ステータスと異能(Ⅰ)

 次の日の朝。目覚めるとそこは元の世界......なんてことはなく、昨日寝た天葢付きのベッドの中だった。


(はぁ......夢じゃなかったのか)


 大きく溜め息を一つ、吐いてからベッドを出る。窓のカーテンを開けると朝の陽光が部屋に差し込んでくる。その暖かさは疑いようがなく本物で、改めてここが異世界なんだと感じさせる。


「とりあえず......着替えるか」


 私の今の格好は、上に学校のシャツを羽織り、他は下着という何ともだらしないものである。流石にこれは......(一応ではあるが)女子高生の格好としては不味いだろう。

 まあ、持っている服は制服だけなので必然的に制服を着ることになるのだが......。


 ベッド脇に置いておいたスカートを手に取った時だった。ガチャリ、と部屋のドアが開く音がした。


 現れたのは........................勇者(笑)の一人、睡野蓮。口を開こうとして、こちらを見る。


 そして、時間が止まった。



 たっぷり、10秒は経っただろうか。顔を真っ赤にして、部屋を飛び出しドアを叩きつけるようにして閉めた。そして、慌てた声で弁明を始めた。


「ごっ、ごめん!!悪気は無かった!」


 まあ、こういう時にとる行動は一つだろう。ゆっくりとスカートを穿き、ドアを開ける。そして、未だに顔を赤らめたままの睡野に笑顔を向ける。


「......歯を食いしばれ?」


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 所変わってここは【王の間】。「話がある」ということで私達四人に呼び出しがかかったのだ。


 既に鈴こと宇佐美 鈴と、翔こと山口 翔の二人は【王の間】の前で待っていた。私達を見ると、軽く手を上げて挨拶をしてくる。それに頷きで返し、早速本題に入る。


「話がある、って事みたいだけど何か知ってる?」

「ああ、ついさっき聞いた。明日、明後日から訓練が始まるらしい。それの前に俺達の力が知りたいらしい」

「ふぅん......なるほどね。ありがと」

「............ところで、なんで睡野は頬っぺたに紅葉がついてるんだ?」

「さあ?自業自得じゃないかしら?」


 睡野バカを無視して、【王の間】へと入る。私達が入ったとき、王は見るからに武人と思われるおっさ............男性と話をしていた。入ってきたのに気付くと、軽く手招きをしてくる。


「来たか。四人揃っておるようじゃな。さて、何をするかの説明の前に一人、紹介しておかねばならん者がいる」

おぅ!俺はアルグ・ミューリライネン・ゾルデって者だ。ギルドマスターを勤めてる」


 ギルドマスター。これもテンプレだな。ってことは相当な実力者か。見た目は50代後半だが、筋肉質で余計な脂肪は付いていない。更に近付くと分かる、威圧感。周囲にいる近衛兵達など相手にならないだろうというのが見てとれる。


「さて、本題に入ろう。近々、戦闘訓練を始める予定だ。そこで今の君達の能力を知りたいのだ」


 そう言って、近くにあったテーブルの上の金属板を取り出し、私達の目の前に置いた。


「これは古代の遺産アーティファクトの一種でな、使用者の能力が分かるという物じゃ」


 針で指先を刺し、血を一滴金属板に垂らした。ポォと淡い光を放つとまた、元の状態に戻った。その金属板をこちらに渡すと、見るようにと言われる。


「......っ!これは」


 そこに書かれていたのは国王のステータスだった。


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 メイルスツ=ワルス  47歳  Lv.34

 HP 460/460 MP 500/500

【異能】

 預言者ヴィジョナリアン

 年単位での予言を可能とする。

【一般技能】

 炎術フレイムマジックLv.5

 剣術Lv.5

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 ......超簡素だな。うん。まぁ、見やすくていいんだが。表示されるのは名前や年齢だけでなく、HPも数値化されて表示されるようだ。


「それでは、お主らも血を一滴金属板プレートに垂らすが良い」

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