第3話 本当のこと

彼女が欲しいから、モテるために主人公になろう!

という思いつきで主人公を目指そうと決めたのだが、宮本の恋愛事情をサポートすることになり、冷静に考えるとなんだかよく分からないなと思った。

が、しかし、一旦請け負ったし、人助けをすることは主人公らしい!と思ったので、頑張ろう。

と僕は決めた。

「とりあえず、優衣に会ってみるよ」

最近は、宮本と優衣2人でデートをしていたり、僕は一般で受けたので受験勉強をしていたので、特に優衣に会っていなかった。

宮本と優衣はともに優等生だったので、指定校推薦枠にて中学3年時はそれなりに余裕があった。

「ところで、来るか? 宮本」

宮本に問うと宮本は神妙に頷いた。

なんだか、少し認められたような気がして嬉しかった。

宮本と同じお馴染みのカフェで待ち合わせにした。

「ね、久しぶり。ゆーくん」

ニコッと見ていて、心が落ち着くような表情だ。

肩甲骨あたりくらいまでのびた僕から見ると少し長い髪、清潔なシャンプーの香りが淡く香った。

宮本には悪いけど、やっぱり優衣とこうやってゆっくりと話すのは楽しいな。

そんな風に思いながら、ぼんやりと優衣を直視しないでその後ろを見るように眺めた。

「僕はこの間まで受験で大変だったけど、優衣は宮本と同じで推薦だったよな

どーだった??」

敢えて明るく、というよりは宮本のためというよりも普通に興味をそそるような話なのでどうしても口元が緩んでしまう。

「諒、私の誕生日を忘れちゃってて……

私はとってもとても楽しみにしてたんだ」

重い言葉をゆっくりと吐き出していくように一言ずつ話した。

諒というのは宮本のことで、きっと恋仲だから呼び捨てにしているのだと思う。

その宮本はきっちりとした性格で、そんな大切なことを忘れるようにはどうしても思えなかった。

しかし、もちろん優衣の言葉が嘘であるとは思わない。

この確信と事実による矛盾に僕はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。

僕の前にいる優衣のその奥には少しスペースがあって、宮本にはそこに居てもらっている。

きっとこのことを聞いているであろう宮本は、本当は優衣に対して何を意図していたのか、思考を目一杯めぐらしても、やはり答えは出ない。

「え、とあのさ、宮本は……

そんな大切なこと、忘れるようなやつじゃない、と思うんだ」

考えがまとまらないうちに言葉にするのは僕は苦手だ。

けれど、このままでは会話が途絶えて、何もしゃべれなくなってしまう。

そう感じた僕は必死だった。

「だから、もう一回ちゃんと話してほしい

って、こんなことを言う資格?なんてないだろうけど、僕はあいつを信じてるから

話を聞いてやってくれないか」

優衣はびっくりしたように口を数回パクパクさせて、少しして俯いた。

「ごめん、わかってるつもりだよ。

けど、やっぱりまだ……いまは……」

思わず、優衣は立ち上がって、店を出て行ってしまった。

きっと僕は間違えてしまったんだろうな。

そう思った。

まさか、まさかあの宮本が大切な恋人である優衣の誕生日を忘れてしまうわけがない、とやはり信じられなかったから。

「宮本、話、聞かせてくれよ。」

僕は今度は迷わなかった。

何はともあれ、この話を聞かないとどうしようもないと思ったからだ。

今まで幾度も些細なことで喧嘩をしたことはあっても、こういった誕生日や記念日みたいなことを忘れた、なんで話は10数年間ありえなかったから。

「悠、俺が誕生日、忘れると思うか?」

その問いに僕は黙って否定した。

はぁ……っ

というため息を一つ置いて、宮本は再び話を切り出した。

「俺、別れようと思ったんだわ」

その言葉を聴いた瞬間、僕は全身に雷が走ったかのような衝撃を受けた。

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