とある過去の話 後編
妙なものを見た。
公園で雨に打たれながらブランコで遊んでいる中学生くらいの女の子。
あんなの絶対に普通じゃない。せっかく木曽川ちゃんからもらった元気を、あんないかにもワケありですと言わんばかりの人間と関わって消費したくない。
とかフラグめいたことを思ったのがいけなかったのかな?
………マジかよ。
目が合った。
これ、今更逸らしても絶対意味ない奴だよな?
だって俺がジッと見てたことに気付かれたわけだし、ということはここで逃げ出したら完全に不審者だし。
仕方がない。せっかくもらった元気だけど、使わずに不審者扱いされるのはごめんだ。サクッと終わらせてさっさと帰ろう。
「キミこんなところでなにしてるんだ?風邪ひくぞ?」
「………」
無反応。
いや、無視はされていないと思う。俺の顔をジッと見つめてくるのがその証拠だ。
だったらなにか応えろよとも思うけど、よくよく考えればいきなり知らない男に声をかけられてニコニコと返して来る女はビッチ確定だよな?
そう思うとこれはこれで正しい反応なのかもしれない。
とりあえず体裁的に傘には入れたほうがいいだろうか?
この状況見られたらいろいろと誤解されそうだし。
「キミ家は?」
「………」
「親は?」
「………」
「この辺の子?」
「………」
「迷子?」
「………」
困った。ホントにこの子なにも喋らない。
もう見捨てて帰るか?
正直、引きこもりに中坊の世話なんてできないぞ?
しかも本人がなにも話さなければどうにもならないし。
「………しい」
「へ?」
今この子なにか言った?
「……欲しい」
欲しい?
「なにが?」
………なんで俺を指さす?
まて、こういう展開を俺は良く知ってるはずだ。さあ、考えろ。この状況で俺を指さして『欲しい』と言う理由。________分かった。
「分かった分かった。五百円は惜しいけどやるよ」
俺の出した結論。それは傘だった。
雨の降る状況で欲しいと言えば雨を防げるもの。
そして俺の右手にはビニール傘。
これは間違いないな。俺って天才か?
「違う」
「なんだと?」
確かに天才は言い過ぎだと思うけど、俺のこと良く知りもせず否定されるはなんか癇に障る。
ってあれ?俺声に出してたか?
いやいや、そんなはずはない。引きこもり生活三年とセミ引きこもり生活三年の俺がそんなうっかりをやらかすはずがない。だって、その六年間誰かと話す機会なんて無かったんだから。………言ってて悲しくなってきた。
「傘じゃなくてお兄さんが欲しいんです」
「…………………俺?」
いやいや、何かの聞き間違いだろう。
そう例えば、〝お兄さん〟と聞こえたが実は〝お稲荷さん〟と言っていたとかそういう聞き間違いだろう。
「私、お兄さんのことが気に入りました。というわけなので、ついて来てください」
「ま、待て!なんだこの急展開は!?ちゃんと説明しろ!いろいろ謎いぞ!」
「こんな雨の中で説明を求めるなんて、私が風邪でもひいたらどうするつもりですか」
「知らん!今更過ぎだろ!」
もう手遅れなくらいビショビショなくせに、今更雨の中説明するくらいなにも変わらないだろう。
「ですが、もうパンツまで濡れて気持ち悪いので、お願いですから家に帰らせてください」
そんなカミングアウトはいらん!
「だったら一人で帰ればいいだろ?俺もさっさとネカフェに帰るんだ」
「ダメです。お兄さんにはなんとしてでも家に来てもらいます」
「なんでそこまで俺にこだわる?」
「なんだかお兄さんからは私と近い感じがするからです」
「近い?」
「はい、親近感とも言います」
「親近感?」
「お兄さんも社会不適合者ではないのですか?」
で、なんで来ちゃうかな?
確かに俺以外の社会不適合者に興味はあったけど、それだけの理由でホイホイついていくなんて俺らしくない。
それに、………少しは警戒してもらいたいかな?
見知らぬ男を家に上げておいて、なんであんなのんびり風呂なんて入ってるんだ?
まあ確かに、俺にはなにかできるほど度胸は無いけど、それでもあんなに無警戒でいられるのは男として悲しくなってしまうわけで………。
「お待たせしました。少しゆっくり温まってきました」
「なっ!おま、そのカッコ!?」
正直、バスタオル一枚を巻いただけの女の子を前に、俺は視線のやり場に困っている。
この女には恥じらいという感情が無いのだろうか!?もしくは見られて興奮する変態か?
「ふっふっふ〜。どうですかお兄さん?お風呂上がりの女の子ですよ?興奮しますか?襲いたくなっちゃいましたか?」
「ちゅ、中学生の裸程度でなるわけないだろ!」
「なっ!中学生………?」
もしも本当に中学生のような体躯をしていたのであれば、俺はここまで焦らなかっただろうけれど、実際のその身体はなんと言うか、エロい。
どう見ても中学生のそれとは一線を画している。
だが、この動揺を気取られるわけにはいかず、全力で取り繕う。
でなければ、俺は中学生に興奮するロリコン野郎に格付けされる。それだけは避けないといけない。俺の名誉のために!
「そ、そうだ。大人は中学生の裸では興奮しないんだよ!」
「へぇ〜、そうなんですか?」
やめろ!動くな!見える!いろいろと見えるから!
「ふふふ、随分慌てているようですね?中学生の裸じゃ興奮しないんじゃなかったんですか?いい加減素直になりましょうよ。ホントは私の身体で興奮してるんですよね?」
「そ、そんなわけないだろ!?勘違いすんなよ、お前に興奮してるんじゃない。昨日読んだエロ同人を思い出して興奮しているだけだ!」
「それだったら、まだ中学生の裸に興奮したって理由の方がまともだと思いますよ?」
「うるさい!あんまり言うとすごいことするぞ?エロ同人みたいに」
「はい!望むところです!」
「望むな!痴女かお前!?」
「誰が痴女ですか!?私をあんなのと一緒にしないでください!」
いやいや、さっきの言動を聞く限りでは完全に痴女じゃないか!どこが社会不適合者だ?びっちびちのビッチだろ?
第一、 初対面の男をいきなり自分の部屋に連れ込むような女がビッチでないわけがない。
相手がビッチなら、この少女は俺の敵だ。
もうビクビクする必要なんてない。リア充は俺が駆逐してやる!
「知ってますかお兄さん?」
「なんだ?」
「大抵のことは愛さえあれば問題ないんですよ!」
「随分と身勝手なうえにおかしな理屈を言うな?大体、俺たちは今日が初対面だ。つまり愛なんてあるはずがない」
「お兄さんは一目惚れというものを知らないのですか?」
「バカにするな。そのくらい俺でも知ってる。あれだろ?確か米の品種の名前………」
「そっちじゃないです!なんでよりにもよって誰も思いつきそうにない方の『ひとめぼれ』を連想しますかね!」
なにを言っているんだ?あっちの一目惚れなんてただの都市伝説だろ?
「というか、よく分かったな?お前みたいなビッチって『コシヒカリ』と『ハツシモSL』くらいしか知らないと思ってた」
「ハツシモ?ああ!あの、とある県でしか栽培されないっていう幻の米のことですか!でもそれを一般知識のように語るお兄さんは一体何者なんですか?」
「えっ!?ハツシモってそんなにマイナーなの!?嘘だろ?ばあちゃんが送ってくるコメは大抵ハツシモなんだけど?めっさ美味いんだけど?」
「そうでしょうね。あの品種は関西の方ではコシヒカリに並ぶほど評価されてますし、粒も大きく粘りも少ないので高級寿司店でも扱っている店は多いみたいですから」
「………随分と詳しいのな?」
驚いた。くそビッチだと思ってたのに、なんだこの知識量は?
俺だってハツシモについて詳しくは知らないのに!
「当然です。なぜなら私は天才ですから!」
「……天才?」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。聞いて驚かないでくださいね?私の名前は相模柚葉。彼の有名な天才美少女とは私のことです!」
相模柚葉?たしかに聞いたことがある。
よくネットニュースで見る名前だ。
でも俺には断言でっきる。少なくとも目の前で威張るようにバスタオルを巻いただけの胸を張る少女は、あの相模柚葉ではないと。
「つうか、そろそろ服着ろよ。湯冷めしても知らないぞ?」
「あ、そうですね。流石にもう風邪は引きたくありません。って違いますよね!?なんてスルースキル!?まさか私の名乗りが完全に無視されるとは……」
「だってどう考えても嘘だろ?確かにお前は少しばかりオツムがいいらしいけど、相模柚葉の年齢は十六歳。全くの別人じゃないか?」
「ま、まさかお兄さん。さっきから私を中学生中学生言ってるのは全部本気だったんで
すか………?」
「当たり前だろ?いくら胸のサイズが中学生離れしてるとは言っても、身長的に完全に中学二年生くらいだろ?」
「そ、そんな……中学二年生………中二………」
「お、おい?」
明らかにビッチの様子がおかしい。
なにかものすごい大きなショックでも与えられたかのように、焦点の合わない目で天井を見上げている。
………いや、まさか………ね?
ふと、有名通販サイトのロゴが入った段ボールが目に留まる。きっとネット通販でもしていたのだろう。
そして、俺は箱に張られている宛先に書かれている文字を見て愕然とした。
『相模柚葉様。ドクターペッ●ー 百六十本』
……………マジで?このビッチがあの相模柚葉?
っていうことは、こいつは中学生二年生じゃなくて高校二年生!?
そんな俺の反応に目ざとく反応した相模柚葉は、むくっと立ち上がると、
「やっと理解してくれたみたいですね?そうです。私こそがあの有名で天才な相模柚葉です!ちなみに、さっきからビッチビッチと言ってくれますが、私、基本的引き子(引きこもりの子)ですから、ビッチとは正反対の人間です。ちなみに、基本的人と話すのは好きではありませんが、自分と同じ匂いのする人となら話ができます。ちょうど、ボッチとボッチが仲良くなるように」
酷い喩えだな!?
「あ、私の場合は、ボッチはボッチでも引きこもりという正当な理由があってのボッチなので良いボッチです」
「ボッチに良いも悪いもない!ボッチはボッチだ!それに、引きこもり=ボッチとも限らないだろ」
「そんなことありません。私はこれでも引きこもり歴には自信があります」
「自身持つことじゃないと思うけど、ちなみに何年くらい引きこもってるんだ?」
「四年です。十三歳の時からずっと引きこもってますから、この年齢にしては引きこもり歴は長いはずです」
確かに長い。それも、十六歳の時点で四年目なんて、現段階ではベテランと言ってもいいレベルだ。
「でも俺は今六年目なんだけど?」
「六年目!?つまりお兄さんは先輩でしたか!?これからは『お兄さん』ではなく『先輩』と呼ばせてもらっていいですか?」
「勝手にしろ」
誇ることではないけどね?ホントは誇っちゃダメなことだからね!?
「でも、そこまで引きこもりに拘るなら、なんで今日は外に出たんだ?」
「………言わなきゃダメですか?」
「いや、なんとなく聞いてみただけだから別にいい」
「そこは聞いてくださいよ!泣きますよ!?」
たったそれだけのことで泣くなよ。もしかして俺よりメンタル弱いんじゃないか?こいつ。
「分かった!聞いてやるから目潤ませるな!」
「いいでしょう、教えてあげます。でもその前に、先輩が外に出てた理由も聞いていいですか?」
俺が出てた理由?そんなの聞いてどうするつもりなんだ?
「別にいいぞ」
別に、痛くもない腹を探られるだけだし問題ないだろ。
その代わり大して面白くないけど。
「俺が今日外にいた理由は、今日発売のラノベを買うためだ」
「ラノベですか?」
「ラノベだ。あれには夢と希望が詰まってるからな。引きこもりオタクの必需品だ」
「そうなんですか?………ラノベ…どこかで聞いたことがあるような……」
なんだ?天才を自称するくせにラノベを知らないのか?
「分かりました。やっぱり先輩は先輩です」
「なんだ?その納得の仕方は。謎すぎるぞ?」
「安心してください。高評価ですよ。………………私の中では」
「?」
最後になにか付け足したような気がしたが、声が小さすぎて全然聞こえなかった。
だが、なぜだろう。知らない方がいい気がする。
「それで、相模さんはどうなんだ?」
「やめてください先輩。『相模さん』なんて呼ばれたら寒気がします。先輩は先輩なので遠慮なく柚葉と呼び捨ててください」
「………相模さ__________」
「__________どうぞ柚葉と」
「………柚葉はどうなんだ?」
クソッ!引きこもる人間の大半はコミュ障で、異性を名前で呼び捨てなんて敷居が高いことくらい知ってるくせに、こっちには名前呼びを強要するとかどんだけ鬼畜なんだよ!自分は無難に先輩とか呼びやがって!
「私も大した理由があったわけじゃありません。ただ、強いて言うのならう、運命を感じたからですね」
「運命?天下の天才様が随分と乙チックなこと言うじゃないか?」
「先輩、女の子はみんな乙女なんですよ?」
「へぇ、そうなんだー」
知らなかった。いつから乙女をビッチと読むようになったのか?
「今なにか全国の女性の皆さんに失礼なこと考えませんでしたか?」
「鋭いな。ちょうど、いつから乙女をビッチと読むようになったのかと疑問に思ってたところだ」
「さすが先輩、そんな全国の女性をまとめて敵に回すような発言をさらっとカミングアウトするなんて!マジ一回死んでくれませんか?」
「おいおい、それが一目惚れした相手に言う言葉か?」
「ええ、やっぱり私の見立ては間違ってませんでした。良かったですね、先輩は私が見込んだ通り立派なクズです!」
「それを言われてどう喜べばいいのか、凡人の俺にはミジンコサイズ程にも分からないけれど、クズと知ってて惚れるとかお前も相当アレだと思うぞ?」
「先輩は私をなんだと思ってるんですか?天才ですよ?自分がアレなことくらいとっくに自覚してます」
「俺に呆れる前にそんな自分に呆れたらどうだ?」
なんで俺が呆れられないといけないんだよ?
「さて、話を戻しますと、私の天才的頭脳が感じた通りにあの公園にいたらなんと先輩と出会うことが出来ました」
「なんだ?つまり『運命の出会いがありますよ』って言う天才的頭脳に従って外に出てきたってことでいいのか?」
「概ねその通りです。私が外に出る理由なんてそんなものですよ。ま、言ったところで全然信じてもらえないのであまり人には言いたくないんですが、先輩なら信じてくれると思ったので話させてもらいました」
「なにを根拠にそう思ったのか知らないし、到底信じられる話ではないけど、面白いとは思ったよ」
ラノベとかで出てきそうな設定だし、興味も湧く。
ある種の厨二病センスである。
「面白い、ですか?」
「ああ、電波的なところが好印象だ」
「つまり信じてくれると」
「なわけがあるか。ただ、ラノベを書くセンスはあると思うぞ?」
「そ、そんなっ……先輩なら信じてくれると信じていたのに…………」
「とは言いつつ大してショックは受けてないんだろ?見え見えの嘘泣きしやがって」
「そうですね、別に慣れてますし」
だからって急に真顔になるなよ。
「いや〜さすが先輩です。私の完璧な演技を見破るなんて」
「どこが完璧なんだよ?下手すぎるだろお前」
「仕方ないじゃないですか。私学校の劇すらやったことのなくって、素人もいいところなんですよ?」
柚葉はブスっとした表情で言い訳するが、
「う、うん。それは仕方がないな………」
俺にも心当たりがあるので、なんとも言えない。
「そういえば私、まだ先輩に自己紹介してもらってないですよね?」
「え?必要か?」
思わず素で返してしまった。
「いや、必要でしょう!なんか私の中で先輩は先輩で完結しちゃってますけど、よく良く考えたら私、先輩の名前知らないんですけど!」
「あー、それもそうだな。俺は
「それは凄いですね!自宅警備員………なんと素晴らしい職業でしょうか………」
え?なんでそんなに羨ましそうなの?
「言っておくけど、そんなに良いもんじゃねぇよ?俺的にはもう普通に
就職したいし」
「就職したいんですか?」
「そうだな」
来年の二月で誕生日を迎えて二十一歳となる俺は、大学に通っていないということもあって本来なら既に働いていないとおかしい歳だ。
それに、流石にこれ以上親の脛を齧って生きていくのは精神的にも辛くなってきた。
「分かりました!では先輩を家で雇うことにします!」
「だからと言って面接に行っても高卒で取ってくれる会社なんて………え?」
なんか今自虐ネタに交じってすごいセリフが聞こえた気がするんだけど。
「柚葉?今なんて?」
「ですから、私が先輩を養ってあげると言いました」
「嘘つけ!なんか俺を雇ってくれるとか言わなかったか!?」
「言いましたけど、ニュアンス的にはさっきと同じですよ?」
「そんなことはどうでもいい!」
「そんなこと!?」
「なんでそんなショック受けてるんだよ?」
謎すぎる。
「でもちょっと待てよ?柚葉ってまだ未成年だろ?どうやって給料出すつもりなんだ?」
「そこも問題ありません。私こんなボロアパートに住んでますけど、一応預金通帳にはゼロが十二個付いてますから」
そうだった。相模柚葉は誰もが認める天才だった。
「これでも毎月数千億は入ってきてるんですから、今更家族以外に養う人間が一人増えたところでなんともありません」
「既に家族が養われてた!?」
柚葉の親!なに娘に養ってもらってるんだよ!働けよ!人のこと言えないけど!
「で、仕事内容は、住み込みでの私のお世話。要するに家政夫さんです。月給百万でいかがですか?」
「百!?待て待て、一体俺はサラリーマンのお父さん方の何倍の金をもらうことになるんだ!?」
「そうですね、一般家庭のお父さん方の三か月分以上の給料ですね。それよりも家政夫の『夫』という字にテンションが上がります」
「そんなところでテンション上げなくてもいい!まじかよ、ちょっと身の回りの世話するだけで百万………なにか裏があるんじゃないか?」
「裏なんてないですよ?私からしてみれば先輩と同棲というだけで百万円以上の価値があるんですから」
「………」
なんとも返答に困ることを言う。
今までに一度もモテたことのない童貞(藁)には難易度が高すぎる。
世の中のリア充どもよ!俺にこういう時の返し方を教えてくれ!
………馬鹿馬鹿しい。
「どうですか?やりますか?」
ああ、答えなんてとっくに決まっている。
「自分より年下の、しかも未成年に雇われる大人なんてカッコ悪すぎるし、なによりプライドが許さない」
社会的にも体裁が悪いし、職質された時に『家政夫です』なんて答えるのも恥ずかしい。
「………そうですか。では残念ですが私は先輩の意思を優先します。この話はなかったことに_____________」
「_____________引き受けた!」
「え!?」
「いや、だって百万円だよ?テレビの謎の規格に応募しなくても百万円が毎月もらえるんだよ?多少恥をかいてもそんなの百万円に比べれば安いもんだろ!恥がどうしたあぁぁぁ!」
「先輩がどうしたんですか!?」
後ろ指をさされるなんて今更じゃないか!
中学高校ではもっとひどい目に遭ったんだ。
今さら十七歳に雇われるなんて軽いもんだろ!
あくまで百万円のためなんだからね!可愛い女の子と一つ屋根の下という展開なんてどうでもいいんだからな!
でもまぁ、
「これで契約は成されました。というわけでこれからよろしくお願いしますね、先輩」
俺も少しは、今までより楽しい毎日が遅れそうな気がしている。
「ああ、よろしく」
「ぐへ。あわよくば先輩を襲って既成事実を………」
「………やっぱ早まったかな?」
これが俺と柚葉の騒がしい日常の始まりだった。
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