★せっしょん012  I.O.A.E.C.E “ アイオイース ”

がーるずほりでぃ♡みりゅうす☆せっしょん

あたしが見届けた時空連続体のさざなみ


★せっしょん012  I.O.A.E.C.E “ アイオイース ”


Girls Holiday ♡ Mie-Lyus ☆ session

The ripples of the space-time continuum that I saw


☆session012 I.O.A.E.C.E 




✔ 小姓の健康診断



 あたしは起き上がる。

 と、あ、ぅ…ずっきぃん…………

 あたしの頭に痛みが響き渡る………と同時に胸焼けが…


 「ぁ痛ったぁ、うぷっ~~~~~~~~~~~…」

 これ、二日酔い? 

 「姐(あね)さん…また食べ過ぎたでしょ?」

 「い"!?」

 「昨日の教授の報告会、調子にのって三次会まで行っちゃうもんだから…」

 「え"!・・・」

 「ボクは立場上行くな、とは言えないけどぉ…」

 「あ”…」

 「ほら、今朝のボディスキャンデータ、」

 「ぅ”…」

 「この数字は…しばらくはねぇ…イエローカードだったからボクも油断してたし…」

 あたしに声をかけてくれる機械の相棒は、溜め息を織り交ぜながらよどみなく呟いてくる。

 あたしは余裕をもって返答出来るわけもない…

 「い”…」


 目の前にあたしの『体脂肪率』…レッドゾーン表示

 …29%…あぁ、この間より間違いなく増えてるわ…

 ヤバいよね、この数字…

 わかってはいるんだ…

 あたしといっしょに住んでる彼が示す数字は極めてわかりやすい…

 あたしが心の拠り所としていた“ぽっちゃり”から足を滑らせかけている、のよね…

 これって…あぁ…この数歩先に、デ…


 あたしを起こしてくれた相棒_名前は小姓(こしょう)だ。

 彼は、レビテーションパネルの透き通ったデータ表示を、ベッドの上のあたしの目の前に、ずい、と突き出したまま溜め息をついている。

 「あぁ…姐(あね)さん、昨日も目一杯食いまくってるしぃ…」

 一応、男なんだな、彼は。

 ま、あたしが女だから(?)


 そんなものは見たくない、というあたしの気持ちにかけらも配慮してくれないこの随伴機の優しい心遣い。

 あたしはどうやって応えたらいいんだろ…


 あたしの名前は、みりゅうす・えれくとら・シー。

 専攻は恒星間解析文明史。


 機械の相棒は、いつもはだかでシーツにくるまって寝てるあたしを手際良くひんむいて、その身体からセンサーをくりだしつつ、ウエストサイズチェック、体脂肪チェック、血中成分チェック…


 あたしのデータ表示


 『身長』…りゃすみん先生と同じ。

 りゃすみん先生って誰?っていうのももっともなので、後で教えてあげる。


 『身体三次元データ(これは細かすぎるので省略したい…あたしのフィギュアが余裕で出来ちゃう)』


 『体重』…あぅ


 『体脂肪率』…あぅあぅあぅ


 『血中成分状況:省略』


 「え”~そんな事まですんのぉ?」

 「文句いうたらダメですよ、健康管理はボクの仕事だしぃ、史学部クイーン4期目を目指す野望も、ボクは狙っているんだな。」

 変な訛で喋る機械の相棒にあたしは半ば呆れかけた。

 機械の相棒には、あたしら有機体の感覚器のような目鼻立ちは無い。

 それなのに、妙に嬉しそうだ。

 あたしが手縫いで着けてあげた男性執事をあらわすチョーカーがやけに似合っちゃってたりする。

 「んもぉ、めんどくさ…」

 「クイーンの水着審査、絶対上位に食い込める秘密兵器は、メンテナンスを怠けては…」

 機械の相棒は、有機知性体尊厳基準律準拠の人工実存を装備している。

 だから彼は『無機知性体』としての『自己実現』をおこなって、電子脳のコマンドスクリプトを発展的に更新する。

 知的有機体(あたしら自然生命体)が感じる成長の喜びは、彼も無機知性体としてシンクロしながら感じている、という事なのね。

 彼はあたしの立派な友達なの。

 「いいじゃん、そんなの…」

 「よくはないですぅ。」

 水着審査の秘密兵器? 

 ナイショだよ、だってそんなのずっと先の話だもんね~

 「おなかすいた、朝ご飯朝ご飯」

 あたし、寝る時はなんにも着ないから。

 起きたら、まず最初にさー、っと温ま湯シャワーあびて、バスタオルで全身しゃかしゃかしゃか!

 

 あたしのしっぽが、ふょん…ふょん…


 …ガウンをひっかけて立ち上がる。

 思考支援パッドに配信済みの今日のニュースを開く。

 ウインドウの左隅の《3D アイコン》を2回タッピング。


 ニュースのウインドウが支援パッドの上に三次元化し、自由に指先でウインドゥの角度と透明度が変えられる。

 小姓がスープを暖め、パンと玉子を焼いてくれる。

 「姐さん、明日っから玄米や全粒パンに変えます、お勧めダイエットメニューです!」

 「う、うん」

 忙しく動き回る小姓の機械腕は、作業をテキパキこなしながらやる事はやってる。

 あたしは口に出さないけどいつも感謝してる。


 えーと、イケメンが料理作る朝の番組なかったっけか?

 こいつ(小姓)はイケメンじゃないけどさ。

 まぁ、ぶっちゃけ…そんなイケメンといっしょに一つ屋根の下で暮らしたいかどうか?

 …って聞かれて、はいそうです!

 って素直に言えるほど…素直になれない部分はいっぱいあるなぁ…


 冷蔵庫のタッパーからコールスローサラダを食べる分だけかき出して、フォークを突っ込んで口へ運んだ。

 あたしは、パンをかじりながら、めがねを鼻にのっけて(近視なの)、ウインドゥを先へ送ってみる。

 あ、でもね、これただのレンズ眼鏡じゃないよ。

 100 種類程度のボイスコマンドでネットワークしてくれるツール、でもあるわけ。

 充電しておいた携帯を手に取ってメールを打つ。 



 SUBJECT:なのくちゃんおはよう____:

 あたし、太った、かも…



 あたしが何でも愚痴れる大切な友達へ一言送っておいた。

 最後まで現実を見つめたくないあたしの弱さを素直に書いてしまいたい…あぁ…





✔ 【 超次元多様体生成特異点(ちょうじげんたようたいせいせいとくいてん) 】




 何それ?…っていう突っ込みはもっとも。

 学食の新しいカップ麺!?…じゃないって!…


 学食のコンビニで売ってる『特異点シリーズ』っていうカップ麺があるんだな。

 お湯を注いで 30 秒で出来る、味は微妙。

 でもスインナグビー人向けの『特異点、水聖連盟海棲環境風味』っていうのは、以外とあたしの好み。

 スインナグビー人の住む星って、惑星全土がシーフードの宝庫だから頷けるものはある。


 すごいネーミングでしょ…って、いやいやいや、違う、って!


 実は、あたしのこれ、あたし自身が全くわからない。


 あたしは、普通のミリギューム人の女の子。

 普通の肉体をもった当たり前の有機体。

 普通の女子大生です。

 でも物心つく頃から、『あなたは超次元多様体生成特異点だから』と言われてきたの。


 『何それ?』って聞くと『そういうものなのよ』と笑ってごまかされてしまう。


 あたしは、何気なく思考支援パッドのデスクトップの一番右上にあるアイコンをダブルタップした。


 『超次元多様体生成特異点_基幹概要ファイル』


 あたしが始めてこれを見たのは字を覚えたての幼稚園の頃。

 すでに二十年以上繰り返して、指先が覚えてしまっているパスワード。

 数百ページに及ぶ縦書きのドキュメント。

 今のあたしには、書いてある文字は読めても、あたしにとって何の意味かはまるでわからないものばかり。

 そして 12 段階にまでかけられた量子暗号ロック。

 それは、この基幹概要ファイルが絶対にコピーと消去が出来ないようにしてあるものだ。


 あたし、もともと親がいないのね。


 だから、親代わりの有機体先進開発機構の何人ものね、お父さんやお母さんがわりの人たちがいるんだけど…


 (ゆうきたいせんしんかいはつきこう…そういう所の生まれなわけよ、あたしはね)


 ま、優しく、濃くて、笑いの絶えない人たちばっかりね。

 別にそれはいいんだけどさ。

 この【 超次元多様体生成特異点 】。

 これだけは、あたしの自己同一性の中でそこから先へ進めない言葉。

 まぁね、あたしの黒歴史があったりして…『最終兵器美少女事件』とか…

 …まわりに、えらい迷惑かけちゃったりした事件でもあったわけなんだけど、あんまりそれは言いたくないからまた今度ね。


 あとさ、あたし、変な特技があるんだ。

 っていうか、この間、はじめて発見した!

 あたし、また体育実技の単位落としちゃったんだね。

 で、補講で演舞格闘技初心者技法っていうの取ってね、(面白そうだったから)手や足を円を描いて動かしながらやるダンスみたいなやつなんだけど、あたしが両手を合せて気を合わせる練習してたら、いきなり手の間の空間が光り出して、光の玉ができちゃったのね、大きさは3センチくらい。


 きゃー、なんか綺麗♡♡♡


 てな感じで、手を離したら、へろへろ〜ってその玉が漂っていってあたしたちが練習してた屋外の近くにある倉庫に、ぴと、て吸い込まれた途端、倉庫の建物がグズグズになって消えちゃった…

 そしたら、いきなり空のはてから、ものすごいスピードで大学警備機構の警備艦が降りてきて、船外スピーカーで、


 『おおお、おまえ、今、何したぁ!』


 って怒鳴られちった。

 何でもその光の玉の中には、物凄くちっちゃいブラックホールとホワイトホールの対が出来てたらしい。

 そんなこと言われたって、あたしが信じられる訳ないじゃん。

 でも倉庫が目の前で消えちゃったのは事実だし、怪我人でなくてほんと良かったわ♡

 




✔ 《 I.O.A.E.C.E “ アイオイース ” 》





 あたしは本と思考支援パッドとノートと筆記用具をベルトでくるんで肩にかける。

 表のドアをあける。

 アパートの階段をかけ降りる。

 小姓は、音もなくついーーっと、空中を浮かんであたしの後をついてくる。

 大学まで 10 分くらい。

 あたしは、とんとんとんとん…階段を駆け下りながら、階段の一番下から4段目のところで、あたしの後ろから下りてくる相棒に声をかけた。

 「走行変換、いくわよ!」

 「姐さん、ボク準備完了でっす!」

 で、こいつは、原付仕様のエアスクーターに変形開始!

 といってもたいしたことはない、自在マジックハンドが4本突き出して、2本がハンドル、2本がフットステップになる。

 背中にシートが突き出してくる。

 彼は、あたしを追い抜き、あたしを待ち構える。

 あたしは、変形した彼にまたがる。

 彼のおしりのフックにかけてある(猫耳)ヘルメットを被ってあごのストッパーをとめる。

 右グリップのアクセルをひねった。

 くん、というスタート、最初はアパートの前の道まで徐行。


 あたしの今日のいでたち

 ボディスーツ、ストッキング、髪をまとめるリボン、ジャケット、サッシュベルト 


 さて、アクセルコントローラーをひねる。

 ふぃ~ん、とちょっと間抜けな音がして小姓があたしを乗せて、迎え角マイナス 3 度くらいで浮かび上がった。

 「おはよう、」

 「おはようみりゅちゃん」

 あたしは、アパートから出て来る友達に挨拶をかわしながら、時間があんまり無いんで、こいつの推進フィールド圧をめいっぱいあげて、学校までかっ飛ばす。

 モーターの回転音が少し上がり、機体がわずかに前傾して速度が上がった。

 朝日が気持ちいい!



 あたしが通う大学は


 『有機体先進開発機構文明環境総合大学』


 Interstellar University of ORGANISM ADVANCED  EXPLORATION mechanism under  the rule of Civilization and Environment


 読み_ゆうきたいせんしんかいはつきこうそうごうだいがく

 または、略称 I.O.A.E.C.E “ アイオイース ”



 ぶっちゃけ、この惑星1個まるごとすべて大学の施設。

 あたしのいる恒星間文明史学部の全容は?


 数十万を数える授業棟や実験棟、研究棟、資料棟。

 15 の宇宙港に 132 隻の実地研修船。

 その広さは、この丘陵地帯の広がる列島一の広大な平野を管理区画にしてるの。

 北半球と南半球に 12 の教授研究都市がある。

 もちろん工学部、芸術学部、医学部なども数の違いはあれ、惑星全土にくまなく広がってるのよ。

 すべての研究都市をすべて入れると、果たしていくつだったかしら?

 温帯樹林におおわれた丘陵の頂きに、惑星全土、1億2750 万人の全学生のデータを管理している中央学生センターがある。




 あたしはこの丘陵地帯の優しい四季の光景が大好き。

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