第1話
学校の
今回はそれなりに勉強したからそこそこ自信があるのだが、私の
「すごい!
「あ、本当だ。
どうやら私の順位は九位だったみたいだ。二百四十人中九位だしトップテン以内に入ったことは喜ばしいことだ。
「あれ? 奈々あんまり嬉しそうじゃないね」
「え、いや普通に嬉しいよ」
「そうかなぁ……まあいいや私も二十一位だったし」
「へぇ
「いやぁ奈々が教えてくれたおかげだよ。ありがとうね奈々」
「どういたしまして」
彼女は
高校に入って友達ができるかどうか不安になってた私に話かけてそれから仲良くなった。クラスの中では一番の友人だ。彼女とは趣味が合うとかではなく。
……てか私には趣味と呼べるようなものはないけど……。彼女とはガールズトークというか
「それにしても暑いねぇ」
「そりゃあ七月だしもうすぐ夏休みだからね夏も
「夏休み! そう夏休みだよ! 学生なら誰もが
「そうだね。休みが多いと
「ねぇ休み中とか
「いいねぇ。思い出に残るような夏休みにしよう!」
「うん!」
……にしてもさっき美紀も言ってたけど本当に暑いな。教室とかだと
図書室に着いた。さっさと本を返却しよう。
図書室の扉に入るとそこは
「うわっ暑! なにこの部屋ほとんどサウナ状態じゃん!」
「あ、奈々ちゃん来たのね。今日は確か貸し出し本の返却だったね。待ってたよ。あと、図書室では静かにお願いね」
「あ、すいません。てっきり冷房がきいてると思ってだから驚いて……」
「ああ〜エアコン、朝に壊れちゃったから」
「えっ!? 大丈夫なんですか!
「ああ大丈夫よ。こまめに水分採ってるし」
いや、見た感じ全然大丈夫そうには見えないんだけど図書室の
「まあ、体調には気をつけてください」
「ありがとうね。それより奈々ちゃんも気をつけてね。最近、
「あ、はい。気をつけます。ではお大事に」
「はーい。さようなら」
さて、本も返したし帰ろうかな。帰ってからなにしようかな。テストも終わったから勉強するっていうのもあれだしなあ
そんなことを思っていながら階段を下りていた。
すると……
「……あれ?」
どうしたんだろう。目が回る。それになんか
そういや、今日はいつもと比べて結構暑かったしなぁ……さっき図書室の司書さんも心配そうにしてたなぁあれって私も体調が悪そうにみえたからだったんだな。 ……やばっ、どんどん意識が遠のいていってる。このままじゃあ階段から落ちるな。しかもまだ下り始めたばっかだからこの高さはちょっとまずいかも。
ここで足がもつれて
あ、本当に落ちちゃった。なんとか死なないように祈るとするか。
「…………あれ?」
なんでだろう。階段から落ちたはずなのにその
ここで私の意識は途絶えた。
目を覚ますとそこは普段見る
自分の部屋ではないことだけはわかった。起き上がってみると白いカーテンらしきもので
「……よかった。死ななくて」
あんな風に死ぬのは
「よっと」
体を起こして軽く動かしてみるがとりあえず見た感じは大きな
「あら? 目が覚めたのね、よかったよかった。体調はもう大丈夫なの?熱中症だったみたいだけど……」
どうやら予想通りここは保健室のようだ普段あんまり来ないからあんまり印象に残ってないが
「……多分もう大丈夫です。ありがとうございます」
「いやあ、びっくりしたの階段登ろうとしたら生徒が二人一緒に倒れてたから
「ん? 二人?」
私は熱中症でたおれそうになったあたりを
そういえばあの時私の他に誰かが倒れていたような……
「そうよ。あなたの他にもう一人倒れてたのあなたを
そこもカーテンが閉まってたので開いてみる。そこには男子生徒がいた。
「あ、この人だ。確かに気絶する瞬間に 視界に写ってた。ん!? てか、この人なんか腕とかに
「ああ大丈夫よ。腕を
「いやいやいや、安心できないよこれ。だってつまり私のせいで彼は怪我したってことだよね。
「ああー! もううるせえなあ! ゆっくり寝れねえじゃん」
さっきは目をつぶっていたから気づかなかったけど顔立ちは整っていて正直言って見た目はかっこいい。
「あっ、起きたのね。怪我は大丈夫?」
保健室の先生が問う。
「ああ。おかげさまでちょっと痛む程度だから多分平気だ。ん? なに見てるんだ?」
「あ、あ、あの怪我大丈夫ですか?」
急に話をふられてしまったのでつい声が裏返ってしまった。
「ああ、さっきも言った通り大丈夫だ……うっ」
「いや今痛そうにしてたけど?」
「こら、まだ完治してるわけじゃないんだからあんまり動かさない。治るのが遅くなるよ」
「へいへい。わかったわかった」
なんというかすごいなこの人。
「じゃあそろそろ下校時間だから二人とも下校なさい」
外を見ると日が落ちてきてもう空も青からオレンジ色に染まっていた。家でやることなかったけどこうも時間が過ぎていく。
虚しいなぁ。やらなきゃいけないことはなかったけどせめてなんかしたかった。けどもう過ぎちゃったことだしな仕方がない。
「「はーい」」
と私たちが帰ろうとしたところに保健室の先生が
「あっちょっと待って、保健室に来たらこの名簿に名前書かないといけないきまりになっているから二人とも教えて」
「あ、そうなんですか。私は
「俺は
………あれ?
「えっ? もしかして二人とも同じ
「え!? そうなの? 知らなかった私と同じ名字の人がいるなんて!」
「ちょっと漢字わからないから二人とも教えて」
「えっと俺は早い遅いの早に花見の見るに耳へんにハ、ム心って書くやつ」
あ、名字同じじゃなかった。読みが同じなだけだったのか。どっちにしてもややこしいな。
「私は速い遅いの速いに海水の水に
「……えっとはやいおそいのはやいって二人とも言ってるけどどっちがどっちかわからないんだけど……」
「私の速いは
「俺はそれじゃない方のやつ」
「はい。わかった。てかややこしいな二人とも似たような名字でどっちかがどっちかわからなくなってくるよ」
確かにそうかもしれないな。自分が呼ぶ時は
「じゃあもういいですか? そろそろ帰りたいので」
「ああ。もう大丈夫。じゃあ今度こそさようなら。二人とも帰りは気をつけてね?」
「「さようなら」」
今度こそ帰してくれるそうだ。
……はぁ、やっと帰れるのかこれじゃあ家に着くのは六、七時ってところか夕飯も作らなきゃだし面倒くさいなあ。そんなこと思いながら私は家に帰る。
私は今早見君と一緒に下校している。
特に一緒に帰ろうとか言ったわけじゃなくてなんとなくその場の雰囲気で同じになってるだけだ。
「早見君ってこっちの方角なんだね」
「ああ、そうみたいだな」
……会話終了。
うう、なんか気まずい。私のせいで早見君は怪我させちゃったわけだから申し訳なく思う。とりあえず謝った方がいいよね。
「あ、あの早見君」
「ん? なんだ? 速水さん」
「あのさっきはごめんなさい。私のせいで怪我させちゃって早見君もそう思うでしょ?」
「あーいや、俺は特にそう思ってないぞ。最初は
「ほら、やっぱり私のせいじゃない! やっぱり申し訳ないよ」
「いや、本当にいいから。俺のエゴでやったことだから」
「いや、そういうのは関係ないから。だからお礼といっちゃあなんだけどなんでもするから」
早見君は少しうざそうにしているがそんなのはスルーだ。早見君が私を助けたのがエゴならこれも私のエゴ。助けてもらってお礼もなしなんて私の気がおさまらない。
「だからなんでもいいから言って」
早見君は少し考えているようだ。それが一、二分ほどだろうか。そのぐらいの時間が過ぎた。
「…………本当になんでもいいんだよな」
「え? ま、まあそうだけど……」
それを聞いた早見君は今日初めて見た笑みを浮かべてこう言った。
「じゃあ夏休み中の間ずっと俺のメイドになれ。」
「……………えっと……まじで?」
あまりにも予想外の返答に出た言葉がそれしか浮かばなかった。メイドになれって今言ったんだよね?
「ああまじだ。俺はお前に俺のメイドになれって言った」
「………えっと早見君ってもしかしてメイドが好きなの?」
「うーん………うん。大好き!」
まじですか。見た目はかっこいいのにそういうご趣味をお持ちになっていたのか。あ、でも見た目は関係ないか。
私のことを助けてくれたからそんなに悪い人ではないと思うんだけどなぁ。意外だ。どうしようか、私メイドとかしたことないからな。上手くやれるかどうか心配だからやりたくないけど断れないしな……仕方ないここは
「わかった。やる」
「まじか! やった! これからよろしくな。 」
早見君、なんかめっちゃ嬉しそうにしてる。なんというか喜んでくれるのはこったも嬉しいんだけど理由が理由なだけに複雑だ。
とりあえず今日学んだことはむやみに”なんでも”なんてことは言わないということだな。
「ふーんじゃあ夏休み中は当分会えないのね。仕方ないか用事じゃあ」
「うん。なんかごめんね期待とかさせちゃって……」
あれから私は家に帰って夕飯をとったところで美紀から電話がかかったのでとりあえず夏休み中はあまり遊べそうにないということを話した。
もちろん、メイドになるからとはとても言えるはずないので家の事情と言って
「ううん。いいのよそんなことで謝ることないから。奈々は色々人に謝りすぎなのよ。以外と相手にとってはそれほど大したことないと思うものだよ」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。
そういえば早見君も別にいいよとか言っていたな。でも実際怪我したわけだし大したことないと思うわけないか。
「第一そんなに謝ってたらうざがれるかもよ?」
「え、なんで? 別にうざがる理由とかなくない?」
「………まあ、あなたがそう思うならいいかな」
「ん? まあよくわからないからいいや。あ、そういやお盆あたりは時間が空いてるからその時にでも遊べるよ」
帰り道の途中で早見君と色々どんな風に するかを話した。
朝の九時から夕方の六時まで
あとお盆は早見君が用事の為そこだけは休みということになった。
奉仕する時間が八時間ってまるで
「そうなの。多分そのあたりは時間が空いているから大丈夫だよ」
「じゃあ、そのあたりにでも会おうか」
「そうだね。あ、そろそろ夕飯みたいだからそろそろ切るね」
「うん。じゃあね」
「うん。それじゃあ」
部屋の時計を見ると八時を過ぎていた。
そろそろお風呂にでも入ろうかなと思いお風呂を
……しかしさっきの美紀の言葉がちょっとひっかかるな。
相手に不快が感じないなんてことはないんだから不快に感じるなと思ったら謝るのは普通じゃないのか? むしろ謝らなかったほうがこいつ失礼なやつだなとか思われるかもしれないんだからそっちのほうがいいはずだと思うんだけど。
「………まあ、考えても仕方ないか。風呂に入って勉強でもしようかな。夏休みに入るから一学期の復習とかしたいしね」
さっき勉強とかなんだかなあとか言っていた気もするけど……まあいいや。誰にだって心変わりはするだろう。しかもあんなことがあったらなおさらだろう。
……そんなことより夏休み入ったら本当に
そしてあれから特に何事もなく時間が過ぎ、夏休みに突入するのであった。
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