第6話 やめて、男の娘だよ?
パンツってズボンもだった事件は置いといて、こないだ俺ひまだしなぎさの「政治家になる」夢をなんとかあきらめさせようと思って(その事件はパンツのぞきたいぐらいでまだすんだけど、もっとひどいこと考える奴だっていないとは限らないし)日曜日にみさきと一緒に携帯で呼び出して俺んちでプレステやりながら説教したんだよ。いや、俺の親がいる時だし変なことなんかするかよ!
「いいかなぎさ、俺はともかく、あんま男の部屋にほいほい一人でいくなよ」
ゲーム画面では俺の画面上にばっか沢山スライムがいる、つまり、負けてる。
「なんで?」
あんまりにもなんにも知らなさそうななぎさのまっすぐな問いに
「お前一応女なんだかんな?変なこと考えない奴だっていないとは限らないだろ、って洋なら言うだろうな」
俺がこういうのにはわけがあって、俺にはその……気になっている女の子が別にいるから、誤解を招くと困るのと、あんまこいつが鈍くて洋がかわいそうになってきたからだ。
「俺はお前が好きだからそういうんだぞ?」
「あぁ、知ってる、友だちだし」
当たり前だ、って顔された、いやいいんだ、俺がこいつに抱いているのは恋愛感情ではないし、でもちょっとまてう~ん、
「松助君、ボタン押さないと積むよ」
みさきの声に慌てて画面を見ながらも、俺はこいつに大木流キョウイクをちょっとほどこさないと……と思った、いやもちろん物理的にどうこうじゃなく。んなことしたら俺の身に何が起きるというのでしょう!あぁ恐ろしいこと。
「なぁみさき、お前、これとこれ、どっちが好き?」
ポーズ画面にして、取りだしたるは大木センセイ(大木は先生じゃないけど、その方面なら大先生)コレクションの中でも選ばれし宝物、いわゆる夜のおかず(ご飯以外の!)、AV(オーディオビデオじゃない)人気のOLものと女子校生ものですよ。(なんで女子高生って漢字じゃないのかって思うけど色んなあれかなぁ……)
「えっ!」
みさきは真っ赤だ、目を手で隠してでもちゃんと見てるからやっぱこいつも男だったんだなぁと俺は安心した。
「……こっち、かなぁ」
みさきが指さしたのは女子校生ものだ。
「ちなみに俺はこっち」
俺はやっぱOLものかなぁ。と男子高生らしい会話をしてると、普通こういうの女は嫌がるって聞いてたんだけど……
「あぁ、なんだ、それか、私はこっちが可愛いと思う」
ってなぎさ!お前OL指したけどなんだ!?レズなの!洋……叶わない恋を……
「おま、いや……」
口も聞けない俺を
「でも『夏休みの夜に』?変なゲームのアニメだな」
「ゲームのアニメ?」
うんなんか俺もなぎさも変な勘違いを……
「似てるよなギャルゲーのあの子に、そっからアニメに実写とか?」
あぁはいはい……いいけど。
「いいか教えてやる!これはいわゆるHなビデオだ!そうだよ俺とみさきはこういうのに興味あるお年頃なの!あとギャルゲーをやるな!女おとしてお前何になりたいんだ!」
なぎさはあっけらかんと答えた
「いや、普通にゲームとして面白いから」
「お前は少しはギャルゲーキャラから女のかわいらしさを学べ!見習え!……いやたまに男女キャラっていうかちょっとボーイッシュキャラにはお前みたいなのいるかもしんないけど……。そういう範囲越えてるから!お前あれだろあれ、ギャルゲーだと攻略不可キャラだろ、まぁ攻略しようとも思わないけど。」
まくしたてる俺をなぎさはちょっと不思議そうな目で見て言った
「で、今日呼び出したのはまたその『女らしくしろ』ってやつ?」
耳にタコだ、といいたそうになぎさは耳に手を当てた。
「いや、もちろんパズル負けこんでて悔しいってのもあるけど、お前さ、政治家になるなんて変なこというんじゃないぞ、一応、選挙に出なくっても自分の意見聞いてもらえる方法をいくつか調べたから」
俺も人がいいよなぁ、こんな奴の為にパソコンで調べ物したんだぞ。
「まず、国会にやってほしいことがあって困ってるとき、一番簡単なのは新聞に投稿すること」
俺は新聞の投書欄を切ったものを机の上に出した。
「パートの賃金、社員との格差はおかしくないですか」
「基地に思う」
載っているのはこんな感じの見出しで始まる投書、
「これは反政府よりの新聞だからどうしてもそうなるけど、だいたいこんなもんだろ、こういうの国会のセンセイがたは目を通していて、国会で取り上げたりしてくれるって話聞いたから」
我ながらまどろっこしい手段を考えたよ、投書なんて
「真面目なセンセイがたはだいたい新聞全社よんだりして民意を拾い上げようとしてくれてる……らしいから、別にお前が国会殴り込みに行くことねぇの」
う~ん、なんか俺、俺の嫌いな事なかれ主義の大人になったみたいだ
「それ載らないかもだし、載っても見てないかもだろ」
当たり前といえば当たり前のような、無邪気といえば無邪気ななぎさの質問を、俺はなるべく冷静に返そうと思った
「んなこと言ったらなんだってそうだろ、あとまだあるぞ、国会に立候補せず自分の意見を通す方法が沢山」
俺もまぁ、こいつに比べればオトナなのかなぁ、って思ってたよそん時は……
「新聞社に入社して記事を書く」
「OGに聞いたら新聞社って女一割とかしかいなくって、しかも生活面とかまかされる男社会だって」
おい、もうOG訪問済みかよ。まったく、こいつの行動力だけは関心するよ。
「ネットで論文を書く」
「私ネットあんま詳しくないのもあるけど、無償はやだ。見てもらうまで大変」
なんでこいつネット詳しくないかって、そりゃ、政治の本ばっか読んでるからだろ。
「署名」
「こないだ辺野古が署名集まったのに強行された」
あぁそういえばそうでしたねぇ。
「政治家の事務所に行って、『あなたに投票するんでこうして下さい』っていう」
「その政治家の意見と似たような意見じゃないと採用されない、『同性婚』とか誰に頼んでいいかわかんない問題もあるし、……カミングアウトした性的マイノリティのセンセイ?」
おい、今のは、いくら俺でもそれは聞き逃せないぞ。
「……同性婚って、おま、やっぱり」
俺の疑惑の目線をなぎさは困惑しながらはねつけた
「……ともだちに、一人。そういう子が」
「あぁ、うん、まぁ」
ともだちに、ねぇ。まぁそういうことにしておこう。
「なんかさ、ボランティアとか見学してたら、レインボーパレード?とかいうのに誘われて、なんだかわかんないで見に行ったら知り合った、ちなみに同世代でギャルっぽい女の子」
「……いいけど、あんま変なとこ行くなよ」
へぇ、なぎさ俺の知らないとこでそんなことになってたのか、まぁこいつが例えレズだろうがどうでもいい話だし、危ないことしてなきゃいいんだ。
ってそんなことより
「選挙に行く」
「一票だけだろ」
「自分と似た考えのセンセイを応援する」
「それ、その党に入ってるのと何が違うんだ?」
とまぁ、ことごとく拒否され
「あぁ、じゃあデモだデモ、辺野古とか安保でもやっただろ」
最後の手段を切り出した俺に(なぎさは警察官に乱暴したり大変なことやりかねないので、俺はできればこれは止めたかった)なぎさは悲しそうな顔をした。
「まず、安保とかもそうだけど、デモやったって意見が通るとは限らない、……あんまスマートなやり方とも思えないし、何よりTVに私がうつるとちょっとまずいんだ」
「TV?政治家になるんだってTVにはうつるぞ?」
なんで?という俺になぎさは目をそらした
「ごめん事情言えない、……あと五年が下手したら十年ぐらい、もしかしたらもっと。私がTVやメディアに出ると……そんな話はいいから。でもあんがと、調べてくれて」
なぎさは普段に戻ってゲームを再開し、俺はスライムを画面いっぱいにされて一回も勝てなかった。
格闘ゲーだったら勝つのになぁ、でもなんだろ俺に隠しごとって、みさきにHなビデオ貸せって言われたけどあいまいな返事したからお気にのあれを借りられたような日だった。俺そんな趣味あるんだって後で突っ込まれたらと思うと寝れない夜だったよ。
でもな、政治なんて俺ら何言ったって変わんないって本当思ってるよ。時々いるだろう、小説家かなんかに、考えを書いて作品にすればちょっとは変わるって思ってる奴。
まぁ世の中そう甘くない、みんな変だとは思ってる。
でもまぁ実際は保守派っていうか政権持ってるほうのお気に入りの論客が言った方がネットでもなんでも『そういうもの』だなんて思われてる……だってまぁな、仕方ないんだろ。なぎさは納得しないけど。
いっぺんこんな社会ぶっこわれたほうがいいのかもなんて思っちゃったりする。
いいからもう、お前とそういう話をしたってしょうがない。
それよりお前も興味あるだろ?大木センセイのお宝。あいつのそういうの見る目はすげぇぞ、こないだ借りたのも、ストーリー性といい女優の演技といいもろ俺好みで、お前どんなのがいい?え?女教師!でもってリアル女教師には興味ないと、まぁだいたいそんなもんだよな。
そうそう、お前にちょっと聞きたいことあったんだ。
こないだなぎさの家にゲーム返しにいったから、ついでにみさきの部屋にお邪魔したんだ。
あいつの部屋はすげぇぞ、ぬいぐるみと少女漫画で一杯!
……うんまぁ、別にだからってわけじゃない、ぬいぐるみと寝てるとか少女漫画が好きとかそんなんまぁそんなに珍しくも……ないのかなぁ?俺毒されてねぇ?
俺そこにいるのがみさきだってわかってるのに女の部屋に行ったみたいにどきどきしてたら
「ねぇ、松助君、恋って……してる?」
俺オレンジジュース吹いたよ、みさきの女っぽい見かけで高い声で首傾げてそんなこときかれたらちょっとあやしい想像をしてしまう。
「……僕いつか『僕の彼女は』みたいな恋、したいなぁ」
はにかむな照れて真っ赤になるな、俺は極めてまともな
「この恋ちゃんみたいな女の子、いないかなぁ……」
あぁそうだった、AV騒ぎの時も思ったけどこいつ男だったんだ。ほっとした俺はこいつと男どうしの話をしようと思った。
「恋ちゃんってどんな子だ?」
「がんばりやで、たまには弱音も吐くしコンプレックスもあるけど、誰より努力していて、外見は派手ではないけど、スィーツとともだちが大好きな、とにかく一所懸命な子」
あぁ、うん、まぁ少女漫画のヒロインだなぁ
「そんな子がタイプ?」
「松助君は?」
俺はさも当たり前みたいに言った
「日本の女といえばヤマトナデシコ!色は白く髪は黒く。男をたて、おくゆかしくつつましく……」
「……あれ?でも松助君専業主夫になりたいんだよね?それだとちょっと難しくない?」
うわぁそこつっこむかよ……
「そこは、例えば資本家の一人娘とか、そういうの!」
「そんな人にどうやって選ばれるの?」
もう嫌だなんで俺つっこまれてるの、俺そんな変なこと言った?
「いや、え~と、愛?」
「そもそもどうやって知り合うの」
俺の夢ってそんな現実的じゃないかなぁ、可愛い旦那さんになるのが夢なのに。
「いいから!お前こそどうすんだよ漫画のヒロインなんか」
そうだよそう、俺は常識人。ところがみさきは変なこと言いだしたんだ
「……実姉だけど、なぎさみたいなのがいいのかもって思うんだ、僕」
……はい?だってその『恋ちゃん』こんな可愛い服きてますよね?いやそれ以前に
「ちょっと待てさすがに血縁はまずいだろ!」
「だから例えばそういうタイプだって」
まぁアイドルとかに例えるのとそんなに違わ……ないのかなぁ?
「だって服!あいつジャージ!」
ところがみさきは俺の口を指でふさぐと小さな声でこう言った
「……誰にも言わない?」
そしてなぎさが下の部屋でプレステやってんのを確認するとこう言った
「うん、今ならいけるな」
「何が?」
みさきの目は決意に満ちていた。
「いい、絶対、ヒミツだよ」
ひそかになぎさとみさきは身体とっ換えてました!とかじゃないよな、俺は戦慄した。
ところが俺はもっと戦慄するものを見ることになったんだ。
開けっ放しになってたドアをくぐって、忍び足でなぎさの部屋へ。
なぎさの部屋なら俺も何回か入ったことある、シンプルでなんにも面白いものはなかったはずだ。
みさきはタンスを開けて言った。
「これがなぎさのたまに着る服、いい、ヒミツだよ」
何を秘密にするっていうんだよ、ギャルゲーじゃ飽き足らなくなって、男性スーツ着て女口説いてるとか?
「……。」
「……ね、すごいでしょ」
いやまて、ここは確かになぎさの部屋なんだよな?
そこにあるのは本当に可愛い、まさしく少女漫画のヒロインが着るような、女の子あこがれのブランド。
それも一着じゃない、シーズンにあわせて五着ずつぐらいある。ちゃんと女の子の服のスカートやワンピースが。
「いやおかしいって、俺なぎさがこれ着てんの見たことないぞ?」
うんそうだ、なぎさはいつもジャージかジーパンだ
「でもたまぁにこれ着てどっか行ってるんだ、で、いつも疲れたような顔して帰ってきて、週刊誌見て笑ってる」
あいつに男が……あんま考えられない
「ねぇ松助君、なぎさ変なことに巻き込まれてないよね?」
そりゃ心配だなぁ、うん。
「いやバイトとかじゃねぇの?」
俺も変なこと言ったなぁ、
「バイトなら校則で禁止だし、なぎさならズボンの制服選ぶはずじゃない!……ねぇ、このこと、黙ってて」
みさきは泣きそうな顔をしてる、このままじゃみさきがかわいそうだ、俺は決心して服の一つを掴むとこう言った。
「なぎさぁ!ちょっとお前!」
そして一階でモンスターボコボコにしてるなぎさにその服をつきつけたんだ
「これはなんだ!」
なぎさは一応女だから、こんな服を持ってても不思議じゃない?でもレースのついたあんな可愛い姫系ワンピ着てるなぎさ、俺やだよ。
「……それ、なんで……」
ポーズボタンを押すのも忘れて、なぎさは唖然とした表情で俺を見る。
「……いいから答えろ、女か?女がいるのか?」
「……私も女だけど」
TVゲームのキャラクターがモンスターにぼこられてゲームオーバー画面になる、なぎさはリセットボタンに手をかけて答えようとしない
「これ……着てるって……まじで?」
俺の言葉になぎさは答えない、俺は頭にきてなぎさがやってたゲーム機の電源を落とした
「おい、LVあげよりは大事な話だ」
なぎさが困っているのはわかる、俺の目をみようとはせずうつむきがちになり、目が泳いでる。
「……だからなんでそれを」
「着てるんだな?」
静かな時間が流れた、なぎさは何も言いたくないといった感じだ
「……もらったから、まぁ、たまに」
おっ、認めたなついに。もっともこいつ嘘はつけないけど。
「……着ろ、みさき」
「僕が!?」
俺は精いっぱい理性を働かせて言った。姫系ワンピのスカートの丈はひざ上5センチの聖なる領域を守ってる、男のみさきが着てるんだって思わないと、ちょっとどうにかなりそうだったからだ。
「なぎさとお前は体格同じぐらいだし、性格はともかく顔は似てるんだから、お前が着て似合えばなぎさにも似合うんだろ」
「……こんなことなら……」
そんなことをいいながらみさきは着替えてきた。
……。
………。
………おい。
「……みさき、ごめんね私のせいで」
「……うぇーん、足がスースーするよ……」
なんだこれ。
普通男が女装すると笑いが生まれるんだが、この場に笑いはない。じゃあどうなんだってあれかお前俺を性的倒錯の領域に歩ませたいのか。なんだなんで足にすね毛ないんだ肌が白いんだ。内股気味にもじもじしてるのがみさきでよかった、ほんとうに、これ沙織とかだったら俺どうなってただろう。
言葉を失ううちにみさきが誰かに似てる気がしてきた、ってことはなぎさもか。
あれ、誰だろう、この辺まで出かかってるけど。顔はそんな……いや雰囲気が。
「もう駄目!」
と悲鳴を上げ、真っ赤な顔をしてみさきは元の服に着替えに行った。
何か言いたそうで言えなさそうななぎさに、帰る、とだけ残して俺は帰った。
なぁ、なんでそんな服なぎさの部屋にあるんだろうな、そんなん着て、どこへ?
まだまだ言い足りないことをのみ込んだっけなぁ、え?秘密?いやお前ならクラス違うしそんなお前おしゃべりじゃねぇよな?
……ばらすなよ、まぁ誰も信じないだろけど。
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