◆第四章 Stage2(エントランスⅠ)

 扉の向こう側は階段になっていた。


 長い階段を登り終えると、最初に居たエントランスホールに似た空間に出た。

 全員が到達した後、扉が閉まる。ホールの中央にはタルタウロスがいる。

「おめでとう諸君、第一ステージクリアだ! ……残念ながら、全員無事とはいかなかったようだが、今は祝わせて貰うよ」

 レオが「くっ」と歯を食い縛ったが、タルタウロスは気にせず続ける。

「ではクリアしたお前たちに、幾つか連絡事項がある。まず一つ、この部屋にモンスターが現れることは決してない。特殊な結界を張ってあるからな。安全地帯ということだ。十分な休息を摂ってくれ。二つ、エントランスホールの見取り図は右側の壁画に記されている。確認しておくように。三つ、お前たちに渡した宝石が再び青色になるまで、次のダンジョンへの扉が開かれることはない。四つ、ホール周囲には十四の個室があるが、同一の部屋で二人以上の人間が眠ることを禁ずる。人間にはミノタウロスも含む。五つ、エントランスには利用期限がある。鐘が鳴ったら五分以内に全員エントランスホールから出なければならない。――連絡事項は以上だ」


「一つ良いか」とオフィウクスが訊ねる。

「ボスルームにいたゴーレム。まさか前回前々回の戦いからあのままってことはないだろうな」

「……フフフ、あれも儀式の一部さ。特別に魔法陣で転送されてくる。もっとも、奴らでさえ束になっても、完全体のミノタウロスには歯が立たないだろう。だからこその儀式だ」


 これで一層クリア。一日一層か。あと何層あるか分からない以上、無理にでも休んでおかないと持たないだろうな……。

「――最後に一言、アドヴァイス」

 タルタウロスは含みを持たせた声で言う。

「ミノタウロスにご用心」

 ……。――は?


「それは――どういう意味だ?」とレオが訊ねる。

「そのままの意味だ。忘れたとは言わせないぞ。お前たちの中には、ミノタウロスが混じっている。ミノタウロスは夜中、増大した魔力を使って完全な本来の姿に戻る。とすれば、やることは一つって理屈だ」

「待ちなさいよ! アンタさっき言ったじゃない! ここではモンスターが出てこないって!」とヴァルゴが叫ぶ。

「モンスターは出てこないさ。ダンジョンのモンスターはな。だが安心しろ。エントランス内には特殊な結界が張られているから、長い間、本来の姿に戻り続けることはできない。魔力が足りないからな。せいぜい一人を殺すのが限界だろう。では、――良い夜を」


 それきりタルタウロスは黙る。まさか――眠ったのか?

「嘘でしょ……? 冗談じゃないわよ……! 安心して眠れないじゃないッ……!」

 ヴァルゴの悲鳴は皆の本音を代弁したものだ。明日も戦いがあるというのに、安心して身を休めることすら許されない……。

 兵士として、覚悟していなかったと言えば嘘になる。だが――問題なのは、この中の誰かが下手人だということ。隣にいる誰か、前にいる誰か、後ろにいる誰か――どこかの誰かが、化物なのだ……。

「取り敢えず……見取り図を確認しよう」

 レオの一言を合図に、皆で見取り図の前に移動した。


 エントランスは巨大な円の形をしている。個室が計十四。トイレは共同で多数設けられている。個室へ通じる道も、トイレへ通じる道も、迷路のように入り組んでいる。全ての道はエントランスの中央、つまり今俺たちのいる場所に通じている。


「部屋と部屋の間を移動するには、迷路のようになった道を行くしかない」レオが地図をなぞりながら言う。

「だから?」とヴァルゴが訊ねる。

「寝込みを襲われたら、助けられない」


 悲鳴を聞いてから移動しても、迷路に阻まれ間に合わないだろう。


「でもそれはミノタウロスも同じでしょ? 追いつめるチャンスじゃない」とテールが言うが――。

「そうは思わないな」とコーンが否定する。

「何でよ?」

「ここは結構音が響く。悲鳴は迷路の壁を反響して、発信源を曖昧にするだろうね」

「それだけじゃない」とオフィウクス。「ミノタウロスは既に二回、この戦争に勝利している。迷路の構造の把握など、とっくに済ませているに違いない」

「じゃあ……この中の誰か一人確実に、今夜殺されるってこと?」ヴァルゴが震え声で問う。

「確証はない」とレオ。「だが――」

「そう思った方が賢明だ」レオの言葉をオフィウクスが勝手に補足する。


 状況の整理は大体終わってしまった。俺たちは取り敢えず、身体を休めることに専念することにした。何をしようにも戦い疲れていたのだ。

 薪と火打石が用意されていたので、暖を取るのは問題ない。着替えも用意してあり、水道と浴場も整備されていたので、汗を流してから夕食にすることにした。

 水道はあったので水には困らなかったが、酒類はない。調味料も塩だけだ。


 夕食は既に確保しておいたリザードの肉を焼くことにする。メンバーの中には、初めてリザードの肉を喰う奴もいた。基本的に荒事をしがちな人間しか口にしない食材だ。ただでさえ大味なのに味が落ちるのが早いので、市場に流通することは極稀だ。兎の肉を売った方がメリットが大きい。

「そろそろかな……いただきます」

 リザードの肉に齧り付く。このお世辞にも美味いと言えない味わい……まさにリザードの肉だ。

 ジェミニやコーンたちも、俺たちの真似をして肉を喰う。表情は芳しくない。そんな中――。

「美味いッ! 命の味だッ!」

 エリーだけ美味しそうに食べていた。美味の閾値が低いのか、もともと馬鹿舌なのか……。

「単細胞め」忌々しげにオフィウクスが呟く。非常に不味そうに喰っている。

 だが他に食料はないし、力が尽くのは間違いない。

 アリエスはじっと肉を見つめている。


「そろそろ良いんじゃないか?」

「え? もうですか?」

「ちょっと待って。しっかり焼いた方が良いわよ。食中毒なんて起こしたらどうする気?」


 俺は焼き過ぎない方が良いと思ったのだが、テールはしっかり焼けと言う。アリエスはどうすれば良いのかとまごまごしていた。

 皆完食する。


「――さて、食事も終わったが……どうする?」食後少し間を置いてから、レオが切り出す。

「どうするって?」エリーはさぞ肉が美味かったのか緊張感のない顔をしている。

「今夜のことだ」


 ――今夜、どう生き切るか。そういう話題だ。

「ミノタウロスは十中八九動く。それをどう防ぐか……何か案はあるか?」

 ヴァルゴが手を挙げる。


「はい、ヴァルゴ」

「誰かが見張る……とかは?」

「見張るって……どこで?」

「ここら辺で」


 ヴァルゴが言っているのは、エントランスで誰かが見張っていれば良い、ということだろう。


「駄目だ。見取り図を見れば分かるけど、この中央を通らなくても、部屋と部屋の間を移動することは可能なんだ。だから意味が無い」

「じゃあ……誰かの部屋の前で見張るのは?」

「可能……ではあるけれど……」


 一人を見張っても何にもならない、とはレオは言わない。

「一つ良いか」

 小さな手が挙がる。ビスケスだった。


「はい、ビスケス」

「妾は占い師じゃ」


 静寂。


「だから……?」コーンが訊ねる。

「ミノタウロスが誰だかわかるかも知れぬ」


 場に緊張が走る。


「どうやって!?」とヴァルゴ。

「言ったであろう。妾は占い師じゃ」

「占いで? でも一割しか当たらないんだろ?」とジェミニ。

「そ、それはそうじゃが……」

「だが逆の事象に関しては、九割の的中率を誇るわけだ」とオフィウクスが補足する。

「つまりどういうこと?」とエリー。

「もし、ビスケスが俺を占って、『コズミキコニスはミノタウロスである』って結果が出たら、俺は一割の確率でミノタウロスで、九割の確率で人間だってことだ」


 一割しか中らないのならば、正反対のことに関しては九割当たるという意味だ。


「そっか、あんたの名前、コズミキコニスだっけ……」テールが酷いことを言う。

「呼び難いからコニーで良い?」

「コニー!?」


 滅多に名前なんて呼ばない癖に……。


「話を戻して良いか?」とジェミニ。「じゃあ、こいつの占いは九割の確率で中るってことで良いのか?」

「こいつではない。ビスケスじゃ」ビスケスが訂正する。

「二つ問題がある。一つ、そもそもこいつの占いは一割とは言え中るのか?」


 オフィウクスの言うとおり、初めから一割も中らないのでは意味が無い。


「二つ目は?」とアリエスが問う。

「言わなければ分からないのか?」とオフィウクス。


 つまり――ビスケス自体がミノタウロスだったら元も子も無い、ということ。

「一つ目の問題は、実際に占って貰えば分かるんじゃないのか?」と提案すると、ビスケスは「良かろう」と言って振り子を取り出した。俺とアリエスを占った時と同じ前置きをしてから、オフィウクスを占う。


「おいおい、俺かよ……」

「見える……見えるぞ……。足だ……両足が見える……五本の指が見える。汝の足の指は、五本あるな……」


 全員沈黙。呆れてものも言えないとはこのことだ。

 仕方なく俺がツッコミを入れる。


「当たり前じゃ――」

「何故分かった」


 オフィウクスは迫真の顔で言う。意外だ。こいつがノリツッコミをするなんて。

「嫌がらせならその辺にしとけよ。キリがない」

 言うと、こちらを一睨みしてから、黙ったまま靴と靴下を脱ぎ、こちら側へ指を向ける。何のつもりなのか――。

「あ……!」真っ先に声を上げたのはライブラだった。何かと思い、オフィウクスの指を注視すると――六本あった。足の指が六本。確かに。何度数えても六本。両足とも六本だ。彫刻家が寝惚けて彫った石像の足なんじゃないかってくらいに綺麗に六本指だった。


「なんで……!?」

「生まれつきだ」

「そ、それもあるけど! なんで分かったんだよ、これ!」

「いや、妾は『五本』と占ったのであって、分かったとかそういうことでは……」

「だがこれではっきりした。そいつの占いは信用できる。俺はここに来て、風呂以外一度も靴と靴下を脱いでいない。そいつが透視でもできない限り、俺が多指症だと知ることは不可能だった」


 オフィウクスは靴下と靴を履きながら言う。

 確かに不可能だ。浴場を共に使った男子勢は一人としてオフィウクスの多指症に気づかなかった。それに気づいた時点で、占いは本物だ。九割一割と絶対ではないけれど、少なくとも、占いの力は本物だ。


「全員を占うことはできないのか?」とオフィウクスがビスケスに問う。

「一人だけじゃ。占いで何か『一つの決まったこと』を知りたい場合、魔力の高まる深夜に、一人きりしか占えぬ。妾の魔力の限界じゃ」


 つまり、一人一晩か……。


「となると、また別の問題が出てくるな」

「別の問題って?」

「誰を占うかだ」エリーの問いにオフィウクスが答える。

「それはつまり……この中で一番疑わしいのは誰か、という意味か?」とレオ。また場の空気が重くなる。

「そういうことだ。色々考えてはみたが、恐らく所作だけでミノタウロスを探し出すのはほぼ不可能だ」

「何故そう言える?」

「奴は既に二回この戦争に勝利している。イニシアチブは完全に向こうに握られていると言って良い。経験の差は大きいからな。実際、ここまで来て具体的と言えるほど怪しい奴はいなかった」


 あくまでオフィウクス視点の話ということで、一つ。


「――となれば、この占いは大きな指針になる。占う相手は慎重に選ぶべきだ」

「慎重に、ってどうやって?」アリエスが問う。そこが問題だ。

「……不本意だが、多数決しかないな」

「多数決って、そんなので決めて良いのかい?」とコーン。

「仕方がない。ミノタウロスは人間と見分けがつかない。ならもう『疑わしい』という直感以外に頼れるものは、今のところない。……どうかな、『リーダー』」


 リーダー、の部分を強調してレオに問う。レオは暫し沈思黙考し、「方法はどうする?」と答えた。

「スコーピオンのナイフと壺を使おう」

 オフィウクスはエントランスにあった大小の壺を計二つ持ってくる。


「まずこの小さな壺を割る。十三分割だ。一人一欠片。その陶片オストラコンにナイフを使って自分が最もミノタウロスだと疑っている一人の名を刻み、もう一つの大きな壺の中に入れる。識字能力のない者は、代筆を認める。集めた陶片をビスケスだけが確認し、最も刻まれた名の多い者を占う。投票が同数だった場合、ビスケスが独断で同率一位のどちらかを選択する。投票の公平性は後にビスケスが壺を組み立て破片が一致するか否かで図る」

「それって――」


 陶片追放オストラキスモスだ。


「ビスケスだけって……誰に投票したかすぐ調べないの?」とヴァルゴが問う。

「仮に――貴様らの勘が獣並に鋭かったとして、行き成り大当たりになったとしたら、ミノタウロスとしては寝込みを一人ずつ襲うか、全員揃ったここで片をつけるか――選り取りみどりだな」


 開票はビスケスのみが行い、翌日陶片と共に公開されることになった。


「待った。そもそも話、そいつが占える保障なんてないんじゃないのか?」とサジが言う。

「妾を疑うのか?」

「そうじゃない。仮にだ。仮に俺がミノタウロスだったら、そんなの見す見す見過ごさねぇよ、って話だ」


 確かに……ミノタウロスにとって、この状況は不利に働く筈。なら黙ってみている訳がない。

「そのことについて一つ、いや二つ良いかい?」

 レオが皆に言う。


「サジの言うとおり、ミノタウロスはこの占いを阻止しようとする。だから、二つ対策を取りたいと思う」

「具体的には?」とサジ。

「一つ。今夜の部屋割りを、くじ引きで決めないか?」


 全十四の部屋にそれぞれ番号を振る。陶片でくじを作り、引いたくじに書かれた数字を自室とし、一人一人順番に部屋に戻る。そうすることで誰が誰の部屋にいるのか分からなくさせる。幸い文字に対応する数字を理解できない奴はいなかったので作戦は可能だった。

「もう一つ、ビスケスの部屋に見張りをつけよう。交代で二人ずつ」

 ビスケスの部屋を見張ることで、外部からの殺人者――つまりミノタウロスから護ろう、という作戦だ。


「良いけどよ。誰がやるんだ? 寝ずの番だろ? 俺は嫌だぜ」サジはあっさり拒否する。

「構わない。あくまで自己申告だ。僕以外に三人、誰かいないか?」

「じゃあ、俺も手伝う」


 俺は手を挙げた。俺には何の能力も無い。だがビスケスにはある。この状況で失う訳にはいかない戦力なのだ。ならばなんとしても、護らなくてはならない。睡眠を削られるのは辛いが、仕方が無い。


「ありがとう。他には――」

「やるよ、ボク」


 エリーが手を挙げる。

「私もやろう」

 ライブラも手を挙げた。

「ありがとう、二人とも。……しかし見事に前衛だけだな」

 見張りをする以上、腕っ節に自信のあるものになるのは必然だろう。

 更にビスケスは占いの結果が出次第、見張りに結果を報告する義務を負った。ミノタウロスが判明すれば当然、即座に討伐体を編成する必要性が生まれるからだ。

「シフトは後で決めるとして……もう一つ決めなければならないことがある」

 レオは真剣な眼差しで述べる。

「仮にビスケスの部屋の前で番をしている最中に、他の部屋で悲鳴があがったとして、どう行動するかだ」

 場が静まる。

「それは――ビスケス以外が死に掛けたとして、助けるか否かって問題だよな?」

 サジの問いにレオは肯く。


「見殺しにすべきだ」真っ先に言ったのはオフィウクスだった。

「よくもまぁ即答できるな」と皮肉げにサジ。

「当然だ。優先順位が違う」

「ちょっと待って? それはあんまりじゃない? もしかしたら助かるかも――」とヴァルゴが言うが――。

「無理だな。部屋と部屋がどれだけ離れてると思う? それにこの迷路だ。悲鳴だって反響する。どうしようもない。お前が死にたくないだけだろ?」

「そうよ! 悪い!?」とヴァルゴが逆ギレしたが、話の流れは変わらなかった。このエントランスホールは広い。ミノタウロスがどれほどの強さかは知らないが、幽閉せざるを得ないほどの強さなら、人間一人が太刀打ちできる訳がない。――つまり、襲われたら、それで終わりだ。

「分かった。じゃあ……ビスケスの警護を優先しよう」

 言い方こそ考えていたが、内容は「見殺しにする」ということだった。


「決まりだな」とオフィウクス。

「待った。聴きたいことがある」一人手を挙げたのはライブラだった。

「今度は何だ?」

「仮に占いでミノタウロスを見つけたとして――どうするつもりだ?」

「当然殺す」


 あっさり言ってのける。


「待て。的中率は、百パーセントではないのだろう?」

「あぁ、九割だ。十分だろう?」

「間違ったらどうなる!?」

「――どうにもならないさ。まぁ……ビスケスがミノタウロスである可能性を疑う必要はあるだろうがな」

「それを……誰がやる?」

「俺がやろう」オフィウクスは処刑人を進んで引き受ける。

「アンタ本気? できるの?」とテールが言うも――。

「仕方のないことだ。だが流石に一対一は分が悪い。もう一人協力者が欲しいところだが……」

「僕がやろう」レオが手を挙げる。「まがりなりにもリーダーだ」

「私も」スコーピオンが手を挙げる。「協力しよう。『専門』だ」

「ボクも」エリーが手を挙げる。「手伝ってあげるよ」


 他に手を挙げる者はいなかった。四人がミノタウロスを見つけた際の処刑人として働くことになった。

「待って。一つ良い?」

 次に手を挙げたのはテールだった。


「何だ?」

「この際だから疑念は払拭しておきたいの。アンタ、パズルフロアの謎どうやって解いたのよ?」とオフィウクスに言う。

「その話、今じゃないと駄目か?」

「実はアンタがミノタウロスで特殊な手段で開けたのかも知れないじゃない」

「開けるメリットが無いだろう」

「あるわ。もしあそこで扉が開かなかったら、日が落ちる前に殺し合いになっていたかも知れない。流石に十二人もいたら出し抜くのは難しい、そう考えたのかも」

「やれやれ。特殊な手段など使っていないことだけは証明する必要があるみたいだな」


 オフィウクスはジェミニからパピルスと羽根ペンを受け取り、そこに大きく円を描いた。

「良いか? 一回しか説明しないから良く聴けよ?」

 皆でパピルスを覗き込む。

「ここに円がある。で、この円上に点を一つ置く。この時、円の中に円という図形が一つあることになる」

 もうこの時点で着いていけない者が数名居たが、オフィウクスはそのまま続ける。

「続いて、円上にもう一つ別の点を置く。そして、円上の点を直線で結ぶ。すると、円が二つの図形に分割される。これをもう一度繰り返す。三つの点を全て直線で結ぶと、四つに分割される。もう一度。四つの点で八つに分割される。更にもう一度。五つの点で十六に分割される。最後に、六つの点を全て直線で結ぶ。――数えてみろ」

 パピルスをこちらへ渡す。皆で数える。

「――え? 三十一?」

 皆でもう一度数える。三十一だ。円は三十一の図形に分割されている。


「分かったか? 答えは三十一だ」

「でも何でこんな……ヒントも無しに……」テールがさも不思議そうに問う。

「ヒントならあった。数字は円に囲まれていた」


 確かに囲まれていたが、たったそれだけのことでこの解答に辿り着いたのか……。


「オフィウクス、疑ってすまない。まさかこんなに複雑な問題だったとは……時間がかかってもおかしくない」とレオが謝罪した。

「これで満足か?」オフィウクスはテールを見て言う。

「えぇ」

「では――多数決を始める。皆、何か言っておくべきこと、聴いておくべきことはないか?」

「良いか?」とジェミニ。「今更だけど、自分の体験を喋らせるって言うのは駄目か? ミノタウロスは、九歳以降外を出てないんだろ? だったら今の外の事だって、何も知らないんじゃ――」


 しかしオフィウクスは首を横に振る。


「ミノタウロスは計算では二十一年はこの穴倉で生きていることになる。それで二度の戦争に生き残ってる。言ったろう、襤褸ぼろを出すとは思えない。それに何を基準にするつもりだ? 俺たちは皆遠方から集められたようだし、聴いてはいないが出身地も一致してはいないだろう。識字能力のない奴だっている。外の事と言っても、ろくすっぽ最近の情勢を知らない奴もいるだろう」

「だが話さないよりはマシじゃないのか?」レオが言う。皆は顔を見合わせ、暫し自身のことを語ってみることになった。

「じゃ、言い出したお前からだ」オフィウクスがけしかけると、ジェミニは立ち上がって自己紹介を改めてし始めた。

「僕はジェミニ。その……劇作家だ。年は十七。取り敢えず、十五くらいの話からしようと思う。親戚に気紛れで劇場に連れて行かれてね。初めて見た劇は『オイディプス王』。すごく泣いたよ。抗えない運命とか、重過ぎる責任とか……人生について考えさせられた。三大詩人の中では、やっぱりソポクレスが好きだね。アイスキュロスは普通。エウリピデスは結末が強引なのが多くて、ちょっとね……。十六の頃から劇場に出入りさせて貰って、雑用やってる。少しでも劇について知りたくてね。でも……今のところ鳴かず飛ばず。脚本を書いても、なかなか採用して貰えない。そんな感じだよ……」

 ジェミニの自己紹介が終わった。


「どう……疑い、晴れた?」

「はい」ヴァルゴが手を挙げる。

「知らない人の話ばっかでつまんない」

「え……」ジェミニの顔が引き攣る。

「そ、ソポクレスくらい聴いたことあるだろ? 『オイディプス王』の」


 首を横に振る。ジェミニは唖然とする。皆の反応を見る限り、多分、ジェミニの話を理解できたのはレオとオフィウクス、コーン、テール、ライブラくらいなのではないか……。俺も劇は詳しくない。作り話かどうか、判断するのは難しい。

「どうする? 続けるか?」オフィウクスが皮肉げに問う。

 結局、あまり意味が無いのでは、と判断されそれきりになった。

 多数決の時間になる。

 テールが壺を割る役になった。


「まさか十三分割もできないほど、魔力のコントロールが下手なんてことはないよな?」オフィウクスが嗤いながら言う。

「うっさいわね! そのくらいできるわよ! 集中させなさい!」


 テールが杖で壺に軽く触れる。燐光が閃き、壺が割れた。数える。十三個あった。全員に陶片を配った後、スコーピオンが右手側の人間にナイフを回す。始めはレオだ。レオはかなり時間をかけてから名前を刻んだ。周りに見えないようにして壺に入れる。次は俺だった。俺は――悩んだ末、ヴァルゴの名前を刻んだ。これまでの言動から考えれば、オフィウクスとサジは協調性がなく、非協力的で怪しい。だがあまりにも目立ち過ぎていてミノタウロスの行動にそぐわないように思える。スコーピオンも怪しいと思ったが、ミノタウロスが「暗殺者」を名乗るとは思えない。そんな中ヴァルゴは、怯えるフリをしながら状況をかき回していることが多いように感じたのだ。ヒステリックな叫びが多いのは、被害者であることをアピールして人間のフリをしているのではないか……。

 こんな状況に追いやられた以上、自然な反応なのかも知れない。だが「弱いフリ」が一種の隠れ蓑になるのも事実だ。だからはっきりさせておきたい。ヴァルゴが被害者なのか――加害者なのか。

 壺に入れ、ナイフを右にいるアリエスに回す。それを繰り返す。

 代筆が必要なのはエリーとヴァルゴだけだったので、二人の分は近くにいた奴が代筆した。

 全ての陶片が壺に入った。


「では、今夜自室にてこの陶片を確認し、もっとも多く名を刻まれた者を占うことにする」

「じゃあ次だ。部屋割りを決めるぞ」

「随分気が早いじゃないか」とサジ。

「俺はもう休むつもりだ。お前らも夜更かしなんてするんじゃないぞ」

「盗賊に言う台詞じゃないぜ」とサジは軽口を叩いた。


 壺を割り、くじを作って皆で引く。俺は『12』の部屋になった。

「確かに全員引いたな」

 オフィウクスは最後に一欠片くじが残ったのを確認した後、自室に去った。

 焚き火を中心に、十二人が残される。鉢合わせにならないようにするため、自室に戻る際は他人と間隔を開ける取り決めがされていた。

「あ、そうだ」

 テールが鞄から薬草を取り出す。

「皆、これの使い方知ってる?」

 テールの掌には緑と赤の薬草が握られている。


「傷口に当てるんだろう?」

「薬草はね。でもこれ、毒消し草や気付け草も混じってるのよ。だから見分け方教えてあげる」


 皆がテールの周りに集まり、手元を覗き込む。

「良い? このギザギザしてない緑の葉っぱが薬草ね。傷口に直接当てて使うわ。次にこの二つ。どっちも葉がギザギザでしょ? 良く憶えて。赤が毒消し。毒に効くの。で、緑が気付け。麻痺や気絶、眠った時に効く。同じ種類の植物で、味や臭いは一緒。色しか違わないの」

 確かにただの色違いとしか思えないほど同じに見える。


「赤が毒消し、緑が気付け。OK?」

「OK」


 皆肯く。薬草に暗い者も大体理解したようだ。

「良し。後でオフィウクスにも伝えに行こう」

 レオの発言に、皆なんとも言えない反応をする。


「どうしたんだ皆?」

「あのね、オフィウクスは賢者なの。このくらいのこと当然知ってるに決まってるじゃない」

「……なら何故僕たちに教えてくれなかったんだ?」

「協力する気がないのよ」


 テールの言葉は皆の不信感を集約したものだった。

「どうなってしまうんでしょう、私たち……」

 ポツリと漏らしたのはアリエスだった。


「――脱出するさ、絶対。何が何でも」俺は無意識に呟く。

「でも……この中の誰かは今夜――」


 死ぬ。それは避けられないだろう。

「……。あーもう、やめやめ。止めようよ。そういうの」

 言ってコーンが立ち上がる。


「ずっと思ってたんだ。皆暗過ぎるよ。無理もないけど、もっとなんて言うか、元気出して行こうよ」

「あのな、無理言うなよ」両手を後頭部に組みながら、サジは投げ槍に言う。「生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぜ? 元気になる方がイカレてるぜ」

「だからこそ、だよ。なんか楽しいことしようよ」

「呑気じゃのう……」


 年少のビスケスまで明らかに呆れている……。


「……あのさ、今日が最後の一日だと思って、元気良く過ごすのも、一つの方法じゃないかな?」

「そんな、縁起でもない――」


 ライブラは突っかかったが、俺にはコーンの言い分も分かる気がした。


「今夜殺されてしまうのが誰だったとしても、最後の夜が辛気臭いのは嫌だと思う。違う?」

「それは――」そうかも知れない。

「……良いんじゃないか? 僕は賛成だ」


 レオは肯定的な反応をする。

「悪いが私は戻るよ」

 スコーピオンは立ち上がり、自室に去る。

「……どうかな?」と再びコーンが問う。

 特に強く反対する者はいなかった。


「じゃ、一曲弾かせて頂きます。――ヴァルゴ」

「何?」

「良かったら踊らないか?」

「幾らで?」

「後払いで」

「えー」

「良いじゃないか、皆も見たがってる。ね?」

「そーだそーだ! ハープだけじゃつまんねーぞ!」とサジ。

「そ、そうだね……」とレオ。

「ま、まぁ……こういう舞台に華は付き物だしな」とジェミニ。

「頑張れ」と俺。

「し、仕方ないわね……」


 男五人総出で女一人をやる気にさせ、やっとこさライヴが始まった。

 コーンが竪琴を演奏しながら歌う。コーンの歌と曲に合わせ、ヴァルゴが踊る。

 コーンの歌や演奏は先の戦いで聞いていたから見事なものだと知っていたが、ヴァルゴの踊りも素晴らしいものだった。独楽のように回転し、しなる柳のように体を波立たせる。更に驚いたのは踊っている時のヴァルゴが笑顔だったことだ。営業スマイルという奴なのかも知れないが、こんな場所でなければもっと明るい人間なのかも知れない。だとすれば先の投票では悪いことをしてしまった……。

 やがて演奏が終わる。皆が拍手し、サジが派手で煩い口笛を吹き鳴らす。

「アンコール! アンコール!」

 サジがやかましくはやす。皆も少しずつ手拍子に加わっていく。


「アンコール! アンコー――」

うるさいぞッ! ド腐れ脳味噌共ッ!」


 オフィウクスがいつの間にかエントランスに現れていた。


「お前、寝たんじゃなかったのか?」

「部屋を調べていたんだ。個室の防音は万全だった。戸を開けた途端、貴様らの喧しい声が聞こえて来たからな!」


 怒りをあらわにしながらオフィウクスは言う。


「なら戸を閉めれば良いじゃねーか」とサジ。

「明日があることを忘れているのか? さっさと寝ろ」


 オフィウクスは去っていた。

 オフィウクスが水を差した、というのもあるが、明日があるのもまた事実なので、その場でライヴはお開きになった。俺、レオ、ライブラ、エリーの見張りとビスケス以外の五人が順次部屋に戻って行く。最初にヴァルゴ、テール、コーン、ジェミニ、最後にアリエスだった。

「コズミキコニスくん、見張り、頑張ってください。皆さんも」


 そう言って去ったアリエスを最後に、エントランスには五人が残される。

「じゃ、シフトに関してだが……僕とコニーが前半、ライブラとエリーが後半ということで良いかな?」

 レオまで俺をコニーと呼び始めた。


「私は構わない」

「ボクもそれで」

「時間は焚き火に使った薪の量で決めよう。時間になったら起こしに行く。二人の部屋番号を教えてくれ」

「私は『3』だ」

「ボクは『8』」

「ビスケスの部屋は『13』だ。有事の際はここに来るように」


 番号を書き込んだ見取り図の壁画を指しながら、レオは説明する。作戦会議が終わり、実際に部屋の見張りをする段になった。

「そうじゃ。一つ言い忘れておった」

 部屋に入る段階になってビスケスが言う。


「占いの最中は集中力が必要じゃ。魔力を集める場もな。だから『絶対に中を覗くでない』ぞ」

「絶対?」鸚鵡返しにする。

「『絶対』じゃ」

「何かあった場合、どうするんだ?」とレオが問うが――。

「そうならないよう未然に防ぐのがお主らの役目じゃろう」

「……それはそうだが、分かった。だがその前に部屋に異常がないか、確認だけして良いか?」


 三人で部屋に入り、妙な罠や仕掛けがないか調べる。出入り口が一つしかないか否かも。結果、罠も仕掛けもない。出入り口も一つだけの俺たちが目覚めた部屋と全く同じ造りの部屋だった。

 ビスケスを残し、俺たちは外へ出て見張りをする。持ってきた松明を使って焚き火をし、暖を取る。

 室内から妙な呪文のようなものが聞こえ始めたが、当然無視する。気になるけど無視する。


「レオ、ちょっと良いか?」

「何?」

「もし……もしだぜ? ビスケスがミノタウロスだったら、どうするつもりなんだ?」


 レオは真っ直ぐ通路の深奥を見つめ、答える。


「分からない。だが今夜、はっきりすると思う」

「何故?」

「僕たちがこうやって見張っていれば、仮にミノタウロスだとしても外出できない筈だ。それで誰かが殺された場合、ビスケスはミノタウロスじゃないって論法になる」


 なるほど。だが――。

「三つ良いか? 一つ目だけど、ミノタウロスしか使えない通路とかあったら、どうするんだ?」

 個室は全てエントランスホールの外周に面している。そこに隠し通路があってミノタウロスが自由に行き来できたら見張りの意味がない。


「それはないと思う」

「根拠は?」

「フェアじゃないからだ」

「フェアって……」


 そんなスポーツじゃあるまいし。


「コニー、僕は皆が少し勘違いをしているように思えるんだ」

「勘違いって?」

「サジは王が僕たちを見殺しにするつもりだと言っていた。でも僕は違うと思う」


 レオの目は本気だ。無難な勇気付けだとか、そんなことではない。


「……。でも現に――」

「だから、僕はフェアだと思うんだ。要するに、どっちに有利でもないんだよ。一見、僕たちは非常に理不尽な境遇を強いられているように見える。無理やり連れて来られたんだ。そう思っても仕方が無い。でも儀式そのものは、フェアにできてるんじゃないか、って思うんだ」

「つまり――この戦争、勝てるようになってる、と?」

「そう。だからミノタウロスにだけ使える通路はない。ミノタウロスに有利過ぎる」

「……なるほど。そう考えるか。じゃあ二つ目。隠し通路がないという前提だ。当然、ミノタウロスはビスケスに護衛がついていることを知っている。なら逆にビスケスに疑いを向けるために、今夜は何もしないんじゃないのか?」

「そうかも知れない」

「なら――」

「だが……果たしてビスケスをそこまでの脅威と感じるだろうか。そういう不安もある」

「何でだ……? 今のところ、ミノタウロスを確実に見つけられる方法だぜ?」

「コニー、良いか。『ミノタウロスが一晩に殺せるのは一人』、『ビスケスが一晩に占えるのも一人』、『ビスケスがアリアドネでもミノタウロスでもなく』、『ビスケスの占いが百パーセント信頼できる』として、僕たちの勝率はどれくらいだと思う?」

「え……? えーと……」

「一割弱といったところだ」

「一割……」


 まぁ、十二人の中から一人を見つけるのだから、そんなものだろう。

「でもそれは向こうも同じだ。ミノタウロスの勝率も一割弱なんだ。複数人から一人を探し出すのは一緒だからね。でも、もしミノタウロスが深夜の殺戮さつりくを放棄したら、勝率は零になるんだ。これは当然、罠による突然死や、モンスターとの戦いにおける殉職じゅんしょくを度外視した論理だけどね……」

 ミノタウロスが殺戮を放棄すれば、勝利方法は『起こるかどうかも分からない偶然』に左右されてしまう。だが殺戮を行使するなら、低確率ではあるが『起こり得る偶然』で勝負することができる。ならば――。


「攻めて来る、と?」

「向こうが慎重ならこの限りではないだろう。だがオフィウクスの言うとおり、向こうは既に二回勝ってる。その勝負強さから察するに、ここで引くとは思えない」


 ビスケスが完全な白と判明する上、自分の正体が暴かれるリスクを犯してでも、攻めて来る。……だとしたら、豪胆な敵だ。理論上、ベストとは言え肝が冷える行いだ。


「ってことは、逆の論法で俺たちはビスケスを失ったら勝ち目はなくなる、ってことか……」

「零、とは言わないが……致命的だ」

「三つ目、良いか?」実はこれが一番聞きたかったことだ。

「何だ?」

「……ミノタウロスは、その、『二本足で標的の目の前に立って、なんらかの凶器を使って、殺人を行う』、ってことで良いんだよな?」

「……? どういう意味だ?」

「だから……殺害方法の話だよ。つまり、例えばさ、棍棒でブン殴るとか、首を絞め殺すとか、そういう殺害方法が行われる、って話で良いんだよな?」

「元からそのつもりだが」

「『呪殺』……とか、できたりしないよな?」


 黙ったまま二人で背後の戸を見る。中にはビスケスがいる。だが――呪殺ならこの中からでも殺人は可能だろう。

「いや――タルタウロスの話を聞いて、てっきり乱暴者だとばかり思っていたから……物理的な手段を用いるものだと、つい……」

 二人でもう一度背後の戸を見る。戸の中から妙な呪文が聞こえ続けている……。


「……どうする?」レオに尋ねる。

「ど、どうするというのは?」

「――ビスケスは言ったぜ、『絶対に中を覗くな』と」

「二度も言ってたな」

「それって――呪殺をバレないようにするためじゃないのか?」

「じゃあ、占い云々は――?」

「オフィウクスの件があるから、嘘八百並べた訳じゃないだろう。占いはできるんだ。でも今ここで占いをしている保障は無い」


 呪文の内容は不明だ。意味が分からない文言だということしか分からない。

 戸に手を伸ばしてみる。

「ま、待て!」

 レオに止められる。


「何だ?」

「もしビスケスが本当に占い師だとしたらどうする? 絶対開けるなと言われたんだぞ!?」

「だが占い師じゃなかったとしたら、千載一遇のチャンスだ。ここで仕留めれば勝ちだろう?」

「射幸心を煽るな! こういうのは従うに限るんだ! オルフェウスの神話を知っているだろう? 約束を破ったらどうなった?」


 確かに、レオの言い分にも一理ある。

 でも確かめたい。それが本音だ。


「……ちょっとだけ隙間を開けるのは?」

「ただ覗きたいだけなんじゃないのか、お前!?」


 失敬な……。


「でも実際、どっちの可能性も有り得る。そしてこの扉を開けない限り、その真偽は判明しない……つまり今、この部屋には二つの可能性が同時に存在し得ることに……」

「何を哲学的なことを言っている。明日の朝になれば分かる。呪殺なら外傷が恐らくない筈。こういう言い方はしたくないが、遺体の損傷で判別は可能――」

「待て」


 レオを制す。


「何だ、人が話をしている時に――」

「呪文が止んだ」


 ビスケスの部屋から間断なく漏れ続けていた呪文が聞こえなくなったのだ。

 二人で顔を見合わせる。騒がしくし過ぎたか……? そんなことを考えていると――戸が、ゆっくりと、開いていく……。

 念のため、剣の柄に手を置く。

 中から現れたのは――ビスケスだった。普通のビスケスだ。頭に牛の角が生えてはいない。人間のビスケスは言う。


「占いの結果が出た」

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