第2話

「しかし、君が魔法少女になるとはねぇ。」


「ねぇミント。変身アイテムブレスレットなの?ペンダントとかじゃないの?」


「変身したとき首に宝石がついてる数珠つけてたでしょ。ブレスレットじゃないと置き場所ないし。というか君警察官なの?」


「わるい?」


「いや、悪くないよ。むしろいいと思う。昨日戦いが終わったあとすぐさま仲間たちが駆け付けて残ってる物を分析して鬼の弱点や対策を探し出そうと早速動いてるじゃんか。こんなの初めてだよ。しかも警察官だからか戦うって決めるまでが早い早い。」


「私、警察官だからね。人を守らないと。なんかさ、ミントの言い方って前にも同じ事があったみたいな言い方だよね。」


「君が三代目。初代魔法少女の名前がヒカリちゃんだったから名前が魔法少女ヒカリなんだよ。」



「あらそうなの。なんで変身呪文だけわかったんだろ?」


「僕にもわかんない。気分じゃね?」


「なんのこっちゃ。」



その頃病院では。


「ものの見事に捻挫。随分やらかしたわね。鬼と相撲でもしてたの。」


「いやー相撲はしてないですね。」


心配して見に来た暁美に桜が話しかけた。


「暁美さん、こちら私がよくお世話になってる恵さん。女医なんだよ。」


「あーこの子が例の魔法少女か。」


「そうですね。肩に乗ってる黒猫は・・・・・あれ?なんだっけ?」


「ミントです。」


「昨日いろいろありすぎてもう頭に入りきらない。」


恵はじーっと暁美の顔を見たあと、恵に言った。


「まぁなるべく動かさない事ね。」


「わかりました。今日はこれから小学校に?」


「えぇ。親子でなんか作るんだとさ。忙しいってのに。」


「雄介くんでしたっけ?」


「えぇ、今年の4月から小学生。」


「あの子も小学生かぁー。」



「今日の朝、魔法少女のニュース見てたら騒いでたよ。無邪気なやつだ。」



唐突に桜に電話がかかってきたので恵は早速電話に出た。


「警察本部にもどってくれ。」


上司に言われ桜は一旦本部へ戻った。課長の照井は口を尖らせていった。


「鬼の登場に魔法少女か。挙句その魔法少女の正体がわが警察の警察官とは。にわかには信じ難いな。」


「それは私も同意見です。」



「残念ながら鬼の被害は続いている。従って今回は鬼事件特別捜査本部をつくる事になった。鬼に最初に遭遇した桜さんも参加してくれ。暁美さんも是非にと。」


「わかりました。」



桜は暁美をつれて新設された鬼事件特別捜査本部の会議に出席した。頭をかきながら本部長の宗形が話し始めた。


「えーこれより捜査会議をはじめる。まずは歴史班。捜査結果を。」


「全国の博物館や神社などから鬼や魔法少女に関する資料を集めましたが鬼に対する対抗策のようなものは見つかりませんでした。魔法少女に関する物に関してはいくつかあり、まず現在確認されている形態が魔法少女ヒカリの大地の形態というらしいです。」


暁美は驚いた。全然知らなかったからだ。


「また、大地の形態以外に水の形態と山の形態があります。それぞれ水の形態は青色に山の形態は緑色になります。武器は大地の形態ではステッキですが、水の形態では弓矢、山の形態では非常に細い剣。剣というには細すぎるので、むしろレイピアに近いと思います。」


「どうだ?暁美さんは参考になったか?」


「大変勉強になりました。」



立ち上がって礼をしたあと、座ると同時にケロッとした顔をしているミントをみつめた。


「えーミントくん?どういう事かな?私、なーんにも聞いてないんだけど。」


「え?そんな情報いらないのかと。」


「いるよ!」


「あら、そうなの。」


「そうなのじゃないわい。」




ミントの首を人差し指と中指で挟んで顔を筆箱に突っ込んだ。



「・・・・・となっているのが今の現状です。」


「まぁ、鬼に関してはまだ情報が足りないだろう。情報を集め、魔法少女の力を借りずに鬼を撃破出来るようになるのが当面の目標とする。まずさしあたっては確認されているヒョウに似た鬼を見つけること。」


本部長の宗形が話をまとめた。


「それじゃ割り当てを言うぞ。とりあえずは今回も桜さんは暁美さんとコンビを組むということで。暁美さんの力をなるべく使わないようにしたいがいざとなればそうせざるを得まい。」


「わかりました。」


「それとあと君は昨日クモ型の鬼とが出たいくつかの地点をマップにして、出現場所に規則性がないかの調査。君は・・・・・」



課長が割り当てを言っているのを聞きながら暁美と桜は捜査を始めた。車に乗りながら桜は言った。



「あと2つも形態があるんだね。」


「知りませんでした。ミントのやつ何も言わないから全く。」


「それよりも、水の形態や山の形態って何ができるんだろうね。水になっちゃうのかな液体みたいに。」


「それはなんか攻撃効かなくて強そうですけどその形態だけで全部解決しそう。」


「確かに。」


「それぞれで出来ることがわかんないとなぁー。ねぇミント?」


「水の形態はすごく動きが早くなるよ。物陰に隠れて弓矢を打ちやすいでしょ。山の形態は力が強くなってレイピアを使いやすくなるでしょ。」


「初めてミントが役に立った。」


「心外だ。あと、移動用に蝶を召喚できるよ。」


「すごーい!聞かなくても教えてくれたー!えらいねー!」


「なんかむかつく。」



2人やりとりを聞いて桜は笑っていた。暁美は桜の笑った顔を初めて見た。


「途中で恵さんのとこによっていこう。何かわかるかもしれないし。」



桜の提案で2人は恵のところによった。珍しく恵はとても怒っていた。桜が話しかけた。



「なんであんな乱暴働いたのかな。父さんに似たのかな!」


「恵さん。どうしたんです?」


「雄介のヤツ喧嘩したの。親子で料理作ろうって言ったのに雄介ったら卵を取られたって言ってものすごく怒ってさ。相手のこの頭を引っぱたいたの。いつからあんなに乱暴になったのかわからない。相手の親御さんいい人で笑って許してくれたからいいものの。怪我でもさせたらってほんと。今度やったら二度とおもちゃ買わないからねって言ってやったわ。たまにしか会えないのに。夜ご飯作ってあげられない時もあるのにたまにあって嫌な気持ちになるとか本当に嫌だわ。」


「雄介くんは?会ってもいいですか?」


「上の階に預けてる。ひとしきり泣いたあとだから元気ないかもよ。」


「わかりました。」



雄介は保育室の隅っこで座っていた。


「雄介くん。久しぶりだね。」


「桜お姉さん。」


「お母さんに怒られたのか。」


「うん。言い訳は聞きませんって。何も聞いてもらえなかった。」


「じゃあ私が聞く。」


「僕ね、一人で目玉焼き焼けるようになったんだ。お母さんの前で作って食べてもらいたかったのに。たまにしか会えないのに。」


桜の後ろで黙って聞いていた暁美が優しく聞いた。


「その事お母さんは?知ってるの?」


「しらない。驚かせようとしたの。」


桜が思いついたように言った。


「私と一緒にお母さんに目玉焼き作ってあげよっか?手伝うよ。」


「いいの?」



桜は少し面倒を見ると言って恵からアパートの鍵を借りた。



恵、暁美と雄介の3人は部屋で目玉焼きを手伝った。


「公務中にあたしら何やってんですかね。」


「この人達も鬼のせいで会う回数が減った事を考えれば被害者の心に寄り添う。立派な公務だよ。」


「なるほど。」



出来上がった目玉焼きは火加減も下手くそで水を入れすぎたのかすこし白っぽかった。桜が恵のところに持っていった。



「この目玉焼きは?」


「雄介くんが作ったんです。あの子は恵さんが帰らない日には目玉焼き、練習してたんです。親子の料理の時に見てもらいたくてあんな事を。」


雄介のぐにゃぐにゃな手紙がついていて下手くそな絵があった。「めだまやき、ママのためにつくった。いつもこわいけどありがとう」恵は優しい笑顔で目玉焼きを頬張った。そうか。雄介、勘違いしててごめん。お母さんのためだったのか。叩いたのは悪かったけど理由を聞かなかったのは私のまちがいであった。


恵は暁美の後ろから覗いていた雄介に言った。


「雄介。目玉焼き、ありがとう。お母さん話聞きもしないで、ごめん。今日早く帰るから。ハンバーグにでもするか。」


「やったぁ!」


雄介は暁美の後ろから飛び出し、恵に飛び付いた。




「ほんと、素敵な親子だね。」


「そうですねぇ。」


病院から出てきた桜と暁美はそんな話をしていた。そんな時に無線が入った。


「ヒョウ型の鬼がそちらへ逃走しました。非常に動きが早いです!気をつけて。」



「桜さん、行ってきます。」


「行ってらっしゃい。」


「ジーチェ・シーフェン。」


魔法少女ヒカリに変身した暁美はすぐさまミントをつかんだ。


「な、なに。僕はまだ何も。」


「いくつか呪文を教えなさーい。」


「わかったわかった。離して。掴まれてると背中がかけない。」



ミントを捕まえていくつか呪文を聞き出した魔法少女ヒカリは蝶の召喚呪文を唱えた。


「カーモ・フーラバ。」

巨大な蝶が飛んできて背中に魔法少女ヒカリを乗せた。更に水の形態への変身呪文を唱えた。


「ジーチェ・ターウェ。」


水の形態に変身した。白かった部分が一部青くなった。


「カーモ・ロアー。」


ブレスレットから弓矢が飛び出し、魔法少女ヒカリはそれをつかんだ。蝶に乗りながら弓矢を構え、敵を探していた。


「このあたりにいるはず。ミントもさがして。」


肩の上で背中をかいていたミントは返事をして一緒に探し始めた。


「いた!あそこ!」


ミントが指す先には道路を猛烈なスピードで走る鬼がいた。つがえていた指を離し、矢を放った。矢はヒョウ型の鬼に命中、爆破した。



変身を解いて桜のところに戻ると桜は本部へ戻るため、一緒に車に乗り込んだ。


「何だか恵さん親子をみてるとさ、本当は犯罪なんかなければいいのにっていつも思うよ。喧嘩するにしても謝れば仲直りできる、ハンバーグで幸せになれるっていいじゃない。」


「そうですね。私たち警察はお仕事がなくて困るのが本当は理想ですよね。」


「いつか、来て欲しいね。警察や自衛隊とかが全く要らなくなる日が。」

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魔法少女ヒカリ @molmotlove

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