第3話 「K君への手紙」
K君へ
お久しぶりです。大学時代から随分時間が経ちました。
年賀状ばかりの便りで、きちんとした手紙を書くのは初めてです。乱文をお許しください。また字が汚いので、こうやってパソコンを使うことも許してください。
妹さん・・・50歳といえばまだまだお若いのに本当に残念ですね。
ある程度、年齢を経てからの身内の死というのは精神的に堪えるものだと思います。僕には経験がありませんので、なんと書いていいのかわかりませんが、元気を出してくださいね。
実は僕にも50歳の妹がいるんですよ。K君の妹さんと同い年ですね。僕の妹は一度も結婚せずにこれまで過ごしてしまいましたが、まだ元気で働いています。
K君の妹さんはご結婚されていたのでしょうね。そしてお子さんもいらっしゃるのでしょうね。それならば、なおさら深くご心痛のことと思います。
K君、大学を卒業してからこれまでの半生はいかがでしたか? 社会に出て仕事をして、結婚もして、お子さんも授かって・・・どんなことを考えて生きてこられましたか?
僕は自信を持って人に言えないことばかりして生きてきました。長年勤めた会社も昨年退職して今は無職です。一応独立して下手な文章を書いて食べていこうと考えていましたが、かみさんと二人できちんと食べられるほどの収入はないのです。だから自称フリーライターの無職なんです。
でも楽しかったですよ。いくつも職を変え、いろいろな経験をしました。楽しいこともありましたが、時には苦しい思いもして、人にも騙されましたし、人を騙しもしました。
K君と最後に会ったのは山形でのS君の結婚式でしたよね。あの時は大学を出てからそれほど時間が経っていなかったので、風貌や性格など平和荘時代と変わりはありませんでしたよね。あの時は面白かったですね。KW君にUさん・・・みな平和荘当時のままで・・・。あ、今はあそこに新平和荘とか第二平和荘とかが建っているんでしょ?インターネットのグーグル地図で見ましたよ。
今は皆、風貌が変わっているでしょうね?僕なんか体重80キロですよ。
最近ね・・・ときどき平和荘当時のことを考えるんですよ。
文章を書いていることもあって、あの頃のことを記録してみたいな・・・なんて思うんですよ。
平和荘時代は本当に楽しかったですよね。まるで青春漫画のようなあの頃のことを思い出すと苦笑いしてしまいます。
喫茶店のユキチャンのことでは迷惑をかけましたね(笑)。まるで子供の恋愛ごっこでした。いい加減な僕の発作のような恋愛ごっこにK君を巻き込んで・・・本当に申し訳なく思っています。
Uさんは体を壊したようですね。僕も太ったうえに離職して暇な状況だから、何か妙なものに体が蝕まれているようにあちこちに不具合が出始めています。平和荘時代に一番面白かったのは「Uさん免許証便槽落下事件」でしたね。免許証を便所で落として、幸運にも固くなったソノ上に免許証が乗っかっていたって話・・・今思い出しても笑えます。
近いうちにUさんには内緒で伊勢崎の街に行ってみようと思っています。伊勢崎には僕たちの楽しかった思い出がたくさん落っこちているような気がします。そうそう、定職につかないうちにあの街を訪ねて昔の思い出をいくつか拾って来ましょう。
妹さんは本当にお気の毒でした。本当になんと書いていいのかわからないです。人の気持ちは・・・特に僕のような碌でなしには簡単には測り知ることはできないものです。無礼を許してください。そして気を落とさずに毎日を楽しく、そして一所懸命に生きてください。
これは僕自身にも言いたいことです。
それでは、また機会があれば会いましょうね。
まともな手紙を書けなくて申し訳ありません。元気でね。
平和荘奇談 消雲堂(しょううんどう) @kesukumo
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