ステップアップと警備検定受験
平野隊長との現場から外れ、まりこに舞い込んできた仕事は 中堅ゼネコンで施工されるスーパーの建設現場である。しかも一人現場だ。現場に入ってくる工事車両の誘導をメインにと現場監督から指示を受けた。 平野隊長から学んだ事がムダにならずにすみそうだ。通勤には多少時間かかるが自分にとっての成長の為なので一人現場で不安はあったけど当時のまりこにはそれが楽しくて仕方なかった。 工事車両出入り口は3ヶ所あり、まず朝出勤したらすべてのゲートの鍵を開ける。
その後現場事務所に出向き挨拶をし、作業と出入り車両などの確認をしたあとに、まりこを一番悩ませることがある。それは、現場危険予知活動表の記入、俗にいうKY作業だ。考えて記入しないといけない。毎日同じ事を書くわけにはいかない。でも師匠のもとで現場の動きを把握していないと危ないからと口酸っぱく言われていたので功を奏した。だが、一人現場でそれを考えて書くのには正直悩んだ。 そして、朝礼で必ずその日の作業内容を職人達に発表しなければならない。 それが苦痛だった。あまり人前で発表とかする機会なかったし、何故か緊張してしまう。うまく発言できない……
時間の空いたときは、現場内をうろつき回り竹ぼうきを持って鉄板の作業用通路を掃き掃除したり、トイレ掃除などで時間を潰す。
もちろん、車両の出入りなどが完全にないときなどである。車両が現場内にあるときは比較的ゲート付近にて監視や歩行者通路などの整理や掃除。なにかとちょこまかとうごいていた。 ゲートそばには雨対策用の警備員ポックスが置かれていたが、まりこはあえて必要以外使わなかった。約一年ほど続く現場をほぼ一人でこなさなければならない。スーパーの建設現場なので面積はかなり広く、住宅街にあるため、朝夕の車の流れは非常に多い。鉄骨や鉄筋などの重量物の搬入は大概が早朝早出しての搬入が主だった。早起きは苦ではなかった。むしろ、この仕事に既に生き甲斐を感じていたから、毎日が楽しくてたまらなかった。建設現場というのはやり方ひとつでかなり状況が変化したりする。建設面積が広い分やはり搬入車両はとんでもなく多いわけで、とくに生コン打設ともなると、昼休憩を取れずにぶっ通しになることもまれだ。
そうなると早出はおろか、残業をくらったりもする。さらに、周辺の通勤ラッシュにはまったら最悪である。でも、交通流に逆らって交通誘導するわけにはいかない。やむを得ない時は丁寧な合図で停止を促し協力してもらう。警備員は警察官の行う交通整理はできない。警備業法に定められている。任意、協力のもとでかつ安全策を講じ、流れを妨げる事なく誘導をしなければならない。入社当時の新任教育で頭に叩き込まれた。その他警備員には、1年間に2回前期と後期に分けて現任教育というのが義務付けられている。これを必ず受けないと警備員として働くことができない。これも警備業法に定められている。この他交通誘導警備員としては道路交通法も学んでおかなければならない。ほんとややこしい。とある日、巡回に現れた警備部長に交通誘導検定2級の試験を受けないかという話をいただいた。今は、一人現場を任されたことにより大変充実していた。ただ新任教育を受けた時みたいに関係法令や警備業法などを学ばなければならない。ましてや仕事しながら勉強しなければならない。しかもいくつかの実技による試験があるらしい。すぐには返答できない。警備部長は警備員としてのステップアップもできるし、資格を取ることで給料上がるってアピールをかましてきた。当時の会社には階級制度があり、現場を統括する警備長をはじめ、警備指令や先任警備士などの階級が設けられていた。自分は自分の実力がどこまで通用するのか試したくて、志願した。
志願してしばらくして、わたしは会社に呼ばれた。横山教育部長と研修室にいた。入社時や教育期の時以外は立ち入らない場所である。ここに入るとほんとタメになる。 警備員に必要な教材はほとんど手に入る。試験対策のための技術を身に付けるために実技試験のビデオを一通り見た。 試験は実技試験と筆記試験を合わせて90%以上で合格するらしい。筆記試験は20問あり1つ5点の5者択一である。研修室から問題集と参考書を横山教育部長からもらい交通誘導警備検定2級を受講することになってしまった……… 確かにスキルアップするためには避けては通れない道ではある
本試験の前の週に事前講習会というのがあり
そこで警備業務にまつわる知識や業法、実技試験にむけてのリハーサルなどがある 正直だやい けど、当時の自分には警備の本質など全然わかってないヒヨッコだったので事前講習会自体がすごく新鮮味があった。
基本動作に忠実な講師陣、警備教本はまたたく間にアンダーラインだらけになり、この中からいくつか問題が出され90%以上取らないと合格できない。さらに厄介なのが実技試験で確実にまどろっこしい文言などを言いながらこなさないと合格できない。実技試験は減点方式でこちらも80%以上で合格だ。当時はまだ、警備業法も今以上に厳罰化されておらず、よほどの問題がない限りは合格はできた。今では国家資格として認定されているが、当時はほんとゆるかった。でも受講料はそれなりにするので決して生半可な気持ちでは受講したらまず落とされるだろう。
自分自身受験は高校受験まででこのあと勉強してまで学ぶことなんかないと思っていた
けれど、この警備業法というのは密接に関係法令に結びついているのである。道路交通法
遺失物法 刑事訴訟法など覚えなきゃいけないことが山ほどある。そして交通誘導業務を行う者としての資格 2級と1級がある。高い受講料を払ってまで受ける価値はある。
まりこも資格取得してスキルアップを目指してたから真剣に取り組んだ。当時の2級資格のしけんは今でいう1級に該当するくらいハードなレベルだという。実技もためになるけれど実際今まで実技を受けてて役に立ったのは関係機関への通報連絡くらいである。決してバカにしてはいけないし、真摯に取り組んだ。入社してヘルメット被って交通誘導警備のイロハを学んだまりこ。その甲斐あって一発合格果たしました。
階級も一番下の警備士補から警備士になりました。目指すは警備隊長。2級警備員まりこの誕生です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます