終章

続く悲劇

彼の日記 ~その三~


 彼は、俺をだましていた。

 好きだと言ったことも、家族になろうと言ったことも。

 あの笑顔すらも、偽り。

 でも、それに救われたのだ。

 色づいた世界は、ひとりではまぶしくて。

 彼がいない寂しさで、胸が張り裂けそうになって。

 嘘でもよかった。

 笑顔を向けてくれたから。

 ぬくもりをくれたから。

 だからもうそれだけでよかった。

 ただ、好きでいることが、苦しくなった。

 思い出すだけで、胸がぐちゃぐちゃになる。

 苦しくて、辛くて、悲しくて、切なくて、恋しくて。

 泣き叫ぶことしかできないことが、虚しくて。

 だから落ち着くために、この地を離れようと思う。いつか、受け入れるために。

 受け入れて笑えるように。どれだけ好きだったかを、笑って話せるように。

 だからそのために、頑張らなくてはいけない。

 誠も、院長先生も、俺のためにたくさんのことをしてくれる。

 それを返さなくては。

 誠にも院長先生にも、いつか自分のすべてをかけて恩返しをするのだ。

 それが終わったらそのとき、きっと自分は初めて自分を人間と認めることができそうだから。













 涙のあとがぽつぽつと残るその日記を握りしめて、ひとり嗚咽をかみ殺した。









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