第7話 「終着」
少女のあとを追いかけて、私はどんどん知らない道へ進んでいた。
自分が帰れなくなるかもしれないということより、この少女を無事に帰るべきところまで送り届けたいという思いが勝っていた。
「どこまで行くの?」
何度か訊いてみたものの、返事が来ることはなかった。
しかし私がついてくることに意義を唱えない限りは、このまま同行させてもらおうと思った。
しばらくして、少女はぴたりと止まった。
その先には、なんともカラフルな家がたたずんでいた。赤い屋根に黄色の外壁。花壇にはたくさんの花が咲いていた。庭にはちいさな砂場のようなものもあり、窓ガラスには子どもが描いたような絵が貼ってあるのが見えた。
どうみても、普通の住居ではない。
「ここ?」
と少女を見おろすと、こくんとひとつ頷いた。
少女がその大きな扉を開けて中に入っていったので、私もあとに続いた。
「お、おじゃまします…」
すると奥から足音が聞こえ、黄色いエプロン姿の女の人が勢いよく走ってきた。
「りまちゃん!」
そう叫ぶと同時に、彼女はまだ玄関で靴も脱いでいない少女にぎゅっと抱きついた。
「どうしたの!今日はいつもの時間になっても来ないから、皆心配してたんだよ?何かされてない?だいじょうぶ?」
怒涛の質問攻めにも屈せず、少女はまたひとつ頷いた。
「そう…?ならいいんだけど…あら?」
ようやく私の存在に気が付いたその女性は、ぱっと顔をあげて私の手をとった。
「もしかして、この子助けてくれたんですか?」
煌々とした目で、こちらを見てくる。
「え…いや、その」
「この子、学校の子にからかわれてませんでしたか?自分じゃそういうこと言わないから心配で…」
「私は…見かけただけで、なにも」
そう。私はなにもできなかった。
「でも、ここまで送ってくれた」
彼女はぎゅっと私の手を両手で包んだ。
「ありがとうね」
ずきんと、胸のどこかが痛んだ。
「というか、まだ玄関じゃない!えーっと…」
「あ、明です!」
「あかりちゃん!ねぇ、ちょっとあがっていかない?お話ししたいこともあるし」
彼女は少女の靴を棚に仕舞いながら言った。
私は突然のことに戸惑いながらも、「いいんですか?」と訊いた。
「もちろん。ここはね、そういう家なの」
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