第5話 二次試験

「え、さっきの試験だったの?ていうか、試験官3人だけですか?」

犀川はその見知らぬ男に聞いた。

「俺は加賀義臣(かが よしおみ)っつーもんだ。なんでも今回は急な試験だったもんでな、責任者が務まるのは俺しかいなかったんだ。先ほども言った通り、一次試験は合格だ。俺たちの本当の仕事内容を知っても、試験を受けに来る度胸は認めよう。まあ、理由は少し変わっているがな。」

加賀は少し笑った。

「で、二次試験って、まさかバトルとかですか?」

犀川は身構える。彼はケンカには自信がなかった。

「ははは、まさか。俺たちは一応警察だ。さっきのはお前の度胸を試しただけ、次は体力テストと知能テスト、それから能力テストを受けておしまい。」

加賀は面白そうに答える。

「うえ、体力テストもですか?」

長年引きこもっていた犀川にとって、体力テストは天敵だった。

それから犀川は体力テスト、知能テスト、そして能力のレベルを見る能力テストの順で試験を受けていった。


「試験ご苦労様。結果が出るまでもう少しここで待ってて。」

神崎はバテバテになって今にも吐き出しそうな犀川に言った。

「・・・あんた、体力テストは一番最初に受けたんじゃ・・」

「あ、ああ、はあ・・はあ・・おかげで・きつかった・・ぜ・・うぷっ」

「・・ここで死なないでね。」

そう言って神崎は待合室を出る。

(あの調子じゃ、知能テストも能力テストもボロボロでしょうね。まだまだ人手不足か。)

ため息をつきながら、神崎は会議室へ入った。

会議室の中ではすでに、加賀と立花がモニターに映った男と話しあっていた。

「どうだったんですか?」

神崎が聞く。

「なかなか面白い結果になった。」

加賀はにやりとしながら、資料を神崎に渡した。資料を見て神崎は驚く。

「え、知能テスト300点満点中296点!?」

「ああ、ぶっちぎりで過去最高点だ。能力テストも、昨日能力に目覚めたばかりとは思えない。体力の方は・・まあ・・・予想どおりだ。で、署長、どうします?」

加賀はモニターの男に問いかける。

『加賀、お前にまかせるよ』

男は答えた。

「まあ、採ってもいいでしょう。色々と役に立ちそうだ。」

加賀は笑う。


「あー、やっと落ち着いてきた。」

待合室で死にかけていた犀川が復活する。

(身体鍛えよう・・・)

そう硬く決心したところで、扉が開いた。

そして、ぞろぞろと試験官の3人が入ってきた。

「犀川進。合格だ。」

加賀はそう言って、神崎に目をやる。それに応えて、神崎が犀川に紙袋を渡した。

「スーツと警察手帳。それからスタンバトンが入っているわ。おめでとう。」

すこし冷たい口調でそう言った。

「あ・ありがとうございます・・」

「うんうん、俺の朝ごはんのおかげだな。」

立花は満足げにそう言った。

「いや、あんたの飯、さっき吐いて来たよ。」

「なん・・だと・・・」

立花が膝をついた。案外打たれ弱かった。

「えー、なに。朝飯作ってもらったの?どういう仲よ。」

「え、いや、こいつが勝手に・・」

「犀川が俺を母性に目覚めさせた・・」

「話をややこしくすんな!」

「・・・」

「いや、違いますって神崎さん!!!」

「近寄らないで。」

神崎は完全に引いていた。


「・・・えーと、盛り上がってるところ申し訳ないが、そろそろ本部へ行こうか。」

加賀がようやく入ってきた。

「え、本部ってここじゃ?」

犀川は半泣きになりながら、聞き返す。

「あんたバカなの?まだ試験通ってない一般人に本部の場所教えるわけないじゃない。一回死んだら。」

神崎が冷たい声で返す。

「すみません。」

もう犀川には謝ることしかできなかった。

ちなみにこの後、誤解を解くのに3日はかかったようだ。


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