★せっしょん013 秘密の闇ファンサイト『今日のみりゅうす』

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw



★せっしょん013 秘密の闇ファンサイト『今日のみりゅうす』

☆session013 Secret darkness fan site "Today's Mie-Lyus "



✔ダイエット




 「ねぇ、なのく女史ぃ、あたし、太ったぁ?」

 「あはははは、またみりゅちゃんの病気が出た!」

 あたしの親しい異星の大柄な女友達は、大笑いをしてくれちゃうんだな、これが。

 「もぉ、そんな事言わないでよぉ、小姓に言われて三週間は収まってたんだからぁ」

 「はいはい、どぉれ」

 あたしの友達は、彼女_ロジャオ・エンドラ人の体格からしたら、幼児小学生なみの小柄な異星人の少女(あたしのこと)を、軽々と抱き上げる。

 「あいかわらずみりゅちゃんのおっぱい、ふわふわで気持ちいいねぇ~すりすり」

 あたしの腰に彼女は手を回して、あたしの両足は軽やかに地面を離れる。

 あたしの胸は、大柄なロジャオ・エンドラ人の胸の胸の谷間に挟まれて、つぶれちゃうんだ。

 あたしは何度もやってもらってる事なんで、気持ちよかったりするんだな、これが。

 彼女は教職課程をとってる。

 児童の健康管理のためのスキンシップは教授法の中でも基本中の基本。 


 ロジャオ・エンドラ人の表情が固まった。

 ぴく!…(片目のまぶたが険しくなる)


 あたしからみた彼女の顔が変わったのがよくわかりました…嗚呼…

 のほほん系の大柄なロジャオ・エンドラ人の女の子は、のほほんな笑顔を若干引きつらせていました。


 「放課後、カフェに来て!…対策考えよ、ね!?」

 「え”~~~~~~…」






✔ 秘密のファンサイト『今日のみりゅうす』トップ画面_3日前に学食でソフトクリームを頬張っているみりゅうすの画像





 その撮影者(?)はプロの写真家か、と思うほどのあどけなく可愛らしい笑顔が切り取られている。

 画質はさすがに荒い。

 その理由が、この画像を撮影した張本人の所行を物語っている。

 それが表示されているのは、医学部の学生、ゲックラスの所持するノート型携帯電脳だ。

 外付け記憶層が全部で6つ、テープでべたべた貼付けてケーブルで巻き込むように接続してある。


 ここは医学部第563245生体技術実習室。

 こいつはストーカーか?


 ゲックラス・セイントあっくす


 彼はケントムレイア人。

 普通の二足歩行型知的有機体だ。

 身長 220cm で、20 歳のデブ。

 体重は 200kg は超えているだろう。

 かの『デブっぷり』…銀河の神々による『二本の足で歩いておのれの人生をまっとうせよ』というお告げに真っ向から抗うかのようだ。


 「げへへへへ、」

 モニターに写っている“収穫”をみて下卑た含み笑いをする。

 鼻に抜けた神経質っぽいキンキン声

 …うっとおしいこと夥しい…


 耳が大きく、肌の色は標準で白、髪は固く男女ともショートにするのが風習。


 こいつは、我らがクイーン、みりゅうすにぞっこんの変態。


 医学部在学で、こんなに凄まじいデブで、どうすんだ!?  …という善意の第三者の危惧が当然あった。

 そんなものがさしあたって危機に直面しないほどに、彼らの青春は燃えて(萌えて)いる。

 大学生とは、どこでもそんなものである。

 彼はそれなりに秀才で、一見すると穏やかなインテリ。

 だが、問題学生…女性に対する情熱は存在しているが、そのベクトルがとにかく内向きで歪んでいた。


 彼は勉強家であり自律的に目的を持って青春を生きている。

 上から目線で指導監督しなければならない部分が表面からなかなかみつからない所が、彼を扱う上で最もやっかいな所。

 医学部生の彼が設計する介護用ドロイドのセンスは以外といいらしい。

 しかし、彼は、みりゅうすの追っかけ指導者を秘密裏に自認する変態である。

 この携帯電脳はおっかけどもと情報を交換し、最新のみりゅうすの画像を配信するための基幹サーバーだ。

 『今日のみりゅうす』などと親しみやすい表題だが、その実態は闇ストーカーサイト。

 みりゅうすを探知するナノマシンがばらまかれている。

 『ソフトクリームを頬張っているみりゅうすの画像』を撮ったのもそのカメラを仕込んだナノマシンの仕業だ。

 コマンドを仕込んで盗撮を実行する主犯はいうまでもなくゲックラス。

 みりゅうす個人だけを趣味で覗き見をするマシンなので、なんと大学の警備システムにはひっかからない事になってるらしい。

 噂では、工学部の有志変態の協力を得て、警備システムのサーチをキャンセルするアクティブステルス能力が備え付けられてるとかいないとか。

 もちろん教育の自治の美名に厳格な治安維持警備体制が無いが故のグレーゾーンだろうが…

 みりゅうすを追跡して彼女の美少女画像を自動で撮りまくるこの超微細なメカニックは、まさに探知システムを使わなければ目に見えないわけだが、それが後々厄介事を引き起こすハメになる。


 みりゅうす、感あり!




✔ 暗躍四人組




 『感あり!』

 メールで瞬時に配信されてゆく。

 現在このダークな覗き見ファンクラブのメールマガジン配信アドレスは 300000 人近くいる。

 携帯片手に、『今日のみりゅうす』を見ながら、げへへへ、と怪しい笑いを浮かべる《みりゅうすのおいかけども》がいるわいるわ…あぁ…


 その中に、学食の片隅でたむろする4人。

 有名な盗撮小僧のグループだ。


 仲は良いようだ。

 ロジャオ・エンドラ人が2名、ミリギューム人が1名。

 最後の1名が『ツォーフォア・レンミングォ行政体統治聖連邦』からの留学生だった。

 普通の2足歩行型知的有機体。

 (いや4人とも同じような体型だが)

 このアカデミーのある星の住人たちとあまり変わらない。

 随分昔に移民したミリギューム人を祖先にもつらしいが、彼のメールチャットを見る機会が無ければ、彼の正体を見極める機会もまた来ないだろう。

 「もうすぐ姫が来るぜ。」

 「おい、お前、今日の装備は完璧なんだろ。」

 「2500mm 望遠に、ゲックラスのサーバーのリアルタイムリンク用のスクリプト揃えた!」

 マジですかそれは!

 プロ級のパパラッチの装備だろ_





✔ ベッドに物憂げにころがったまま携帯を眺めている、以外と、いや相当いい感じにイケてる彼氏





 場所?

 _みりゅうすのアパートから数キロ近くのシェアハウス。


 ヒマ、なのか?

 男子学生。 

 名前は、たつき・ザイトファングス・ザジ

 古地球系移民を祖にもつナイコンアロカ人。

 男性、23 才、身長は 180 cm。

 所属は、工学部 応用空間材質工学科 。

 様々な素材の研究をする学部、彼は素材オタク。

 彼の携帯_『今日のみりゅうす』のトップ画面。

 彼の顔かたちの品の良さから、彼が見ているトップ画面が闇ストーカーサイトってのは違和感ありありだが、それはそれ、青春の裏事情、ってやつだろう。

 彼は、何度もため息をついてはアクセスしたままの携帯を眺めて、ごろん…ごろん…と寝返りをうっている。

 と思うや彼は、いきなり裸になりシャワーを浴びた。

 ベッドの上にある携帯に抱きつくように、裸のまま倒れ込んだ。

 『今日のみりゅうす』の画像検索から、彼が好みの画像へジャンプする。

 画像が出た!


 これは夏か?


 みりゅうすが女友達2人とプールではしゃいでいる。

 一人はみりゅうすと同じミリギューム人、もう一人は耳の長いプロトアクラ人。どちらもアイドルユニットが結成出来るんじゃないか、ってほど可愛い。

 しかし、無駄な肉の無いイケメン君が裸になって見ているのはみりゅうすだ。

 それだけ彼女のオーラは別格だった。

 それは、包み込むような優しさと、弾けるような輝き、そして快活な遊び心が渾然一体となったえも言われぬ癒しのマーチだった。

 なんと!みりゅうすのしっぽは何故か3本。

 振り上げると頭の上のあほ毛のところまでくる真っ白いふさふさ毛のやつと、それの 70%くらいの長さのやつが両脇に。

 彼女のたおやかなな胸は、無駄な数値項の無い理想的な二次関数曲線。

 彼女のえろ可愛い魅力が、この快活に動き回るしっぽのおかげで、雄大に神秘の宇宙へ飛翔する。

 もう…他の追随を許さない。

 もう一人のミリギューム人のしっぽはみりゅうすの6割くらい。

 耳の長いプロトアクラ人のしっぽは、ふかふかのシュークリームのようだ。

 動画の直下にアクセスカウンターが出る。


《あなたはこの画像の 3658924 人目の閲覧者です》


 水着美少女3人娘のショートビデオだ。

 心臓が高鳴る。

 一人暮らしの彼女がいない男子学生にとって最高の宝物!




✔ 男の子はみんなやってるものさ♡



 みりゅうすが立ち上がる。

 彼女の身体を覆っているのは、身体に塗った繊維組織体のゼリーが水に濡れると水着に変化するやつだ。

 『水着を着ける』のではなく『身体にゼリーを塗って水着にする』のである。

 彼はみりゅうすのゼリー水着の秘密を知っている。

 アクセスする日によって、彼女の身体を隠す形が少しづつ違うことも知ってしまったから、どうにもこうにもおさまらない。

 覆っている面積の少なさでは 3 人の中では一番。

 隠している部分と、おおらかに見せている部分の対比の美的配分。

 その比率_

 それは女神が降臨している、という例えが相応しい。

 光が優しく白い肌のコントラストを描き出す。 

 美しい…

 立ち上がった身体を左側斜め後方から見ると、右足ふとももにベルトを巻いているだけなので、両手首のハンドデバイスとキャップ以外は全裸のように見える。

 いやいやいや、たおやかな彼女の胸は、一番揺れる頂部は、ゼリーの混色で熱帯の花のような柄の被いになってちゃんと乳首は隠してある。

 それでも陽光に揺れる胸のふくらみに弾ける滴(しずく)が見える程接近したカメラアングルは、抱きしめて永遠にそのままでいたい気持ちを押さえられないほどに、彼の心に切なさをかき立てていた。

 もはや、誰がこんなエロくて可愛いくて、信じ難い程の高画質なビデオを撮ったのか、等という理性的な詮索など毎回消し飛んでしまう…という桃源郷に遊ぶのが、彼女がいない彼氏の日課だった。


 いや、別に悪い事してるわけじゃないし…


 もし、彼女が生まれたままの姿で、今、オレのすぐ脇にいてくれたら…

 “…(前略)…あ~して、こうして…(中略)…こうやって…(後略)…”の想いを巡らせながら、彼は緊張が高まってゆく自分の身体の内なる奔流に身を任せる体制に入る。

 男子学生は一言、小声でうめいた。


 「ごめん!」


 自分の身体の堅くなっている部分の中に圧縮されていた液体が、数秒間ほとばしり出た。


 1、2、3…余韻…


 こんな事…してちゃいけない…

 彼女の事を今日も穢してしまった…

 黙っていりゃぁ、わからないさ…

 そんな誤摩化しが…

 オレはこんな事してちゃ…

 …って思いつつ、深く息を吐き出し、何度繰り返しても彼女の笑顔がたまらなく好きな事を、ゆっくりと反芻していた。


 彼は今日も結構、無精髭だった。

 ちゃんと腹筋は割れている。

 部屋は今日も相当汚かったが、ゴミは堆積していない。

 片付ける暇がないだけだ。

 そしてそれなりに彼はいい男なのだ。

 愛しい彼女の画像を携帯で堪能して、自分の腹の上に愛しい彼女への想いをこめた液体をぶちまけて、しばらく放心していた。 




✔ 出会いの予兆



 この惑星が『地球』と呼ばれていたのはずいぶん昔の話。

 今でもウん百年公転周期、ウん千年公転周期前の、その頃のほっこりするような文化遺産が、結構あでやかに残っていたりする。


 愛しい片思い彼女への想いを、自分の部屋でぶちまけている彼氏のアパートのすぐ近くにも、結構、何百年前の古民家遺跡が残ってる。


 この星の一番大きな大陸の東端に浮かぶ弓なりの列島のほぼ中央にあるこの大学惑星の一つの学園都市に彼がいて、

 学生として勉強してた、っていうのは、まぁどうでもいいことなんだけど、

 彼がみりゅうすを好きになってしまったのが運のつき!


 え?いや…

 ヤバいって事じゃないわよ。

 ま、でも、マジ、ヤバい事はあるかもしれないなぁ… 

 “あたし”は、知ーらなぃ、っと…

 あとはね、なってみてのお楽しみ、ってやつ、だね…




 あたしは階段をかけあがった。

 どこか宇宙の彼方の大学だから、重力制御の浮遊歩行機がいたるところにあると思ったら大間違いだよ。

 ちゃんと教室まで走っていかなきゃなんないの!

 今日の1時限目は『深宇宙演習』のガイダンスだ。

 外宇宙行くんだよ、この授業!

 →→→わくわくだ!

 あたしは、駆け昇った階段でカロリー消費したんじゃないか、という気休めを信じながら小姓に尋ねた。

 「レポートの章決めの草稿提出期限、いつまでだっけ?」

 「あさって、だっぴょ~~~ん」

 小姓は、陽気に答えた。

 こいつ、どうでもいい優先度低い情報は、結構楽しそうにいいかげんだ。

 そこがいいんだけどね。



 ゲックラスのカメラナノマシンがけなげに追跡していた…


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