第9話 ギャル降臨!!


 まぁ聞け、俺もこないだまで同性愛者の友達なんていなかった。

 こないだ波止場モールで、洋と街子とみさきとなぎさ含む俺で日曜日にだべってた時お前を呼ぼうと思ったら携帯の番号知らなかったんだったって気づいた頃、(後で教えて)なんかなぎさがきょろきょろしてんだよ。

「なんだなぎさ?便所なら入ってすぐだぞ」

なんでなぎさっていつもジャージとかなんだろうなぁ、今日だってジーパンにメンズのシャツなんてお召し物で、部屋で見た姫系ワンピは幻だったとしか。

「違う、知りあいが今日来るって、言ったよな?」

なんでもなぎさからのメールによると、そいつはギャルで、違う高校だしこの辺に住んでるわけでもないけど、SNSで知り合った恋人がこっちだってことで会いに来て、ついでになぎさにもあっておきたいって言ってた……。

「なんか知り合ったレズビアンの子」

だそうだ、つうか俺に彼女がいないのに女に彼女がいるこの格差社会!

 会うのは二回目だそうだが、昔ほどではないにせよあちこちにギャルがいるのにどうやって探すのでしょう。

 と思ってたら、

「あれ~なぎさちゃん~!久しぶり~今日友達と約束してたんでしょう、つうか彼がそのいつも言ってる洋くん?え?これがモテモテってなくない?猿っぽい顔だちでかわいいかもだけど……いや雪カンベン、コイビト、いるし?みたいな?」

てなことをが~っとしゃべりながら(俺はギャル口調をよくしらないのでちょっと違うかもしんない)金髪に染めた髪を派手に盛ってそこにハイビスカスの髪飾りをつけ、顔は当然小麦色、はでな化粧、下着みたいなキャミソール?とかいうのを着てまるで「着てないです」ってぐらい薄いレースの上着を羽織り、かがんだら見えそうなミニスカ、踵の高いサンダルから赤いピンクに輝く爪がのぞく、いかにもなギャルが現れた。

 どうする?

 たたかう

 ▽にげる

 ようすをみる

 コマンド選択前になぎさが俺の肩をつかんだ、

「いや、こいつは松助、ほらあの専業主夫志望の」

つうかなぎさこの子にそんなこと話してたのか。

「あぁ!松っちね。どーりでなんか」

なにがどおりでなんかなんだ、詳しく聞きたいようなそうでないような

「うん、その子は?」

ちょっと先に進んでた洋が、遅れた俺らに気づいて街子と一緒に引き返してきた、そして洋はそいつを見るなり、俺やなぎさには絶対しない『女殺しモード』の顔になった。どんな顔って、俺はできないけど……あれだよ、視線だけで相手の顔を真っ赤に出来るみたいな。

「ハロー、雪ちゃんだよ。っていうかなぎさの心友!ねぇひろぽんでしょいつもなぎさから聞いてるよ、喧嘩するの好きなの?」

「?いや、高校入ってから、喧嘩はしてないんだけど。っていうか俺ユウトウセイよ?」

街子を脇に追いやりながら、洋は笑顔を崩さないようにそう答えた

「だってなぎさいってるよ、ひろぽんと喧嘩ばっかしてていつも勝てないって。ひろぽんだめだよなぎさいじめちゃ。雪知ってるもん、なぎさはほんとうは誰よりも女らしいかわいい女の子なんだよ?」

きゃあきゃあ、とカン高い声で雪っていうそのギャルはまくしたてくる。ちょっと洋がおされぎみだな。松っちやらひろぽんやらなんかなれなれしいけど、多分この子なりに気を使ってるんだろう。ってかなぎさが女の子らしいだぁ?!初耳だぞそれ?

「あぁ、知ってる」

ところがその衝撃発言を洋はさも当たり前みたいに流してる、けどよく見たら笑顔がちょっとひきつってるぞ。

「だよね、だってあんな恋愛以前なんて、あんま興味無いフリで、きっと誰より夢見てるかもだよ。なぎさ雪ら業界じゃぱっとだと見いかにもなバリタチじゃん?でバリタチおねぇさんってロマンチスト多いんだよね~。まぁなぎさはセク以前かもだけど。そういやこないだおっぱいもませてもらったらすごいおおきくって!柔らかくって!形もまるでスイカかメロン!それで感度もね……ってきゃあもう!だいたい顔真っ赤にしてんだよ?超可愛くない?」

ぶっ、とふきだした洋、無理に笑顔を作るなよ。いやしかし、なぎさが巨乳だぁ?……いや小さくはないとはうっすら思ってたけど、巨乳はハタ迷惑なやつが多いのか?俺やっぱ微乳の清楚な大和撫子がいいわ。

「……それより業界ってどこ?同世代だって聞いたけど?」

洋はなんとか自分のペースに持ってこうとする、が、

「あぁごめん、ビアン業界で~す。そう雪ビアンなの。なぎさちゃんの友達だからはなすけど、雪の恋人もギャルだよ。つうかひろぽんでしょなぎさと喧嘩ばかりしてるの?だめだよひろぽんなぎさだってけっこう繊細だし……バリタチの人にたま~にビアン抜けてかわいい奥さんになってる人がいるから、なぎさがそうなったらやだなぁって……」

あぁ、そういうのギャルゲーとかでもよくあるパターンだよな。なぎさはそういうキャラ見るたび不愉快になるって言ってたけど。

「あぁ、なぎさはあぁ見えて女らしくって、恋すればすげぇいい女になるって俺は思う。……性の知識とかどうも高校生レベルに達してないのもすれてないっていえばそうだし。でも、もったいないな、君はないんだ?かわいい奥さん?」

その精一杯の洋の「どうよ俺?」なアピールに、雪は喜ぶどころか逆ギレしてきた。

「なに言ってんのひろぽん!雪ビアンだっていったでしょ?ひょっとしてひろぽんひとの話聞いてない系?」

洋は思わず大きな声で反論した

「それは今のうちのとこだけかもしんないし、男だって悪くないと思うかもしんないじゃん。いやもったいないよ、だってこんなにかわいいのに」

雪はその理屈にほんとうに頭に来たらしく、顔を真っ赤にして前のめりになってまくしたてた

「雪は男が嫌いなんじゃない、女が好きなの!女の子はいいよう?なんでも共感できるし共感してくれる、なんでもわかってくれる、なによりHがいいの」

おい、ちょっと待て今聞き捨てならないとこを言ったぞ、俺でさえ経験値0なのに。

「な、でも男は嫌いじゃないんだ?じゃあ男相手ならなおさら……」

とりあえず洋はなんとか雪のペースに巻き込まれないようにしたが

「あ、なにそれ。ていうかその『まだ男知らないだけ』的反応やめてくんない?雪中学ん時はカレシいたしぃ。でもなんかものたんなくったある日SNSで誰かビアンがデート写メUPしてんの見て『これだ!』って。そんで……」

まだまだこれでもか、とぐらい雪はまくしたてた。でも洋だって負けてない

「それはそいつがなさけないだけじゃ?俺そんなことないかもだよ?」

あくまで口説くつもりらしい洋を

「でも、ひろぽんは雪がストレートでもないかも。友だちならいいけど。だって出会ってすぐこんな風に自分アピッてて必死すぎ、だいたい反応がいかにもオス馬鹿ノンケっていうか。松っちは……う~ん、松っちさっきからだんまりだし。みさみさかわいいけど、かわいいなら女の子のほうが。あれ、そういえばなぎさは?」

そうだあまりのインパクトに忘れてた、こんな最終兵器を用意したなぎさのこと。

「えっ?今度の日曜日?そんなすぐに……」

波止場モールの角ぎわで、携帯で誰かと取り込み中。電源をお切りになるかマナーモードに設定の上通話はご控え下さい。

「そんな急なデート……わかった、あのピンクの服着てく。そうそのミニスカワンピ。じゃあ日曜十時に磯部駅でな」

なぎさがデートうぅぅ!?

 俺らはさらなるインパクトを知ることになったんだ。


 というわけで日曜十時の磯部駅。

 俺ら特捜班はなぎさがミニスカワンピという衝撃の事実を確かめるべく現場へと向いました。リポーターのみさきさん!

「磯部駅で待ち合わせだから、ここから電車にでも乗るのでしょうか?」

そうですねぇ、否定はしませんが犯人は電車で学校へは通ってないので定期券を持っていません、バス通です。だとするとバスで行くのでしょうか?それとも切符購入?

 波止場モールでだいたいなんでもそろうのに何用?

 興味は尽きません。

 共犯者はどういった人物でしょうか、男性?それとも女性?

 おっとミニスカワンピの犯人がバスに乗って現れました。気付かれないように現場に向かいたいと思います。コメンテーターの洋さん!

「どれ、ミニスカワンピのなぎさを見てやろうかな」

デジカメ持参ですか、用意がいいですね。それならいいスクープが撮れそうです。

おっと容疑者?容疑者でしょうか?うしろめたいことでもあるのでしょうか、サングラスをかけてます。

 ここで情報入りました、リポーターのみさきさんによると、容疑者の携帯電話にかけたものの「電源が入っていないか、電話にでられません」とのこと。

 容疑者でしょうか?本人確認できません。

 まずピンクの姫系ワンピとの前情報ですが、たしかにピンクの姫系ワンピです、しかしこれはみさきレポーターの情報によるとこのワンピースはアイドルARISAがプロデュースした人気モデルとのこと、まだ本人かどうかわかりかねます。

 コメンテーターの洋さん?

「もっと近寄れ!見たいものが見れない!」

近寄ったらキックやパンチが飛んで来ないか心配ですが、たしかにここからだと遠すぎるかもしれませんね。

 それにしてもこの不肖松助、長年ARISAの追っかけをやってるのですがサングラスのせいかARISAと見間違えそうです、いや、もちろんARISAの方が容疑者より数えきれないぐらいかわいいんですが。

 容疑者ここで携帯を取り出しました、どこかに電話しているようですね……。

 おっとタクシーに乗り込みました!これは想定外の事態です!

 容疑者を今見失いました!

 こちら一旦お返しします!

  

 

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