ドロボウネコ
あれから半年が過ぎた。私は街を出て、大学に通っている。
「…やっと着いた」
今日は久しぶりにこの街に帰って来た。結平と会うのもいつぶりだろう。
駅で結平を待っていると、一匹のネコが走ってきた。真っ黒なネコ。口には魚をくわえている。
「ドロボウネコ!!」
遠くから大きな声が聞こえた。その言葉に体が少し反応する。
ふとその黒猫と目が合った。
そのとき…
「ちーちゃ~ん!」
遠くから結平の声が聞こえた。手を振ってその方へ歩き出す。私の横を黒猫が走った。黒猫の横を私が歩いた。
私はもう『ドロボウネコ』じゃない…
「ん?ネコ」
「うん、なんか魚くわえてた」
私は人事のようにそう言った。
「そういえば…」
二人並んで歩いていると、結平が何か思い出したように言った。
「前俺のおばあちゃん言ってたんだ。『かわいい猫が花をくれる』って」
結平が私をのぞき込む。
「それ、ちーちゃんでしょ」
私の驚いた顔を見て、結平が楽しそうに笑った。 知っている理由を聞いても教えてくれない。そしてまたいつものケンカが始まった。
気付けばさっきの猫はいなくなっていた。
「……」
私は立ち止まって、来た道を振り返った。少し変わった街が見える。
「ちーちゃん?」
結平が私を呼んだ。走って結平に追いつく。そして猫のように結平にすり寄った。
幸せな笑顔を浮かべて…
ニャー…
どこかの街の奥深くで、猫の鳴き声が響いた。
ド ロ ボ ウ ネ コ @iroha516
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