PARTⅤの1(33) スパイをあぶりだすチャンスでは
佐久間と園田が調べた結果、次のことがわかった。
【浜村は金沢の高校を卒業して、東京の医大に進学した。
彼には金森という親友がいて、
その親友は大学卒業後東京である会社に就職し、今もその会社にいる】
園田洋子が金森に面会して聞いたところ、次のことがわかった。
【浜村は学生時代にフランスのパスツール研究所に留学していた時、フランス人女性と付き合って、ルネという名前の子供まで作った。
日本に帰ってきてからもその女性との交流は続き、
年に一度は彼女と子供に会いにパリへ行っていた。
その女性は浜村が日本に帰ったあとフランス人男性と
そのフランス人男性と彼との間にできた別の子供とルネと一緒に四人家族でパリで生活していた。
浜村はそのフランス人男性と浜村はも親しい友人となった。
独身の浜村はその家族のことをほとんど自分の家族のように考えていると言っていた。
今もその四人家族はパリで暮らしているはずだ。
この一年ほど、金森は浜村とは連絡が全く取れない状態が続いている】
「私は先日、戸籍を調べて『浜村は独身』と報告しましたが、でも、留学時代に作った子供がいたんですね」
と園田洋子は言った。
「ああ。恵美音ちゃんは浜村をマッドサイエンティストと言っていたけど、
彼も言うことを聞かないと子供やその家族や両親を殺すと脅されて、言うことを聞いてきた可能性も十分考えられるね。
よし、フランスのDGSAにそのフランスの四人家族からの情報収集を依頼し、
万一にそなえて身柄の安全も確保してもらうとするか。
浜村の両親の安全は日本政府で確保するとして」
DGSAはフランスの対外治安総局の略称だ。フランス版のCIAとも言われている。
世界各国は
正見のチームはCIAやこのDGSAなど世界の
正見からの依頼を受けたDGSAはパリの四人家族にコンタクトし、二日後にその結果を電話で次のように伝えてくれた。
「浜村は以前は年に一度はその家族を訪問していたが、この一年は訪問がなかった。
しかし、時々、電話してきていて、今もその電話番号でつながるはずだ。四人家族の安全もDGSAが保障する」
正見はCIAから浜村の携帯電話の番号を教えてもらうことができた。
DGSAからの電話を終えた正見は考えた。
――よし、これで浜村の居場所をつかめそうだ。さっそく佐久間君にこの番号の携帯のある場所を調べさせよう。
そう考えていた時、上司である国家公安委員長の
「正見君、一大事だ。稼働中の、青浜原発がテロリストグループに乗っ取られた」
青浜原発は東京と名古屋の間にある海辺の原発だ。
その原発では大多数の国民の反対を無視して、五基の原発すべてが再稼働されていた。
この原発に何かあれば日本は終わりかねない、そういう場所にある原発だった。
「本当ですか?」
原発はそれ自身が危険なだけでなく、テロや戦争の絶好のターゲットだ。
それを無理やり再稼働した政府は国民の不信感を少しでも緩和するために、
銃器を携行した警察官による常時三十人態勢の警備体制を敷いていた。
その警備が破られたと言うのだ。
「ああ。彼らは全部で九人で、
超人的な筋力や運動能力で警備陣をいともたやすく倒しながらコントロールルームに到達してそこを制圧したとのことだ。
テロリストグループの映っている監視カメラの映像を今からそっちに送らせるから」
送られてきた映像を、佐久間が早速分析した。
テロリストたちは
肌の露出部分を拡大してみたところ、青白い死人のような肌だった。
正見は国家公安委員長に電話で報告した。
「映像分析の結果ですが、テロリストグループは
じきに奴らは日本政府になんらかの要求を突き付けてくるでしょう。
どうせとんでもなく理不尽な要求に決まっています。そんなものを受け入れるわけにはいきません」
「そうだな。奴らを制圧できる可能性があるのは君のチームだけだと判断している。
要求のタイムリミットによっては間に合わない可能性もあるが、ベストを尽くしてほしい」
「わかりました。ところで一つ提案があります。
今の状況は内閣府内にいる
「方法があるのか?」
「あります。もしかしたら、何か、今回のテロ関係の情報も得られるかもしれないので・・・」
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