第5話 クラスメイト

 1


 深夜勤明けのバイトの帰り道で太鼓台に出くわした。

 12年ぶりに見る太鼓台は金色というより、くすんだ黄色に近かった。かき夫の数も少なく、歩みの遅い亀のようだった。水色の法被と背中に書かれた文字を見て、それが隣の地区の稜津太鼓台だと分かった。

 太鼓台は赤信号でもお構いなしに交差点に入ってくる。自動車が太鼓台を避けて道を譲り、自転車も歩行者も立ち止まって太鼓台が行き去るのを待った。昔によくやっていたゲームみたいにアイテムを手に入れたら一定時間だけ敵にやられない無敵状態になる。その姿と重なって見えた。

 稜津地区の名前入りのジャージを着ている集団の中に中学の同級生の姿を見つけた。ジャージを着ているのはその地区の青年団である証。その向こうに見える人物も名前まで想い出せないが、2コ上の先輩のはずだった。向こうはこちらには気づいていない。

 コンビニのバイトをしていると知っている顔に出会うことがある。同級生に始まり、その親兄弟、近所の人、向こうは気づいているのか、いないのか。たぶん気づいてないと思うが、知らん顔でいるのも何だか気持ちが悪い。だからと言ってこちらから声をかけるのもためらわれる。そんなことを悩んでいるうちに彼らは去っていく。向こうはこちらに気づいてはいない。

 三日連続の深夜勤が終わり、今日は一日休みで明日は日勤。それからまた休みで、その後はまた深夜勤が続く。シフトはコンビニ側の都合にあわされていつも不規則だった。

 昨日は急にバイトに入る予定だった早坂創が体調不良を理由に休みの連絡を入れてきた。それに焦った店長の谷宋太は他のバイトにも来られないか、とずいぶん電話をかけてまくっていた。ちなみに上条響は好きなアイドルのコンサートに東京まで出かけて行くと言っていた。祭の日に予定がないのはおれくらいなもので見事に全滅したらしい。

 結局、谷宋太本人が代わりに入ることになった。そのおかげでその日は機嫌が悪く、ほとんど店裏に引っ込んだままだった。忙しい時間帯のときだけ店に出てくる。おれと同じ目線で仕事をするのがよっぽど嫌なのだろうか。しかし谷宋太に隣に立たれて、ずっと小言を言われながら仕事をするより百倍いい。

 太り気味の体を揺らして同級生の宇喜多信人がコンビニにやってきたのは日付が変わる頃だった。店内には他に雑誌を立ち読みする客が一人いるだけだった。

「ほんまにおるし。おまえなぁ、こっちに帰ってきとんなら声ぐらいかけてくれてもええやろ。しかもコンビニやか言うたら、うちら酒屋の天敵やんか。絶対嫌がらせやろ」

 宇喜多信人は「宇喜多酒店」と書かれた店の前掛けをしていた。大阪の駅のフォームで会ったときとはまた雰囲気が違う。お得意先の飲み屋への配達の帰りに立ち寄ったらしい。それにしても、宇喜多信人に話をしたのは誰だろうか。

「おまえの姉ちゃん。こないだ、スーパーでばったり会うて、あいつここにおるけん、寄ってあげてやって言うてたぞ」

 疑問はすぐに解消した。

「それよか。明日、いやもう今日か。うちの店休みなんよ。毎年、祭の日はうちんとこにみんな集まって盛大に飲み会するけん。おまえも来いや」

「ええよ、別におれは・・・」

「そんな言うなや。なかなかみんな集まるときやかないんじゃけん。タイジとかマサケンとかも来るで」

 本名が思い出せないが、ネジの一本までバラバラに解体できるほど自転車には詳しかったタイジ、裏技の数々まで知り尽くしテレビゲームの上手かったマサケン。高校生の同級生のあだ名を聞くだけでなぜか懐かしい。

「昼からやって夕方には終わるけん。ちょっとだけでもええけん、顔出してくれや。どうせヒマなんやろ。姉ちゃん、言よったで。じゃあの、待ちよるけんの」

宇喜多信人はおれの返事も聞かずに、自分の言いたいことだけ勝手に言って去っていった。宇喜多信人が立ち去るのを待ち構えていたかのように裏から谷宋太が出てきた。

「河島くん。今のは誰だ?友達か。こっちは給料出して働いてるんだ。遊び気分で仕事されては困る。勤務中の私語は控えてくれるか。頼んでおいた商品の棚出しがまだ出来てないじゃないか」

 谷宋太の鬱憤を晴らすかのような説教がいつにも増して続いた。タイジにもマサケンにも卒業して以来会っていない。正直、会ってみたい気持ちと会いたくないという気持ちが半々だった。おまけに明日はバイトがちょうど休みだった。


 家に帰ると、姉の息子つまりおれの甥と玄関で出くわした。甥は、緑色の法被を着て頭に手ぬぐいを巻いている。背中に峰泉の大きな文字がある。これから太鼓台をかきに行くのだろう。足袋を履くのに苦労しているようだった。足袋は、踵から脹脛にかけて下から順番に金属製の爪を糸の輪に引っ掛けて締めながら留める。靴とは違って履き辛い。

「何か用か?」こちらを見ずに甥が言った。こちらも積極的に関わりたいわけではないが、食ってかかるのも大人げない。無視するのは尚更だ。

「峰泉の法被のデザインが変わったんか。なかなかかっこええやん」

 昔は文字と模様だけのシンプルなデザインだったのに緑色がベースなのは変わらないが、今は背中にある峰泉の文字が筆で書かれ、その文字の後ろには迫力ある白波が立っている。

「じろじろ見んなよな」

 甥との会話はそれ以上続かなかった。甥は一度もこちらの方を見ず、壊れそうなほど勢いよくぴしゃりと玄関の戸を閉めて出て行った。

 8月に帰ってきたときからずっとこの調子だった。自分の住んでいる家におれが突然帰ってきたのがよっぽど気に入らないのか、まともに会話していない。いったい誰に似たのか。元々住んでいた実家だというのにおれがいったい何をしたというのだろう。


 普段の生活で外出するのはバイト先のコンビニの往復だけ。バイト以外では家族以外の誰とも会っていなかった。昔の友達に会いに行くにしても12年という月日はあまりに長い。拒絶されるようなことはないにしても、いてもいなくても何の影響もない存在をどう思うだろうか。そんな風に考えてしまうと、このまま家の中に引き篭もってしまいそうになる。このままではいったい何のためにここに帰ってきたのか、わからなくなりそうだった。おれは宇喜多信人の家に出掛けていくことにした。

 十二年ぶりに訪れる宇喜多酒屋は当時と変わらない姿のままだった。その当時は珍しいタイル張りの奇抜な洋風なデザインで洒落た外国の雰囲気を出していた。また10年もすれば、別の印象を受けるのかもしれないが、今はそれが古臭く感じてしまう。しかし一歩店内に足を踏み入れると、外見と違って綺麗に改装されていた。商品棚には多くの日本酒をはじめ、焼酎、洋酒、ワインなどがずらりと並んでいる。残念ながらおれには一本5千円以上の値のつけられた酒の価値はわからない。

「あれ、河島くんやない。久しぶりやね。大阪から帰ってきたん。高校のときと何か雰囲気が変わったね」

 12年も来ていないというのに宇喜多信人の母親は、ぽんとおれの名前を出してきた。その記憶力にも驚いたが、その容姿は激太りした息子と違って姿も顔も当時のままだった。入院中のおれの母親とそう変わらない歳だというのに溌剌としている。対面で客商売をしているとこうも違うものだろうか。

「信人やったら裏の方におるけん。そっち行ってみんかい」

 覚えのある裏口の外には、確か駐車場と倉庫があったはずだ。しかしそこには記憶にあった景色はなかった。アウトドア用のテーブルやチェアが並び、日除けのテントまで張られている。鉄板の上では肉や野菜が焼かれ、白煙と共に香ばしい匂いを漂わせていた。アルコールを手にすでに出来上がってしまっている人達もいる。その一方で法被を着た子供たちがおもちゃの笛を吹き指揮者の真似をしてそこら中を走り回っている。全部でいったい何十人いるのだろうか。どう見たって同級生には見えないお年寄りも混じっている。自分の子供を連れてくることはあっても、自分の親は連れてくることはない。

 輪の中に、缶ビールを持って回る宇喜多信人を見つけた。

「あれ?秀磨。ほんまに来てくれたんか」

「おまえが呼んだんだろうが」

「まあ、ええやん。飲んでけ飲んでけ」

と、宇喜多信人はコップをおれに手渡し、ビールを注いでくれた。

「ようけ人がおるな。どういう集まり?」

「ご近所さんとか、お客さんとか、それに何やら会の仲間とか、まあ色々おるやわ。こんな商売やってると色々あるけんな。付き合いも大変なんぞ」と最後の方は声を潜めて耳打ちした。

 同級生だけの集まりではなかったのか。そんな話は聞いていない。

「それと紹介しとくわ。おい、麻美」

 宇喜多信人は手を挙げて女性を呼んだ。そばに寄ってきた小柄な女性は手や足は細いのにお腹だけがぽこりと大きい。それは単に太っているせいではなさそうだ。

「別に隠してたつもりなんてないんやけど。おれら去年結婚したんよ、来月には、子供が産まれる」

 自らの大きくなったお腹をさすながら、宇喜多麻美は照れながら頭を下げた。

思い出した。どこかで見覚えがあると思っていた彼女は、宇喜多酒店で何度か見かけたことがあった。当時、高校生がこっそり酒でも買いに来ているのだろうかと不思議に思い覚えていた。宇喜多信人に会いに来ていたというわけだったのか。その頃からだとすれば、少なくとも12年以上の付き合いになる。

「良かったやんか。おまえ、これからますます働いて稼がないかんな」

 目の前にいる二人からは幸せが溢れ出ていた。

「うちは酒屋やけん、飲むもんはようけある。今日は好きなだけ飲んでってくれや」

 そういって宇喜多信人はまたホスト役に戻る。大きなおなかを抱えながら宇喜多麻美も夫をサポートしている。友人が結婚してうれしいはずなのに。子供が生まれてめでたいはずなのに。それなのに背中から嫌な汗が出ていた。今、おれはうまく笑えていただろうか。

 おれはコップに注がれたビールを一気に飲み干した。いつの間にか、のどがカラカラに渇いていた。

「いかがですか。飲んでるんでしょ」

 ひょろりと背の高い細めの男性が近寄ってきて、空のコップに缶ビールを注いでくれた。歳は同じくらいだろうか。目の前にある顔を記憶の中に照らし合わせてみるが、誰とも結びつかなかった。同級生にこんなやつがいただろうか。酔っぱらっているせいなのか、やたらとよく笑う。

 その答えはひょろり男の方からくれた。どうやら同級生ではないらしい。ひょろり男はこの地域の出身で今は埼玉県で建築材料の営業をしているらしい。宇喜多信人とは遠い親戚に当たる。祭のときには、この日だけは休ませてくれと会社に届けて、必ずこちらに帰って来るらしい。明日、祭が終わればその日のうちに夜行列車で朝には関東に戻るという。夜行列車とはいえ往復すれば4万円近くかかるはずだった。子供も三人いると言い、三人とも女の子で男の子が欲しかった、とまた笑った。

 ある程度は覚悟していたはずなのに、周りが知らない人ばかりだったこともあって、つい飲み過ぎてしまった。会社が倒産してからは一滴たりも酒を飲んでなかった。久しぶりのアルコールに当てられて、目の前がくるくると回り始める。空いていたベンチに腰掛けてみたが、それも辛くなりそのまま横になって目を開けていられなくなる。本当に気持ち悪い。

 他人の笑い声が疎ましくさえ思えてくる。もう帰ろうか。

「大丈夫。飲み過ぎたん?」

 目が回って視界がぼんやりとしていた。その高い声色と、髪の毛の長さで相手が女性ということだけはわかった。

「河島。久しぶりやね。元気にしとったか?」

 ふいに女性から自分の名前を呼ばれて一気に酔いが醒めた。その声には確かに聞き覚えがあった。



 2


 彼女の名前は、佐東春菜という。

 初めて出会った高校1年の夏だった。おれはそのときのことを今でもはっきりと覚えている。

「河島。あんた、泳ぐの速いんだって」

 ぱっちりとした二重の大きな瞳、形の整った鼻、口元から見える小さな八重歯、それに左目下の小さなホクロ。初対面でいきなり呼び捨てにされた。

 中学高校と周りからおれは秀磨を「しゅうま」でなく、あだ名で「ひで」とか「ひでま」と呼ばれていた。先生や親しくない人からは「かわしまくん」とくん付けで呼ばれていた。それなのに佐東春菜のように苗字だけを呼び捨てで呼ぶ人間は珍しかった。

 泳ぎの方は中学校のときの名残で、非水泳部にしては速いという程度である。時々、水泳部に頼まれて試合に出るようなこともあったが、成績もぱっとせず、あくまで人数が足りないときの穴埋め要員だった。なぜ速く泳げたのか自分でもわからない。幼い頃から峰泉にある近くの海にはよく遊びに行っていた。それにしてもそんなことを佐東春菜はどこで知ったのだろうか。

 一方、こちらは佐東春菜のことをおれは知らないわけではなかった。いつも女子グループの中心にいて目立つ存在だった。女子の中でも頭ひとつ抜け出た身長はイヤでも目に入る。前から数えた方が早いおれよりも少なくとも身長が10cm以上高かった。

 そんな彼女から思いも寄らぬ言葉が出た。

「ねえ、バンドやってみん?」

 一瞬、頭が混乱してしまう。バンド?バンドって何だったっけ。腕に巻くやつか。それとも擦りむいたときに貼るやつだったか。

「バンドって、音楽の?」

「そう、音楽の」

 あっけらかんと佐東春菜は答える。なぜそんなことをおれに言うだろうか。音楽とはほぼ無縁の生活をしている。最後にお金を出して買ったのはいつのことだろう。唖然としているおれに、佐東春菜はなおもしつこく勧誘を続ける。

「よーし。まずはおまえの力を見せてみろ」

 音楽の「お」の字も知らないおれが言ってやった。当時、流行っていたマンガの主人公の決め台詞を言ってやった。

 佐東春菜は大きく息を吸って吐いた。すると、いきな目の前で歌い始めた。他にも教室には人がいるというのに。

「や、やめ・・・」

 それ以上言葉が続かなかった。彼女の歌声は、一瞬で場の空気を一変させていた。音楽に疎いおれでも分かる。聞き覚えのあるその歌は確か有名な映画に使われていた曲だった。しかも洋楽。佐東春菜の声は中盤でさらに伸び、サビの部分では裏声と織り交ぜてさらにしなやかに伸びて変調した。しんと静まり返った教室を異世界に変えていた。伴奏も何もないアカペラで、周りからの視線を一身に浴びながら、1秒もためらうことなく、1歩もひるむことなく、佐東春菜は歌い切った。

「どうだった?」

 いつのまにか全身に鳥肌が立っていた。

「な、なかなかやるな。今日はこのくらいで勘弁しといてやら」

 これも、とあるマンガに出てくるザコキャラのお決まりの捨て台詞だった。


 そんな佐東春菜の熱烈な勧誘の甲斐があって、男子3名女子2名の同級生5人がその日のうちに放課後に集まった。これは後になって聞いたことだが、誰でも手当たり次第に声をかけまくっていたらしい。つまりOKしてくれる人なら誰でもよかったということだ。

 とにかくパートを決めようということになって、佐東春菜がボーカル、おれがベース、残りの男子がギター、ドラム、キーボードをピアノ経験者の女子がやることになった。笑い話になるが、このときのおれはベースとギターの違いも分からなかった。弦の数がベースが4本でギターが6本であることすら知らなかった。小学校の頃にピアノを習っていたという一人の女子を除けば、他に楽器経験者はいなかった。まるでコンビニでジュースを選ぶみたいにみんなでパートを決め、そのついでにガムも買うみたいにバンド名を決めた。ついでに決めたバンド名は「デリシャスフィッシュ」。直訳すれば「おいしい魚」だった。

 しかし、デリシャスフィッシュは結成して早くも行き詰まってしまう。ド素人の未経験者が集まったところで何から始めればいいのかわからない。まして楽器もないということでは話にならなかった。相談の結果、みんなでバンドをやっているという先輩の家にやってきた。

「な、なんだ。おまえらいきなり」

「先輩、私たちお願いがあるんです」

 その先輩は校内でも有名なバンドマンだった。今思えば、突然家まで押し掛けて、先輩の方はかなり迷惑だったに違いない。だが、それを佐東春菜の情熱がそれを上回る。

 喫茶店をしている父親が凝り性であるというその先輩の家には、ギター、ベース、ドラムに留まらず、ピアノにトランペット、バイオリン、見たことがない様々な楽器が揃っていた。しかも防音室まで完備されてある。先輩だけでなく父親まで出てきてもらって話し合いの場が持たれた。交渉の末、無給で喫茶店を手伝うことを条件にこの場所と楽器を一年間使わせてもらう許可を得た。しかも先輩の指導の特典付きで。

 半ば強引に誘われたバンド活動だったが、やってみるとすぐにのめり込んでしまった。最初は弦の押さえ方一つにさえ戸惑った。指に跡が残るほどしっかり押さえないと音が出ない。すぐに指が痛くなる。

「上達するのに近道はない。練習するしかない」と先輩は言った。

 まともな音が出て、リズムが刻めるようになるまでに相当な時間がかかった。その頃には指の腹は硬くなり痛みも感じなくなっていた。まだまだ下手に変わりはなかったが、それでも下手は下手なりにひたすら練習し続けた。

「みんな。初ライブの日、決まったけん」

 一瞬、頭が混乱してしまう。ライブ?ライブって何だっけ。ゲームに出てくる回復の呪文だったか。それとも新しいアニメのキャラクターだろうか。

 佐東春菜を問い詰めると、ライブ直前になって予定していたバンドが急遽出られなくなった。その穴を埋めてくれるバンドを探していてその話に乗ったと言う。どうせやるなら目標があった方がいいということで決めてきたと、小腹が空いたのでコンビニでお菓子を買ってきたみたいに言う。

「まあ、いいじゃないの。何とかなるって」

 確かに目標はあった方がいいのだが、まだ一曲もまともに弾ける曲などないのに佐東春菜の自信はいったいどこから沸いてくるのだろうか。

 こうしてデリシャスフィッシュは初本番を一ヶ月足らず先に迎えることになった。許可をもらったとはいえ、先輩の家での練習時間は限られていて練習がまるで足りない。小学校から貯めていたお年玉をおろして安物のベースを買った。家でも寝る間を惜しんで遅くまで練習を続けた。姉に「うるさい」と何度注意されたことか。

 そして、ついにライブ当日を迎えることとなる。ステージにあがると観客は最前列に20人ほど、少し離れてさらに20人ほどが並んでいた。合わせて40人ほど。今日の入りは多い方だという。ふと隣を見るとギターの顔がガチガチに強張って緊張していた。それに釣られて自分の身震いした。

 ドラムがデリシャスフィッシュの初陣を合図した。しかしそれは地獄の始まりだった。おれはしょっぱなから出だしをミスし、簡単なところでもリズムを外した。一度歯車が狂いだすとギターもドラムもミスを乱発する。自分のことだけで精一杯で周りを気にする余裕もない。頭は真っ白になって次の音が出てこない。一音一音まるで綱渡りのように探る。それは音楽というには程遠いものだった。

それからも雑音のような伴奏のミスは続き、たった15分の出番が何時間のように感じられた。ただそんな中で佐東春菜だけが自分の役割をしっかり果たしていた。身体の奥底まで染み入る透明な彼女の歌声は、観客を瞬く間に魅了した。

「ねえ、どうやった?」

 隣に立つ佐東春菜に言われて初めて気づいた。すでに自分たちの出番が終わっていた。いつ曲が終わったのかもわからなかった。着ていた服が肌に張り付くほど、おれはびっしょり汗をかいていた。


 それから、デリシャスフィッシュには度々ライブに出てみないかと声を掛けられるようになった。それはひとえにボーカルである佐東春菜によるところが大きい。おれを含めたその下々の者たちはバンドの足を引っ張らないようにこれまでに以上に努力と経験を重ねた。彼女の名前とともにバンドも有名になっていた。

 デリシャスフィッシュは、先輩からの勧めで地元のバンドが集まるコンテストに出場することにした。

「君らもそろそろ自分たちの実力を試してみたらええよ。みんなあわよくばプロになりたいって思ってるんだろ?」

 そんなことは考えてもみなかった。地方で行われる比較的な大きなこのコンテストで業界の関係者も見に来るらしい。先輩が言うように優勝すればプロになる可能性も見えてくる。

 ただこれには一つ大きな問題があった。これまでのようにコピー曲ではなく、オリジナル曲であること。それが出場条件だった。

 デリシャスフィッシュは初めて曲作りに挑戦した。おれとギターの二人で基本のメロディーを作り、他のパートのメンバーがそれに付け足し、詩はやってみたいと佐東春菜が担当することになった。その日のうちに書き上げたという詩は「恋唄う」というタイトルが付けられていた。片思いのストレートな詩だった。曲と詩を合わせて、先輩のアドバイスを聞きながらこれに修正を加えて初めてのオリジナル曲は完成した。

 大会はいつものライブハウスの様子とは様子がまるで違った。審査員が真正面に座り、観客もゆうに200人は超えているだろうか。いつものようにミスっても、その場を楽しむノリで誤魔化せる雰囲気ではない。音楽が好きな連中がみんな真剣に音楽を聴くために来ている。そんな期待した視線が痛い。押しつぶされそうな緊張の中、足の震えが止まらなかった。

 そして、いよいよデリシャスフィッシュの出番がやって来た。「いくよ」と佐東春菜の目で合図した。この曲は彼女のソロの歌い出しから始まる。歌い出した彼女の歌声を耳にしながら、大丈夫と一つ深呼吸してから弦を鳴らした。今までで最高の音が鳴った。ギター、ドラム、キーボードもそれに続く。ぼくらは引き立て役に過ぎない。それでもいい。主役は佐東春菜だ。「恋唄う」は彼女の声に乗せて、しんとした会場中に響き渡った。誰もがその声に聴き入っていた。なぜかおれは教室で初めて彼女の声を聞いた時のことを思い出していた。音楽に全く興味がなかった人間を動かしここまでやってきた。それは圧倒的な力強さに溢れ、それでいて包み込むようにどこか優しい。中には涙を流す人さえいた。彼女の声は体に染み入り浸食していく。それには今までのおれの世界を一変させる破壊力が込められている。免疫がなければそれは仕方ないことだ。おれたちデリシャスフィッシュは持てる力を全て出し切った。

 結局、優勝したのは地元の大学生のグループだった。デリシャスフィッシュは審査員特別賞を受賞した。

「ユーたち、ソウルの入ったいい曲だったよ。君たちならメジャーデビューも夢じゃない。ま、これからもがんばりたまえ」

 アフロヘアーにあごヒゲを蓄えた審査員の中で一番怪しげな人物がそう講評した。社交辞令なのか本気なのか、見た目のうさん臭さから鵜呑みにすることはできないが、メンバーは受賞を素直に喜んだ。

 その言葉を胸におれたちデリシャスフィッシュは更なる上を目指し飛躍を遂げる、はずだった。夢に描いた未来は意外にも簡単に崩れ去ってしまう。

 あるライブの会場でおれたちの前のバンドがもたつき、出番が遅れた。ギターが文句を言うと相手から突然殴られ、それを見てカッとなったドラムが相手を殴り返した。止めに入ろうとしたおれたちまで加勢に加わったと誤解され何発か殴られた。それを見ていた観客の誰かが警察に通報したようで警官に取り押さえられた。結局、それが学校に知られる事件となり、一発も手を出してないおれさえも連帯責任ということで謹慎処分を受けることになった。

 それで終わりならまだ良かったのだが、ギターは黙ってバンド活動していたことが親にバレて、一切のバンド活動を禁止されることになった。よっぽど謹慎処分がこたえたのか、内申書に響くのはイヤだからとキーボードの彼女も辞めると言い出した。ドラムも受験勉強を始めるのを理由にバンドを辞めてしまった。

そうしてデリシャスフィッシュが二人だけになった。ある放課後、練習する気にもなれず喫茶店の練習場の床に寝転がって、佐東春菜と二人でCDを聴いていた。

「このCDのジャケット何か好きなんだよね」

 佐東春菜からCDを受け取る。そのジャケットには独特のタッチと艶やかな色使いで女の子が描かれていた。色鉛筆だろうか、その淡い色使いはどこか懐かしい感じがした。CDを開けてみると中にはマジックで書かれた「恋唄う」が入っていた。うーん、彼女らしい。それは特別賞の記念にスタジオで録音したものだった。

「河島に、それあげる。いつかそんなジャケットで発売するのが私の夢なんよね」

 おれはなぜかそのジャケットが気になって絵の作者を捜し当てた。とある雑誌に載っていた作者はごく普通の青年だった。こんな人がこんな絵を描くのか、見た目からは想像もできなかった。この人があんな絵を描けるのが、不思議で仕方なかった。

 その後、佐東春菜はまた新たにメンバーを勧誘するのかと思っていたのだが、そうしなかった。

 ずっとずっと後になって聞いた話だが、佐東春菜は失恋していたらしい。付き合っていた2つ上の先輩は上京するのをきっかけに別れ話になった。元々、佐東春菜はその先輩のバンドの追っかけをしていた。その先輩と同じ道をたどってバンドを始めた。先輩に少しでも近づけるようにと。



 3 


 ぱっちりとした二重の大きな瞳、形の整った鼻、口元から見える小さな八重歯、それに左目下の小さなホクロ。

「お互いもう30歳やけんね。すっかり、おばちゃんになってしもたやろ。河島はあんま変わってないね。高校卒業してからやけん、もう十年?もっとか。元気にしとった?」

 そういう佐東春菜の声は当時と同じで、言うように少しは老いて見えたが、目の前に立つ佐東春菜はとても30の歳にはとても見えなかった。むしろ記憶の中にあるあの頃の姿に近かった。

「私も色々あったんよ。私も高校卒業してから東京に出てね。普通に結婚したまではよかったんやけど、今は離婚して別れてこっちに戻ってきとる。前に近所のスーパーでたまたま宇喜多に会って連絡先交換してたんよ。時間があるんならおまえも来いって。めったに見れないやつが来るっていうから」

 そこへ佐東春菜の足にまとわりついてきた男の子がいた。小学生くらいだろうか。一度目が合った、というより睨まれた。男の子はそのまま佐東春菜の影に隠れてしまった。

「ごめんね、愛想悪くて。一人息子の一路。私もね。苗字が佐東から伊伏に変わったんよ。佐東に戻しても良かったんやけど世間体ってものがあるしね。この子も来年からは小学生やし」

 頭が追いついていかない。次から次へと出てくる現実のどれに驚いていいのか悪いのか。あの頃と同じように話してもいいのだろうか。見え隠れする伊伏一路の顔は、佐東春菜いや、伊伏春菜にはあまり似てないような気がする。

「河島は、峰泉だったよね?今年はかくん?太鼓ずっとかきよったよね」

 おれは言葉に詰まってしまった。今は太鼓台に触れるどころか、近付いてもいない。むしろ遠ざかっている。おれが困るところを楽しんでどこかから隠し撮りされて騙されているのではないだろうか。

 そのとき、知り合いだろうか。知らない男が割り込んで伊伏春菜と親しげに話を始めた。

 入れ替わるようにタイジとマサケンがやってきて、「よおっ」とビールを持ってきた。ノンアルコールの方がよかったのだが、それでも喉を通る液体が胸の奥の火照りを冷ますには心地よかった。二人とも会うのは中学校卒業して以来だった。海に魚を釣りに行った話とか、自転車に色を塗った話とか、当時熱中していたゲームの話とか昔の話はいくらでも湧いて出てきた。

 ちらりと伊伏春菜を見ると、また別の知らない男性と親しそうに会話をしていた。あの佐東春菜が結婚して、子供がいて、離婚までしている。おれは貯金もなく、独身で、フリーター。この差は何なのだろう。人生の厚みが違う。きっと二人とも当時は想像さえしていなかった未来にいるのだろうけど。

 宇喜多酒店の宴は、夕方から始まる喜多浜駅前でのかきくらべを前にお開きとなった。皆、今からそっちへと向かうのだろう。伊伏春菜は「またね」とだけ言葉を交わし、息子と二人で手をつないで帰っていった。

「まさかこのままタダ飲みで帰る気じゃないだろうな」

 おれも同じく帰ろうとしたところを宇喜多信人に呼び止められた。そうか、おれはこのために呼ばれたのか。宇喜多信人夫妻と飲みかけの缶やコップ、食べかけのお皿を片付けしていく。

「佐東と話したか?」

 ゴミを集めながら宇喜多信人は伊伏春菜を佐東と言った。話ができたようなできなかったような。久しぶりに彼女の姿を見られたのは懐かしく、素直に嬉しかった。

「そうか。ならええんやけど。おまえ、佐東と仲良かったもんな。結構、バンドも人気あったし。女子のファンも多かったけんな。おまえを紹介してくれって頼まれたことも何度かある。おれも若かったけんな。そんなこと自分で言えって断ったけどな」

 そんな記憶は一切ない。確かにバンドをやればもてると邪な気持ちがなかったかといえば嘘になる。内心期待していたのに、そんな気配さえ全く気がつかなかった。それとも気づかないほどに別に夢中になっていたのか。

 小さくなった遠い彼方にある高校時代を思い出そうとしても、ぼんやり靄がかかったように混濁していた。頭の中に出てくる人物はすでにアップデートされて、宇喜多信人も佐東春菜もすっかり大人になってしまっている。

「おまえ、こっちに帰ってきて、親父さんの鉄工所の後継がんのか?」

 また言葉に詰まった。沈黙したまま、テントを二人で折り畳んでいく。骨を折りたたむほどに小さくなっていった。遥か幼い昔は別にして、家を出てから今まで一度もそんなこと考えたこともなかった。そもそも親父がそんなことを認めてくれるはずがない。

 大方の片付けを終えた頃、風が急に肌寒くなった。近頃は日が落ちると気温がぐっと下がるようになっていた。

「おまえ、喜多浜駅は行かんのか?今年は峰泉と皇野がやるっていよったけん。おまえんとことは敵同士やからな、覚悟しとけ」

「敵同士って大げさやな。まあ、おれらには関係ないやろ。それにおれはもう太鼓はかかんし」

 宇喜多信人の住む地区の皇野太鼓台と峰泉太鼓台は昔から何かと折り合いが悪く、太鼓台同士のけんかが絶えなかった。

「ええもん、おまえに貸したるけん。ちょっと待っとけ」

 宇喜多信人は店の方へと勢いよく走っていき、巨体を揺らしながら息を切らして戻ってきた。ほら、と手渡されたDVDのパッケージには太鼓台が載っている。そのタイトルには2年前の日付と「太鼓祭 激闘編 皇野VS峰泉」とある。

「おまえも大阪暮らしが長うて忘れてしもうたか。ここの義務教育やけん。これ見て子供はみんな大きくなる。忘れたらいかん」

 宇喜多信人はまじめな顔をして言う。どこまで本気なのか、おれには分からなくなっていた。


 家に戻ると親父も姉も誰の姿なかった。祭に行ったのか、それとも母の病院か。

 宇喜多信人から借りたDVDをデッキに入れた。そういえば昔、家にも親戚の人からダビングしてもらった太鼓祭のビデオテープがあった。友達の家に遊びに行くとどの家庭にも一本くらいあったように思う。義務教育と言った宇喜多信人の言葉もあながち大げさではないかもしれない。しかも今の時代、レンタルビデオ屋に並んでいてもおかしくないほどにパッケージの完成度が仕上がっている。

 再生ボタンを押すと、まずは画面に現れたのは峰泉太鼓台だった。道路には見覚えがあり、喜多浜駅前通りを東に向かって足早に通り過ぎていく。その正面の奥から皇野太鼓台が姿を現す。すでに高覧幕、水引幕の面を外して臨戦態勢にあった。金糸の刺繍された面は1枚が何十万円もする。けんかのときに傷付くのを恐れて外しておくのが常だった。慌しく峰泉太鼓台の面が外されていく。面が外されれば太鼓を叩く太鼓係の姿が露わとなり、重を支える4本の四本柱がむき出しになった。その間、皇野太鼓台はまっすぐ突き進んで峰泉太鼓台との距離が縮まっていた。

 太鼓台のけんかで、最も重要なのはかき棒だった。人の頭ほどの太さもある4本のかき棒に、太鼓台の重量にかき夫の押す力が加わる。これが相手の太鼓台を攻撃する武器になる。けんかのためにだけにかき棒を長くしたり、さらに横棒をもう一本足して強固にしたりする場合もある。リーチが長く強固なほどそれだけで有利になる。

 両太鼓台の勢いがついたかき棒は、横棒に遮られて中央まで届かずに弾かれた。急ブレーキがかけられたような衝撃で、かき棒の上に乗っていた何人かはバランスを崩して、かき夫の群れの中に消えた。重なり合った前方では人同士が混戦していた。双方とも太鼓台を後退させた。

 前方のかき棒が並行に真っ直ぐに持っていくと、先ほどのように横棒が邪魔して重を支える四本柱までも届かない。横棒は4本のかき棒を固定するために2本並んでがっちりと固定されていてびくともしない。

 二撃目は双方のかき棒が斜め上方を向き、互いに中央部にいた太鼓係の頭上を通過した。かき棒の上には人が群がり、ロープがかけられる。ロープはかき棒にひっかけて、折るために使用される。かき棒は突く方向には丈夫だが、横方向の力には弱い。固定された支点に横方向の力が加わるとテコの原理でかき棒が折れる。ロープをかけられる側も指を咥えて、それを黙って見ているわけではない。かけられたロープを外そうと必死に攻防する。

 太鼓台のけんかには勝敗を決する幾つかのルールがあった。重を支える四本柱が折れたら負け。攻撃するかき棒が折れたら負け。音を出す太鼓が割れたら負け。それに負傷者が出れば止めとなる。

 互いに組み付いたまま、互いに時間ができた。目の前で峰泉太鼓台の最右端のかき棒にかけられたロープは皇野太鼓台のかき夫に引かれ、かき棒はぼきりと鈍い音を立てて中ほどから折れてしまった。こういう場合、かき棒は鋸で切ったように真っ直ぐにはならず、切り口はギザギザになる。その切り口で鋭利に尖っていて刺されたら痛そうだった。これで4本のうち一本を失ったが、これでまだ終わりではなかった。

 互いに太鼓台は一度離れた。画面からは見えなかったが、皇野太鼓台も同じく向かって右端のかき棒を折られていた。まだ勝負は五分と五分。その後はかき棒を折られるのを警戒して、突いて離れの小競り合いが続いた。かき棒が交錯し太鼓台にぶつかる度に大きく揺れた。かき棒の上には人が群れて、押せや引けの指示が飛び交う。

 その時、ズームされたとき画面に写り込んだのは、見覚えのある人間だった。黒色の皇野太鼓台の法被を着ていたのは、昨日バイトを無断欠勤した早坂創だった。これはもちろん2年前の映像になる。かき棒の上に立つ早坂創は普段とまるで違う顔をしていた。大きく口を開け指示を出す。その様子はコンビニで見る時の早坂創と結びつかない別人だった。

 画面の中ではまだ太鼓台同士が激しくぶつかり合いを続けていた。いやな音を立てて峰泉太鼓台は2本目のかき棒を折られた。見物客からは再び悲鳴と歓声が混じる。これで峰泉太鼓台は攻撃力の半分が失われたことになる。極めて分が悪い。


 翌朝、自分の部屋の中をかき回して「恋唄う」のCDを探してみた。

 あのジャケットのケースに入っているはずだった。タンスのダンボールにはバンドを始めてから100枚以上買ったCDが詰め込まれていた。ジャケットの絵ははっきりと覚えているのにタイトルも歌手の名前も思い出せなかった。ようやく見つけた懐かしいあの絵のジャケットの中には「恋唄う」があの日のまま入っていた。

 CDの中には、あの頃の佐東春菜がいて、あの頃の自分もいた。想像していた以上に下手くそで笑えた。あんなに魅かれた佐東春菜の歌声も改めて聞いてみると、あの頃聞いた程の感動はなかった。それでも当時の日々の記憶を呼び覚ますには十分だった。自然と涙が頬をつたってこぼれ落ちた。

 宇喜多信人は、酒屋の跡継ぎとなり結婚して来年には子供が生まれるという。佐東春菜も結婚し子供までいて離婚までしている。みんな先へ進んでいるというのに、いったいおれはこの十数年何をしてきたんだろうか。



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