第1章 ムカデ盗賊団追討軍
出発の朝
出発の朝、ミジンコの世話をしてきた老騎士達は、それぞれ言葉をかけてくれた。整った顔に整った髭の、背の高いケィンベルは言葉少なに、しかしわかりよく旅の心得を語った。いちばん年若いミガは身をわきまえて、一言旅の無事を祈るにとどめた。老練なケルンルナは何も言わずにいた。ミーミケクが騎馬を従えてきて、食糧や道具を鞍にくくりつけておいたと言った。豪胆なケクックはもしゃもしゃの顎を揺らし「ネムネテの森に入る前にバックラー郡の町に寄りなされ。ネムネテに至るまでの西郡域は王の直轄じゃ。休息ともてなしが得られましょうぞ」と、さらに指揮官の証である四角星の模様の剣を授けてくれた。
「わしが、ゲセデルーア将軍を失った九十九騎を率いて陣を立て直し、百鬼を討ったヨミデの妖怪征伐。その殊勲として受けた名刀じゃ」
それを聞いて「思い出す……あの初陣の時の若く凛々しい私に、今のお前はそっくりのようだミジンコよ!」とケルンルナが言うのを最後の言葉に、ミジンコは旅の始まりに向かい駆けたのだった。
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