第37話 作戦終了。そしてーー


 吹雪の向こうで幾夜明けただろう。そう彼らは入り乱れたホワイト・アウトの戦場でふと思う。我らの体は機械。この鋼鉄が打ち砕かれぬ限り戦ってみせよう。それこそが――。


 我らダストなのだと、彼らは自らの心を外道へと変えて戦い続ける。足手纏いになる奴は矢面に立たせ、もしくは盾代わりに使い、アゾロイドに啄まれている間に敵諸共斬り捨てる。今この場には守ってやらねばならない者は存在しない。だから構わない。構うものか。


 そうしなければ生き残れない。この作戦を達成できないのだ。だから――。


 生き残っている者は全身に味方のオイルを浴び、白かった雪はダストが流したオイルとアゾロイドの爆発によって地面は見る影も無い。アゾロイドは機能停止する直前、敵味方を巻き込んで自爆するのである。その所為で地面は雪が積もっては抉られ、ダストがオイルを飛び散らせては純白の世界を穢すのを繰り返している。その中をダスト達は行く。


 味方の屍をアゾロイドへと放り投げて喰わせて、その間に懐へと突っ込んで斬り捨てる。無能な奴は巧みに言葉で唆して囮に使い、自らアゾロイドの餌になるよう仕向けた。


 全ては生き残る為。それしか彼らには考えられなかった。生温い方法では生き残れない。何よりここは通常空間では無い。戦場だ。自分達は機械だから生物の様に血で血は洗えない。我らが流すはオイル。赤い血の代わりに体を流れる黒いオイルだ。


 彼らは自らを鬼へと変えて戦い続ける。最早それしかなかった。…だがそんな時、


「北西より接近する物体在りっ!」


「「…っ」」


 誰かの悲鳴染みた声を聴いて、彼らは動きを止めず表情だけを強張らせる。しかしトウヤは急接近して来る物体を眼で捉えられる様になると、もしやと焦りの声を発していた。


「攻撃するなっ! あれは違う! あれは――」


「トウヤ?」


 それを聞いてマックスが訝る様に声を上げていき、トウヤは言葉に詰まりながら告げる。


「あれは我がイルフォート・シティが内々で開発していた代物だ。だから違う。攻撃しないでくれ。あれは我がイルフォートが作り上げた物。過ちの象徴とも言えるものなのだから」


「…っておい、トウヤ。じゃあこの前の襲撃は――」


 そうマックスは訊ねながら、目の前のアゾロイドに鋭い足蹴りを喰らわせていく。そしてこちらへと急接近して来る物体を徐に見上げていって、「ちっ!」と舌打ちしてその物体が着地しようとしている周辺のアゾロイドを片っ端から斬り捨てていく。そして叫んだ。


「こんな戦場に何の用だ! ここはガキの遊び場じゃねぇぞっ!」


 すると雪上に着地した女性型のアゾロイド―リュシューリアは腕にカナンを抱いたまま、弱り顔を浮かべながらマックスへと言っていった。


『分かっています。私とて本当は――』


「トウヤ、良かった。…まだ壊れてなかったんだねっ!」


 その時、リュシューリアの腕の中でカナンが叫ぶ。それを見てトウヤは眼を見開いていき、カナンの顔付きが以前に見たものと異なっていると気付いた。そうトウヤは困惑しながら襲い来るアゾロイドを順に斬り捨てていき、動きを止めずにカナンへと叫んでいった。


「ここから去れっ! ここはお前の様なロボットが来るような場所では無い。…お前には不釣り合いだ。だから行ってくれ。そうでなければ俺達はお前達も破壊しなければならない。お前達はアゾロイドだ。この場に居る以上例外は無い。だから行け。一刻も早くっ」


『…カナン、やはりこの場は――』


 トウヤから言われてリュシューリアは弱り顔をしていき、やはりとカナンを見下ろして言っていく。…本当はこんな戦場のど真ん中に降り立つつもりは無かった。


 でもカナンが頑として譲らなかったのだ。もう二度とトウヤには逢えないかも知れない。それを知るとカナンは双眸に涙を溜めて懇願して来た。トウヤの傍に行きたい、と。


 それにリュシューリアは応えてしまった。既に我が子とも云うべき存在となったカナンの申し出を断れなかったのである。だがカナンは未だ必死に頭を振っており、そして電光棒を手に戦い続けているトウヤを見つめていく。そして耐え切れずに叫んだ。


「やだっ! やだやだやだやだ! だってトウヤ、君がこんな事になったのは――」


「話は後にしろ! 今そんな暇は無いっ! せめて上空で待機していろ。冗談抜きで巻き込まれるぞ。既にこの場には敵味方も無い。最後まで立っていた者が勝者だっ!」


『……』


 言われてリュシューリアは改めてカナンを強く抱き締めていき、そのまま上空へと飛び立ってしまった。その際にカナンは腕の中で暴れていたが、リュシューリアは離さなかった。


 リュシューリアは暴れるカナンを腕に抱いて、弱り顔をして眼下の戦場を見つめていた。何故トウヤは自分達を攻撃して来なかったのか。本当なら攻撃しても良かった筈なのに。


 カナンには未だそれが理解出来ていないが、彼らからすればカナンも自分もアゾロイド。彼らにとっては忌むべき敵でしかない。それなのにとリュシューリアは困惑して漏らす。


『…お優しい方なのですね。トウヤというダストは』


 思わずそう呟いていた。するとそれを聞いたカナンは大きく頷いていき、まるで幼子の様に不貞腐れた表情を浮かべながらリュシューリアへと言っていくのだった。


「当然だよ。だから僕は友達になりたかったんだ。トウヤなら助けてくれる。そう思って」


『…確かにそうですね。あの方なら可能性が――』


 カナンに可能性を見出した様に、ダストにもトウヤの様な存在が居てくれる。こんな戦場でアゾロイドを庇ってくれるダストが居る。それだけでこんなにも心が温まるものなのか。


『やはりあの時、彼は――』


 そうリュシューリアはシティを襲撃した時の事を思い出し、カナンを彼の腕から助けた瞬間の光景を思い浮かべて苦笑いしていた。…やはりあの時、彼はわざとカナンを手放したのだ。その為にわざと自らを犠牲にして胸を貫かれ、カナンを渡す事で戦を終わらせようとした。今となってはそうとしか考えられなかった。きっとそうに違いない。


 それに気付いてしまうと、もうリュシューリアに味方を応援する気は無かった。今だけは彼らダストを応援しよう。彼らが勝って生き残る事を願おう。きっと彼らが生き残ると。


 我らはアゾロイド。人の手によって作り出され、やがて野に捨てられて見捨てられた物。でもそんな我らにも心が在る。彼らが与えてくれた心があるのだ。だから私達は幸せを願う。


 誰も傷付かない世界を願う。こんな歪んだ争いが起きる世の中では無く、皆が笑い合える世界を私達は願う。…いいや、彼らもきっと望んでいる筈だ。こんな争いが起きない事を。


 そうでなければ、何故彼らは泣いているのか。彼らの咆哮がまるで泣哭の様に聞こえる。


 私達の眼下でアゾロイドが自爆していく。ダストが倒れていく。そこに意味など無かった。あるのは無意味な争いだけ。何がバランスだと、そうリュシューリアは自分を叱りたかった。


 このような争いに意味などない。互いに壊し合って新たな悲しみを増やしているだけだ。そして更なる争いを産む。この場に在るのは絶望と彼らの泣哭だけ。他には何も無い。


 徐々に動く物が少なくなっていく。ダストも、そしてアゾロイドも雪上に臥して動かなくなる。やがてダストの一人が、マックスが最後のアゾロイドへと電光棒を付き立てていき、彼女は全てのアゾロイドが停止しているのを確認すると天を仰ぎ、雄叫びを上げていった。


「うおぉぉぉぉっ!」


 それは戦いの終わりを告げる声であった。そこへトウヤは歩み寄って行き、電力の切れた電光棒を雪上へと投げ捨てていく。そしてマックスが力無くその場に座り込んだのを見て、自らも体の限界を感じてその場に座り込んでいった。…吹雪は未だ止まなかった。


 吹雪が何もかも覆い隠していく。粉々に吹き飛んだアゾロイドも、四肢を引き千切られて停止したダストも。既にそこには何も無かった。あるのは白く覆われた大地のみ。


 今はまだアゾロイドの破片やダストの腕や足が雪の中から覗いているが、時期にそれも雪に覆われていくのだろう。そうしてトウヤは何気に周囲を見回していき、ぽつりと言った。


「生き残ったのは俺達だけか。他の連中はどうしたんだ。まさか全員――」


「疾うに逃げちまったよ。ゴールドは俺達以外全滅。シルバーの連中はとっとと逃げた」


 そうマックスから返されて、トウヤは呆れる気力も無くただ白い雪を見つめ続ける。既に腰から下は雪に覆われ始めており、頭や肩にも雪が降り積もり始めていた。そして思う。


 この戦いには一体何の意味があったのかと。何も無かった。無意味なだけだった。


 それまで静かに上空で見守っていたリュシューリアではあったが、戦いの終わりを知るとカナンを連れて雪上へと降り立って行き、しかし雪上に足は付けず浮いたままの体勢を保つ。そして顔すら上げない二人を見つめていき、慰める様に言っていった。


『あなた方は最後まで残り、戦い抜きました。あなた方が勝ったのです。ダストが勝ったのではありません。あなた方が勝ったのです。…ですが他の方々は、それにこれは余りにも』


 そこでリュシューリアは言い淀み、遂には口を噤んで黙り込んでしまった。彼女が言葉を失ってしまうほどに辺りは凄まじかった。これほど雪が降り積もっている中、未だに雪上を汚している黒いオイルの染み。そして雪上から突き出たダストやアゾロイドの体の一部。


 現にリュシューリアに抱かれているカナンは完全に言葉を失っており、恐れ戦いて顔を彼女の胸に押し付けてしまっている。それをリュシューリアは無言で背中を撫でていた。


 リュシューリアは表情こそ変えられないが、その鋼鉄の顔を心中で引き攣らせているのは明らかだった。それほどに凄まじかった。一万ものアゾロイドと戦った後は。


 彼らは暫く無言だった。互いに口を開けず、虚しい沈黙だけが流れ続ける。やがてそれを終わらせるかのようにカナンがリュシューリアの腕から雪上へと飛び降りていき、未だに立ち上がれないトウヤの元へと駆け寄って抱き付いていき、悲痛な声を上げて言ってきた。


「ごめんなさいっ! …僕が悪いんだ。君がこんな事になったのは僕の責任なんだっ!」


「…?」


 それにトウヤは訝しげに顔を上げていき、無言でカナンへと視線を向けていく。カナンはそんなトウヤを更に強く抱き締めていって、しゃくり上げながら続きを語り始める。


「…僕ね、君の事をずっと都市の監視カメラを通して観てたんだ。君は僕と何も変わらないと思って、だから友達になりたいって思って。…でも、僕はずっと研究所の中に居たから。それに下位のダストである君じゃここには来られないって知ったんだ。丁度その時に君のランクはBに変わったから、僕がその後でSへと書き換えたんだ。そうしたら君は僕の元へ来られる様になる。そう考えたんだ。…だからごめんなさい。何もかも僕が悪いんだ」


「…、そんな事か。別のお前が謝る事じゃない」


 トウヤはそれを聞いて溜息を付いていき、そんなカナンの背中を優しく叩いていく。だがカナンは「でもっ」と顔を上げて言ってきて、その双眸に更なる涙を滲ませられてしまった。


 それにトウヤは弱り顔をするしかなく、カナンの背中を片手で撫でてやりながら言った。


「本当にお前が謝る事じゃないんだ。俺達はダスト。何れは通る道なんだ。だから構わない。俺達ダストは遅かれ早かれ廃棄処分される身だ。その原因が何であるかが変わるだけ。現に俺は、先だっての襲撃で負った故障が原因で廃棄処分されていたかも知れないんだからな。この清掃作戦に飛ばされなくても大して変わらない。それが早まるか遅くなるかの差だ」


 するとカナンから「十分な差だよっ!」と言い返されてしまい、トウヤはそれには思わず苦笑を浮かべた瞬間だった。そしてそこへマックスの腕も伸びてきて、そんなカナンの頭を乱暴に撫でて不敵な笑みを浮かべながら言ってくる。


「だからトウヤは気にするなって言ってんだろ? それにな、ガキンチョ。俺達は強いんだ。こんな事じゃ廃棄処分になんてならないんだよ。それにトウヤには俺が付いてる。俺達二人が揃えば不可能なんてないんだよ。俺達は無敵だ! だから謝んな。お前は悪くない」


「…で、でも。僕、僕っ」


 そうマックスから言われて、カナンは再び涙を浮かべて泣き始めてしまった。マックスはそれを見て「うぉえ?」とおかしな声を上げていき、おろおろと腕を宙に彷徨わせ出す。


 リュシューリアはその慌て様を見て、小さく笑いながらカナンを引き取っていく。そして改めて二人を見下ろしていき、柔らかな笑みを浮かべながら言ってきた。


『あなた方に感謝を。私達アゾロイドに刃を向けず対等に扱ってくれる事、そしてこの子を叱らず慰めてくれた事。そのどれもが私達には新鮮で、そして温かなものでした。あなた方は優しい。今まで接してきた方々の誰よりも優しい。…あの、それに付け込む訳では無いのですが。私から一つお願いがあります。話を聞いて頂けないでしょうか』


「「?」」


 それにトウヤとマックスは共に首を傾げていき、不思議そうな顔をして次の言葉を待つ。するとリュシューリアは恥ずかしそうに俯いていき、そしてカナンを抱きながら告げた。


『この子の友達になって下さいませんか。…私では母親代わりは出来ても友達は無理です。ですから御二人に友達になって頂きたいのです。無理は言いません。偶に会ってくれるだけでいいのです。所詮我らはアゾロイド。あなた方はダストです。このような無理は――』


「いいんじゃねぇか?」


 だが、マックスはそれに即答していた。それにはトウヤも即座に頷いており、笑いながらカナンを見上げつつリュシューリアへと言っていく。


「なに、俺達は末端のダストだ。別に誰と会っていようと咎められる事など無い。何よりも今の俺達は普段都市の外で任務に就いている。一々本部から干渉される事も無いしな。何も問題は無い。要は見つからなければいいだけの話だ。俺達は特に問題ないぞ?」


 そうトウヤが軽やかに告げていくと、隣でマックスも「んだんだ」と何度も頷いている。それを聞いてリュシューリアは呆れ顔を浮かべていき、思わず二人へと訊ねていた。


『そんな適当に約束を交わしてしまって大丈夫なのですか? 仮にもあなた方はダスト。そして私達はアゾロイドなのですよ? 万一見つかれば咎められるだけでは済みません。最悪の場合廃棄処分にされ兼ねないのです。そんな危険を冒してこの子と会うのは――』


 するとそんなリュシューリアの腕をカナンが掴んできて、今にも泣きそうな顔で縋る様な眼をしてリュシューリアを見上げてくる。その眼差しを受けて彼女は言葉を詰まらせる。


『…え、えっと――』


「駄目?」


『……。いえ、あの――』


 必死に説明しようとするが、何故か上手くいかない。結局折れたのはリュシューリアの方だった。彼女は諦める様に項垂れてしまい、そしてトウヤとマックスへと言っていった。


『無理のない範囲で構いませんから。普段私達はここから遥か南の孤島で暮らしています。お時間が出来たら訪ねて下さい。御二人が来るのを私達は待っていますから』


 言われてトウヤとマックスは柔らかく微笑んでいき、そしてトウヤはようやく雪上へと立ち上がっていって、雪上に浮かんでいるリュシューリアを見て告げていった。


「なら、改めて自己紹介だな。…俺はトウヤ。トウヤ・シズナールだ。よろしくな」


 続いてマックスも立ち上がっていき、トウヤに倣って自己紹介を始めていく。


「俺はマックス! …間違ってもフルネームは聞くんじゃねぇ。その時は容赦しねぇぞ」


 その言葉にカナンは怖がる様に震えていき、それに気付いたトウヤが呆れ顔をしながら理由を二人へと説明し始める。


「気にするな。こいつは自分の名前を他者に呼ばれるのが嫌いなだけだ。単純にそれだけだ」


『あら、そうなのですか?』


 しかし、何故かそれにリュシューリアが興味を示してくる。…何となく苛めっ子の臭いがするなとトウヤは思ったが口には出さず、「まぁそういう訳だ」と話を終わらせてしまった。


 続けてリュシューリアも声を発してきて、二人に向けて自己紹介を始めてくる。


『私はリュシューリア。一応断っておきますが、本来私は戦闘用ではありませんのでその点は悪しからず。本来与えられた役目は記録。この世界の記録です。その点は御容赦を』


「…ほう、世界の記録か。これはまた意外だな」


 意外な役目を聞いて思わずトウヤが声を上げる。だがそれまで三人の自己紹介を黙って聞いていたカナンではあったが、ようやく回って来た自分の番に嬉々として言っていった。


「僕はカナン! …あのね、リュシューリアが付けてくれたんだよ。リュシューリアはね、とても優しいんだ! きっとトウヤ達と仲良くなれるよ。だからね、だからね――」


 だがそこでリュシューリアが「カナン」と短く制していき、カナンを抱いて緩やかに上空へと飛び立ち始める。そして雪上に立っている二人へと言っていった。


『どうやら時間が来てしまったようです。…あなた方を迎えに来た機体の音が聞こえます。名残惜しいですが私達はここで。不要な争いを起こすのは本望ではありませんから』


「…、そうだな。それは俺達だって同じだ。もうこんな争いは、な」


 そうトウヤが困った顔で笑っていくと、リュシューリアはカナンを連れて白雲の中へと消えていった。その際にカナンが「まだ喋りたいっ」と文句を言っているのが聞こえたが、どうやら彼女はそれを無視したらしい。…それも当然かと、そうトウヤは息を付いて思う。


 そこへマックスが歩み寄って来て、遠くから聞こえてくるプロペラ音の方角を見上げて溜息を漏らしていく。同時にリュシューリアの反応が完全に消えたのを見て言っていった。


「ベスト・タイミングってとこだな。まぁガキンチョ…カナンの方はまだ喋りたそうだったけどよ。こっちから逢いに行けばいいだろ。こうして生き残ったんだから時間はあるしな」


「まぁそうだな。スオウ達にも事情を話せば許可してくれるだろうし」


 そうトウヤも言いつつ、二人は輸送機が自分達の元へと降り立ってくるのをのんびりと眺めていた。しかし二人はまだ知らない。何故輸送機がこのタイミングで現れたのか。


 そこには大きな落とし穴があった。…冷静に考えてみれば余りにも当然な穴が、である。


 実は二人の会話は全て回線を通じて本部へと筒抜けていたのだ。よって時間をずらして輸送機は都市から飛び立ち、作戦が終了して間を置いた後に二人を回収に来たのである。


 世の中は決して甘くない。そして二人はダストだ。その意味を二人が改めて思い知るまで後小一時間。体の汚れを落として修理を受けて、さっぱりした後で知らされる事になる。


 まさにこれこそ因果応報。当然の結末であった。それを今の二人は知らない。


 あの清掃作戦を無事生き延びたという安堵の所為で、二人はすっかり油断してしまっていた。二人は全て終わった後で思い知る事になる。…やはり油断は怪我の基なのだ、と。

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