第2話 んで、デートって何だよ
次の日洋に見せてもらった写メでは、なぎさが満面の笑みで焼きそばパンに食らいついていた。もちろん、エロくない。
いやぁしかし焼きそばパンにそんな用途がねぇ。
そんなあなたにおすすめ、最近購買で話題の「洋梨コンポートパイ」お礼に二つ買っといたから、ってえぇ?甘いものは苦手なのか?あぁ洋梨が苦手なのか……まぁどくとくの香りがあるしな。
でも困ったな、俺はコロッケパンもあるしこれ二つはきつい。
なんて思ってると、向うから洋が来て俺にこう言った。
「おっ、洋梨のコンポートパイ。用意いいじゃん、俺のため?」
俺の手にあったパイはなんなく奪われた。こいつの性格を今さらどうこういう気にはならない。同中だってのもあるけど、実はだからといって中学の時から仲良かったかと言われればそうではない。
「あ、いいなぁ、それ今人気なんだよ」
街子に至っては、なんと同じ中学だったに関わらずろくに話したことがなかった。
……え?じゃあなんでつるんでるかって?
そりゃお前
「松助、こないだのなぎさがARISAかもって件」
俺から奪い取ったパイを弄びながら、洋は校庭へと足を進める
「あれなら生放送で証明されたろ?んなわきゃないって思ってたんだ」
だってさ、ARISAってばあんな奥ゆかしくってつつましくって清純で……。それに比べれば……。
「俺ならお前と同じ女を取り合う準備は万端なんだけどな?」
思ってもなかった言葉に、俺はけ躓いた。
「しねぇし、やんねぇよ!勝ち目あるかっての!」
け躓いたこととからかわれてることに俺は真っ赤になりながら言った
「え?わかんないかもよ?」
街子ってなんでこうさ、あれなんだろ。そのなんつうか、気を使ってくれてるのにそれがずれてて、いつも変なとこに話を持ってこうとするんだろ。そうじゃない!っていつも言いたくなるんだ。
「童貞歴=年齢の俺をそんなにいじめて楽しいか!」
「遊んでないから、真面目でいい人って思われるかも?」
街子のフォローになってないフォローが俺に突き刺さる。
「俺だってその度だい本気なんだけどな。にしても、なぎさ……」
洋、それが遊んでるって言うんだよ。にしても本当お前ってさ、
「なぎさ……結局誰とデートしてたんだか、わかんないよなぁ……」
なぎさのこと、好きだよな。
「んなわけあるか」
あ、やべぇ口に出てたらしいや、殴られた。
そうなんだ、実は俺らを巡り合わせたのが、他でもないなぎさ。同じ中学じゃねぇぞ。
「松助お前だって思わないか?俺らに隠しごとなんて、友だちがいないよなぁ?」
俺は思ったね、こいつが自分から「友達」なんていうなんてろくなことになんない前触れだって、みろあの悪い笑顔……どうせまた……。
「校庭のベンチに腰掛けて、そのことについて話さねぇ?」
あれ?意外と普通だ?なにかしでかす予感がしたんだが。
校庭ではバレーボルに興じる生徒や、真面目に走ってる奴までいる。陸上部か?俺は幸い、剣道以外の運動に関しては凡人なので、よくやるよとしか言えない。
あれ?俺が特待生なの知らなかったっけ?
つうかあれ?俺剣道部って言わなかったっけ?
まぁとにかく!洋は校庭のベンチに腰掛けて、洋梨のコンポートの袋を開けた。
「いいから座れ、屋上じゃなっきゃ、なぎさだって来ないだろ」
なんで校庭のベンチに座るのにお前の許可がいるんだか、と俺は内心思いながら洋とは距離を持って座った。なんだお前そんな隅っこ座って。って街子の隣は恥ずかしい!!あぁそうですか……。
「よし、じゃあ、なぎさが電話でデートって言ったことについて」
洋は急に真剣な顔つきになった。
「俺はだからといってなぎさがデートしてるとは思えないんだ、どう思う?」
あぁ、洋、それなぁ。それ言っていいかどうかわかんないけど、あれだよ、あれ。
「って言って洋くん、なぎさがデートしてるって思いたくないだけじゃない?」
うわぁ街子それはまずいそれはやめとけ、なぜそれを言った。ほら洋の眉がピクってなった、ほら作り笑いしてでも目が笑ってない。ありゃ怒ってるぞ、怒ってる。はやく謝った方がいいのではないかとおもわれますが、
「だって現実教えてあげただけじゃないの。むしろ感謝して欲しいぐらいだけど?」
なんだそのわけわかんない理屈は!やっぱ女ってわかんねぇ。なんだそのジブンワルクナイっての。
「なぎさだって女だもん、あたし達知らないだけかもしんないけど。あぁ見えて遊んでるかもってクラスメイトが言ってたよ」
あぁなんだその、つうかその噂まだあったのか……。
「あぁはいはい、教えてくれてありがとうね。そうやって『あたしが言ったんじゃないからあたしは悪口なんか言ってない』ってのは、俺が女の中でも嫌いな部分だな」
洋はズバッと街子と斬った。
「そんな……あたしはほんとうになぎさが心配で!」
街子は涙目だ。
「あぁハイハイわかりました。自分は悪くない自分は悪くない、アホか。(このアホか、はドスが効いてたよな)でもなぎさなら『人が言ってた』って言った時点でいじめに加わったとみなすだろうなぁ……」
洋は怒ってる。なんとかしないとほんとうにやばいぞ。
「あぁ、なぁ、街子、ほんとうはお前どう思ってるの?」
慌てて俺はフォローに回った。
「人の意見じゃなく、お前の意見は?そういう話しねぇと、俺も洋もお前の考えなんてわかんないから」
「……あたしは……」
街子はたじろいでる。
聞いた話だと、高校に入ってBLに目覚める前の街子はこんなにはうるさくなくって、むしろ内気でおとなしい感じだった……そうだ。
だからこんな風にちょっと困ると、地が出るのか黙り込んでしまう。でも友達悪く言うのはよくないだろ?だから俺らは待った。お前もちょっと黙ってろよ。
「あたしは、なぎさってずるいって思う」
うつむきがちに、街子は話し出したが、やがていつものうるさい街子にもとどおりだ、
「だって男の子たちと友達で、しかも洋くんなんだかわかんないけどなぎさのこと大事にしてるよね?松助くんまで!あたしの知ってる人に、友達だって信じてた男友達に襲われたってのがいるらしいんだけど……」
あぁまたその「私悪くない」作戦中?街子、つうかお前そんなに俺らを犯罪者にしたいのか。
「なぎさはそうじゃないから、それがずるいってお前は言いたいんだな?」
洋はややあきれ顔で街子を見下す。
「うん……そう」
街子は内気な少女に戻ってしまったみたいに、もじもじとしている。でも言っていいことと悪いことはあるだろ。
「そうやって『誰かが言ってた』とか言って自分の意見言わないのとどっちがずるいんだろうな?何?それともお前俺らに襲われたいの?」
そういう趣味?と洋は街子に悪い笑みを浮かべ近付く。
「そんな!」
街子はたじろぐ。
「自分にやってほしくないこと人にいっちゃだめよ、ショウガッコウで習わなかった?」
洋は街子を馬鹿にしたような言い方するけど、ほんとうこいつってさ、
「……あぁあ、これでなぎさが男ならBLなのに」
街子がため息をつく、おっ!さては気付いたな!
「でも、洋くん今だって本気で好きな人と付き合ってるんでしょ?だったら……」
あぁなんだこういらいらするな、なんだそのそう煮え切らない
「お前は男を知らなすぎる街子、BLじゃないリアルな男を」
洋はただ笑ってた。いつもの悪い笑顔ではない。
「まずな、男なんて彼女がいようがいまいが、いや、結婚してようとそうでなかろうと、女って見ればだいたいものにすること考えてるの。BLだってハーレムあるだろ?」
街子は泣きそうだ、
「でも、そんなかから選ばれるもん!」
いや、もう泣きじゃくってる。
「女の子の夢は選んで選ばれることなんだもん!男の夢を言うなら女の夢だって叶えてよ!不公平よ絶対!」
洋は泣き過ぎて鼻水まで出た街子をなぐさめることはせず、
「言えるじゃんか、自分の意見」
なんて笑ってる。あぁごめんな高志、街子もこんな奴だけどさ……えぇもっと好きになった!?なんでだぁ!!
「……話がそれた、なぎさのデートな」
洋が話を戻そうとするが
「……終わってない、なんでなぎさだけ大切にされるのか」
街子はなっとくがいってない。
「それはなぎさみてりゃわかるんじゃ?」
とだけ言って、洋は俺にこう言った。
「あいついつも『デートってなんだ?』って言うよな?俺があいつはデートじゃないって言うのはそういう理由だ」
言われてみれば確かに、でも昼休みが終わりそうだ、俺は放課後喫茶店でこの続きをすることを約束して一旦洋達と別れた。
さてやってまいりました喫茶店レオ。
ちょっと待て俺の携帯に……親父?あぁなんだ、豆腐とネギな、わかった。
あぁ主夫も楽じゃない、政府は俺みたいな馬鹿で貧乏なやつのことをもっと考えてほしい。
え?そう俺家事やんの、おふくろは俺の小さいとき病気でさ……。いやいいよいいよ!
「みさきの携帯にはかけといた、あと会長だけど生徒会だ、さて」
喫茶店に入るなり洋はみんなにそう切り出し、椅子に座り、ブラックコーヒーを頼んだ。
「……俺のことで悪いんだが、実は報告がある」
洋は妙に神妙な顔つきになった、俺と高志がその前に座る
「俺、一回なぎさをデートに誘ったことがあるんだ、その、二人きりで」
えぇっ!だってお前なぎさが落ちないからムキになってるんだと思ってたけど、そうじゃなかったのか!
「一回デートに行っちまえば、俺のよさをわかってくれる気がしたんだ。携帯はしらないから……口頭で、冗談みたいに、二人で映画でも見ようかって」
洋のテンパってるのを隠すさまが目に浮かぶようだな。
「そん時の話……いいか?」
洋はうつむきがちに話す、この様子じゃ、まだモノにはしてないんだろうな。
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