第二章 旅の「はじまり」
特に話し合うようなことはしなかったが、お互いすることは暗黙のうちになんとなく分かっていた。
旅の準備を終えるまではあっという間だったと思う。
一旦各自家に戻り、これから始まる旅に必要であろう着替え、保存食、懐中電灯、毛布、その他必要な生活用品を、ボストンバックやキャリーバッグに詰められるだけ詰めた。
毛布は流石にかさばり過ぎて、バッグに入れる事はできなかったので、パンパンのボストンバックとは別に毛布を抱えて運んで行くと、それを見つけた高山があわてた様子で児玉を制止して、高山が自宅で発見した小型のキャリーカートに、毛布などのかさばる荷物をまとめておいた。
ほどなくして、準備は完了。二人は駅のホームに移動した。
もちろん、ホームでいくら待っても電車は来ない。
高山が本来乗る予定だった電車は、今頃からっぽになって、トンネルの中にでも止まっているだろうか。
「どこに行く?」
と高山が尋ねると、児玉はこちらを見ずに
「あっち」
と、線路の南の方向を指差した。
「南?」
と訊き返すと、児玉は大きく頷いて、
「私、東京に行った事ないの。家族旅行は大抵関西地方かそれより西だったし。それに、」
「それに?」
と訊き返すと、児玉はこちらを向いて、
「この鉄道って、東京にある駅まで繋がってるんでしょ。行ってみたいな、東京」
「東京についたら?次にどこ行く?」
児玉はちょっと考えてから、
「わかんない。でも、別にいいじゃない。不変の目的地が必要なわけじゃないんだし。そもそも、」
児玉は再び前を向き、
「目的地なんてなくたっていいじゃない」
「そんなもんか?」
「そんなもんでいいんじゃない?」
「そうだな」
「じゃあ、行こうか」
「行きましょう」
*
二人は駅舎を出て、近くの幹線道路に出る。
「ところで、移動手段はどうするの?このままずっと大荷物抱えて徒歩なんて私嫌よ」
高山は、ちょっと考えてから、
「どこかで、ドアロックがかかってなくて、なおかつ動かせそうな軽自動車でも失敬しようか。AT車なら運転できそうかな。」
「無免許だけど?」
「この状況じゃ、六法全書も憲法も意味ないよ」
「そうだね」
近くのコンビニの駐車場に荷物をまとめておいてから、運転出来そうな車を探すために、路上に大量に放置されている車をしらみつぶしに見てまわった。
エンジンキーがささりっぱなしの車はたくさんあるのだが、大抵の人はドアロックをかけて走行しているので、車内に入ることは出来ない。
なかなか見つけるのには時間がかかりそうだった。
途中からは二人で手分けして、車探しを続行した。
そして、とっぷり日が暮れ、懐中電灯を使い始めた頃、
「あったよ!」
と、遠くで児玉の声が聞こえた。
そちらの方に行ってみると、周りよりひと際小さい軽自動車のボンネットに児玉が自慢げに座っていた。
車内を覗くと、確かに鍵がささりっぱなしで、ドアロックもかかっていない。ただ、
「古くね?」
「仕方ないでしょ。贅沢言わないの」
とても全高の低い、内装も座席も簡素な軽自動車だった。
ちょっと古いというより、一昔前にバカ売れしたような、そんなレトロな雰囲気が漂っていた。
「こいつを当分の間、旅の共にするか」
めでたく移動手段が決定したので、担いできた荷物を後部座席と荷物スペースに積み込む。
これはこれで大変であった。
なにせ、普通の旅行の荷物とは量が大違いなのである。
持って歩くのも大変なバカでかい荷物を、この軽自動車のトランクスペースに詰め込むのは簡単なことではなかった。
それでも、児玉が懐中電灯持ち兼アドバイス役、高山が荷物の配置役といった役割分担で試行錯誤した結果、なんとか詰め込むことに成功した。
もう九時を回っていたので、これ以上の移動は諦めて、夕食にする。
近くにコンビニがあったので、手持ちの保存食は使わず、予備の分も含めてそちらで補給することにした。
電気が止まっているので、開かないかと思われた自動ドアも案外簡単に開き、二人は店内に入った。
おにぎりやサンドイッチなどをそれなりの量失敬して、コンビニ前の駐車場で夕食にした。
「そういえば、外真っ暗だね」
「職員が消えて、発電所が止まったんだろう。」
それ以上の会話もなく。二人は黙々と食べ続けた。
食べ終わってからは、もう寝るしかなくなった。
当然のごとく水道もとまっていたから。お風呂も入れない。
これから工夫する必要がありそうだ。
寝る場所は、高山は運転席、児玉は後部座席の荷物を整理して確保した。
運転席が少量の砂でざらついていたので、高山はそれをはらってから横になった。
初日、心の中は期待と不安でないまぜになった気持ちで一杯だった。
すぐに寝付かれないと思ったが、思いのほかすぐ寝ることが出来た。
自分でも気付かないうちに、大分疲れていたのかもしれない。
さあ、明日から旅の始まりである。
*
二日目、二人は猛烈な暑さで目が覚めた。
「「あぢ~!」」
寝起きとは思えない素早い動作で、手動ハンドル式の窓をすべて開けた。
窓が全開になり、外気が入ってくると、途端に涼しくなった。
話は昨晩にまでさかのぼる。
虫と暑さ、どちらの対策を優先するか悩んだ結果、睡眠中の蚊の羽音はサイアク!との児玉の意見で、こういう事態になることは承知の上で窓を閉め切って寝たのだが、まさかこんなに暑いとは!と高山は心の中で悲鳴を上げた。
手で扇ぎ、暑さを少しでも和らげにかかる。
やはり夏でもここは福島。手の平が起こしたわずかな風でもすぐに涼しくなった。
車の外に折りたたみ式の小型イスを並べて朝食をとる。
旅を始めるのは不安になるものである。
おかげで食欲がちっともわかなかった。
*
まず最初にすることは、軽自動車の運転の練習だった。
運転席で、エンジンキーをひねる音の後に、スターターの音とエンジンの動作音。
「よし、とりあえずエンジンはかかった」
「運転っていっても、アクセルとブレーキとハンドルくらいしか分からないわよ」
「大丈夫、俺もそのレベルだから」
よし、と彼は気合を入れてから、アクセルに足をかける。
直後、ものすごいGを感じて、私は後部座席に押しつけられた。
「ちょいまてぇぇぇぇ!」
アクセルの加減を間違え車が急発進し、彼が運転席で猛烈にあわてている。
「早く、ブレーキ!ブレーキ踏みなさいよっっっ!」
私は真面目に命の危機を感じ、金切り声に近い叫び声で彼に指示する。
車は、彼の滅茶苦茶なハンドル操作で数百メートル走った後、プロ顔負けの強烈なドリフトを決めて、空っぽの月極め駐車場に急停止した。
「ふー、危なかった」
「……」
((危うく死ぬところだった。))
「…とりあえず一つ言っていい?」
「ナ、ナンデスカ?」
「アクセルはもっとゆっくり踏んでよっ!」
それからは幾分かマシにはなったが、やはり親が運転する時より加速が強く、発進するたびにひやひやせずにはいられなかった。
結局、私を乗せてなんとか一般道を走れるようになるくらい運転が安定するまで、たっぷり一日かかってしまった。
この日移動出来たのはほんの一、二キロ。
でもこんな山間の土地では、生まれ育った町が見えなくなるのには十分な距離だった。
戻ってくると分かっていて離れる距離と、もう戻ることもないだろう、と思って離れる距離は、思ったよりも何倍も違う。
一メートル離れても、心はその何乗分も離れていく。
「もう、見えなくなったな。町」
という彼に、うん、とだけうなずく。
「でも、後悔はしてないよ。絶対」
決意を込めてそう言った。
「そう、か」
彼が含みありげな返事をしたので気になったが、気にしないことにした。
時計を見ると夜の八時を回っていた。
「ごはんにしよっか」
と言うと、彼は、
「そうだな」
と言った。
こんな短い会話しかしないが、不思議と嫌な感じはしなかった。
短時間の夕食を済ませ、早々に眠りについた。
今日は、昨晩の反省を生かして、四つある窓を少しずつ開けて寝た。
…………。
あと、高山君の事を心の中で「彼」って呼んでるのは、一々名前を呼ぶのがめんどくさいから!
絶対、絶対の絶対、好きだとかはないからっ!
めんどくさいだけだからっ!
*
三日目、本格的に旅がスタートした。
手早く朝食を済ます。今のところ、まだ近くにコンビニがあったので、おにぎりとサンドイッチである。
荷物は大して広げておらず、すぐの出発と相成った。
まだ運転に不慣れなので、車の出すスピードは時速三十㎞。少し早い自転車レベルだ。
とりあえず、道案内の青い標識を頼りに車を走らせる。
これといった最終目的地がある旅ではない。
あまり地図とにらめっこしても意味はない。
でも、今は東京という目標地点があるので、とりあえず南に進んでいる。
高山は運転に精一杯で、二人の会話はあまりない。
時々、高山の急ハンドルや急ブレーキに体をふられた児玉が、ひゃ、と小さく声を上げる程度である。
やがて、日が暮れてきた。
この辺りでは珍しい大手スーパーの店舗があったので、そこの駐車場で一晩を明かすことにした。
今日も食料調達ができそうだ。
スーパーの自動ドアをこじ開け、店舗に入る。
「ねえ」
「ん?」
「材料があるのはいいけど、どうやって調理するのよ」
「あ……、忘れてたぁぁぁー!」
高山の叫びは大きな店内中に響き渡った。
「はぁ、まったく。チャッカマンはあるのに、火だけで何する気なのよあんたは」
「い、いやぁ、面目ない」
「私は調理器具を集めてくるから、高山君は食料集め、引き続きお願いね。こんだけ大きなスーパーだからどっかにあるでしょ」
そう言って、児玉は店内のブース案内を頼りに歩き去って行った。
仕方なく高山は、児玉に課せられたノルマを達成すべく、そのまま作業を続行した。
*
スーパーを一周して出入り口に戻ってくると、そこには仁王立ちして満面ドヤ顔の児玉がいた。
ちゃっかり使っていた買い物カートには、小さい片手なべや、コップなどの簡単な食器や調理器具が数個。そして、カセット式ガスコンロの白い箱もあった。
しっかり替えもある。
「おお、すごいな」
と、一言だけ感想を述べると、
「ふん、私にかかればこんなもんよ!料理は出来ないけど、調理器具くらいならそろえられるんだから!」
ん?
まて、少々不穏な単語が混じっていたぞ。
率直に聞くのは当人に悪い気がしたが、
「お前って、料理出来ないのな」
「う、うるさい。家で料理する機会なんてほとんどないし、家庭科苦手だし、最後に台所に立ったのは確か…去年のバレンタインかな」
マジか、バレンタインチョコレート製作の経験は野菜や魚には活かせない。ていうか、去年の事じゃそもそも当人があまり覚えていないだろう。
「じゃあ、料理は俺がやるから、とりあえず車に戻ろ」
と言うと、児玉は少しふくれっ面で、もぉっ、と呟き、遅れてついてきた。
*
長期保存のきくものは早々に車に仕舞い、その他の食材で高山は手際よくカレーを作り始めた。
外でのご飯炊きは飯盒が定番だが、飯盒は手持ち荷物にもスーパーにも置いていないので、少し機転を利かせて、両手なべの取っ手に針金を通し、近くの畑にあった緑色の棒を物干しざおの要領で組み、そこに鍋をつるした。
即席飯盒セットの完成である。
高山が次々とこなす作業を手伝いながら、
「なんでそんな器用なのよ、反則よ」
とごちると高山はくすっと笑って、
「まあ、小さいころから工作は得意だったし、それに親の代わりに料理することもあるし」
と答えた。
それからしばらくして、二人が空腹に耐えられなくなる寸前にカレーは完成した。
やはり、自分で作ったカレーは旨いものだ。
お袋の味に負けないくらい、だがしかし、
「何で器が茶碗と味噌汁碗なんだ?」
「しょうがないでしょ、荷物は減らしたいんだから。」
問題になっているカレーのよそい方は味噌汁碗にルー、茶碗にご飯だった。
まあいいや、と食べ続ける。
*
LEDランタンや、片方しかつかない車のヘッドライト等光源はあるが、発電所が止まった今、電気は貴重だ。
二人は日が完全に落ちる前にすべてを済まし、暗くなったら寝ることにしていた。なるべく人工光源を使わなくて済むように、だ。
*
夜八時ごろ、今日は暗くなって少したったこの時間に寝ることにした。
「おやすみ」
「おやすみ」
彼が手を伸ばし、窓際の手すりにぶら下げてあるLEDランタンのスイッチを切る。
パチン、と音とともに、車内が闇に包まれる。
目一杯背もたれを倒しても、やはり座席は座席だ。二人分とちょっとのスペースに横たわっている私はまだしも、彼は寝づらくないのだろうか。
「ねえ」
ちょっと気になって声をかけてみた。
「ん?」
「その座席で寝づらくない?」
「替わってくれる?」
彼が、運転席から顔だけ振り返って、いたずらっぽく言った。
「やだ」
「じゃあ、児玉の隣で寝るわ」
「何する気よ変態。そもそも二人入れないから」
「ははっ、そうだな」
まったく、私ときたら旅の相方になんでこんな返事しかできないのか。
彼はちょっと間をおいて言った。
「気遣ってくれたのは嬉しいけど、俺もうここで慣れたから。まだ三日だけど」
「そっか」
私はくすっと少し笑って、
「おやすみ、ごめんね起こしちゃって」
「気にすんなって、おやすみ」
そう言って、彼は元の姿勢に戻った。
すぐに寝られそうにないな、と思い、睡魔が来るまで、少し思考に耽る。
この道を行く先に、人はいるのだろうか。
本当に二人きりになってしまった可能性はあるのだろうか。
消えた人は―父は、母は、どこに行ったのだろう。
今は彼と二人で旅をしているが、その彼が消えたら私はどうなってしまうのか…。そんなことは決してあってほしくないと思う。
小難しいことを考えてる間に眠くなってきた。
おやすみ。
明日はどこまで行けるだろう。
*
朝、Gショックのアラームで目が覚める。
行動のタイムリミットが日没なので、朝は早く起きることにしている。
朝五時、太陽はすでに顔を見せ、空はうっすら明るくなっていた。
ウェットティッシュで体を軽く拭く。
風呂に気軽く浸かれない今、体を清潔に保つにはこの方法が一番手っとり早かった。
昨夜軽く洗っておいた食器を車に仕舞う。
そして、
「じゃあ、行こうか」
「うんっ」
車に乗り込み、キーをさしてエンジンをかけた。
*
二車線しかない幹線道路を、まだ危なっかしいハンドルさばきで走りぬける。
二人の会話は相変わらずなかった。
高山は相変わらず運転に集中するので、児玉はすることもなく、ただ窓の外を見つめていた。
全開にした車の窓から見えるのは、ただただ人のいない町並み、家、家、車―
そして、正午ちょっと前の事。
そろそろ昼食にするか、と高山がつぶやいた。
それに反応して児玉が前を向いた。
そして、
ん?
陽炎でぼやけている直線の道路の向こう、何か黒い点が見えたような気がした。
高山は気づいていないようだ。
でもその点は、みるみるうちに大きくなり、
「ん?人か?」
と高山も気づいたその時、
―黒い影が消えた―
「ねぇっ、今の人だよね!あの人、倒れたみたいだよ!」
「分かってる、急ごう!」
そう言って高山はいつもより強くアクセルを踏み込んだ。
踏みこんでしまった、という方が正しいだろうか。
*
久方ぶりに感じた人工的な涼しさの中、私は目を覚ました。
全身がだるく、そのままぼーっと上を見ていた。
天井の様子からして、私は車の中にいるのだろう。
「…たくもう、ホント危なっかしいんだから!高山君の運転は!」
女の人の声が聞こえた。
「はい、すみません。最後の方だけ反省してます。」
おそらく、高山という名前なのであろう男の人の声も聞こえた。
「なによ、最後の方だけって。全部よ全部!スピード上げた途端ふらふらし始めて、挙句の果てにこの子轢きそうになってたじゃない。私ものすっごく怖かったんだから。」
「俺だって怖かったさ。あんなスピード、今まで生きてきた中で一度も出したこと無いよ。」
なおも言い合いが続き、聞いている間に少し体が痛くなってきた。
体勢を変えようとそっと身をよじる。
自分が目を覚ましたことに二人は気づいていないようだ。
…なんか埃っぽいな、鼻がムズムズして――
「くしゅんっ。」
くしゃみが出た。それに気付いて二人が振り返る。
「あっ、目覚めた?よかったー。」
と、女の人が安心したように言った。
「まあ、なによりだ。」
と男の人も言った。
体を起こすと、軽く眩暈がして体がふらついた。大丈夫?と女の人が声をかけてくれたが、大丈夫です、と返して、座席に座った。
「お互い名前を知らないままなのもなんだから、とりあえず自己紹介を軽くな。俺は高山和義、十七だ。」
「私は児玉優香。高山と同じく十七。それ以外は特になしっ。」
え、同い年?二、三歳年上だと思った。
「ん、どうした?」
「いや、同い年だったんだな…って。あ、自己紹介まだでしたね。私は黒田咲、十七です。助けてくださってありがとうございます。」
「いやいや、助けたなんてそんな大したことしてないって。でも、元気になってよかったな。」
と高山が言った。
そういえば、なんで自分は倒れていたんだろう。先ほどまでこのあたりを歩いていたのだろうが、記憶があいまいで思い出せなかった。
*
「そういえば、私はなんで倒れていたんですか?」
良く思い出せない、と言いたげな顔で黒田が聞いてくる。
「熱中症だね。」
「へ?」
「医学の知識はほとんどないから断言はできないが、たぶんそうだろうな。それでも夏の暑さはなめちゃダメだよ。何か水分補給できるものを持ってないと一気にバタンキューだぞ。」
「はぁ…。」
「でも、なんで一人で歩いてたの?」
と児玉が訊いてきた。
「まあ…、それは…ですね。」
黒田は、少し考えるような間をおいてから話し出した。
「私、隣の町に両親と三人で住んでいるんです。でも、あの日、学校にいる間に人が消えちゃって、なんだかとても怖くなって、家に帰る途中なんです。でも、道に迷ってしまったみたいで…」
「そうか…。」
なんとなく気まずい雰囲気が続いたが、
「そうだ!」
と、何か思いついたような児玉の声に途切れた。
「私たちが送ってってあげようか!」
児玉の鶴の一声で、突如進路変更と相成った。
というか、なってしまった。
どうやら俺や黒田に決定権はないようだ。もちろん反対などはなかったが。
―そーいえば、家どこらへんなの?
―そうですね。大体学校から列車で四十分の徒歩で二十分のところです。
―で、ここは学校からどのくらい?
―わ、分かりません…。
―マジか…。
*
黒田には申し訳ないが、不確定要素が多すぎて日が暮れるまでにたどり着くことができそうになかった。というか、気づいたら辺りは真っ暗だ。
「仕方ない、このくらいで切り上げて、夕食にするか。」
「そーだね。」
「そうですね。」
近くにあった屋根つきのバス停に車を横付けし、トランクから食材を取り出し、バス停のベンチを使って夕食作りにとりかかった。
黒田にご飯を炊いてもらっている間に、児玉は缶詰を鍋にあけ、温めている。
ご飯に鯖の味噌煮の缶詰、ご飯に野菜ふりかけと、やや栄養が偏り気味だが、まあいいか。
「「いただきます。」」「いただきますっ!」
今日までほとんど食べ物にありつけていなかったのか、黒田の食いっぷりはすごいものだった。
あっというまに平らげ、おかわり、と言われ、無い、と答えると、今度は児玉におねだりに行き、トランクからカ○リーメイトを出してもらっていた。しかも四本入りである。
非常用兼ご飯作りがめんどくさい時用なのに。
こーいうときにサ○ウのご飯とかあれば便利だな、とちょっぴり思った。
*
夕食の片付けも終わり、九時を回ったころ。
児玉が寝る場所決めで駄々をこねた結果、俺と児玉は今までと同じところ、黒田は助手席に寝てもらうことになった。
「ライト消すぞー、おやすみ。」
「おやすみぃ、ふぁぁ…。」
「おやすみ。」
声をかけると、児玉からは欠伸混じりの返事、黒田からは出会った時のような敬語はなく、普通の同年代同士の返事があった。
パチン、とランタンのスイッチを切り、眠りにつく。
車内が闇に包まれる。
*
中々眠気は訪れてくれなかった。
なんとなく、右手を持ち上げ、腕時計で時間を見ようとするが、わずかに帯状に白くなった右手首にはなにもついていなかった。
(そうだ、寝るときに外したんだった。)
月明かりでうっすらと明るいダッシュボードに手を伸ばし、腕時計を手に取ると、バックライトをつけ、時間を確認した。
女子である私にはあまり似つかわしくない。そのごつい、Gショックにも似たその腕時計を、私はとても気に入っていた。
周りは皆、私の腕時計より一回りも二回りも小さい、銀色に輝き、文字盤もお洒落な、かわいい腕時計をしていたりしていたが、不思議なことに、私はそれらにまったくひかれなかった。
クラスメイトから、咲ってごっつい腕時計してるよねー、と何度言われたことか。
だが、中学の入学祝いで買ってもらって以来、今でも日常のあらゆる衝撃にまったく動じることなく、正確な時を私に知らせている。
約二秒しかつかないバックライトが消える前に、すばやく文字盤に目を滑らせる。
すでに夜中の一時を回っていた。
もうそんな時間になっていたのか、と思う。
このままいても眠気は訪れそうになかったので、気分転換を、と思い、少し外に出ることにした。
二人を起こさないようにそっとドアを開け、外に出る。
特にすることもなく、バス停のベンチに腰掛け、ぼうっ、と夜空を見上げる。
と、後ろでそっとドアを開閉する音がして振り返ると、高山が車を降りてこちらに歩いてきていた。
「ごめん、起こしちゃった?」
心配して尋ねると、
「いや、元々深く眠れない体質でね、よく夜中に目が覚めるんだよ。特に暑くて寝苦しい今日みたいな夏の日はね。そっちは?」
「私は…」
「もしかして座席のせいか?まーそうだよな。車のシートで寝ろ、なんて慣れてなきゃそう簡単に寝れるわけ――」
「そうじゃないの。」
「…え?」
高山の話を遮って私は話し続けた。
「まあ高山君の言ってることもあるけど、それだけじゃないの。本当は…、すっごく不安なの、私。」
雰囲気が変わったことを察したのか、高山は一言も口をはさまなくなった。
「もし、二人のおかげで家に帰れたとしても、もう家族はいないんじゃないかって。みんな、消えちゃったんじゃないかって。私は、もうひとりぼっちになっちゃったんじゃないかって。そう思うと、なんか、不安っていうか怖くなって…私…」
こみ上げてきた思いを抑えるように、ぎゅっとスカートの裾を握りしめた。
その時肩に、ぽんっ、と高山の手が置かれた。
はっとして高山のほうを見ると、
「まだ諦めるには早いさ。俺や児玉の両親は町中探しまわっても見つからなかった。それに比べたら、まだ可能性があるじゃないか。もし、もしもだ、黒田の両親が消えていなくなっていたとしても、黒田は絶対一人ぼっちにはならないよ」
「え…」
「忘れてないか?俺たち二人がいる。世界がこんなんになっても消えなかった俺たちがいるじゃないか。これからも一緒に旅を続けよう。だから、安心して今日はもう寝な。明日もたなくなるぞ。」
高山の言葉を聞いて、不思議と不安や恐怖が心から去って行ったような気がした。
ぎゅっと握っていたスカートの裾をそっと離す。
「…うん、ありがと。」
肩から手の重みが無くなり、早く寝ろよ、と一言残して高山は車に戻って行った。
ふと、さっきまでまったく感じていなかった眠気が、今では私を深い睡眠に引きずり込もうとしている。
「もう寝よっかな。」
特大のあくびをかみ殺し、先ほどのように、車の扉をゆっくり開けて座席に戻った。
意識が眠気に途切れるまで、そう長くかからなかったと思う。
*
翌朝、黒田の家探しは本格的に始まった。
まず、一番手がかりとして有力な黒田がいつも使っている鉄道の線路を探すことにした。
といっても、このあたりには鉄道は一本しか通っておらず、高山が通っている学校でもこの鉄道を使う生徒は多い。
いつも使っている最寄り駅から家までのルートは分かると思うので、まずそこ至るまでの線路をたどって行けばよいと考えたのだ。
が、それが予想以上に大変だった。
高山達二人はなんだかんだ線路をたどってここまで来てはいないので、そもそも線路がどのあたりを走っているか分からない。
そして黒田も学校からどの方面へ移動したのか分からない。
つまり、これらの状況から紡ぎだされる結論は―
「完全に行き詰まってしまった…」
実に単純明快で、一番困る状況だった。
とりあえず道路標識を頼りに、学校の最寄り駅同じ地名を探すしかなかった。
朝六時、軽く身支度を整えて三人は出発した。
児玉が道路標識などを見つけては高山に教え、黒田が知っている地名や景色等を見つけては高山に教える、そして高山は二人から与えられた情報を元に車を走らせる。
そんな作業を繰り返しているうちに、気づいたら昼の一時を回っていた。
昼食は、スーパーやコンビニで食糧補給ができている時には惣菜パン、できてないときはインスタント食品などのかなり日持ちのするもの、と決めていた。
今日は惣菜パンだった。一昨日にスーパーで大量に補給できていたからだった。
ただ、ほとんどの商品の消費期限が過ぎていて、現在も危ないものを食べているという自覚はあるが特に腹を下したりはしていない。しかし、近いうちに惣菜パンに頼ることはできなくなるだろう。すべての食事を長期間保存のきくインスタント系か缶詰といったものにシフトしていかなければならない。
そんなことを考えつつも、手早く昼食をとり、再出発。
三人の会話はほとんど無かった。
その後も進展はなく、なんだかんだで日が暮れてしまった。
鉄道までの手掛かりまではつかめたものの、道路は少ないし道に迷うし標識も見当たらないで、あまり近づいた感じがしなかった。
今日は、民家の駐車場のサンルーフに車を横付けして、調理等の作業スペースを確保し、一夜を明かすことにした。
*
「あー、そろそろ不味いな…」
元気のないエンジン音に耳を傾けながら、高山はつぶやいた。
高山達―特にドライバーである高山本人―は現在ある問題を抱えていた。
車の事だ。
高山の超ゆっくり運転のおかげ(せい)で、なんとか今日までガソリンがもったが、ガソリン残量計がもうEに振り切りかけている。
こうなると、近いうちにガス欠で車が動かなくなるのが目に見えていた。
いずれにしろ、手段を講じ、早急にガソリンを補給しなければならない。
思いついた手段は三つ。
その一…ガソリンスタンドの地下タンクへ通じる配管を見つけ、そこからガソリンをくみ出す。
昔、何かの本で見たことがあった。ガソリンスタンドはガソリンを地下にある巨大なタンクに保管しているそうだ。
そこへ通じる配管を探せば、そこからホースでも垂らして手動ポンプでくみ上げる事が出来る。
その二…そこら中にゴマンとある動かぬ車のガソリンタンクからガソリンを移す。
こちらはその一より簡単だ。給油口を開けて、ホースを突っ込んでポンプでくみ上げればいいだけである。
その三…この車を諦めて、しっかりガソリンの残っている車に乗り換える。
その一もその二も確実に出来る保証はない。もし出来なかった場合、この方法を採るしかない、というのが結論だった。
だが少なからず抵抗もある。たとえボロくて小さい軽自動車でも、自分たちの行く当てもない旅を支えてくれているかけがえのない仲間なのである。ガス欠というどの車でも起こりうる事で、見捨てたりはしたくなかった。
そのためには、前者二つの方法のどちらかを、必ず成功させる必要があった。
近くのガソリンスタンドを探すより、まずその辺に止まっている車のタンクに手をつけること―つまり方法その二を採用すること―にした。
ドアロックが解除されていて、なおかつ鍵が刺さりっぱなしの車はそう多くないが、そうでない車はたくさんある。
給油口までロックされる一部の車はともかく、ガソリンが補給出来そうな車はすぐに見つかった。
事前に高山の提案により立ち寄ったホームセンターでいくつか必要になる材料と燃料携行缶を二つほど確保してあり、すぐに作業開始と相成った。
高山が作った即席給油ポンプは予想外に良い働きをしてくれた。
灯油タンク用の手動ポンプに、一メートルくらいに切断した庭用の散水ホースを差し込み、タンクの底まで届くようにした簡易的なものであったが、ガソリン臭い以外はさして苦労もせず、旅の友の鉄の胃袋は満腹になった。
これからも使えるように、とお手製ポンプをビニール袋に入れ、口を縛り、トランクスペースに入れておいた。
「よし、じゃあ行こうか」
高山が二人に声をかけると、
「そうだね」
黒田もいくらか安心したような声と。
「行きましょうか」
児玉からもいくらか安心したような声が返ってきた。
二人が乗ったことを確認し、高山はエンジンをかける。
エンジンの音もいくらか元気になり、思わず頬を緩める。
高山はアクセルを踏み、車をゆっくり加速させていった。
*
翌日、ある昼下がりの事だった。
蜃気楼でかすむ道の先、
「あ、あった!」
「えっ?何が!」
児玉が盛んに前方を指さすので、少し車のスピードを緩めて目を凝らす。
両側に木が鬱蒼と茂る一本道の遠い先に、黄色と黒の縞模様の柱が道路の両脇に立っていた。そこから、同じ模様の棒が地面と垂直に伸びている。
あれは…
「踏切だっ!」
踏切があるということは、そこには当然線路がある。それをたどれば一気に黒田の家にたどり着ける…!
三人のテンションは一気に上がった。
一旦踏切に向かい、どちらに行けばよいかなにかヒントになりそうなものを探す。
そこで高山が踏切の標識に駅名らしき名前を発見、黒田に心当たりを聞くと、自宅の最寄り駅のひと駅隣の駅名で、ここだったらどちらに向かえばいいか分かる、ということだそうだ。
進路を確定し、線路の方向を見失わないようにその場を離れ、出来るだけ線路を見渡せる道路を選んで、黒田が言う自宅の最寄り駅の方向へ車を走らせた。
*
黒田家周辺に着いたのは、もう日も沈みかけている頃だった。
高山が住んでいる町より住宅が多く、店舗等も充実していて、このあたりでは比較的規模の大きい町のようだった。
見慣れた土地だからだろうか、黒田の道案内が段々と具体的になっていく。
だが、高山は気づいていた。
さっきまで―厳密にはこの町に入るまで―は、生まれ育ったこの町での出来事や、昔話などをうるさいくらいに俺たちに話して聞かせた黒田が、今は道案内以外の会話をしなくなっていることを。
右折、左折、直進を繰り返し、あたりのオレンジ色にも、夜の青が混じり始めたころ。
「ここだよ。」
着いたのは、二階建ての母屋に少々広めの駐車場、芝生の張られた小さな庭と、このあたりではよく見かけたスタイルの一軒家だった。
車を降り、「黒田」と彫られた表札を横目に、母屋の前にある洋風な門を抜け、玄関の前に立つ。
黒田がレバー式のドアノブを下げ、引く。
鍵がかかっていなかったのか、抵抗もなく扉が開く。
「ママっ、パパっ、いるのっ?」
ほぼ飛び込むような勢いで家に入った黒田が、家の中に向かって呼びかける。
だが、その声にはだれも答えることはなく、沈黙を守る家に吸い込まれていった。
「誰かいませんかー?」
児玉も呼びかけるが、返事はなかった。
黒田が靴を脱ぎ、よろよろと歩きだす。
俺も児玉に続き、家に上がる。
「出かけてるだけかもしれない……うん、きっとそうだよ。」
黒田が自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。
三人は自然と、黒田の両親があの日以降もここで暮らしている証拠を見つけようと、家の中を探り始めた。
靴下越しに、また砂の感触を感じたのは、気のせいかもしれない。
返事が聞こえないというだけで、受け入れられる事柄ではなかった。
黒田と同じように、きっとどこかに出かけているだけかもしれない。
今、ここにいないだけで、きっとここで暮らしているに違いない。
学校に行ったままの黒田を心配して、ここで待っているに違いない。
けれども、
家中どこを探しても、その証拠を見つけることは出来なかった。
見つかるのは、あの日の日付で止まっている、洋風な家にはあまり似つかわしくない日めくりカレンダーや、まず真っ先に手を出すはずの非常食がそのまま残っている床下収納だった。
これらが示す事柄はただ一つ。
あの日以来、人の生活が止まってしまっている。つまり、ここに住んでいる人が消えてしまった事だった。
*
わずかにあいている窓から吹き込む風に、カレンダーが揺れている。
「なんで…、なんでっ…、どうして消えちゃったの…?パパ…ママ…。」
両親が消えてしまった現実を押しつけられ、リビングで泣き崩れる黒田を、俺と児玉はただ見ているしかなかった。
今彼女の心には、どれほどの悲しみが押し寄せているのだろう。それを察する事は出来なかった。
自分たちがどんな言葉を投げかけても、それは彼女を傷つけるだけかもしれない、そうとすら思えた。
泣き止んだ後も、彼女はしばらくの間、座り込んだまま俯いていた。
*
どのくらい時間が経っただろうか。
外は、夕焼けのオレンジ色がすっかり消え去り、夜の青が空を支配していた。
制服の袖口で涙を乱暴にぬぐうと、黒田は立ち上がり、こちらに背を向けたまま、
「ママとパパが消えちゃったのは悲しいけど、ここでいつまで泣いていても二人は帰ってこないから。泣くことはもうやめて、これからの事を考えなくちゃ。過ぎたことを悔やんだってどうしようもないしね。」
そう言って、こちらを向いた。
赤く充血した目でこちらをまっすぐ見つめる。
「何て言えばいいのか分からないけど…、これから一緒に、旅をしてもいいですか…?」
言い終えると、恥ずかしいのか、断られるのが怖いのか、目を伏せて俯いてしまった。
「もうしてるじゃないか。」
黒田は、え、と小さく言って少し顔をあげた。黒田のうっすら充血した目を見つめながら、俺は続けて言った。
「ここまでの道のりだって、たった二日間の出来事だって、立派な旅だよ。目的地が決まっているか決まっていないか、それだけの違いじゃないか。」
俺は一呼吸置いてから、
「だから、一緒に旅を続けよう、黒田。」
黒田の目から、光る滴が流れた。
あれっ、と言いながら涙をぬぐう。
さきほどとは違う再び溢れてきたそれを、袖口でぬぐう。
そして黒田は、一目ぼれしそうなほどの最高の笑顔で言った。
「…うんっ!」
こうして、三人の旅が再び始まった。
*
軽自動車のトランクに新たなボストンバックが積まれた。
黒田の荷物だ。
昨晩は、黒田の家に泊まらせてもらった。
その間に黒田に許可をもらい、非常食を補給する。
黒田は家中をを行ったり来たりして、荷造りを進めていた。
ついでに、今夜だけ、と黒田の両親の寝室のベッドに寝かせてもらった。久しぶりに寝るまっ平らな布団は大変寝心地が良かった。
虫さえも消えてしまったのか、というくらいの静かな夜。ほんのかすかに、自室のベッドで寝ている黒田のすすり泣く声が、聞こえたような気がした。
全員が起きた翌朝八時、今日の旅が始まった。
相変わらず、後部座席には児玉がど真ん中を陣取り、黒田はすでに助手席を我が物にしていた。
「じゃあ、行きますか!」
「うんっ!」
「れっつごー!」
後ろと横から、元気のよい返事が返ってきた。
少しアクセルを踏むと、軽自動車は軽快なエンジン音を立てながら、ゆっくりと加速していく。
駐車場を出て、ぽつぽつと立つ住宅を横目に、車は走る。
サイドミラーから見える黒田の家が、どんどん小さくなっていく。
視線を前に戻してから、横目で黒田を見る。
黒田は、前を向いていた。
その目は、これからの旅路に向けられていた。
毅いやつだな、俺にとっては羨ましい。
俺は、再び正面に視線を戻すと、更にアクセルを踏み込んだ。
―そういえば、自分は何故、両親が消えたことをあれほどあっさり受け入れられてしまったのだろうか。
自分の心の内だというのに、はっきりと正体をつかむことができなかった。
*
静寂の町にエンジン音を響かせながら、走り去る一台の軽自動車。
そのスピードはお世辞にも速いとは言えず、はたから見れば不安にもなるくらいの運転であった。
各々がこれからの正体の掴めない旅路に期待と不安を抱きながら、車の揺れと、気まぐれの進路変更に身を委ね、車を進めている。
そんな車もやがて町を抜け、背の高い杉の木が立ち並ぶ幹線道路にその姿を隠すだろう。
三人を乗せたその軽自動車がどこへ向かうか。
―それを知る人は、誰もいない―
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