魔法少女ヒカリ
@molmotlove
第1話
電灯の光も届かない真っ暗な闇の中、うごめく影があった。カラスが飛び交い不気味な影は目の部分が赤く発光していた。
不気味な影は口から白い糸を吹き、車などをつかみビルにぶつけた。ビルは大きく凹み被害は大きなものになった。
目を赤く発光させた不気味な影はそのまま逃走した。影はとある山の中で祠の中にしまわれていたものを引っ張り出そうと手をかけたが激しい光に弾かれ姿を消した。
「健太、この辺はじめてなもんだから道に迷ってよ。」
「あら、お孫さんですか?」
「んだぁ、しばらくここにいるから話相手してやってな。あ、それと今日の朝取れたんだこのさつまいも。おらのは甘いから持ってきな。」
「おばあちゃんのおいもはいつもおいしいですから。」
「アルミさ巻いてゆっくり焼くと甘くてうまいんだ。ほなまたな。」
歩いていく近所のおばあちゃんに笑顔を見せながら暁美は祠近くに警察官が沢山いる現場へ入った。
その中で一人の女性に話しかけた。
「本日1日研修でご一緒となりました光良暁美です!」
「1日研修?あったっけ?」
「はい!ありました!」
「何するの?」
「わかりません!」
「わからないのかよ。全く。見学はいいけど邪魔はしないでね。ん?履歴書。光良暁美、22歳。最近警察官への新入りか。こんな紙切れ1枚じゃ全くわからん。」
その女性は名刺がわりに警察手帳をみせた。
「三条桜。桜さんですね!」
鑑識が壊された祠の中から綺麗な石を見つけた。
「あの石ピンク色でかわいい。」
「あれが狙われたのかな?とてもあの事件と関係してるようには見えないけど。」
「祠を壊すなんて罰当たりですよ。あの事件ってビルのあれですか?」
「そうそう。ビルの会社に車が頭から突っ込む事件。でもあんな高いところに車を突っ込むなんてクレーンがないとできないよ。でも周囲にクレーンなんてないしどうなってるんだか。」
桜は封筒から写真を取り出した。
「これが防犯カメラに映ってた映像。赤い体に赤い目。わたしの浅い知識では・・・・・」
「鬼?」
「と、私も言おうとした。鬼だよね。ってあなた、関係ないでしょ。」
「あの石欲しい。」
「だめに決まってるでしょ。全く調子狂うな。一回東京行くわよ。研修するにも研修の書類読み合わせしないと研修にもなりやしない。ついでにこの石分析してもらうわ。」
東京につく頃にはすっかり夕方だった。科捜研の戸を叩くと白衣を着た男性が出てきた。
「おや、桜さんじゃないか。」
「弘樹さん、この石を分析していただこうかと。」
「綺麗だな。とりあえずいろいろ調べてみるか。」
「何だか成分的に勾玉に近いな。大きさ的に。腕にでもつけて使ったのだろう。」
「鬼が勾玉を狙うとはねぇー。」
「ピンク色でかわいいから鬼もつけたかったんですよ。おしゃれ!」
桜は暁美をぎろっと睨んで首を掴んで外に出した。
「少しそこで待ってなさい。」
しかし、30秒ほどでまた桜が顔を出して言った。
「もどりなさい、だそうです。」
桜が頭を抱えていた。
「桜さん、そんなかわいい子を邪険にするもんじゃないよ。あながち間違ってるともいいきれないし。」
「ったくかわいい女の子にはどうしてみんなこうなのよ。」
「いずれにせよ勾玉を鬼が狙った事は確かですから。」
しばらく調査をした結果特に手がかりは見つからなかった。
「その石はあなたが祠に戻しておいて。猫ばばはだめ。それと鬼の事件はあなたに関係ない。首を突っ込むな。」
「私、鬼と戦ってやっつけます!」
「はいはい。できもしないことを言わない。それじゃまたね。」
車の窓を閉めた。桜の中で暁美の第一印象は最悪だった。なんだあいつは。へらへらしてるし言ってることもとんちんかんなのにかわいいからかあんまり怒られない。私の一番嫌いな人種だ。桜は怒りながらクルマを走らせた。
すると無線に通信が入った。
「高層ビルの屋上付近に巨大なクモの巣のようなものが発見。近くの方は急行してください。」
ナビゲーションを見て桜が一番近かった。
「桜です。私が行きます。」
本当だ。まるでクモの巣だ。早速ビルの中に入り高い階までやってきた。だれかいるのだろうか。
するといきなり赤い手が桜の胸ぐらを掴んで放り投げた。背中を打った桜は投げた方を見た。そこにいたのは鬼だ。しかも、クモの巣やクモのような装飾がしてあった。口から糸をはき、桜をからめとろうとした。
桜は拳銃を撃ちまくったがなんと全く効かない。なんて相手だ。
「消えてなくなれ。」
クモ型の鬼はビルの中のコードを引きちぎった。火花はカーテンに燃え移った。あたりは火の海だ。
応援を呼ばねば。桜が走って逃げようとした瞬間、クモ型の鬼は口から糸をだし右足に巻き付けた。転んで足を激しくひねった。火の手は目の前に迫っているが動けない。かなりやばい。
すると近くの扉から暁美が飛び出して駆けつけた。
「桜さん、足が。」
ナイフを出して糸を切った暁美にクモ型の鬼が飛び掛ろうとした。
「あなた、関係ないって言ったでしょ。」
「私、やっつけます。」
「馬鹿な事いわないの!」
ピンク色の石を腕にあてた瞬間、ブレスレットになった。ブレスレットが激しく発光した。
「我に魔法の力を。ジーチェ・シーフェン!」
呪文を認識したかのようにピンク色に発光した。
カーテンの火は床やあちこちに燃え広がっていた。暁美は生身のままクモ型の鬼に飛びかかり蹴りを入れた。蹴りやパンチを入れる度に足、腕が変化し全身を覆い、顔をマスクがおおった。
最後の一発をくらいクモ型の鬼は後方に吹っ飛ばされた。桜は見を見張った。
闇夜の中炎に包まれながら立っていた。全身をつつむ白いボディーに入るピンクのラインが女の子らしいが、闇夜に映るその姿は神々しかった。ブレスレットから羽の生えた小さな黒猫がとびだした。黒猫は変身した暁美を見て行った。
「おおー、またヒカリか。僕はミント。よろしくね。」
「よろしく!」
クモ型の鬼が立ち上がった。
「なっ・・・・・貴様、魔法少女だったのか。シャーマンの血を継ぐ者はまだ途絶えていなかったんだな。」
「あら!私、魔法少女なんだ。」
「僕たちの言い方からすると少し違う。君が変身したその姿は魔法少女ヒカリ。」
「おっけーおぼえた。私、魔法少女ヒカリ!」
闇夜の中、照らされながら光るその姿は魔法少女というよりも希望そのもののようだと桜は内心思った。背後からヘリコプターのローターの音ともにライトの光が魔法少女ヒカリを照らした。
「あれは新手の鬼か?攻撃準備!」
桜が無線に呼びかけた。
「白いタイプは光良暁美が変身した姿です。攻撃してはダメです。」
「了解!攻撃は鬼の方に限定、白い方は傷付けるな。」
クモ型の鬼は構わず殴りかかって来たがそれをすかさずかわし回し蹴りを決めた。敵の動きを見極めながら足技を中心に優勢に戦った。クモ型の鬼は逃げようとしたが背中に飛び蹴りを入れた。
「ねぇ、ミント。武器なんかないの?」
「え、ステッキがあるよ。」
「なんで言わないのよ。」
「いや、いらないのかと。呪文はカーモ・キーテス」
「わかった。カーモ・キーテス!」
ブレスレットからステッキが飛び出した。クモ型の鬼を放り投げた。クモ型の鬼は為すすべもなく床に叩きつけられた。
「必殺呪文は?」
「ツーヒツ・キーテス」
「おっけー!ツーヒツ・キーテス!」
ステッキが長く伸び、先がピンク色に発光した。ジャンプして勢いをつけて発光したステッキを叩きつけた。
クモ型の鬼は爆発し、消え去った。
変身を解いた暁美はすかさず桜にかけより、足にやけどがないか確かめた後手を差し出した。
桜は手をつかみ痛そうにしながらも立ち上がった。
「やっつけるって言ったじゃないですか。」
「ええ。とりあえず有言実行はできる人だとは認識しとく。」
桜と暁美は歩いてビルを降りていった。
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