第5話 イチゴかクリームか問題
こないだ俺が面白いか聞いたけど、俺が面白いわけないんだよな。
だって俺って「一般常識」を絵に描いたようなかわいい専業主夫になるのが夢の……あぁ?その話はもういい?
何?今日はお前から話がある?
じゃあ聞かせろ。うん何。
俺と洋とかの輪に入れてほしいって……。
やめとけ。
まず洋、あいつはヤンキーとはちょっと違うかもだけどキレたら何するかわかんないから。……え?まともっぽい?でもあいつさ、あんまいいたくないけどこないだ
「松助、部活休むんなら喫茶店いかねぇ?」
噂をすればなんとやらだ。いいか俺がなんか言ってたなんていうんじゃねぇぞ。
「今日こそあのウルトラジャンボパフェ完食しようかと思うの」
何?街子ってこの子か、かわいいじゃないかってお前色々大丈夫か。
「何こそこそしてんだ?ダチ?」
あぁもう気付かれたじゃねぇか!
「あの、松助とクラスは違うし部活も違うけど、いつも購買で同じパンを奪い合う縁で話すようになった波 高志です、話は聞いてます」
お前緊張してんのか、
「……もしよろしかったら僕も喫茶店一緒に行っていいですか?」
「へぇ、高志君かぁ、みさき君とは違う感じでかわいいかも」
街子が値ぶみしてる、よかったなお前可愛いんだって。
「まぁいいんじゃね? ちょうどいいおもちゃがあるんだ」
洋は楽しそうだ、おもちゃってまさか……なぁ。
喫茶店『レオ』この大きい方でない店はなんでもインベーダーゲームブームまっさかりな時からやってたらしいが俺らからすればなんのことやらな古い喫茶店だ、さすがにもうインベーターゲームの機械はないぞ。
コーヒーのいい匂いがするけど俺はコーヒーが飲めないので味なんかわかんない。
じゃあなんでいんのかって、そりゃまぁちょうど通学路にある穴場だからだ。ともかく、洋や俺らが入ってマスターに注文をした。
「まだ双子は来てないな」
席につくなり洋は鞄から携帯を取り出した。
そしてピポピポやると
「ちょっと面白いもの見せてやる」
と言って不敵に笑った。
しばらくしていつものようになぎさがここに来た。
「洋!また!登下校時の飲食は……」
「会長、ちわっす」
洋は怒られてるのに、大声あげてドアを開けたなぎさに微笑みかけた。ありゃまた何かたくらんでる顔だよ……
「あ、街子ちゃんまた会ったね、あれ?松助君その人は?」
そう、こいつがみさき。なぎさとは双子だ。え?似てない?俺もそう思う。
「あぁ、なんつうか……」
「松助から話きいて、面白そうだなって思って、邪魔だった?」
まぁそうだな、俺とお前は会えば話はするけどまだ友達と言えるかはびみょうだし、いやいいよ別に、話が聞きたいんだろ、(俺の話なんか面白いか?)つうかお前みさきとちょっとキャラ被ってないか、おどおどしたとことか、しゃべりかたとか。
「あぁ聞いて街子ちゃん『僕の彼女は』八巻読んだよ!読んだら貸してって言ってたよね、はい」
みさきはかばんから少女漫画を取り出す。
「ありがとう、おれいになんかおごるね」
「あの漫画!」
あれ、なんだお前目つきが変わったぞ。……へぇ、最近話題の月九原作漫画なのか、ってお前も少女漫画読むのか。
「あの、僕もそれ読んでるんだ、それでね……」
はいはいはい、お前もそういう話長いのね。
その時洋は携帯で初音ミクの画像を出すとお前を呼びこう言った
「ちょっと面白いものみせてやる。なぎさ、これは?」
おいおいおい、なぎさ日本語ぐらい読めるぞ、それはな
「しょおんみく?」
いやいやいや、
「じゃあこれは」
アルパカの写真だな
「ひつじ?」
こらこらこら、わざとじゃ……ねぇんだろうな。
「じゃあこれは」
あぁそれはいくらなんでもなぎさだって女だし知ってるだろ、シュシュな、
「髪留め」
あ~あ~あ~、っもう駄目だ。
「なぎさ俺が一般常識を教えてやる!これは初音ミクでこれはアルパカでそれはシュシュだ!それと、いい加減生徒会とか政治の勉強よりもっと一般的な女子高生らしいものに興味もて!みさき見てみろみさき、……みさきは男か。つうか月九なんかお前見てないだろ?」
矢継ぎ早につっこむ俺になぎさは満面の笑顔で答えた
「うん、九時は自室で本読んでるかな」
「すこしはニュースとか公共放送以外のTVをみろ!特撮以外でだ!」
「べつにドラマよりは本のほうが面白いし、こないだはジャーナリストの人が書いた『TVなんて嘘だ』みたいな本読んだ」
だからなんでそう自慢げなんだよ、手を腰に当てるな。
「だからお前は反体制かつ反権力みたいになるんだ!お前はロックスターか!せめてもうちょっとファッション雑誌を読め、いつもジャージのくせに」
「そういえばみさき、あのあんまりにもあたらない星占いの載った雑誌はどうなった、まだ占う人同じか」
「急に話題変えやがった、占いが当たらない?気にはしてんのか?」
占い気にするなぎさねぇ、あんま想像できない、と言うとなぎさは大きく笑っていった
「性格違うみさきと私が同じ運命とやらのわけないだろ、占いなんかあたるわけない。でもそこは特別で『SNSはやめたほうが』っていった次の号で『SNSで出会いが』って言うんだ、おかしくっておかしくって」
そっちの意味で気にしてんのか、ったくそんなことだろうと思ったよ。
「それなんでみさきが知ってんの?女性誌だろ?」
「あぁ、作りたい小物の見本写真が欲しかったんだ」
なるほど、みさきにはつっこまないよ俺。だって別にその趣味で回りに迷惑とかないしむしろお陰でこいつの周りには女友達が絶えず、一人ぐらいいい子紹介して……ってこないだいったら真顔で「みんないい子だよ」って言われた。
うん?そう、まぁ俺らいつもだいたいこんな調子でここでだべってる。
退屈ならお前もたまに来れば?
お前なぁ、なにが気にいったかはしんないけどあれから毎日喫茶店覗いてから帰るって本当か?
ほら、競争率高いって噂のカジキマグロバーガー、お前の分だ。
正直毎日来られても毎日いるわけではないんだけど……っていうか漫研大丈夫なのかお前。あぁ?慢研なんてただ漫画読んでるだけだからどうでもいい?むしろ俺の友達が面白いって……あ、わかった、お前友達いねぇだろ。しょうがねぇなぁ。
……図星とか……ごめんな。
いやごめんごめん、ついなぎさとか洋のノリで軽口叩いちゃった、え?別にいい?
変わりに今度から喫茶店いくときゃ呼べ?
いいけど、お前コーヒー飲めるのか、いや別に俺みたいに飲めないのも行ってるけど……へぇ、カフェラテならか、牛乳入ってんの?なるほど。
あいにく今日は部活だから俺は行けない、ってわけで今日の話はここまで。
あ?なんだよあぁパン代か、いいよ貸しで、今度「ミートボールパン」手に入れたら俺の分買っといて、それで帳消しだ。
じゃあな、ちょっと街子と洋待たせてるから……え?お前も一緒にお昼する?
お前ほんとうに友達いないのな……。
いいよ、一緒に屋上行こう。
「あっ、高志君!」
おぉ街子もうこいつのこと覚えたのか、早いな。
「高志君なら知ってるよね?今度の月九主演が『僕の彼女は』って元ワクセイジャーの星くんなんだけど……」
街子のおしゃべりは長いぞ、覚悟しろ。ってお前なにへらへら楽しそうなんだよ。
えぇ?ワクセイジャーなら見てた、星くんならファンだ、話があう人がいて楽しい、あぁそうか。
さて俺はツナピザパンでも……。
「そうだ松助、そのツナピザパン賭けてちょっとゲームしねぇ」
ブラックコーヒーを飲みながら、洋はいつものろくでもないことしか考えてなさそうな笑みをたたえて言った。
「……ゲーム?」
「会長が今日はなにパンか」
「!!?」
なに?なにパンってあれかあれ、食べるパンだよな食べるパン、そうじゃなきゃやばいしいや俺思うんだけどあいつはトランクスかブリーフだろうがあぁそうだろんなわきゃないかパンつぱんつ……。
頭がバグってなにも言えない俺をちらっと見ると洋はほんとうに愉快そうに笑って言った。
「なに照れて顔真っ赤になってるんだ、ちなみに俺はクリームに賭ける」
クリームって白っぽいあれですか、洋って清純派なの好きなのか、そこは黒とかいうかと思った、いやまてまだパンつと決まったわけじゃないぱんつ、俺は一所懸命考えた、で。
「……、いちごとか?」
とまぁどっちでもいける(パンツでもパンでも)な答えをあげた。
「よし、もうそろそろ来るかな」
クックックッ、って笑って。洋のあの下らないこと考えてる時の心底楽しそうなこと。お前、友達いねぇんならさ、まぁまともな奴らしいし、俺とまともコンビくまねぇ?
「なんでなぎさ来るってわかるんだ?」
いや、まぁ一応突っ込んどくけど。
「ほらあの漫画、街子がみさきに返すから、そのついでに今度の遊びの計画でも」
あぁそう、俺ら時々みんなで一緒にどっか行くの。え?興味ある?う~ん、お前は悪いやつではないけど、みんななんていうかなぁ。
屋上の扉があいてみさきが入ると、街子がさっそくうれしそうに声を掛けた
「みさき君!漫画ありがとう、『僕の彼女は』って思った以上に星くんだね」
……言ってる意味がわかんねぇ、漫画のカバーを見るとたしかに女と見間違うほどの美少年、そんな奴はいないと思ってたのにワクセイジャーの星くんときたらほんとにそんな感じなんだもんな……いやんなるよ……。
「うん、星くんの声でイメージするともっと面白いね」
「星くんといえばこないだ……」
なんとか輪に入ろうと精一杯の勇気を振り絞ったお前をさえぎって洋は言った。
「ところでなぎさ、お前の食べてるのそれ、何パン?」
あぁよかったぁ、やっぱパンですよねパン。
「いちごクリームパン」
あぁっもう!なんだこのどっちつかずは!
「ちなみに……何パン?」
いやまてまてまて、洋お前なぎさの後ろにさりげなくまわってってなんか手が、ズボンの、腰に、うわまずいまずいまずい。なぎさいいぞそいつ蹴っ飛ばして。
俺がビビって何もできないでいると。
「ねぇ洋くん、パンってパンツのこと?じゃあこのズボンもパンツだから制服パンツだね」
おぉみさき!お前女っぽいと思ってたけど、あんがいやりときゃやるんだな、見なおしたよ。
……でもなんでなぎさは抵抗しなかったんだ?
「どうしたんだなぎさ、らしくない」
俺の声になぎさは戸惑いながら答えた
「だって生徒会長が暴力沙汰なんてなぁ……。それに下は半ズボンだし」
あぁなぁ、俺も新聞で読んだ、国会のセンセイがたに女性が少ない理由の一つは、こんな風に実力で来られたときどうやって身を守るかってことの難しさがあるらしいってこと。
……あんまよくねぇよな。俺に何ができるかはともかく。
だって稼ぐ女がいねぇと俺専業主夫できねぇし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます