第3話
---犯行当日---
僕、路美男、アヤノの3人は、府中の駅前に集まった。北口の喫茶店で、アヤノが犯行計画のおさらいをした。
「まずは、路美男くんがハッキングでシステムを誤作動させるのよね。警察が混乱している間に3人で少年院に侵入する。そして、妹を見つけ出し、交渉術や心理学を使って脱走するように説得する。もし、妹が暴れ出したら、鍛えた体をいかして力づくでも連れ出す。」
「うん、任せてくれよ」
「でも、最近PSシステムがセキュリティパッチを更新したとニュースになっていたけど、本当に大丈夫なの?」
路美男は驚いた表情をして「し、知らなかった・・・」と呟いた。僕らは最近、漫才や落語にはまってしまい、ニュースをチェックすることを怠っていた。
「それに、旧式の車に乗り込んで、その後、大陸横断道路でA国に行くということなんだけど・・・、国際関係が悪化し、道路開通は無期延期になったことは知っているよね?」アヤノは何事もないように淡々と話した。僕らは、このニュースも知らなかった。
「まぢかよ・・・。」深いため息ついた後、「これじゃあ、計画を練り直すかないな・・・」僕は路美男に向かって言った。
「今日、私の妹を助けてくれるんじゃなかったの?本当に無理なの?」アヤノは悲しい表情をした。
路美男は、「そうだな。今日、計画を実行するのは無理だな・・・」と申し訳なさそうな表情で言った。
「二人とも嘘つき。大キライ・・・・」
そうは言っても、失敗するとわかっている。なぜ、アヤノが今日にこだわっているのかが理解不能だった。それでも、僕はアヤノに嫌われたくない思いも残っていた。
「ねぇ、私のためなら何でもするって言ってくれたよね。妹を今日助けてくれなければ、もう二人とも絶交するけど、本当にいいのね?」とマジギレ5秒前の空気になった。アヤノの眉毛が急につり上がったように見えたため、僕は落ち着かせるためにいつもより低い声を出した。
「ごめんね、アヤノ。残念だけど、今日の計画は中止なんだ・・・」
すると、アヤノは突然、機械のようなデジタルな声を発した。「コレデ研修課程ハ終了デス。」
僕らは、口をぽかーんと開け、アヤノの顔を覗き込んだ。
機械の声は続いた。「合格証明書ハ、コノURLカラ ダウンロード シテクダサイ」と言い、アヤノは右手を僕らに差し出した。手の中には、URLが書かれた2枚の紙があった。
僕は、アヤノが何故、突然現れて誤認逮捕の話や、政府の機密情報を入手したという話をしてきたのかを、やっと理解できた。
アヤノは、文部科学省が送り込んだロボットだったのだ。平和ボケし、勉強する意義を失った若者への新しい教育プログラムだったのだ。少し前、インターネット掲示板で話題になったやつだ。
おかげで、僕らはインターネットに依存しなくても、コンピューターに詳しくなり、アルバイトで仕事を体験することができ、語学・心理学・料理・漫才・落語を学び、身体も鍛えることができた。そして、少しであるが、失恋も学ぶことができた。
日本の平和は、この後も続いた。
おしまい
『僕らの完全犯行計画』 @Maruo
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