第4話:ミスフィット
「……先日の事件を覚えているかね」
部屋には大きな黒い円卓が置かれていた。大きく立派な円卓なのにもかかわらず、その縁には二人しかいない。そのうちの一人、白く短い髪をオールバックにした……というよりは前髪の生え際が後退し、結果的にオールバックのようになってしまったと言うべきか。とにかく、白髪のオールバック、微妙に四角い顔にがっしりした体型に高そうなスーツを着た中年男性がむかいあっているもう一人の男に問いかけた。癖なのか、顎の右側あたりにできた大きなにきびをしきりにいじっている。
「……ビッグヘッドビル及び周辺の街が占拠され、多くの死傷者を出したあの事件ですね?忘れるわけがないでしょう」
もう一人の男は灰色のフード付きのロングコートをはおり、足と腕を組み椅子に座っていた。フードを目深に被っているので表情が読みとれない。
「そうだ。その事件の対策としてPANTHERが投入され、どうなったのかも、覚えているな?」
「……隊員の裏切りにより奴等に皆殺しにされた、ですね」
男はわかりきったことを言わせるなとでも言わんばかりに面倒くさそうに答えた。
「うむ。そしてその裏切り者とは……」
「新米隊員のシェイマス」
「そうだ」
「それで?彼がどうかしたのですか?」
「全く見つからんのだよ」
「でしょうね、彼だって捕まりたくないんでしょうから」
「……言ってくれるな」
コートの男は気だるそうに会話を続ける。恐らく彼は目の前の中年男性が何を言いたいのかもう察している。……が、自分からその話をするのはなんとなく癪だったので敢えてとぼけているようだ。
「……それで?何故オレを呼び出したんです?別にオレはシェイマスの仲間だとか生き別れた兄とかではありませんが?」
「違う。そうではない」
「ならば何故?」
「君の隊にこのシェイマスを捜して欲しいのだよ」
予想通り。彼はあからさまに大きなため息をついた。
「わざわざオレ達に出すような任務じゃないでしょうが……」
「君達以外では成果を得られなかったのだから仕方ないだろう。ともかく、なんとしてもこの裏切者を捜し出さねばならん。その為には君達の力が必要なのだ。やってくれるな、コルト」
中年男性は円卓を半周し、コートの男の肩を両手で掴み言い聞かせた。コルトと呼ばれた彼はいかにも面倒くさそうな仕草をしたあと、わざとらしい口調で返事をした。
「ま、仕方ありませんね。国防大臣殿直々のご命令とあらば、逆らうわけにはいきません」
恭しい口調とは裏腹に態度は最悪だ。これでよく首が飛ばないものだ。だが裏をかえせばそれだけ彼と彼が率いる部隊が成果をあげているということ。厄介な相手がシェイマス捜索に乗り出した。
◇◆◇
「……というのが今回オレ達に与えられた任務だ」
国防大臣との会談を終えた後、コルトは真っ直ぐ自分の率いる部隊の仲間のもとへと向かった。
「まぁた変な任務だよ……たまには軍隊系の特殊部隊らしくテロリスト達を制圧!とか派手な任務をやってみたいものだわ」
部屋の中央、黒い革張りのソファに腰掛けながら本を読んでいた小柄な女性隊員が口を尖らせた。見た目だけでは中学生に見間違えても不思議ではないくらい小柄で童顔だ。おまけに声も高い。しかし彼女の傍らに置いてある彼女の武器と思われる半月形の形をした奇妙な盾は彼女の体躯ほどある。どうやってこれを操るというのか。
「特殊部隊の任務が派手じゃ駄目だろ、姉さん……」
女性隊員の言葉に対して床に座り、女性隊員と同じ半月形の巨大な盾を磨いていた男性隊員が指摘した。姉さん、という発言からして姉弟のようだ。いや、恐らく双子だろう。こちらは姉と比べて身長は高めであり、盾も軽々と操れそうだ。
「まぁ、仕方あるまい。与えられた任務を忠実にこなす。それが我らの仕事だ!」
双子のやりとりに突然割って入ってきた男は部屋の奥の方で剣を握り素振りをしていた。茶の短髪に立派なカイゼル髭をたくわえた中世の騎士のような男だ。
「ん。じゃまず情報を集めようかー。隊長、そのシェイマスってやつの情報、どんだけ貰った?」
騎士の発言の後、パソコンに向かい回転イスの上にあぐらをかいていた少女がマイペースな声をあげた。長い金髪を後頭部で三つ編みにしてまとめ、タンクトップシャツとハーフパンツをだらしなく着ている。
「話が早くて助かる。よし!では早速任務に入ろう!」
隊の意見がまとまったところでコルトが話を切り出した。同時にコートのフードを脱ぎ、素顔を晒す。フードの下からは燃えるような緋色の赤毛が現れた。両方の頬に何か黒い機械を取り付け、左目の瞳には切れ込みをいれたような十字が浮かび上がっていた。なかなかにハンサムである。
「あー、最後にシェイマスが目撃されたのは……どこだ?」
◇◆◇
「ヘッタクソねぇ……天下のPANTHER部隊も堕ちたものだわ」
「うっさいな!」
場所は変わってレジスタンス本部。銃とマスクを得たシェイマスはアロウと射撃訓練を行っていた。射撃訓練と言ってももちろん実際の軍隊程設備は整っておらず、半壊したスラム街の建物をエンジンが改造し、ゴミ捨て場から拾ってきたマネキンを置いただけの粗末すぎる訓練場だ。
「全く……なんで私があなたなんかとバディを組まないといけないのかしら。ボスの気がしれないわ」
そう言ってアロウは愛用の狙撃銃の引き金を引いた。銃は咆哮し、数十メートル先に置かれたマネキンの額を撃ち抜く。既にマネキンの額には無数の穴が開いていた。
「やかましい。俺だってこんな意味わかんねぇマスク被って性格の悪い女と一緒にいるなんてごめんだっつの」
今度はシェイマスが小銃の引き金を引いた。アロウの銃に負けじとこちらも咆哮し、弾丸を吐き出したがマネキンに命中せず、隣に落ちていた植木鉢を破壊した。
「まぁた外したぁ!やる気あるの?」
「うっせぇ!」
あれからシェイマスはレイヴンにアロウとバディを組むよう命じられ、レジスタンスが何か行動を起こす時は共に動くよう言われた。ついでに武器屋でマサムネが即興で考えた「バール」というコードネームは正式に採用され、レジスタンスメンバーは彼のことをバールと呼ぶようになった。
「大体俺が使うのは小銃じゃなくて短機関銃だ!何も
「あらやだ本当に元特殊部隊隊員の言葉かしら今の!?」
アロウとシェイマスの仲は険悪だった。
「……ボス、本当に大丈夫なのかぁ?あの二人……」
そんな二人の様子を後ろからエンジンとレイヴンが見ていた。レイヴンは終始無表情だが、エンジンの方は表情筋が忙しなく働いている。
「大丈夫だ。どんな立派なバディだろうと始めっから抜群のチームワークを見せるヤツなんざいねぇ」
「にしても、だぜ……あーまた外した」
「あんた当てる気あるの!?このヘタクソ!」
「うるせぇぇ!」
◇◆◇
「んーやっぱりここから急に姿を消してるねー、どこの監視カメラにも写ってないや。隊長、どうするの?」
ビッグヘッドビルから少し離れた街。街と言っても反政府軍や政府軍のお陰で焼け野原と化してしまっているが。ここがシェイマスが最後に目撃された場所だ。監視カメラの映像はテロリスト達に囲まれたシェイマスが突然現れた謎の黒いコートの男にどこかへ連れ去られて終わっている。
「ふーむ……この黒いコートの男が鍵だな……」
「隊長の着ているコートとよく似ているでありますなぁ!」
監視カメラの映像を見ていた騎士風の男が突然大きな声を上げた。
「うっせぇ!耳元でデカい声出すな!リッター……お前のそのデカ過ぎる声はなんとかならんのか……」
騎士風の男のコードネームはリッターというらしい。特殊部隊らしく動きやすそうな服にヘルメットを被っているが、背中に背負った長剣が違和感を醸し出している。
「むぅ……しかしこのままでは一向に前進しないな……」
コルトは右手を顎にあて、一人思案するように黙りこんだ。
「隊長?まさかまーた変なこと考えてんじゃないでしょうね……」
盾持ちの男がコルトの思案に横槍を入れた。コルトが顎に手を当てて一人思案にふける時、大抵彼はろくなことを考えていない。男はそれを心配したのだ。
「ん?あぁ、そうだな。大丈夫だポルックス。別に変なこたぁ考えちゃいねぇよ。それよりいいことを思いついた。スラム街へ車を出してくれ」
「やっぱりろくなこと考えてないじゃないですか!嫌ですよ!」
盾持ちの男はポルックス。変人揃いの彼の部隊の中で唯一の常識人だ。
「別にいいじゃねぇか、何で嫌なんだ?スラム街には多くの人間が出入りする。表社会じゃ流れない情報も裏社会なら話は別だ。表社会で手には入る情報は警察が散々探したんだ。でも俺らが喚ばれたんじゃぁ、正攻法じゃ答えにはたどりつけねぇと思うんだが……」
コルトはポルックスの返答がまるでおかしなものだとでもいいたげに不審な顔をする。本心からの行動ゆえ尚更タチが悪い。
「正気ですか隊長!?スラム街ですよ!?何されるかわかったもんじゃない!」
ポルックスの主張は極めて的を射ている。誰も好き好んでスラム街になんて行ったりはしない。警察の汚職、暴力で黙らされる知識人、教養のない住民達……スラム街では既に法は無力化している。力があればなんでもできる。まるで子供のカースト制のようだ。そんな所に行くなど、よっぽどの理由がない限り正気の沙汰ではない。だがどうやらコルトにはそのよっぽどな理由があるようだ。
「ぐだぐだ言うな、男だろ?……他の者は」
コルトは残り三人の隊員の意見を聞いた。しかしこの三人もまたコルトが言い出すと止まらない男だと言うことを知っているので別に反対はしなかった。
「マジかよお前ら……僕はどうなっても知らないぞ……」
「決まりだな。よし、そうと決まれば早速行こう!」
コルトはいい笑顔を浮かべてポルックスの肩を叩いた。数時間前に国防大臣と対談していた彼とはまるで別人のようだ。仕事は仕事、といったところか。
自分だけ抵抗しても無意味だと察したポルックスはしぶしぶトラックを走らせた。目指すはスラム街。……偶然にもそこには彼らが探している男がいる。
◇◆◇
「しっかしヘッタクソな銃ねー、あれでよくPANTHER隊員になれたものだわ。……あんたまさかコネとか使って入隊したんじゃ」
「そんなわけないだろ!きちんと訓練積んで試験に合格して入隊しぃまぁしぃたぁ!」
射撃訓練を終えたシェイマスらはスラム街の酒場へ入り休んでいた。シェイマスの他にはアロウ、ハット、マサムネ、エンジンと、レイヴン以外は全員揃っていた。
「まぁまぁ今はその話はしなくてもいいではござらんか?何も酒場へ来てまでそんな喧嘩することはないでござるよ」
「あんたは一人でいいわよねマサムネ……」
マサムネはたははと苦笑いを浮かべる。
ここ、酒場はスラム街で一番活気づいた場所だ。スラム街の入り口に立っているのでスラム街とは関係ない人間も多く出入りしているのが理由だろう。あちこちから笑い声があがり、ちょっとした小競り合いも起こる。この国の一般的な国民は近寄りすらしないがそれでも客足は絶えない。二十一世紀の現代に西部劇のスクリーンの中の一場面を切り抜き具現化させたようだ。
「……ところで、ボスは?」
「なんだか気分が乗らないって言って本部に残ったわ」
「……相変わらずよくわからん人だ」
五人の会話の話題はシェイマスとアロウからたわいもないものにシフトした。
「そういえばバールよ、お前さんのそのマスク、どんな機能がついてんだ?」
NSCの技師として気になってしかたなかったのだろう。エンジンがシェイマスの銀マスクを指差しながら質問した。
「あぁ、これか?俺もこの数日いじってみたんだが、なかなか色んな機能がついてるぜ」
「ほぅ……そりゃ気になるな」
「まずこれは昨日気付いた機能なんだがよ……」
「おう、どんな機能なんだ?」
シェイマスは顔をエンジンに近づけると、右手の人指し指で右のこめかみのあたりを圧迫した。すると真ん中の逆三角形の頂点から真っ直ぐに三本の筋が通り、マスクの前面が三つに分かれたかと思うと、右頬、左頬、頭頂部へとそれぞれ勢いよくスライドし、中からシェイマスの顔が現れた。
「このマスク前が開く」
シェイマスがそう告げた瞬間テーブルにどっと笑い声が巻き起こった。
「その機能に昨日やっと気付いたのかよ!?」
「ってことは何!?あんたこれまで被ってない時以外はずっと閉じっぱなしだったわけ!?」
「ひー、ひー、お腹痛い」
更にシェイマスは爆笑している四人の前に右手をかざし、指を1本ずつ折りながら今までに自分が発見した機能を述べ始めた。
「他にも色々あるぜ、通信、暗視、拡声、照明、録音再生、カロリー計算……中々高性能だ。これ以外にもまだ沢山機能あると思う」
「おぉ……そりゃすげぇや」
「最後絶対要らないと思うのは拙者だけでござろうか……」
と、四人の話が盛り上ってきたあたりで、突然酒場の扉が開き、二人の男が入店してきた。片方は背中に長剣を背負い、立派なカイゼル髭をたくわえた騎士風の顔つき。もう一人は燃えるような赤毛に灰色のコート。騎士風の男が特殊部隊が着るような動きやすい服を着ているのを見て二人が軍人、つまり政府の人間と察したシェイマスはまた右のこめかみに手をやりマスクの前面を閉じた。
「コーラを二つくれ」
二人がカウンター席につくと赤毛の男は店主にコーラを注文した。店主は無愛想に頷くと背後の冷蔵庫からコーラ瓶を二本取り出すとガラスでできた円柱形のグラスと共に二人の前に雑に置いた。
「や、悪いね……ん?」
店主の嫌がらせか栓抜きは渡されなかった。他の客はそれを見てニヤニヤしている。一見さんお断りとでも言いたいのか、それともただ単によそ者が来たと思われからかわれているのか。これに騎士風の男はクレームをつけた。
「主人、栓抜きがないぞ」
「あぁ、リッター、大丈夫だ」
しかしそれを赤毛が制止する。
「こんだけ繁盛してる店だ、忙しくてそれくらいのミスはある」
赤毛は意に介さず、当然のようにコーラ瓶の王冠に手をかけて力をいれた。すると一拍置いて瓶はシュッと小気味良い音をたて軽々しく開いた。ものすごい力だ。これには店主も他の客も流石に驚いた。
「……相変わらずよくわからん人だ」
騎士風の男は半ば呆れたように呟くと赤毛から瓶を受けとりグラスに注いだ。
「……なんだあいつ」
この光景は当然五人も見ていた。エンジンが驚きを隠せないように口を開いた。王冠を素手で開くなどそう簡単にはできない。
「何かトリックがあったんじゃない?」
「さぁ……だがこういう所では舐められると良くない。その点彼の行動は中々でござったな」
五人が驚愕しているのをよそに赤毛と騎士は乾杯しグラス一杯のコーラを一気に飲み干した。飲み干してから今度は店主を呼び止め話を始めた。
「主人、少し尋ねごとをしていいだろうか……ゲフッ」
「……あんだ」
「……この写真に写っている黒いコートの男、もしくはこの栗色の髪の男を知っているだろうか……ゲフッ」
赤毛は一枚の写真を取り出し、店主に見せた。ちょうどハットがその写真を覗ける位置に座っており、その会話を聞いてしまったハットはなんとなく写真へ視線をやった。
「!」
途端に顔色がかわり、口に含んでいたクリームソーダを吹き出し、エンジンの顔に思いっきり吹きかけてしまった。
「うわっ!何すんだよハットきったねぇなぁオイ……」
「騒がしいでござるよ、ハット。どうした」
「あ、あいつらが探してるのって、隊長と
「ハット!」
すぐにエンジンがハットの口を押さえた。幸い男達の耳には届かなかったようで、何も反応はなかった。
「いや、知らねぇな。知っててもただじゃ教えねぇよ」
店主はぶっきらぼうに言うとカウンターの奥へひっこんでしまった。
「ふぅむ……意外と情報集まらんもんだな」
「いったんどこかへ集合するべきでは?」
四人はカウンター席の二人の会話をひやひやしながら聞いていた。このスラム街で人捜しなど、絶対にろくな理由じゃない。ましてシェイマスは今おたずね者なのだから。
「……気づかれる前に出ましょう」
アロウが声をひそめて提案した。男四人は無言で頷き、飲み食いした代金をテーブルの上に置き、席を立った。カウンター席で動きはまだない。
「……気付かれてないでござる。ささ、早いところ出るでござるよ……」
……が、
「ああん!?てめぇ、何言ってやがる!」
突然酒場全体に響き渡る程の怒鳴り声が上がった。
「うるせぇ!お前こそ寝言は寝て言え!」
「何おう!?」
ここは酒場だ。客に酒を提供する場だ。そして先程も述べた通りここにはあらくれ者が多い。気性の荒い者同士が酒を飲み話をすれば……喧嘩は起こりやすくなる。
「おお、喧嘩か」
カウンター席の赤毛はその様子を見て呑気にコーラをあおった。
「おお、喧嘩か、じゃないでしょう隊長!止めなければ!」
「ええ……いいじゃねぇか面倒くせぇ」
「よくありませぬ!ささ、早く!」
「全く……」
赤毛はかったるそうに立ち上がると喧嘩をしている二人の所まで歩みより、声をかけた。
「あー、君達?」
「あぁん!?あんだよてめぇ!」
「喧嘩はよくないぞ、やめたまえ、……と、うちのリッター君が言っている」
「やかましい!よそもんは口を挟むんじゃねぇ!」
そう言って男は赤毛にジョッキを投げ付けた。
「うおっ!?」
赤毛は間一髪それを手で弾いた。それを合図に男達は派手に殴り合い始め、その喧嘩に巻き込まれた者がまた殴り合い、ほんの数秒で酒場じゅうで喧嘩が始まった。皆酒がはいっているので半ば面白がって殴りあっている。
「おー危なかった」
「隊長!」
「大丈夫だリッター!」
既に酒場は大騒ぎなので怒鳴らないと会話が出来ない。
「ええと……そういやあのジョッキは?誰かにぶつかってなきゃいいが……」
と赤毛が見渡すとジョッキが飛んでいった先で一人の男が倒れていた。
「うわぁぁぁぁぁ!ぶつかってんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!」
赤毛は喧嘩を避けその男に走りよった。
「だ、大丈夫ですか?」
男は銀色のマスクを被っており、うつ向きながら頭を叩いていた。
「あー、大丈夫です……マスクのお陰でなんともないです」
と、男は顔を上げた。
「……ん?」
そして二人とも同時に声を上げた。不運なことに宙を舞ったジョッキはシェイマスの右こめかみに直撃していたのだ。右こめかみにジョッキが当たればマスクは開く。シェイマスからすれば目の前には自分を追っている男が、コルトからすれば自分が追っている指名手配犯が、目の前に居た。
「あああぁぁぁーっ!」
二人は叫ぶとそれぞれ行動を起こした。シェイマスは勢いよく立ち上がり赤毛から離れようと走り去り、コルトは胸の通信装置に手をやると仲間に連絡を入れた。
「コルトから全体へ!シェイマスをスラム街入り口近くの酒場で発見!街の中心部へ向かって逃げた!銀色のマスクを被っている!確保にむかえ!なんとしても捕まえろ!我ら‘ミスフィット’の名にかけて!」
『了解!』
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