第2話 「アサノヒミツ」

まず決まって朝の動きはこうだった。

朝起き、あくびをする。そして宙に浮かぶミアに頭をぶつけないように寝室を出て

洗面台へ。そこで歯磨きをして検体風呂メディカルスフィアに。

正直私が普段の生活でリラックスできる唯一のオアシスはこの風呂だ。

検体風呂メディカルスフィアとたいそうな名前がついているのだが

真四角でやや広めの白尽くめの部屋の中心にぽつんと人が一人はいれるくらいの

球体があるだけ。だがこのただの球体の開発に1000年以上の歴史があるのだから

感謝しなくてはならない、裸になり、球体にはいればまさにそこは楽園、全自動での体洗いシステムで5分とかからず菌ひとつない完全な清潔を手にすることが

できる。そして極めつけは液体電子エレクトリバーによる検体メディエイトが行われる。液体電子エレクトリバーは見えるか見えないかくらいの水色をした液体でそれ以外は普通の水となんらかわりはなく

検体風呂メディカルスフィアにそれが隙間なく満たされ生体情報を隈なく読み取るのだ。いわばこれは内側の汚れをおとす行為を指し、内臓系、血液、脳などに何らかの異常が見つかった場合、液体電子エレクトリバーを通し正常化するまで

治療がその場で行われる。まさに偉大なる発明だ。

検体メディエイトの間は水中に浮遊しているように錯覚しとても心地がいい。

あくまでも水に限りなく似ているだけで溺れたりはしない、言ってしまえば流動性を過剰にもつ電子の集合体だからだ。

検体風呂メディカルスフィアの開発に伴い、当然、人間は病死の恐怖からは解放され、小さい風邪すらひかなくなりありとあらゆる医療機関は消滅した・・・と教科書に書いてあった。それほどにこの発明の余波は大きく各地で世界戦争も起こったほどだった・・・とこれもまた教科書に書いてあったものだ。

さらにまた・・・

そして・・・

だが・・・

・・・

このへんにしておこう。

そして着替えたらこんどは朝食だ。

ミアに見つからないよう、超最強世界改変ブックの食事目録のページを引出し「百之瀬雪菜宅のテーブル上に極上の朝飯がある」とこっそり書き、こっそりとページを閉じ、いかにも朝食を作り終えた顔でミアを優しく起こし朝ご飯に呼び、たらふく朝食を食し学校いく。

やはり超最強世界改変ブックは便利だ。やめられない。

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