幕間 ―青栄―
ジンがハルにトールウの秘密を明かした。
青龍が黄竜に手を出したなど、国の汚点とも言える事実。それを誰かに話そうという皇は今まで居なかった。
それ程までにハルを信用し、ハルならこの状況を好転させられると思い明かしたのか。将又、悪化の一途を辿っているこの重圧に耐えきれず、誰かに頼りたくて明かしたのか。
前者ならば良いのだが、後者であれば……。
溜息が漏れた。
ハルが部屋を後にし、ジンのみとなった部屋に俺は姿を現した。
「セイ!?いつから居たのだ!?」
誰も居ないと思っていたのだ。俺の登場に驚くのも当然だ。
「ハルに話して良かったのか?アレは国の汚点だろ?」
「やはり、最初から聞いていたのか……」
「ああ」
ジンは寝台に腰掛け、俺は近くにあった椅子に腰掛ける。
「私がこの事実を知ったのは皇に即位した日の夜だ。皇になれば国から逃げる事も出来まいと踏んで父上もこのタイミングで告げたのだろう。私は……この事実もそうだが、父上が今まで一人でこの事実を抱えていた事に悲しくなった……。歴代の皇達も手を尽くしたが、どうにも出来なかったから今に至っているのだろう。私に出来る事など何もない。私は何て無力なのだろう……」
ジンは手を組み、頭を垂れる。
「ハルに話せばハルは一所懸命に対策を講じてくれると思った。だが、それは綺麗事だ。心の何処かで私一人にこの重圧を背負わせないでくれ、と思っている」
どうやら後者のようだ。
ジンがハルを城に連れ戻して来た時点で薄々気付いていた。この重圧を今後一人で抱えて行くのは難しいと。
俺はひとつ息を吐き、口を開く。
「先代の青龍が何を思って黄竜に手を出したのか俺には分からん。唯一、先代を知っている朱雀ですら分からないと言っている。青龍は黄竜の事を慕っていたらしいからな。それが何故こんな結果になったのか分からないと」
だからといって放置する事も出来ない案件だ。俺が誕生するまで人の時間で考えると大分時間が掛かったそうだ。それを遥かに越えた今でも新たな黄竜の誕生の兆しすら見えない。元は五神で世界のバランスを保っていたのだから、四神で無理矢理保っている今の状態は正直危険な状態だ。
例え周りが何と言おうと、その原因を作ったのは青龍。ひいてはトールウだ。皇に責任が来て当然だ。
俺は立ちあがり、無意識に俯くジンの頭に手を置いた。
「先代の皺寄せに付き合わせてしまって、本当にすまない……」
この代でも良くて現状維持が精一杯だろうなと思った。
無駄に期待などしては辛いだけだ。
それでも、僅かな希望を捨てられない自分も居た。
どうか、この“呪い”から解き放ってくれ――
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