★せっしょん014 定時着任報告

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw


★せっしょん014 定時着任報告

☆session014 Scheduled arrival report




✔ 『翡翠のロングヘアを、なんともいえない多角形状のおだんごにまとめたミリギューム人女性』のケース




 学生のようだ。

 子供のように大きな緑色の瞳。

 三角形の大きな耳。

 真っ黒いボディスーツ。

 ブラウンとダークネイビーブルー、ブラック系配色のゴシック系の派手なフリルのついたロングスカート。

 黒いレザーのベルトで飾られて軽快に揺れるしっぽ。

 細身でしなやかそうな身体の線は、我らが史学部の話題のクイーンより一回り背が低い。

 可愛い女の子で有名な似ているモデルが多いと評判な史学部の話題のクイーンと比べたら、「この子は安室○美恵みたいだ」、と、すぐ目の前に見える彼女を見て嬉しそうにつぶやいていた通りがかりのプロトアクラ人の学生がいた。

 『安室○美恵』って、いったい何学部のひと?

 その『安室○美恵』みたいなひとのつんとすましたしっぽが、ふらっ、ふらっ、と彼女のステップに合わせて左右にゆれている。


 彼女は“歩きスマホ”をしながら歩いてくる。

 大学前の長い坂の木漏れ日が、彼女の顔に優しい変化を流してゆく。

 経済学部の授業が終わって教室から出てくる学生が彼女を見ていた。

 体育会系らしい角狩り男子のミリギューム人とプロトアクラ人の集団だ。

 一番背が高いミリギューム人が、彼女に気がついた。

 「お、なんか可愛い子いるじゃん。」

 一人が、ながらスマホ彼女に声をかけた。

 「あ、ほんとだ、ねぇ彼女ぉ、ヒマなの?」

 彼女が顔をあげる。

 彼女と男どもの間は 50 メートルくらい。

 「おまえ、手、早いし…」

 彼女からの返事。

 「すいませ~ん、恒星間文明史学部中央管理棟ってどこですか?」

 あまり人なつこそうに見えない表情だったが、希少価値のある可愛い美人の顔だ。

 「おお、だったら結構距離あるよな、あの 090棟の向こうにコミューターの停留所があるから、そこで乗っていくといいよ。」

 「そう!ありがとう。」

 彼女は愛想笑いも浮かばないタチらしい。

 「でさ、さっきから夢中になって何見てたの、彼女?」

 「…」

 笑顔が無い。間…

 彼女は典型的なツンデレだ。

 しかし男どもは、次の答えで夢中になってしまった。


 「『今日のみりゅうす』」


 「お~~~~~~~~!聞いたか!」

 歓声があがった。

 「うん、こいつはすげぇぞ!」

 「お~~~~、よし!」

 「うん、すごい!」

 刈りあげ男子は、思わず両手で気合いを入れた。

 『今日のみりゅうす』に関心をもつ新たな美少女の出現!

 これは注目に値するイベント(事件)だ!

 「ん?」

 彼女が、一瞬にして殺気だった男どもに疑問を呈した。

 「いや、何でもないっす!」

 狼狽する男どもに、仏頂づらで応答する彼女。

 「…」

 「ちきしょ~!今度絶対 ID ゲットしよう、彼女の」

 「おう、史学部のどの教授んとこいくんだろう、クロス合コンやらないと。」

 「そうだ、それがいいぜ…」  

 彼女は、男どものたぎる想いにシニカルな笑顔を投げかけて、さりげなく携帯のモニターにもどった。

 コミューターの停留所が見えてきた。

 脇に高さ 100 メートル以上の落葉樹がある。

 それは停留所の周囲に憩いの木陰を広げていた。



 「あの木、120 年前にあたしが来た時には…」


     えぇ!?…120 年前!?



 停留所でコミューターの待ち時間の間。

 彼女は、携帯のモニターに、指を独特なタイミングでスナップさせると、聞き慣れない言い方で音声入力した。


 「深空間探査機構外周警護局(しんくうかんたんさきこう、がいしゅうけいごきょく)006 課、暗在系探査小委員会嘱託(あんざいけいたんさしょういいんかいしょくたく)らいほりおん・シャカスタス=ミー、定時着任報告、超次元多様体生成特異点追跡自動ログ開始…」


 大事な秘密事をひとりごちた彼女は、ちょうど来たコミューターに軽やかに乗り込む…







✔『あるプロトアクラ人の(修行中)若い美人尼僧の、ちょっとした個人的にシビアなイベント』のケース



 



 空は晴れわたっているが、空気は冷たい。

 気温は0度近いか?

 峠の舗装もされていない山道。

 若い女性が一人で歩いている。


 彼女は、朱(しゅ)・リア・らすみぬしゃいおん。

 プロトアクラ人の若い女性、尼僧だった。


 普通、出家尼僧は剃髪するものだが(彼女の星ではそういうスタイル)、彼女は、普段からかつらとエクステでごまかしているので、全く剃髪のての字もわからない。

 肩まで届くプロトアクラ人女性特有の長い垂れ耳を、防寒用のイヤマフで被い、ニットの帽子をかぶり、薄紫色のダウンジャケットに、荷物一式を入れたリュックを背負う。


 有機体先進開発機構文明環境総合大学、宗教学部奥義実践研究科専攻。

 史学部クイーン_みりゅうすにタメを張れる宗教学部のクイーンである。

 ま、一応聖職者のはしくれなんで、ツンケンしたプライドなぞ微塵も無い所が彼女の魅力だった。


 彼女がこれから赴く場所_『重犯罪及び交通傷害致死事故受刑者矯正教育施設』。


 彼女の腰には大きめのポーチ。

 自衛のための携帯火器である。

 見た目?

 モデルにしか見えない癒し系美人。


 癒し系美人?

 彼女は学生で、みりゅうすの仲良し学友4人組の一人だった。

 みりゅうすが、原付仕様のエアバイクしか乗れない運動音痴なのに、彼女は超大型二輪系までこなすアスリート美人なところが、史学部天然系美人と甲乙着け難い所でもある。

 うんと天然ボケな沢○靖子にそっくりだ、という評判がある。

 『うんと天然ボケな沢○靖子』なる名前の女の子がプロトアクラ人の学友にいるなんて聞いたこともない。

 いったい誰それ?…


 彼女は携帯を取り出した。

 三つ折り形式で、タッチパネルも3つの変わった形式。

 しかるべき相手が出た。

 「導師さま?」

 『おう、朱(しゅ)・リアよ、』

 呼び出した相手は、年輩のロジャオ・エンドラ人の高位聖職者である。

 人なつこそうな好々爺だ。

 「受刑者矯正教育施設、着きましたぁ。」

 山道の向こうに該当する建物のドームが見える。

 『そうか、お疲れさまじゃのぅ、何もないところじゃろ。』

 「寒いし。」

 『そこはの、料理はうまいぞ、刑期を全うさせるためには受刑者の健康にも気を使わねばならんでな、一息ついたら、受刑者の心の灯火となってまいれ。』

 「はい、導師さま。」


 1週間前。

 『実はお主(ぬし)に頼みたい事がある。』

 『え"~、またですかぁ…』

 なんだかイヤそうだ…

 『こんな修行はめったにないぞ、何よりお主の精進向上にはうってつけじゃ。』

 『はぁ…』

 『お主に、重犯罪及び交通傷害致死事故受刑者矯正教育施設にいるある受刑者が殺害した“ 被害者 ”の御霊を懇ろに鎮めてやってきて欲しい。その受刑者のすぐ目の前でな。』

 『個人の前で護法壇を組んで執り行うんですか?』

 『そうじゃ、お主は、“ 初期鎮魂諸法 ”から“ 壇八方界鎮護法 ”まで修めたからな、出来るじゃろ。』

 『護法壇を個室で組むんでしょ、そんなのやった事ありません。』

 『ま、今回は“ 被害者 ”が特別なんじゃがな。』

 『特別?』

 『何事も初めはある。』

 『あぅ…』

 彼女の導師さまは、統合銀河宗教者協力機構の密使の一人である。

 というわけで、彼女もまた、統合銀河宗教者協力機構のメンバーの一員であり、より大きな枠組みで惑星監察官評議会の構成員の一人だった。

 どういう師と出会うかで、その人・知的有機体の一生の価値は決まってしまうものである。

 彼女は、第三者証言として『癒やし系美人』の称号は頂戴していたが、見た目に似合わずビビリとヘタレな性格だった。

 『人は見かけによらない』のである。

 そんな自分をマイペースで愛しながらも、師匠の言った事は必ず素直に実践してきた彼女だ。

 そして、まだ学生だった。

 正直遊びたい気分まっさかりなのは否定しないが、遠隔地実践修行もサヴァイヴァーとしてのノリで以外と楽しんでいるらしい。

 施設のゲートで入所手続きを済ませる。

 「ああ、あなたが、連絡を受けていた教誨師(きょうかいし)の方ですね。」


 「どうもお世話になります。」

 保安管理区画を抜けて、施設内部へ入る。

 ここは、みりゅうすのいる史学部から北へ 1000 キロ以上の緯度で、しかも山岳地帯のど真ん中だ。

 彼女が利用したローカルコミューターの空港からも 10 キロ近く離れている上に、正規の交通路は一切ない。

 ここが刑務所だから。

 ゲストルームに身を落ち着ける

 「さてと、さっそく準備に入りますか!」

 バスルームにてさっそく斎戒沐浴。

 香炉と経典を並べ、均整のとれた肢体の上に、下着をつけないまま直接、薄紫色の作務衣を羽織る。





◇『汎銀河西方核連邦(はんぎんがせいほうかくれんぽう)』

 Universal galaxy of west core union




 三つの文明圏が連邦を作っている。

 【 国旗(連邦統合旗) 】


 『スインナグビー水聖連盟体』

 …ここの人たちは、足に巻き付けるようにして折りたたむ大きな鰭がついている。呼吸系は大気と水のハイブリッドなので、水に潜っても一切息継ぎをする必要がないわけ、便利よね~。

 陸上であたしらと仕事する時は、男女とも巻き付けて折り畳んだ鰭を守るための長いスカートをはく。

 居住恒星系:1

 元首:連盟体執行評議会代表

 人口:9億 2890 万

 ☆民族構成

 スインナグビー人_ほぼ 100%

 留学生数は約 1250 万人。

 全学部にまんべんなく学生がいて、スインナグビー人の女の子だけでつくるチアリーディングはちょっと有名。


 『プロトアクラ文明圏』…あたしの相棒の出身はここだ。

 『プロトアクラ清音王国(せいおんおうこく、通称)』

 居住恒星系:2

 元首:コリオプテラ・リュ身音・サクィザリア 12 世(第 35 代リュ身音“りゅみおん”朝)現国王

 人口:6 億 7850 万

 政体:4つの王室連合議会と5つの最高清音評議会を中心にした空間連合王国

 【 国旗(連邦統合旗) 】

プロトアクラ人_ほぼ 100%

 構成種族数:1、移民多数

 サイゼリア最高清音評議会

 シスラミア最高清音評議会

 メイレーキア最高清音評議会

 リンドラミア最高清音評議会

 ハルカ最高清音評議会

 

 留学生数は約3970 万人。

 王室舞楽や民族舞踊の盛んな所。

 あたしの相棒は、ここの王室の『舞姫』のオフィシャルな資格をもっている。

 プロトアクラ人は耳が長い。

 発音域が広く、超音波で発音出来る特殊な音声名称をもっているのよ。


 『ミリギューム文明圏』

 …あたしやみりゅうすの出身がここ。

 【 国旗(連邦統合旗) 】

 『ミリギューム大統治体連邦』

 居住恒星系:3

 元首:賢人評議会連合至高会議議長 

 人口:70億9850万

 政体:大統治氏族伝承による調停民主主義共和制

 【 国旗(連邦統合旗) 】

 ミリギューム人_ほぼ 100%

 構成種族数:1、移民多数

 カイナン大統治氏族

 キー大統治氏族

 シー大統治氏族

 カー大統治氏族

 スウェン大統治氏族

 カ・ライ大統治氏族

 ノイオ聖統治氏族

 サンザミア聖統治氏族

 カイオ聖統治氏族


 ミリギューム大統治体空間統合軍_3軍制

 重力圏展開基幹群/航行圏安全保障基幹群/次元情報戦略基幹群

 留学生数は約 2270 万人。

 汎銀河西方核連邦の中核を為したのが、およそ 29000 標準紀元前の話。

 歴史的な背景は、まぁいろいろあるんだけど、野性的なライフスタイルを重んじる文化的風土は濃いね。





✔ 「もしかしてこの子?」




 受刑者はミリギューム人の若い男だった。

 学生である。

 道を誤らなければまだ南の暖かい地域にある学舎で学んでいる身の上だったはずだ。

 眼がうつろだった。

 「オレは、あの子が邪魔だったんだ。」

 「…」

 若い女性の僧侶は、男の台詞を聞き流しながら、目の前に組んだ 20cm 四方の護法壇に、守護炎界法の火点(護摩木に相当)を焼(く)べてゆく。

 亡き被害者の御霊を鎮め、冥福を祈願する真言が、プロトアクラ人の清音古代印章語により次々に唱えられてゆく。  

 真言は、奥義として語り継がれる言葉。

 会話言語化する事は出来ない。

 またプロトアクラ人は超音波、低周波発声が可能であり奥義真言格納帯としての波長帯が存在する。

 受刑者の男は黙って聞いていた。

 男の心の中で何かの流れが変わってゆく。

 男のオーラが変質している。

 固く無機質なそれが、ゆっくりと柔らかく暖かい光を帯びてきているようだった。

 清音古代印章語の真言は、最後に、今日の小さな法要を執行出来た事への感謝を言上する段にいたる。

 そして、若い女性の僧侶は、法要の終了を告げる引証を執り行い、この受刑者の男の救いのために執り行われた小さな法要を終了した。

 「…あ、ありがとうございます…」

 男は、小さな声で感謝の言葉を述べた。

 若い美人の僧侶は、花のような笑顔で応えた。

 「いいえ、どういたしまして、亡き御霊(みたま)の冥福祈願を無魔成弁(むまじょうべん)させていただきました。」

 「はい…」

 「これで、心置きなく罪の償いに励んでくださいね。」

 「は、はい…」

 男の心は、少しほぐれてきたようだ。

 罪の償いは告白にあり、それを支えて支援するのは聖職者の仕事である。

 (学生修行僧に刑務所へ一人で行かせるのもどうかと思うが…)

 男は、ゆっくりと語り始めた。


 「オレが殺したあの子の名前は、らいほりおん・ミーというんだ。」

 「え"!?」


 「邪魔になって、もう顔も見たくない、って思って、バイクに嫌がらせの細工したんだ…」

 「まぁ」

 「そしたら事故って、バラバラ即死で…」

 学生の受刑者は、引き出しにしまってあった女の子の写真画像のプリントアウトを出して、美人尼僧にみせた。


 ライホリオン・ミー、この子、知ってる!

 史学部に転学してきた子がいる、ってみりゅちゃんがいってた。携帯の写真見せてもらったし。

 なんで?

 …あたしが大学を発つ時に顔も近くでみたわよ…

 どういう事?…


 癒やし系美人尼僧は、自分の携帯の写真を見せて、


 「もしかしてこの子?」


 と、猛然と確認してみたくなってるのを抑えるのがやっとだった…



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