第7話 入学
数日過ぎて、菅野くんにラインをしてみた。
「明日は入学式だね
帰りにお昼ご飯でもどうですか?」
一度書いた文章を読み返す。
おそらく不快感を与えないような文であろうと感じ他ので送信。
2分もしないうちに返信が来た。
「いいね、一緒に行こう」
高校入学前にこうして友達?関係を築けるのはとてもありがたい。
そして、吉見さんから頼まれた件もある。
僕が、宮本と優衣以外のこういった人と人の仲だちを持つことは今回が初めてで、だからこそ絶対に成功させたいと強く思っている。
僕が目指す僕の中の『主人公』になる本当の一歩になると信じた。
今日はもう寝よう。
そう思ってベッドに入ると目を閉じた。
……
そういえば、高校になれば彼女が出来るというジンクスをよく聞く。
僕が、変わるキッカケになるだろうか?
なんだか、いつものような彼女が欲しい!というような欲望でなく、その時の僕はいつもの僕のことを見ていた誰かの視線のようだった。
……
「ん?」
眠いなと思って、起き上がると、どうやらあのまま寝てしまっていたようだった。
いつもの僕でないような不思議な気持ちを感じた夢を見た。
こんなにくっきり夢を覚えてることは珍しいと思う。
目覚まし時計をみると、6時を少し過ぎたところ。
(入学式か……)
目覚まし時計をセットした時間は6時05分だったような気がしたのだが、それから少し経っても鳴るような気配はなく、けれど僕にとって今はそんなことはどうでもよかった。
※
ぼんやりとした意識のまま、外に出るとやはり風はまだ冷たい。
初めて着る制服にはやはり若干の違和感を持って、しかしそれは新たな世界への幕開けを思わせてくれた。
まもなくして、集合の喫茶店につく。
もうすでにいたようで彼は手をあげて少しふった。
彼は、いつも通り爽やかで始まりが、うまくいくように感じさせてくれた。
しかし、予感と現実とは全くの別物であるということを、僕は見逃していたかもしれない。
※
他愛のない話というものがいかに重要であるかということは、特に初対面の人とかとの話をすると大変よく実感することになるのだと思う。
菅野くんはやはりサッカーが好きなようでクラブチームの頃の話を聞かせてくれた。
僕は、特段話し上手というわけではない。
だから彼が、話題を振ってくれていることになんとなく安心感を得ていたのかもしれない。
「おーす!菅野!」
いかにも体育系と言いたくなるような少し小柄な少年?が現れた。
少し落ち着いて見直すと彼も、僕や菅野くんと同じ制服を着ていた。
時間というものは不思議だ、何かについて考えたり、少し気を取られている隙に既に校門へとたどり着いてしまっていたようだった。
時間を忘れる、というのはまさにこんなことを言うのかもしれない。
なんとなく吉見さんが菅野くんが好きになったのがわかる気がした。
彼はおそらく持って生まれた話し上手なのだろう。
「君は?」
ぼんやりと考えにふけってしまっていて、少年の声に一歩後ずさってしまう。
「彼は俺らと同じ高校だよ
名前は悠って言うんだ、悠、彼は康太っていうんだ」
そか、んんー、なるほど?
もはや僕はこの早すぎる展開についていけず、口には出さずに脳内ショートを起こしかけていた。
とにかく、挨拶しなきゃということを思うことでなんとか状況を理解?することを出来た。
「えっと、悠です。菅野くんとはまぁ、ついこの間かな
友達になったんで、よろしくお願いします?」
なんというか、終始グダグダである。
けれど、彼はそんなことを気に留めた様子もなく笑って僕に向かって手を伸ばした。
「よろしくな!悠!」
なんというか、良い高校生活が送れるような気がしてきたような……?気が瞬間だった。
そして、吉見さんの相談もあって彼にも聞いておきたいことは沢山ある。
なんだかんだ今までの生活が楽しかったのは、優衣や、宮本のおかげだと思っている。
今度は二人は二人で、僕は僕でもきっと最高の高校生活を送って見せよう。
とりあえず、正門を抜ければ大きな新入生歓迎していた。
吉見さんも、そういえばこの高校に来ているんだよなと思うと、どうなんだろうと思う。
やはり、菅野くんと同じ部活に入ってマネージャーとかをするのだろうか、まぁ、きっとそうなんだろう。
マネージャーとして吉見さんはきっと分け隔てなく接するだろうし、彼女は好かれるだろう。
問題としてあるのは、菅野くんと吉見さんの時間をどうやって取るか…という点である。
そんなことをこうしてふらっと考えてしまう僕は、もしかしたら本当はおせっかいな性格なのかもしれないなと思う。
元はただ自分に彼女が欲しかったことで始めた割に遠ざかることはなくても、進歩していっているようにも思えない。
けれど、僕は宮本も優衣も菅野くんも吉見さんも……
考えることに対して、手を抜いたことはない。
そこでなんとなく思うのだ。
彼らはもう決めている。
やりたい事を、目標を。
僕は彼らを大切に思うのと同じくらい自分にも何かを求めていたのに、分からなくなった。
漠然としたまま、なのかな?
僕は二人がいることを思わず忘れて考え込んでいたようだった。
「おーい?」
菅野くんの声が聞こえて、ハッとした。
周りを見回せば、もうすでにたくさんの人が集まりだしていた。
僕は彼らに自分のことを任せるわけでなく、自分を歩まなきゃいけないから。
もう行かねば。
ここからが本番なんだ、と。
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