第7話救出。

物陰から、エリシアが捕らえられているだろう建物を隠れ見る。


結局、あの衣服を俺が奪ったの男を止めを刺す事はしなかった。いや、出来なかったのかもしれない。

確かに、あのままなら死んでしまうだろうけれど。上向きで、水を含んだまま窒息したのだ。あのままだったなら死んでしまうだろう。

けれど、もし、俺がいなくなって少しして息を吹き返せば窒息死する事はない。

生きる可能性を残してしまった。

未だに、殺すことに慣れていないのか。と思うがそうじゃないなと結論付ける。

他の人達を殺すことに躊躇なんてしなかった。

守りたいものがあるのだから、それを守る為には絶対に害する物は見捨てるべきだ。


じゃあ、何故?


人間以外の種族である仲間達を見られた事でもう帝都にはいられない。だから出て行くつもりではある。

意識を失った彼は、自分が仲間も売ったなんて報告は出来ないし、多分俺たちの事は報告出来ないだろう。

それに、知られたのが俺だけならこの世界の操作技術なら幾らでも逃げようがある。

よって、彼が生きていても害は少ししかない。


だからかな?と疑問に思う。


甘いこと言ってられないのはわかってるのに。 俺は、人に生きて欲しいと願ってしまうのか?と自嘲した。

もう、数人この手で殺してしまってるのに。

忘れただけ、、、じゃないだろうな。この状況で忘れるなんてありえない。

エリシアの事がかかっているのだ。絶対にない。

もし盗賊じゃなくても殺していた。

敵なのだから。


あいつの荷物の中に、家族のものらしきぬいぐるみがあるからって、俺には関係ない。

本当に、バカだよ。


こんな事じゃ、躊躇いを持ってしまって、いざという時に戸惑ってしまう。

それでは危険だ。それだけは危険だ。

だから、今だけは出来るようにしなければならない。

目をつむり、思考をうちに向け自分が思っている事自体を知覚していくことで、自我を希薄にしていく。

考え、動作、内臓の動き、体の反応。これらを、逆に意識する事によって、思考を明確に真っさらにしていく方法だ。

余計な考えてを無くしていく。


これは、僧侶達が使う仏道修行の精神集中法の一つだ。あの有名な座禅して、叩かれたりするやつで、僧侶の人達がやっているという物だ。


俺は、これを受験勉強の時に用いて活用していた。こんな事で役立つとは思わなかったが。


思考がクリアになったところで、誰も見ていない事を確認する。

盗賊のような連中以外、人かげひとつない。これはいくら貧民街であっても不気味である。

夜の暗闇を利用して、不自然にならないように道に出た。


扉の見張り役が俺を見下ろす。フードから覗く顔は疑念の色を宿している。

俺は剣を胸の位置に掲げる。

その見張りは、おれの行動を見て頷き鍵らしき物を取り出した。

ガチャガチャと鍵を開けて、俺を中へ促した。良かった。これで入れるようだ。

中は結構整っていた。机が数個並べられていて。兵士の格好をした奴らが雑談をしている。

そう、兵士だ。盗賊じゃない。


「おい、どうした? 巡回の交代はまだだぞ。あと半刻ほどある。」

「いや、そうじゃない。」

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彼は異世界で何をするか。 @yumesaki

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