白髪の吸血鬼
機械仕掛けの時空神《デウス・エクス・マキナ》
ところどころで、歯車が回っていた。
宙を覆っているのも歯車の星々で、足元も歯車で、自分のいる場所は歯車の中心で、実際自分は動かずとも回っていた。
こんな幻想的というか機械的というか、というか機械の中そのものな場所は実際にはない。どうせまた、夢か何かなのだろう。
まぁここがどこで、何故自分がここにいて、ここで何をすればいいのか。すべては今目の前から右へと動いていった少女に聞けばわかりそうだ。
少女はそれらの質問を待つかのように、ジッと自分を見つめたまま、自分と同じように歯車の中心に立って回っている。青と紫のオッドアイの中で、それぞれ逆向きに秒針を動かしながら。
何はともあれ、まずは彼女のところに行かなければ話もできない。とりあえず彼女を目指して歩く。回る歯車と歯車の繋がっている部分まで流れに逆らいながら無理矢理行くと、一気にその間を跳び越えた。
それを何度も繰り返して、ようやく少女の元に辿り着いた。少女の目の中は、未だ一方は時を刻み、一方は時を遡っている。光の欠けたその目に見つめられ、まず言葉を選んだ。少し怖かったからだ。
「えぇっと……俺、ミーリ。ミーリ・ウートガルド。君はこの世界の案内人とかそういう役?」
少女は答えない。
「ここはどこ? 夢の中ってオチ?」
少女は答えない。
「えっと……君、名前は? もしかして、君もここで迷子だったりする?」
少女は答えない。
「ねぇ。もしかして、俺の声聞こえてない? ねぇ、ねぇぇ」
少女は、答えない。それどころか反応すらしない。
完全にお手上げだった。ここまでオール無視されるとむしろ清々しい、というより、壮絶にショックだ。こちらの言葉が通じてないにしても、もっと反応してくれていいのではないだろうか。
だが諦めるわけにはいかない。彼女は容姿からして、絶対に普通ではない。
髪を一本にまとめている、髪ゴム代わりの大きな歯車。額と手の甲にも大きな歯車がついていて、どういう原理か回っている。背中には丸時計を背負っていて、秒針の音が絶えずこちらに響いてくる。
そして何より、青と紫のオッドアイの中で、一方は進み一方は戻っている秒針。
どう見ても普通の人間ではない。神か、
なんにせよ、この世界のことを何か知っているはずだ。ここには青年ミーリと少女、二人しかいないのだから。
「君は誰? 俺はミーリ・ウートガルド。敵じゃないと思うよ、一応」
目線の高さを同じにして、少し距離を縮めた状態で再チャレンジしてみる。
すると少女の頬が突然紅潮し、モジモジと指と指を絡め始めた。
「マキナ……マキナは、デウス・エクス・マキナ。お兄さんを、助けに来たの」
「俺を助けに?」
「覚えて、ない?」
そう訊かれて思い出す。今の状況を。
倒れた仲間を。暴走した神を。絶滅の危機にある街を。まだ戦っているだろう仲間を。
死にかけている、自分を。
「じゃあ俺、もしかして……嘘ぉ?!」
「し、死んでないよ?! 死んでない……マキナ言ったでしょ? マキナは、お兄さんを助けに来たんだよ?」
「俺を助けに?」
少女マキナは頷く。額の歯車と前髪に顔が隠れてしまったが、その顔はまだ真っ赤だった。指もまだ絡ませ続けている。
「でも、そのまえに訊かなきゃいけないの……訊いてもいい?」
「いいよ、助けてくれるんでしょ? なんだって訊きなよ」
「じゃ、じゃあ質問です。お兄さんは神様を倒してくれますか?」
「人類滅亡とか言ってる神様なら、もちろん倒す。それ以外は倒さない」
「じゃあ人類を滅亡させる神様を倒すためなら、なんだってしますか?」
「命懸けろっていったり、大切なものを捨てろっていうのは無理。でもそれ以外ならなんでもするよ?」
「お兄さんは神様を倒すためなら、神様になりますか?」
「うん、それならいいよ? ってか、俺もう神様みたいなんだけどさ。それでもいいの?」
「え、えと……正確には、完全に神様になっちゃうってこと。どう、ですか?」
「あぁそういうこと。まぁいいよ、友達が死ぬより全然いい」
「じゃ、じゃあ最後に……その……」
マキナの顔が最高潮に赤くなる。その目はやや潤んで、秒針もピタリと止まってしまった。
「お兄さんは神様を倒すために、マキナのお
ミーリは吐息する。答えるのにわずかな間と考える時間が必要だったが、おもむろに口を開いた。
「マキナ、それは――」
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