第7話エリシアより
朝日が昇り始め、空がぼんやりと青くなった時間、彼女はぼんやりと目を覚ました。
身体は痺れているし熱を持っているが、毒に犯されていた身体の痛みは大分良くなっている。
部屋に漂う刺激臭に不快感を覚えたが、不満に思う程ではない。
これで毒を治療できるとはと、空になったお椀に視線を向けた。
彼女は、帝国で亜人と蔑称で呼ばれる種族の内の一つ、エルフだ。
帝国が鉄製の武器を開発して森に住んでいたエルフ達の領域を攻めてきた後、一部の地域は帝国に制圧され被支配階級となった。エルフの扱いは良くない。
40年前に集結した内乱で、内乱鎮圧の為に利用されエルフには市民権を与えられたが、その前までは市民権を与えられず隠れるようにして生きてきた。
それでもエルフなどの亜人と呼ばれる人に対する風当たりは強く、昔は弾圧されていた。
これでもまだ、アルキス帝国は良い方で、デルフォリアル神聖国では未だに弾圧が行われている。
それも、アルキス帝国で弾圧されていた頃と比べものにならないくらいひどく一部地域には亜人の殺害を推奨するような場所もある。
今はアルキス帝国内ではエルフは弾圧の動きが弱まってきたとはいえ、エルフと一緒にいるだけで危ないと言われていた。まして、兵士に追われていた私を、泣きながら励ましながらそして、彼も傷を負っていて苦しかっただろうに歯を食いしばって、看病し続けた。
エリシアは何者だろう?と名前も知らない彼の横顔を見つめた。
疲労困憊なのだからせめて横になって休みたいだろうに、彼女のために場所を開けて、壁に背を預けて泥のように眠っている。
黒髪の青年は、見たことのない顔立ちをしていて、がっしりとした肩幅を持っているのに、栄養不足が見て取れる。彼女にとって見たことのない顔立ちだった。
どこか遠い国の貴族だった人なのかな?とエリシアは思った。
そして、どうしてそんな悲しそうな表情をしてるの?と。
瞼から、すーっと、一滴こぼれ落ちる。
焦燥感と不安が募る中、彼が瞼を持ち上げた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます