ、アドバイスの紙を大切に折り畳んで支援パッドと本の間に大切にはさみました。
「それとねぇ、これは、ストレッチとジョギング、水泳のモデルパターンの動画。」
彼女はあたしに携帯記憶層をよこしました。
「簡単に動画クリップしたやつなんだけだけどね、ミリギューム人の女性インストラクターのやつだから、参考になるわよ、きっと。」
「うん、是非参考にする。」
さすが小学校の先生志望だ。
子供の全教科指導要領対応がすべてできてるんじゃないか、とあたしは感動する。
「いつもの事なんだけど、今回も食べ過ぎよね~。」
「…はいィ〜…(5pt くらいの活字)…」
あたしは、消え入りそうな声で応えました。
もう、何の反論のしようもございません…
「ありがと~~~なのく女史!」
あたしは、彼女の大きな両手を握りしめて謝意を伝えました。
「さてと、そうと決まったら、明日休みでしょ、さっそく走りましょ、ね!」
「うん!」
友情って、いいもんだねぇ…
✔『ロジャオ・エンドラ堅効戦略連合』
LOJAO=ENDLA・Solidstrategical Federation
読み_ロジャオ・エンドラけんこう戦略れんごう
☆民族構成:ロジャオ・エンドラ人_
…彼らは卵胎生のは虫類が起原の知的有機体。
お堅い思考ならまかせろ、というのが血筋。
でも有名な教育者や哲学者を多数輩出するのはここ。
みりゅうすのお友達のなのくちゃんは、いい人だねぇ。
彼女、牙がすごいし、しっぽも大きいんだけど、美人だよ。
首都星:ホームランド オブ ラスイーシン
居住恒星系:4
自治共和国 121
自治区 148
元首:堅効戦略連合議会第一主席
生存圏絶対防衛機構 2軍制
1、空間支援機動群(軍)
2、情報管制基幹中枢指揮群(軍)
人口:109 億 5800 万
政体:連邦共和制
構成種族(氏族)数:25
【 国旗(堅効実践連合旗) 】
留学生数は約 750 万人。
✔ 新着情報
ゲックラスは、ターゲット:みりゅうすに近い場所にいるナノマシンの一群にコマンドを送るべく、バーチャルキーボードの上に指を走らせた。
手垢のつまった真っ黒に汚れた指だ。
それでも洗おうとはしない。
今こそ、自分で自分の青春に萌えて(燃えて)いた、という自覚だけは極まっていた。
そして、こんな楽しい時間が削がれるすべての物を無意味と切ってすてる。
それが美少女萌え系オタクの真髄だが…
続けているといくらでも難しい話にころがりそうなので、ここらへんでやめておく。
「お、《姫》だ、何してんだ?」
ゲックラスはみりゅうすの事を《姫》というコードで呼ぶ。
《姫》の人脈は、現在までの巧みな(不本意な表現だが)ストーキングで、それなりに把握している。
ナノマシン自体は単体で数十ミクロンのサイズ。
それはみりゅうす固有の生体電荷に反応して位置信号を送る機能しかない。
しかし中にはカメラポッドを装備した数ミリ大の大きさのものがいくつか混ざっており、こいつがターゲットの映像を送ってくる。
音声も拾える。
移動は、ナノマシン群体による帯電滞空効果を使って、煙のように空中を移動する。
みりゅうすを探知するナノマシン、“然るべき情報”を確認した。
なんと、彼女が携帯のアドレス画面をスナップするシーン。
彼女の背後に密着しているカメラポッドのナノマシンが、『なのく、あたし、太った、かも…』の送信済みメールのタイトルをキャプチャしてる。
油断も隙もあったもんじゃない。
「姫がまたダイエットジョギングをやる、有志は参集されたし!」
ゲックラスは『今日のみりゅうす』のホスト掲示板に、猛然と新着情報を書き込んだ。
✔ 翌日、我らが大学のジョギングコース
とにかく長い。
半端なく長い。
総延長、くねくね曲がりくねっているので“ここ”のコースだけで、300 キロを遥かに越える。
全部回ろうと思えば一ヶ月近くはかかるが、当然そんな事をする好き者は、特別なメニューを実践している体育系の学生のみである。
あたしらみたいな軽いトレーニング健康維持のために走る有機体専用のコースは、往路復路の構成がうまく出来るように配置されている。
学生会館の前をコースが走っている。
それでも近郊の広大な丘陵一周分くらいは充分にある。
更衣室。
あたしの今日のいでたち。
ボディスーツ、ストッキング、リボン、ジャケット、サッシュベルト。
ジョギングウェアにするには、いったんすべて脱いではだかになる。
なのくちゃんもはだか。
あたしに聞く。
「ねぇ、ウエストサイズ測った?」
「う"…ぅうん…」
あたしは否定した。
いやぁ、レポートの準備やらバイトやらで結構忙しいのは、言い訳なんだが、よくはないなぁ、と思う。
小姓の顔が思い浮かんだ。
なのくちゃんは、着替えるためにはだかになってるあたしのお腹に優しくさわった。
「増えてる。」
一言、真実のお告げが…
「あぁう"~」
あたしのしっぽがふよ〜ん…
「V ゾーンとかきれいにお手入れしてんだからねぇ…」
「う"…」
「後は体型だよね。」
女の子なんだけど、あたしより遥かに大きいロジャオ・エンドラ人の、のほほんな彼女は、神話に出て来る龍神みたいなイメージをその背中に宿しながら、あたしを見つめて話します。
「うん!」
「奇麗な女になろうね。」
「うん!」
あたしは、ハイレグのジョギングウエアに、スポーツブラ、タンクトップを羽織る。
応力可変対応型スニーカーに履き替えます。
『FiiLA』のロゴ入。
軽いんだ、このスニーカー!
なのく女史は、裸足。
これロジャオ・エンドラ人の習慣なの。
作務衣風のジョギングウェアに、キャップを被る。
あ~あ、彼女、これで背中に羽根が生えてたらどうしよう、ってあたしはいつも愉快に思っちゃう。
✔ 形容しがたい隔絶の彼方に存在するドキュメント…
教授は、坂の途中のテラスのある喫茶店で、ライホリオン・ミーと会っていた。
教え子との出会い。
葉の落ちた梢に高く弾ける冷たい陽光が、テーブルの上にランダムな光の粒を散らしてゆく。
それは、一般公開の出来ない深い意味をもった“再会”。
二人の共有する時間。
最初の数語をかわして、かなり長い時間、穏やかな笑顔のまま無言だった。
次の一言。
それは、ここに存在する語られざる物語の暗示。
そして、その先に、誰もがアクセス出来る自由な時間の示唆。
「全く同じ歳格好のきみと会うのは…」
「この大学にお邪魔するの、あたし、12 回目です。」
「ふむ」
「そして、教授とお会いするのは2回目?」
「前は 21 年前だったかね。私が準教授になる前の頃だったかな。」
「そうですね。」
「3年前は大変だったな。」
「あの時はいろいろあったので、教授にお会いせずにすぐ身をひきましたが。」
「きみは変わらないな、いや、これは言うまでもない事なんだがね…」
二人の吐く息は白い。
教授は、携帯のプロジェクターを右手で開いた。
特別にカチン、という音とともに画面が空中に浮かぶ。
21 年前の教え子達と一緒に撮った写真。
教授は 21 年の年月をその顔に刻んだ。
プロジェクターの中の学生達の中にも写っている目の前の彼女は、その写真と一切変わらぬ笑顔を今現在、目の前で穏やかにたたえている。
「あたしの魂の時間線が、次元多様体上の特異発現収束座標上にある、なんていわれても、あたし自身ピンときませんものね。」
美少女の台詞は浮世離れしていたが、妄想ではなかった。
そして、仏頂面でならした彼女の口元に微かに笑みが浮かんだようだ。
大学というアカデミーの研究資料として、彼女の事は、ちゃんと記録にも残っている。
その不思議な時空の因縁を、笑顔で話す少女。
「それできみは、時間的に不老不死を得ているわけなんだね。」
今日は、ひときわ肌寒い空気の日だった。
「もう、250 年も前から…」
「うむ」
「でも、そのおりおりに特別なイベントを甘受する事が決まってるから。」
彼女の説明は、おそらく監察官評議会_深空間探査機構、時間局、過去院、あるいは暗在系探査小委員会の関係者によるレクチャーを必要とするものだ。
彼女は特別な存在であり、また教授との縁をもつ、ありふれたただの女子学生である。
「学問を窮めるものにとって、不死は、あたかも銀河の深淵を覗くようなものだな。」
「教授、量子宇宙物理の先生だったらそんな言い方はなさいません。」
「ははは、なるほどな、量子宇宙物理のケルトナッケン君にでも特別進講してやったらどうかね。」
「あたし、あの先生にセクハラされました。」
「そりゃ、大変だ。今度倫理委員会に申告しよう。」
『倫理委員会』云々は、無愛想な彼女を思いやっての教授なりのただのジョークだった。
時の狭間を旅するツンデレ美少女。
教師の核心的な問いに素直に応える。
「寂しくはないかい。」
「いいえ、ずっと大切な人といっしょにいられますから。」
大切な人が誰か明かされるのはずっと先である。
彼女はチョーカーに手を当てて、少し眼を伏せる。
彼女の首のそれは、チョーカーと呼ぶにはゴツすぎるもので、装飾品ではない事はよくみればわかった。
その実体は彼女をサポートする『生体量子電脳』だった。
教授は、永遠の縁のこちらと向こうにいる隔絶感に、それなりに満足はしていた。
「そうだな。」
「それより、みりゅうすさん?」
「ふふ、やはりそう来るかね…」
「詳しくはナイショです。」
「了解した…きみが、ここへ来る、という事は、毎回、何かが起こる、という事なのだな。」
ロジャオ・エンドラ人の教師は、その爬虫類的な特徴をわずかに残す顔に愉快そうな表情を刻んだ。
それはシンプルな探究心の発露にすぎなかった。
「あたしにもわかりません。」
「ほう」
「あたしの仕事を手伝ってくださっている広域時空界面哨戒艦がいるのはご存知でしょ?先生。」
「ああ、噂だけはな、大学自治圏との兼ね合いで微妙なニュアンスがかねてよりあるのも承知している。」
「いろいろお手数おかけします。」
「なってみてのお楽しみ、ということなのだね。」
「そうですね、楽しみにしていてください。」
「うむ」
彼女の唇は、信頼の笑みを浮かべて、かすかに穏やかな形になった。
「なるほどな、無限に時を旅する教え子と別れを告げるその時まで、私は教育者としての務めをしっかりと果たすことにしよう。」
「ありがとうございます、先生。」
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