ファンタスティックメモリーズ~守りたい人たち~

俺は、彼女を見守ると決めた。


ここは、ルレルバスタル大陸の西側。西ルレルバスタル大陸。


この西側の大陸には、第一~第六まで王国があり 、王がそれぞれ国を統治しつつ、

春夏秋の官職についた歌姫と呼ばれる、五人の極限まで歌の訓練を積んだ、この国で選ばれた唯一無二の存在。魔力を歌の力に変え、旋律を築き上げる特殊な女性魔闘士が大陸の命の源から国を実体化させている結界を守っていた。


第一王国とその向かい合わせに存在している第三王国を春の歌姫こと、五人の歌姫の中心の春官が守り

第二王国とその向かいにある第五王国を二人の夏の歌姫こと夏官が守り

残りの第四と第六を守るのが秋官こと二人の秋の歌姫だった。


大陸は異次元の力の源で、土地や生命が実態をなさない、オーラの大集成。

国土は存在せず、それぞれの歴代の季節の歌姫の結界の力によって混ざり合って実態を成し得ている状態。

そうそれが古(いにしえ)の教えだった。

人は結界を超えて外へとは出られないため言い伝えとして人々の間で語られているが、大方間違いないというところだろう、だって実際に歌姫がその結界を守っているのだから…。


ここは西側の大陸だとさっき言ったが、なら東がはあるのか?って話になると思うが、実は有るらしい…。

その反対側の世界は俺らがいる西側とは、文化も力も違う西側と同じく国々が存在すると言われていたが、その実際を知るものは誰一人この国にはいなかった。”余計な誤解を招いて争いにならないため”と古き人々は反対側への散策及び干渉を禁じ関わることを許さず、未だになぞらしい…。

なぜそんな話をし始めたのかというと、実は俺、元の世界に帰る方法を知りたくていろんな人々に聞きまわっていた時、この異世界に来た時に、最初で初めての友達になった奴が、占いとか透視能力が得意で、俺が流された時の異次元の根源を軽く辿ってくれたときに、その世界こそ、別次元のキーとなる何か特殊な力が存在していて、そこから俺のような人物がこの世界に流れ着くようだと言っていた。俺は、今でもあまり信じれなくて、多分それを本当に見ないと信じられないと思うが、そいつが言うには、この国に流れ来るのもののほとんどが東側の大陸から、やがてこの西側へと流れ着くんだと、見えたものはそれだから、一応、信じてみてくれとのことだった。

俺のように異世界からこの国、いや西側の大陸に流れ着くものは結構いるらしいが、正確な人数は国家機密で国家の上層部の人物しか知っているものがいないらしく、あいつも透視の能力でその人数を知ってしまっても口外すれば罰せられてしまうため、俺にすら言えないようだった。

 流れ着いたものは、まずは尋問されて、(おかしな、危険なことを考えていないか)思考調査、(変な病気を持っていないか)健康チェックをされて、魔力の検査を行った後に、保護してくれる人を探してくれるのだ。

それは、西側の大陸の数百年前からの決まり事で、流れ着いたものは調べがついたのち必ず保護することとすべての国の条約で決められていた。

そして、一番のなぞな部分があり、それは異世界の人間は異世界から来たと公言していいと法律で決めれていることだった。

ならなぜ、正確な人数は国家機密なんだ?と思うが、多分、国家に危険と判断されたものは、陰で処刑されているのだろうと推測される、だから、正確な人数は言えないのだと思う。(非人道的なことだと分かっているのだろうな・・・)

この大陸には、厳しい条例や法律が幾つか存在し、それを犯せば力の無効化、ひどい場合は処刑とかあった。国家に刃を向けるもの向けそうなものを危険視し、監視し、謀反の兆候があれば処刑。それはすべて上の人のさじ加減だ。


物騒な話になってしまって申し訳ない…。


それと書き忘れたが、俺らのような流れて来るものは、特別なようで、"並の魔闘士"よりも何か秘めた能力に目覚める可能性が高いと言っていた。

何の力に目覚めるのかは分からないらしいが、たくさんの可能性を秘めていると言われていた。


ここの国で産まれたものたちは皆魔力を有し、冬の力以外は、“魔法使い見習い”として魔法学校に入学する。そこで、”魔闘士見習い”を選出する実力テストを受けた後、試験の結果でクラス分けを行い。そこで、”魔法使い見習い”は12年間。”魔闘士見習い”は13年間。魔法の勉強をするのだ。


本来の字は魔導士だろうが、ここでは魔闘士なのだ。

それは、シンプルに魔法を操りながら闘う者だから魔闘士らしい…。

よわ、戦士の意味合いが強い。

封印された魔族を監視するという使命を持ち。国家が設置した施設に所属するのだ。ようするに、軍人みたいなものと考えていいだろう。

来るべき時のために…。らしいが俺はその意味を知らない…。


卒業後は、魔闘士に選ばれたもの以外は、魔法使いとして皆国家の監視の元。それぞれ割り当てられた職業に着く。


とにかく、この大陸の国々と国民たちは、みんな厳しい実力を削り合い、評価のもとで回っていた。


ちょっと、悲しいがそれがこの大陸の流れであり習慣なのだ。


そして、この西側の大陸では、冬の季節が存在しない。


"涼しい"はあるのだか、それ以上の寒さや冷たさ、物を凍らせたり、気温を下げたりする力、属性を持つものは無力化しない限りは、普通の生活が出来ないし、見つかれば有無を言わさず無力化か、処刑される。


それくらい、嫌われ恐れらていた。


生活もそうだ、冷蔵庫はあるが冷凍庫はない。キンキンに冷えた飲み物はあるが、アイスやシャーベットはない。


とにかく、冬を連想させるものはすべて禁止していた。


"涼しい"はあるのだか、それ以上の寒さや冷たさ、物を凍らせたり、気温を下げたりする力、氷の属性を持つものは無力化しない限りは、普通の生活が出来ないし、見つかれば有無を言わさず無力化か、処刑される。


それくらい、嫌われ恐れらていた。


生活もそうだ、冷蔵庫はあるが冷凍庫はない。キンキンに冷えた飲み物はあるが、アイスやシャーベットはない。


とにかく、冬を連想させるものはすべて禁止していた。


なぜそこまで、"冬"が忌み嫌われているのかというと、

およそ、300年以上前の事、この大陸は一人の大王と呼ばれた人物によって、西側は隔たりなく統治されていた時代。ある理由で冬の歌姫が力を暴走させてしまい。その時代の春夏秋の歌姫全員と西側の大陸の半数の人口を失うという悲劇が起きたため。


もう、2度と悲惨で凄惨な事態をうまないために、冬は除外されることになった。

まだ、瀕死だった歌姫たちは生涯をかけて、冬を封印。その後亡くなったのだ。

半数の人口とすべての歌姫を亡くした国は、庇護を失い。不安定な戦乱の炎が絶えない時代へと進んでいった。


そして、運命を左右する…


あの魔族の召還魔物…


『混沌の化身』


魔族はその邪悪さゆえに戦乱が続き、たくさんの血が流れ、人が傷つき虐げられ、死んでいく度に、集まったえんさと嘆き、そしてありとあらゆる、負の感情、人が見ることを恐れる暗い部分を自らの養分として利用したのだ。


魔族は結界の外へにいる混沌<カオス>の存在で、対峙した相手の心の闇、邪心や悲しみや怒り憎しみの深さ、それに合わせて形を変える。


奴等はその相手がもっとも嫌い恐れるものに変化するのだ。


本来ならば、極端な争いや大きな悲劇がない限りは、魔族は形をなさないため、結界の内側の人間に手を出すことはせず、混沌としたものとしてそこに存在するだけだった。

だが、戦乱が支配した世界で、魔族は眠りから目覚め、空へと上がってくる有りとあらゆる負の感情を糧により強大化した。奴等は生物としてその存在を変えて、召還魔物『混沌の化身』を産み出すと地上の生命を奪い自分達の餌にするために、雨のようにそいつらを送り込んできたのだ。


圧倒的な闇の力の前に人々はなすすべもなく敗れ、人と人との争いは終結した。


だが、魔族や魔の力によって生まれた『混沌の化身』は攻めることを止めず、ますます勢力を拡大させていくばかりだった。


抵抗むなしく散っていく度にいつしか人々は諦め始めていた…


地上が闇に染まっていきやがて大陸全体が闇に還りそうになり、誰もが絶望していき、いっそう闇に溶けてしまおうかと思っていた矢先、異世界からここに流れ着いた一人の歌うたいの女性により救われた。


伝説の戦場の歌姫…


そして、彼女が持ち合わせていた歌の力で呼び出した、エレメントクリスタルの山脈…

彼女は己自身の魂をすべてエレメントクリスタルに変えたのだ。


ーーこれで、闇から世界を救ってください…


あなたたちの心に光があるのなら、光が闇を導き、清浄で平穏な地へと変えてくれるでしょう…


彼女は自分の魂をすべて使ってもなお、生きていた…


そして真っ向からの闘いに消極的だった人々に呼び掛けて、ついには失っていた希望を見出ださせ、奮い立たせたのだ。


異世界から来たたった一人の壮大な歌の力を持つ少女一人によって産み出された未知の力は、彼女が儀式のために使ったカナルを中心に各地に散らばり、山脈として根付いた。

地上を蹂躙していた魔族や魔物『混沌の化身』はその近くに居たものはすべて消滅した。

その圧倒的なエネルギーは、人さえもじかに触れることを許さずに、煌々とした美しい光を放っていた。


彼女の力を認め勇気付けられた人々はそんな破壊力さえ持ち合わせたエネルギーの研究を臆することなくこなし、わずか三年で魔闘兵器アーク・ソールを誕生させたのだ。

アーク・ソールというのは、魔法を主体とした装備におおわれた、人型自立歩行ロボットだった。


彼らのたどり着いたものは、エレメントクリスタルを兎に角人が触れても無害なものに変えること…それと守る力に変えることだった。


実にシンプルな考えだったが、そこへ至るまでの血の滲むような苦労とその強大する力ゆえの難しい制御もはらんでいた。


彼らの原動力は、契約者のパイロットの血肉とエレメントクリスタルと融合を果たしたメインコアであるが、魔導装甲は歌の力を借りなくては召還も出来ず、コアが闘うための魔導兵器に変化できず、起動もしない。防御も攻撃も歌を介さない限り不可能…。

要するにパイロット自身とメインコアは一心同体のコアであり、その力を巡らせて、発動させるのは歌の力と云うことなのだ。

アーク・ソールの形や楽器の形をした武器を決めるのは、歌姫の歌の力とパイロットの心のあり方で、とある異空間の中に生まれた魔方陣の中で歌姫とパイロットによって召還されて誕生するのだ。

彼らの闘い方は実に特徴的で、歌に合わせて奏でながら踊るように闘うのが特徴だった。

それが勢力を拡大させより強大な力を得てい く魔族と召還魔物への唯一の対抗出来る力、召還される魂のオブジェだった。


諸刃の剣と云う言葉がぴったりな代物だったが、それは圧倒的な力を誇っていた。


しかし、そこに問題があった。

春夏秋の歌姫を失った今では、歌の力を持つものが国に存在しなかったのだ。

再び、困り果てた人々の前に、毅然とまた異世界の女性がたったのだ。


ーー私歌います!


彼女の歌によってアーク・ソールとパイロットは踊ることが出来たのだ。


みんな口を揃えて云うのだ。

『あれは闘いじゃない…。まるで舞踏会のようだった』と…


初戦からその圧倒的な力を発揮したアーク・ソールは、魔族と召還魔物『混沌の化身』を地上から消滅させ、混沌<カオス>を結界の外へと追い出したのだ。


これにより、人々の心が一つになり、不毛で宛のない闘いが終結した。


異世界の一風変わった女性はいつの間にか、伝説の戦場の歌姫と称されるようになった。彼女は残った魔力をすべて結界に注ぎ、新たな歌姫がたつまでのたしにした。


春夏秋の歌姫が新たに誕生し、結界が本来の役目を行えるほどに安定したのを見届けると、戦場の歌姫は、夏の歌姫に有事の一切を任せて、静かにこの大陸を去ったのだ。


その後の彼女を知るものは誰もない…。

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