第44話 日常みたいです

秋葉原を出てから2日目。


その日も朝早く起きてしまった俺は、アイラたちの朝ご飯を作って待つことにした。なぜなら、アイラとイズナの料理は壊滅的だからだ。特にイズナは酷いのなんのって、料理に歯ごたえが欲しいからって道に落ちてる小石を入れるくらいだぜ?もう、俺の命がいくつあっても足りないぜ。それに比べてアイラは、変なものを入れたりはしないけど、毎回毎回何度言っても料理を焦がしちゃうんだよな…。焦がさない時もあるけど、そういう時はだいたいなにかしら失敗をする。例えば料理を盛り付ける時にこぼしたり、料理の上を飛んでる虫を料理の中に叩き落したり…etc。そんなドジをするところも可愛いんだけどな!!

…まぁ、とにかく、二人ともそんな感じで料理が壊滅的だから、俺が代わりにやってるってわけだ。


そして、俺が朝食を作っていると、匂いにつられてきたのか、アイラが起きてきた。


「やぁ、おはようアイラ。」

「…ん、おはようツバサ」


アイラは、朝があまり得意ではないらしいが、結構早起きだ。逆にイズナは朝には強いと言っていたが、起きるのがかなり遅い。…まったく、正反対な奴らだ。


そうこうしているうちに、料理が出来上がった。今日の朝食は定番の目玉焼きとベーコン擬き、それと何故か市場で売ってたおしるこ缶だ。なぜおしるこが売っていたのか不思議だったが、店主に聞いてみると、ある日この街にやってきた太った中年の男が、このおしるこの作り方と、缶の生成方法を教えていったらしい。大方他の転移者が伝えたのだろう。まぁ、そのおかげで俺はおしるこを飲むことが出来るわけだ。…あぁ、めちゃくちゃ懐かしい味だ。


そんな感じで俺がおしるこを飲んでいると、ようやくイズナが起きてきたようだ。

…なんだかすごく眠そうだな。


「おはようイズナ。今日も眠そうだな、また妄想でもしていたのか?」

「えぇ、昨日もすごい妄想が出来たわ。…もう興奮して寝れなかったのよ!」


そう、イズナが朝起きるのが遅いのは、夜寝る前に妄想をしているからだそうだ。しかも、その内容が俺には到底理解できないほどハードなプレイだった。…あんなこと聞くんじゃなかった。


…まぁ、そんな話はおいといて、とりあえず朝ご飯を食べよう。


「じゃあ、いただきます。」

「…ん、いただきます。」

「いただきます。」


こうして俺たちの一日が始まった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして朝ご飯を食べ終わった俺たちは、野宿するための道具を片付け、再び次の街を探すための準備を始めていた。


「そういえば、次の街までどのくらい時間がかかるか分からないから、一応衣類を洗っておかないといけないな。」

「…ん、私が洗っておく。」


そう言ってアイラが近くに流れている川に洗濯をしに行ったのだが、こんな会話が聞こえてきた。


**************************


「アイラ、ツバサの服は私が洗うわ!」

「…なら、下着は私が洗う。だからイズナは服を洗って。」

「えぇ!?ダメよ、そしたらツバサの下着の匂いを嗅げないじゃない!」

「…ツバサの、下着の匂いを嗅ぐのはダメ。イズナは変態だからツバサがさらに変態になって、他の女に手を出す可能性が上がる。」

「ツバサは元々変態よ。それに、アイラだってツバサの服の匂いを嗅いでるじゃない!」

「…私は、前からずっと匂いを嗅いでた。もうほぼ習慣になってるから、今更変えられない。でも、イズナはただの変態。」

「ただの変態!?も、もっと罵っt…じゃなくて!私にも匂いを嗅がせてよぉ。」

「…なら、なにか勝負をして決めるしかない。なるべく手っ取り早いもので。」

「じゃあ、ツバサが教えてくれた『じゃんけん』とかいうやつでいいんじゃない?」

「…ん、それなら公平。私が勝ったらイズナはツバサの服で我慢する。イズナが勝ったらツバサの下着の匂いを嗅いでもいい。」

「それなら平等ね。じゃあ始めましょう。」

「「じゃんけん…ぽん!!」」


「…私の勝ち。じゃあ洗ってくる。」

「うぅ…。勝負じゃ仕方ないわね。私も洗ってくるわ。」


**************************


…いったいなんなんだあれは!?

アイラたちが俺の下着の匂いを嗅いでいただと!?…毎日体をきちんと洗っていたから臭くはないと思うが…。どちらにしてもすごく恥ずかしい!!あぁ、なんでアイラたちはそんな変態に育ってしまったのだろうか!これじゃあアイラたちはただの美少女じゃなくて、残念な美少女じゃないか!!


…もしかしてこれは俺の影響なのだろうか?だとしたら非常に申し訳ないことをした…。だが、ここでアイラたちに『お前たちは残念な美少女になってしまったからその性癖を直せ』と言うのも、可哀想だしな…。だったら、こんなふうに育ててしまった俺が、この二人を生涯見届けることにしよう。


俺はそう決意し、二人のこれからを温かい目で見守ることにした。


「とりあえず、アイラたちが洗濯をしている間に新しい魔法を創っておこう。」


そう言ってその場で魔法の練習を始めた。


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そして、俺が30分ほど魔法の練習をしていると、アイラたちが戻ってきた。


「おぉ、戻ってきたのか。お疲れさん。少し休んだら次の街を目指して移動するから、ちゃんと休めよ?」

「…ん」

「りょーかい」


俺は、アイラたちが休んでいる間にルーフの毛づくろいをしてやることにした。


「すまぬな我が主よ。」

「まぁまぁ、別にいいって。俺は動物の世話とかをするのも好きだったからな。大きな動物の毛づくろいをするのは結構楽しいんだよな…。」


俺がそう言うと、ルーフは嬉しそうに目を細めて言った。


「そうか…我が主はなかなか変わり者だな。我の前の主など、我の毛並みなど気にも留めず、魔王を倒すころにはすでに全身の毛がボサボサだったぞ!」


どうやら前の主…勇者を思い出してイライラしているようだ。


「そういえば、ルーフのユニークスキルに『???』っていうのがあったんだが、なにか心当たりはあるか?」


俺は前から聞きたかったことを聞いてみた。すると


「うむぅ…。そう言えば、我が一昔前に暴走した際、人型になったという話があったはずだが…。」


えぇ!?まさかのケモっ娘二人目!?


「マジかよ!?それっていつでもできるわけじゃないのか?」


俺がそう聞くと、


「確かあのスキルは魔力を大量に消費するのであまり使えなかったと思うのだが…」

「じゃあさ、俺の魔力を分けたら使えるのか?」


もしこれで人型になれたら、狼のケモっ娘が俺のモノに!?ファアアア!!


「恐らく我が主の魔力を借りればできないことはないと思うが、良いのか?」

「あぁ、いいぞ。…とりあえず半分くらい分けてやるから、足りなかったら行ってくれよ?」

「承知した」


そして俺は、魔力の半分ほどをルーフに分けてやった。すると、ルーフの姿が光り始めた。


「おぉ!!キタコレ!!!」


そうして光が収まって、ルーフが居た場所に立っていたのは…

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