第二片 襲来、奮闘。そして―― 0

 無邪気な声で君は笑った。

「いい? わたしがお姫様で、あなたが近衛隊長」

 舌っ足らずな口調で、聞き慣れない役を要求する。

「なに、それ」

 オレは首をかしげる。

「えっとね……」

 たどたとしく、君は説明を試みる。

 ゆうべ、お父様とお母様といっしょにお芝居を観たの。

 そのお芝居に出てきたお姫様がとってもきれいで、近衛隊長は……えーと……とにかくすっごくかっこよかった!

 お話はよくわからなかったようだが、お芝居自体はとても気に入ったのだな、と理解した。

「で、その――コノエタイチョウ? ってのは、なにをすればいいんだ?」

「わたしをまもるの。クセモノとか、てっぽうのタマとか、そういういろんな危ないものから」

 なんだ――と、オレも笑った。

「それじゃあ、いつもと変わらないな」

「ああ……そういえばそうね。うーん、それじゃあ――」

 白い手がのびて、オレの上着の袖をつまんだ。

 見あげる瞳。

「これからも、ずっとこの先も、わたしの近衛隊長でいてくれる?」

「いいよ。これからも、ずっとこの先も」


 ――君を守る。

 そう誓った。

 その意味も知らず。

 その困難さにも思いいたらず。

 無邪気にただ、できると信じていた。

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