エピローグ
翌日の午後。ミュウ、チュウ、正見正之助の三人は正見の車で浅間神社に向かった。
車の中でチュウはミューに言った。
「流木に頭をぶつける前の記憶は戻ってないけど、でも、ぼくは君の知っているチュウに間違いないと思う。これからもよろしくね」
ミュウは微笑みながら答えた。
「もちろん。記憶がよみがえる時はきっと来るよ」
「ありがとう、ところで正之助さん、ジャックポットはどうなるんでしょうか?」
「きのうの午前中、彼の頭の中からもチップが摘出されて、
七人の自衛隊の特殊部隊員と同じく、
ジャックポットは素直に取り調べに応じて、
元恋人の自衛隊員の女性から七人の自衛隊の特殊部隊員を拉致するために必要な情報を得たことも自白した。
その部分は罪になるけど、
そのあとの、操られて実行した八人の自衛隊の特殊部隊員の拉致と原発のテロに関しては罪は問われない」
「なるほど」
「ほかに、彼の罪を問う材料は、ない。
彼は世界に向けて内部告発もしたし、十分に反省してもいる。
だから、自衛隊の情報を盗んだことで裁判にかけられても、恐らく
ぼくの仕事の責任範囲で言えば、今後国を、いや国民を守るために助っ人が必要な時は、彼みたいな人材が必要になるだろう」
「今後、彼にチームの一員としての仕事をしてもらう可能性があるということなんですね?」
「まあね。まだ、あくまでぼくの個人的な考えだけどね」
「ぼくは賛成、ミュウは?」
「私も反対しないよ」
浅間神社の宮永宮司の家の応接間で、ミュウ、チュウ、正見正之助の三人は恵美音と再会した。
恵美音は元の生身の体に戻っていた。
ミュウと恵美音は抱き合って、涙を流しながら喜び合った。
そのあと、ミュウは恵美音に感謝の言葉を述べた。
「恵美音、あなたのおかげで日本は救われた。ありがとう」
チュウと正之助も頷き、
正之助はプライベートに日本政府を代表して心からのお礼の言葉を述べた。
「チームの力よ。私もチームの一員として参加できてよかった。それで、みんな見せたいものがあるんだけど」
「何を見せたいの?」
「ほら、見てて」
恵美音は目を閉じて何かを念じた。彼女の体はみるみるゾンビの体になった。
ミュウもチュウも正之助もびっくりした。
「恵美音、どういうこと?」
ミュウの質問に、恵美音は肩をすくめて笑いながら答えた。
「まだ半分しか見せてない。もう半分も見てね」
ゾンビの恵美音は目を閉じ、何かを念じた。
彼女の体は見る見る元の生身の人間の体に戻った。
「ハートキャットが連れて行ってくれた温泉に入ったおかげで放射能が浄化されたのよね。
その時、ハートキャットが、
『この温泉に祈れば元の生身の人間の体に戻れる』
って言うから、私、欲張って、
『どうせなら自分の意志で自由に人間の体とゾンビの体を行き来できるようになれたらいいんだけど』
って言ってみたのよ。そうしたらハートキャットが、
『じゃ、そういう風に祈ってみたら』
と言ってくれたんで、
そうしたら、そうできるようになったの?」
「なんでまた、そうできるようになりたかったのかな?」
正見が尋ねると、恵美音は答えた。
「だって、普段は人間の体でいたいけど、今度みたいに事件があった時はゾンビの体の方が全然便利でしょ?
筋力や運動能力がアップするだけじゃなくて、原発の炉心みたいな場所に入って必要な作業をできちゃうんだから。
正之助さん、私もチームに入れて、
コードネームはプリティゾンビって呼んで」
恵美音は真顔で言った。
「わかった、ちょっと考えさせて」
と正之助は答えた。
――今回は
正見正之助は、恵美音に向かって言った。
わかった、プリティゾンビ、今から君もチームの一員だ。みんなで乾杯しよう。
と。
キャットガール&ネズミ小僧 プリティゾンビと日本を救え @heartcat
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます